自分の直感に向き合い続ける。studio yot・四ツ屋卓身が語る人生の切り開き方

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。

第858回目となる今回は、四ツ屋 卓身(よつや たくみ)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

建築デザインを担う『studio yot』として独立し、現在は設計と施工の二刀流で活動をされている四ツ屋さん。大学時代から「自分の直感と心」に素直に向き合い続けてきた四ツ屋さんの考え方をお伺いしました。

 

建築との出会いは大学のオープンキャンパス

ーまずは、簡単に自己紹介をお願いいたします。

四ツ屋 卓身(よつや たくみ)です。出身の北海道で建築の大学に通いながら、設計と大工のアルバイトをしていました。

大工のアルバイトをきっかけに、大学卒業後は東京の「HandiHouse project」という建築チームの元で大工業とデザイン業の修行をしました。

2021年の11月に「studio yot (スタジオヨット)」を立ち上げて独立し、現在は設計から施工までを一貫して行う仕事をしています。

ーstudio yotでは、どのような活動をされていますか?

最初は埼玉の川越で、シェアハウスを作りました。その後は、知り合いの大工さんのお手伝いをしながら、東京都目黒区の祐天寺に古着屋さんを作りましたね。最近では、京都でお菓子屋さんを作るプロジェクトがあって、来年には宮古島でシェアハウスを作る予定もあります。

学生時代から多業種が集まるコミュニティに出向いて話したり、ご飯を食べたりするのが好きで。そういったご縁が繋がって、お仕事をさせていただいてるのが多いですね。

ー建築との出会いはいつでしたか?

18歳の高校生のときです。『ワクワクさん』や 『ピタゴラスイッチ』などの番組や物作りが好きだったこともあり、工学系や理系に進もうとぼんやり考えていました。

そんな中、大学のオープンキャンパスに行った際に、僕の中で1番キラキラと光っていたお兄さんが建築学部の人だったのです。そこから建築に興味を持ち始めました。

ー当時は建築より、その人に興味を抱いていたのですね。

そうですね。当時の僕は、建築にまったく詳しくなくて。でも、物作りにまつわるものでないと、たぶん興味を持てなかったかもしれませんね。

「自分の直感」に従って始めた設計と大工のアルバイト

ー大学1年生から設計事務所と大工のアルバイトを始めたそうですが、どのような経緯でしたか?

高校生のときの僕は、人とたくさん話すタイプではなかったので、接客業や飲食のアルバイトは絶対に無理だなと思っていました。

そんな中、大学3、4年生で設計事務所でアルバイトをしている先輩がいることを知ったのです。その先輩たちがキラキラして見えたので「僕も設計事務所でアルバイトがしたいな」と、大学1年生のときから感じていました。

けれど、デザイン事務所でアルバイトをしたいと教授に伝えると「3、4年生で図面を描けるようになってからだよ」と言われていました。

それでも、廊下で教授に会うたびにしつこく「今は何ができるかわからないけれど、設計の事務所でアルバイトをしたい」と言い続けていたんです。

すると、しつこさが通じたのか、設計事務所でスタッフを一人探していると教授に紹介してもらえて、大学1年生からアルバイトを始めました。最初は図面の立ち上げや模型作りから始めましたが、段々と打ち合わせにも参加できるようになりました。

実際に現場に一緒に行く機会が増えたところで大工さんとの縁も深くなり、大工のアルバイトもするようになって。こちらも最初は道具を動かしたり、パーツに色を塗ったりと小作業でしたが、手伝ううちに、深く現場に関わるようになっていきました。

ー教授に何度も打診をしたのですね。当時のモチベーションや行動力の源はなんですか?

自分の「直感」に従って行動していましたね。もともと僕は、直感にすぐに食らいつかないと何も決められないタイプで。

例えば、ご飯屋さんでメニューを見ているとずっと迷ってしまうのですが、店員さんにおすすめを教えてもらえるとすぐに決められるんです。メニューを選ぶように、直感に従って自分の人生を選ぶのもいいなと思っています。

ー設計と大工の両方の仕事をする中で気づいたことはありますか?

デザインの事務所でアルバイトをしていたときは、大工さんが図面の意図を汲み取ってくれず、図面を描き直すことがありました。

一方で、いざ大工さんのアルバイトに行くと「あのデザイナーはかっこいいと言っているけど、こっちのデザインの方が絶対にいいと思う」「作ることを考えていない図面じゃないか」などの出来事が現場ではかなり起きていて。

それらの課題に気づけたのは、設計と施工の中間にいたからだと思います。その後、時には少し難しいデザインでも、その方がかっこいいものがあるし、時にはシンプルで作りやすくて明快なデザインがよいものもあることにも気づきました。

その使い分けが大事だと学んでからは、さらにも増してデザイン業と大工業のどちらもやり続けたいと考えていましたね。

ー建築に携わって感じた課題はありますか?

建築の領域は、不透明で制限が多いまさに「ブラックボックス」だと気づきました。最近は、生産者さんの顔が見えるトマトが買えたり、労働者が無理して作っていたことが見える世の中になってきていますよね。他業種と比較すると、建築は作り手の顔も見えない。また、細かい内訳も見えないと思ったんです。

リノベーションに2,000万円、3,000万円の大金を扱うことも多いのですが、費用の見積もりを出したときにお客さん側にとって内訳が詳しくわからないことも多いです

1,000万円を超える大金をデータ上で簡単に扱えてしまうのが恐ろしいなと、21歳ながら感じました。

一生暮らすものと考えたら、一つひとつの素材や色を選ばないといけないし、50円、100円でも変わるような打ち合わせを丁寧にした方がよいと思うんです。でも、多額のお金を扱う建築業だからこそ、細かい内訳ができていない。

ー当時の心境としては、違和感が強かったのですね。

衣食住は、暮らすうえでとても大事ですよね。衣と食が少しずつ変化し始めているのに、「住」はあまり変わっていなくて。

デザイン業と大工業をしながら、建築に深く関わったからこそ感じました。だからこそ、今後は建築業界をもう少し可視化できるようにしていきたいですね。

ーお話を聞いていて、四ツ屋さんは直感と時間軸を大切にされている印象があります。

どう行動に移すか1秒単位で考える短い軸と、10年後はどう行動するかぼんやりと考える長い軸の二軸があると思います。

ただ、長期スパンで自分がどうなりたいかを書き留めるのも大事だろうけど、誰と会うか、どんな行動を取るかによって常に目標も変わると感じていて。だから僕は直感で行動を変える癖がありますね。

大工さんは10年修行しなさいと言われるのですが、そう言われると僕は外へ出たくなってしまうんです(笑)。今までは3年所属しないと学べないことでも、今の若い世代や後輩は1、2年で吸収できる世の中にいると感じていて。

あくまでも、そのとき自分がどう思ったかを大切にしながら行動したいと考えています。