旅するボードゲームクリエイター・スイタ氏の居心地の良い場所や時間を大切にする生き方とは

居心地の良い場所や時間を見つける

ー大学卒業後はどうされていたんですか?

「とりあえず東京に行こう」と東京に出てきました。出てきたものの、東京の固定費が高すぎて、地方移住を検討しました。

オンラインサロンで仲良くなった人が、地方移住の担当だったんですね。移住支援の施設に相談に行ったときに、多拠点生活のサービスを知り、こういう生き方があるならそのほうがいいかもしれないと思い、他拠点での生活を始めました。

思えば小中学生のときに、旅をして生活したいと思ってたなと。でもなんとなく無理なんだろうなと思っていたんですが、いつの間にか夢が叶っていました。

多拠点生活のサービスは、2万7500円なんです。1ヶ月借り放題で、水道光熱費やインターネットも使い放題です。(※2022年12月の価格改定により39,600円に変更)

今は埼玉県の横瀬町にいるんですが、農家さんや家庭菜園をしている方から、食べきれないからって食材をいただくことが多いんです。それを調理して、皆んなに振る舞うこともありますが、食費は3000円しかかかりません。

1ヶ月約3万円で過ごせています。固定費を下げていっても十分楽しいし、生きるのが結構楽だなと思って。もっと広めていきたいサービスですね。

いろんな場所や文化、人に関わっていく生き方と、ボードゲームクリエイターという職業との相性の良さを感じています。誰かの下で働くことが性格上合っていないので、フリーランスしかないなと思いました。

全部自己責任なのが、自分としては楽なんですよね。

ーどうすれば自分にとって居心地の良い場所や時間が見つかりますか?

まず自分がどんなときに楽しいと感じて、どんなときにつらいのかというところを書き出したりとか、探ってみたりとか。あと、これだけは避けたいということを出してみる。

時代の流れとか風潮によって作られていた価値観もあるんじゃないのかなと考えるとか、少し疑ってみてほしいなと思います。

自分の気持ちに耳を傾けて、それに従っていくと居心地の良い場所が見つかると思います。

目指すのは、ひとりひとりが生きやすい社会

ースイタ氏さんが、今後挑戦していきたいことはありますか?

個人としてもアヴィニョンゲームズとしても、ひとりひとりが生きやすい社会にというビジョンに向かって走っています。

そのために僕はボードゲームを作っています。出題者の気持ちを協力して当てるゲーム「ソノトキボクハ」を10月6日にやっと発売できました。クラウドファンディングをして、累計200個ぐらい売れ(インタビュー当時)、Amazonの新着ランキングで5位になりました。

「持っているボードゲームよりランキングが上だぜ!」と思い、うれしかったです。

出題者の気持ちが書かれた10枚のカードをひとつ引いて、その気持ちになったときの話をするんです。例えば「給食にごぼうが出てきたときの私の気持ちです」。

10個の気持ちの中で、第1予想でみんなで指差して、なんでそれを選んだんだろうと、会話が生まれるゲームです。家族で遊んだとしても、同じ人から同じタイミングで同じエピソードを聞いても感じ方に違いがあるんですよね。

話し合いや質問、相談をして、3分以内にひとつに決めるというゲームです。プレイヤーたちの関係値や理解度みたいなものが見えるゲームになっています。

どう生きたとしても、人と関わって生きていくんだろうなという社会で、コミュニケーション不和を取り除いたら、いろんな悩みが消えて楽になるんじゃないのかなという仮説のもと作っています。

まずは、同じ人から同じ時に同じ話を聞いても、人それぞれ感じ方が違うんだと知ることが大切なんじゃないかなと思っています。それを、正解したい、勝ちたいといった想いから行動を促せたり、楽しくコミュニケーションが取れるのがボードゲームのいいところだなと感じています。

発売してから、放課後等デイサービスの事業者さんに、「気持ちを汲み取るのが苦手な子のための教材として使っています」。親御さんからは「学校の話をしてくれない子供とゲームを通して、たくさん会話ができてうれしかった」と反響がありました。

ゲームに限らず、届けてこそだと考えていて、遊んでもらうのがゴールだと思います。届いたことがうれしいし、ありがたいなと思っています。

ボードゲームで遊べない子たちには、絵本という手段で伝えようと考えていて、来年には絵本を作る予定です。今年の12月には個展も開催します。

個人では、いつまでも5歳児のようにわくわくできる夢を見られる大人として生きていきたいですね。

ー最後に読者に向けたメッセージをお願いします。

例えばYouTubeで、やってみたって企画がありますよね。そんな気軽さで、いろいろなことに挑戦してみるのも良いのかなと思います。

やらなきゃいけないとか、続けなきゃいけないものもあると思うんですが、しなければいけないと、あまり自分を苦しめすぎないでもらえたらうれしいなと思います。

そして、いつ始めてもいいし、いつやめてもいい。何度でもやり直せるのが人生だと思うので、もっと気楽に楽しんでいただければいいなと思っています。

ーステキなお話をありがとうございました!スイタ氏さんの今後のご活躍も応援しております!

取材:黒澤朝海(Twitter
執筆:後藤ちあき(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter