複業会社員としてコミュニティ構築を支援する。コミュニティデザイナー、藤田 崇志

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第571回目となる今回は、藤田 崇志(ふじた たかし)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

普段は株式会社カオナビで働きながら、フリーランスとして「コミュニティデザイナー」を肩書きに、企業のコミュニティ構築のコンサルティングを行う藤田さん。過去に藤田さんが属してきたコミュニティやそこでの苦悩、現在のお仕事の内容についてお話していただきました。

複業家として、二足のわらじ生活を送る

ー簡単に自己紹介をお願いいたします。

会社員として働きながらフリーランスとしてコミュニティデザイナーをしています、藤田 崇志と申します。

会社員としては、株式会社カオナビにてユーザーコミュニティ(カオナビキャンパス)の運営を通してタレントマネジメントシステムを起点とした最適な人事制度の構築を支援する取り組みです。

コミュニティデザイナーとしては、自身のオンラインサロン運営を経験し、コミュニティについて発信するほか、サロンで培ったノウハウを活かして企業向けにコミュニティ構築のコンサルティングもしています。

ーコミュニティデザインを始めたタイミングはいつなのでしょう?

2021年4月です。そこまではコミュニティに入って学ぶことが多かったのですが、自分でもコミュニティでマネタイズするようになりました。最近は企業の案件をいただくことも増えましたね。

ー複業家としての二足のわらじ、大変ではないですか?

フリーランスは、仕事を自分でコントロールできることが強みです。できるだけ効率よく低稼働、高単価で価値発揮できるように仕組み化を心がけています。

陸上競技に魅了された学生時代

ー藤田さんの過去について教えてください。小学校4年生のとき、辛いできごとがあったそうですね。

11歳のとき、自分の家に居場所を感じない日々が続きました。

家庭環境があまりよくなく、家にいるのが辛いと感じたんです。それと同じ時期に、学校でいじめにあいました。家庭にも学校にも居場所がなかった時はとても辛かったですね。

いじめの改善は正直難しいと感じていたので、好きだった絵を描いたり、ゲームをしたりと他のことに夢中になっていました。あとはひたすら内省をしていましたね。いじめられるのは自分が悪いと思っていたので、自分のどこが悪いのか、どうしたらいいのか改善されるのかを考えていました

ーその後、中学校ではどのように過ごされたのでしょう?

スポーツが苦手でしたが、得意といえた陸上部に所属することにしました。走っている間は内省することが出来たので、その時間はなんとなく好きでした。

結果が出るにつれて陸上が大好きになり、大学までは本気でプロを目指していました。

ー大学で挫折してしまったのでしょうか?

大学でも陸上部を選んだのですが、入寮3日でケガをしてしまい……。高校まではケガをするのが当たり前だった中、大学では「ケガなんて考えられない」と監督陣に怒られました。

特にコーチがくせもので、気に入らない人を無視するような方だったんですね。

大学1、2年の頃はケガが多く、報告してもコーチに無視されることが多かったんです。結局、ケガの報告に行きたくないという理由で無理して走ったり、肉体的にも精神的にも辛い思いをしました。

厄介だったのがそういったコーチの態度が部員にも影響することで、当時寮生活だったのですがすれ違った際に先輩に挨拶しても無視されたりと、普段の生活が一番辛かったですね。

ーずっと続けてきた陸上をやめるのは辛かったですよね。

陸上は自分のアイデンティティでもあったので、もしやめてしまったら自分の価値そのものがなくなってしまうのではないかと3ヶ月くらい悩んでいました。

そんな中、大学2年の8月に部活の合宿に参加した時のことでした。

怪我で練習が出来ずに池の周りを歩いていたとき、突然プツンと糸が切れて「陸上競技を引退しよう」決意しました。この時の記憶は鮮明に覚えています。

やめてからは落ち込むよりも、むしろ失うものがなくて楽になりました。「意外となんとかなる」と気付いたのです。

また陸上を手放したことでこれから新しいことに取り組めると思うと、過去以上に前向きな気持ちになれましたね。

新たな挑戦、コミュニティとの出会い

ー陸上の次には、何を始めたのでしょうか?

