悩める子どもの居場所をつくる。草薙カルテッド・一岡柊希の無理をしない生き方とは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第724回目となる今回は、一般社団法人草薙カルテッドで活動する一岡 柊希(いちおか・しゅうき)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

静岡県静岡市にある草薙エリアを活性化するまちづくり団体で働く一岡さん。学生時代の不登校経験から居場所づくりの大切さを実感し、現在はコミュニティ運営に携わる一岡さんから、悩みや葛藤に向き合う大切さや無理をしない生き方について伺いました。

 

大人に対して嫌悪感を抱いていた幼少期

ーまずはじめに、自己紹介をお願いします。

一般社団法人草薙カルテッドに所属する、一岡柊季と申します。静岡県静岡市のJR草薙駅周辺を拠点に、産学官民を結ぶサードプレイスづくりの活動をしています。

草薙カルテッドは今年で設立6年目になる法人で、事務局のメンバーは僕を含めて約5名在籍しています。30名ほどいる正会員の方々と一緒に、草薙という地域がどうやったら良くなるかを日々話し合っています。

ー具体的には、どのような活動をされているのですか?

大きく言うと、街づくりをする活動です。地域・社会課題解決に向けた取り組みや人々をつなぐコワーキングスペースの運営、イベントの企画など多岐にわたる活動をしています。

草薙カルテッドの特徴は、行政や自治会、学生などのさまざまな団体出身の人が、垣根を越えて繋がっていることです。音楽でも四重奏のことをカルテットといいますが、産学官民4つの連携が、草薙カルテッドの名前の由来にもなっています。

ー静岡を拠点に活躍されている一岡さんですが、ご出身は兵庫県だそうですね。幼少期はどんなお子さんでしたか。

大人という存在に対して嫌悪感や疑問を抱いていました。小学校高学年の頃から、「勉強しなさい」と注意されたり理不尽に叱られたりすると、「なんで?」と不満に感じることが多い子どもでしたね。

幼少期の頃は、大人に対して「自分の時間を好きなように使い、楽しく自由に生きている人」というイメージを持っていたんです。でも実際は、世間のしがらみの中で制約に縛られ、自分より立場の弱い人に強く当たって生きていて……。

身近な大人のそんな姿を目にして、「今後の自分の人生もこの程度のものなのかな」と感じてしまったんです。

ー大人へのイメージと現実とのギャップに嫌悪感を抱いたのですね。ストレスや葛藤もあったかと思うのですが、どのように発散されていましたか?

幸い良い友人に恵まれ、ストレスを乗り越えながら学校に通えました。地元の公園でドッジボールをしたりニンテンドーDSをしたり、友達と遊んだ時間はすごく楽しかったですね。友達に会うために学校へ通っていました。

不登校期間中、インターネットが第二の居場所に

ー中学校に進学してから、変化はありましたか?

中学校に進学して、部活と勉強の成果で比較されることに疑問を抱き、以前より状況が悪化したように感じました。全員が何らかの部活動に所属し、テストの成績で一律に評価される環境に違和感を覚えたんです。

今振り返ってみると、勉強はちゃんとしておいたほうがいいですし、運動も楽しかったと思えます。でも当時の僕は、「何で学校に行かなければいけないのか」「なぜ勉強するのか」と納得ができず、学校に通うのが苦しい日々を過ごしました。

ー学力でランク付けされる学校への不満を感じても、受け流す人も多いかと思います。

僕は、世の中の当たり前といわれるルールに対して、どんな理想を実現するためにそのルールが存在するのかを知って納得したかったんです。

なぜ学校に行かなければいけないのか、なぜ勉強するのかを周囲の大人に質問しても、「みんながやっている」とか「当たり前だから」という説明ばかりでした。

世の中への出来事を深掘りした意見が無いことにさみしさを感じ、学校というコミュニティに通う必要性がわからなくなっていったんです。

ー中学生の後半から、学校に通わなくなったそうですね。

中学2年生の後期から、週に1回のペースで学校を休むようになりました。最初の頃は親に怒られるのを恐れて、制服を着て学校に行く振りをして自宅に戻っていたのですが、すぐにバレましたね(笑)。

そこから次第に学校に通わなくなり、中学3年生には一切学校に行かなくなりました。

ー不登校という選択に不安はありませんでしたか?

学校に行かないという選択は、すごく怖かったです。当時の僕には「勉強をしていい大学に入り、優良企業へ就職する」という価値観があり、学校を休むことで人生が終わってしまうのではと不安に感じる日もありました。

でも実際は、不登校を選択したことで気持ちがすごく楽になったんです。たしかに、人生を長い目で見れば学校での勉強で得られるものは多いです。それでも、学校が嫌だという気持ちを無視して生きることはできませんでした。

ー学校に行かない期間は、どのようにして過ごしていましたか?

オンラインゲームやインターネット上での掲示板、ライブ配信などを通じて知り合った人たちと交流していました。

僕と同じように不登校中の学生や、就職して社会人になってから苦労した人など、さまざまな価値観を持つ人たちとの出会いは、気持ちが救われるきっかけにもなりました。

ーインターネットでの出会いを通じて、気づきや学びはありましたか?

自分の信念や意志は持ちつつ、相手の気持ちに共感して許容してくれる人と出会えたことが本当にうれしかったです。

自分の意志をもって学校に行かない選択をしたことに対しても、「それでいい」「無理に勉強しなくてもいい」と言ってもらえて。自己肯定感も高まりましたし、自分の居場所はここだと感じられるようになりました。

学校にいた頃は金魚鉢のように狭い世界の中で生きてきましたが、インターネットでの出会いによって、世界は海のように広く多様な価値観にあふれていると気づくことができました。