すべてが理想通りになるほど、人生は甘くない
ーカレーの販売をスタートしてすぐは売上がなかなか伸びなかったそうですね。
当初からカレーをD2Cという形で売っていました。当時は食品のEC化率もあまり高くなく、D2Cという言葉もこれから伸びていきそうだというところで。コロナの影響でD2Cの企業が急速に増え、私たちのような資金が多くない企業にとっては向かい風でした。
最初のクラウドファンディングでは食品の会社としては順調だったのですが、自社サイトで販売するとなるとうまくいきませんでした。ビジネスを通して実現したい理想の姿を追い求めることは、ときにお金を稼ぐことと相反することがあります。
例えば、お客様に直接メリットのないコストはかけないほうがいいと、最初は広告費をかけていませんでした。当たり前ですが、何もないところからのスタートで広告も打ち出していなかったため、売上がなかなか伸びなくて。そこで壁にぶつかり、現実と理想のギャップに苦しみ続けていました。
そこから広告をかけて売上が伸びるようになったのですが、今度は広告費がかさみ、利益が出なくなっていって。サブスクユーザーを増やすためには、ある程度の赤字は覚悟でやっていかなければと思ってやっていました。
オンラインで販売をしながら催事に出たり、ポップアップをしたりしていました。そんな中で、やはりリアルな店舗がほしいとなり、今年の3月から店舗をオープンしました。
また、自社の飲食店やオンライン販売のほかに、飲食店への業務用の卸し事業を始めました。D2Cだけではなく「クラフトカレー」というブランドを生かすにはどうすれば良いのかを考え、事業ピボットをしています。可能性を模索しつつ、別の事業でも売上を得るというところで、土台ができてきていると私は感じています。
ー自分自身を認められる強さの根源を教えてください。
私自身、特別メンタルが強いわけではないですが、考え方次第で気の持ちようも変わると思います。辛いことやきついことを経験している最中は、この先も苦しみが続くのではないかと感じると思います。
ただ、私は人生のシナリオは最初から決まっていると思っていて。シナリオが決まっているからこそ、バッドエンドになることはないと信じています。
成功している人たちも、すべてうまくいっているように見えているだけで、当たり前に辛い経験をしていますよね。どんな人でもそんな経験をしていることを考えると、すべてうまくいくのは物語としておもしろくないんだと思います。
そんな考え方でいると、辛いときでも物語を楽しくするために必要なことだと考えられるようになります。苦しみからいつ抜け出せるかわからなくても、今はそういう時期だから耐えるしかないし、これから良くなるんだと。
ー最後に、今後の展望を教えてください。
中小企業で良い製品を作れるところは日本にたくさんありますが、なかなか世に出せないのが現状です。良いものを作れるところにしっかり光が当たって、自分たちが作っているものでお客さんに喜んでもらうというところが今後重要になってくると思います。
受託の仕事だけをやっていくと、すべてが市場に左右されてしまい、良いものを作ろうとする会社が減っていくと思います。だからこそ、市場規模が大きかろうが小さかろうが、納得して作ったものを売れる場所を作るのが大きな目標です。
そのためにも「クラフトカレー」は、納得して作ったものが売れることを証明するためのブランドにしなければならないと思っています。
ーありがとうございました!角田さんの今後のご活躍を応援しております!
取材:西川莞人(Instagram / Facebook)
執筆:竹山瑞香(Twitter)
デザイン:高橋りえ(Twitter)