塾講師のアルバイトを始めました。同じく塾講師として働く学生は学歴が高く優秀な人しかおらず、これまで自分がいた環境とは全く異なり衝撃を受けたことを覚えています。

この塾の特徴は教室全体にお互いの強みを尊重する文化があったことです。相手が年下であったり、学歴が下であったりしても、互いに認め合い尊重することが当たり前として機能していたのです。

そんなメンバーと過ごす中で、自分のありのままを認めてもらえた感じがしました。バイトに行くことがいつも楽しみであったことを覚えています。

ー藤田さんも大学時代、ご自身でコミュニティを作ったと伺いました。

21歳のとき、47の体育会系の部活をマネジメントする体育会本部という自治会に入りました。当時の体育会の部活は横の繋がりが希薄で、互いに嫌悪感を持っている現状でした。

その課題を解決するべく、集大成として全体体育会系部活の1回生200人を集めた1泊2日のキャンプを企画しました。合宿のために多様性を活かしあう設計を意識したイベントを企画して、中でも部活混合リレーが特に盛り上がりましたね。

盛り上がる様子を見て、決して嫌悪感を抱いているわけではなくお互いを知らないから繋がっていないだけだと感じました。この経験からたとえ文化が違ったとしても、同じ目標を持って物事に取り組めば、繋がりあうことができるのではないかと確信しました。

ーコミュニティから学びがあったんですね。大学生活も後半に差し掛かる中、就職活動中は、将来何をやりたいと考えていましたか?

塾講師や教育の大手企業を候補に考えていましたが、当時の自分はあまりにも知識も経験も乏しく生徒に教えられることがないと感じました。

それよりも自分の強みを見つけ、磨くことに集中したいと思っていました。そんな塾講師をしていた職場のことを思い出しました。

教育実習時は紙を使って授業をすることに面倒を感じていましたが、その点塾はデジタル化が進んでおり便利だったのです。この経験からデジタルにより生み出す価値は大きいと感じ、IT企業に行ってデジタルのことをもっと学んでみたいと思うようになりました。

今後もコミュニティを通じて、人と人を繋いでいく

ー現在複業されているとのことですが、コミュニティデザイナーとしてのお仕事を詳しく教えてください。

以前運営していたオンラインサロンでは、「自分軸で価値提供を目指す人」を後押しするべく、イベントなどのコンテンツを提供していました。

また、創業3年〜10年の企業向けにコミュニティのコンサルティングも行なっています。マネジメント軸やマーケティング軸の2観点からコミュニティを活用したい企業に対して役員層と細かくやりとりし、並走しながら事業を推進しています。

マネジメントの観点では、近年導入が進んでいるリモートワーク下でも社員が仕事を自分ごととして仕事に取り組めるような制度をつくったり、マーケティングの観点ではユーザー同士の双方向コミュニケーションを起点としたファン育成という部分で、コミュニティは有効だと考えています。

ー藤田さんにとって良質なコミュニティとは、どんなものでしょう?

コミュニティには大きく情緒的価値、機能的価値、居場所的価値の3つの価値が大切だと考えています。
情緒的価値を言い換えると「おもろい」「なんか好き」などがキーワードになります。

表面と奥行きの2つが大切で、デザインなどの視覚的な部分も大切ですが、持続性を高めるためにはずっと居続けたいと思える文化や世界観をつくることが必要になります。

機能的価値はコンテンツ、プラットフォーム、メンバーの3つが大切です。

コンテンツは「行って良かった」と思えるイベントやメディア、プラットフォームはslackのチャンネル運用のわかりやすさ、メンバーは「また話をしたい」と思えるメンバーと出会えるか、が鍵になります。時間を割いて参加いただいているからこそ、それなりの価値を提供することはプロとして意識しておきたい部分になります。

居場所的価値は存在肯定と役割実感の2つが大切です。

大前提としてコミュニティに必要なのはメンバーにとって「自分はここにいていいんだ」と心理的安全性を感じてもらうことにあります。

ありのままの自分が受容され、ありのままの自分が担える役割を演じることで他者や社会に貢献していると実感できることで、自信を持ってを少しずつ前に進めるようになります。

ーそれでは最後に、藤田さんの今後の展望を教えてください。

中期的な展望としては、企業向けのコンサルティングをもっと大きくしていきたいですね。現在のお客様は比較的創業したての会社が多いので、今後は100名を超える大企業のコンサルティングに挑戦したいと考えています。

また、評価制度や人事戦略なども含めてコミュニティを飛び越えて組織領域の知見も深めていきたいと考えています。

より長期的な展望を述べると、日本中に「おもろい」コミュニティが至るところに存在する世界を作りたいですね。その一歩としてコミュニティの哲学的価値を布教し、全ての企業にコミュニティマネージャーが1人いる世界をつくることを目標にしていきたいです。

また街づくりにも興味があるので、死ぬまでに一度は自分だけのまちをつくってみたいなと思ったりもしています。

ーありがとうございました!藤田 崇志さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:増田稜(Twitter
執筆:ひの
デザイン:高橋りえ(Twitter