様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第558回目となる今回は、小説家・村田アンドリューさんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
「誰もが、自分の人生という物語の主人公である」と語る村田アンドリューさん。現在、詩や物語を執筆する仕事の傍ら、人の人生を小説として書き起こす活動を行っています。
小説家として働き始めるまでの経緯や、人の人生を小説にしようと思ったきっかけ、執筆する際に意識していることについて教えていただきました。
幸せに生きるために学歴は必要ない。自分の感覚を信じて大学中退を決意
ーまず簡単に自己紹介をお願いします。
小説家の村田アンドリューです。現在は「さまざまな人の人生を小説にする仕事」をメインに行っています。
ー人の人生を小説にする仕事というのは、とても興味深いお話ですね!具体的に教えていただけますか?
はじめに、執筆依頼をしてくれた方と2時間ほどお話をしながら「どんな小説にしたいか」リクエストを伺います。
小説の内容は、依頼人の人生をもとに執筆することもあれば「話を聞いて、村田さんの頭に浮かんだ物語を自由に書いてほしい」と依頼されることも。小説が出来上がったあとは、少人数で集まって朗読会を開催しています。
仕事についての詳細は、下記のリンクをご覧ください。
>>村田アンドリューさんのお仕事の詳細はこちら
ーでは、村田さんが小説家になるきっかけについて伺っていこうと思います。ターニングポイントは、大学生のころだったそうですね?
はい。当時は漠然と教育について学びたいと思っていたので、家の近くにあった名古屋大学に入学しました。でも1年生の前期で休学届を提出しました。
ーなぜ休学しようと思ったのでしょうか?
入学してすぐに「この大学で4年間を過ごすのは、今自分が求めていることではない」と感じたからです。僕にとって名古屋は、東京に比べて何かを体験するにしても選択肢が限られている街だと思っていたので。
ーかなり思い切った決断だと思いますが、当時はどのような気持ちだったか覚えていますか?
休学している間に、東京の企業でアルバイトとして働かせていただいたり、さまざまな生き方をしている人々に出会ったりする機会がありました。そのような経験があったからか「大学を卒業する」「新卒で企業に入る」という選択をしなくても、自分は幸せに生きていけるのではないかと感覚としてあったんです。なので、それほど葛藤することはなく大学3年生の夏に潔く辞めました(笑)。
「こんな小説が書きたい!」と、2ヵ月間バックパックで世界を旅する
ー突然「小説を書こう」と思い立ったのは、何か前触れのようなものがあったからですか?
そうですね。以前は社会起業やコーチングに興味を持っていると思っていたのですが、次第に「自分はアートや芸術に関心を持っているんだ」と気づき始めて。もともと本を読むのが好きだったのもあり「小説を書いてみよう」と決断しました。
ーさまざまな経験があったからこそ、ご自身の感覚が宿ったんですね。大学中退後はどのように過ごされたのでしょうか?
ある日、散歩をしていたときに「主人公がバックパッカーとして世界を旅するなかで、自分自身と向き合う小説を書こう」と思い立ちました。また、せっかく執筆するならばリアリティを求めたかったので、主人公と同じルートを旅することにしたのです。
ーまさに村田さんの人生が小説のようです!2ヵ月の間にどのような国に行ったのですか?
まず中国に入りインド、パキスタン、イラン、トルコ。トルコからギリシャまでは、ヒッチハイクで国境を越えました。自分が執筆した物語だとエジプトまで辿り着くのですが、現実は資金が尽きてしまって……(笑)。泣く泣く日本に帰国しました。
ー実際に旅をしている間もいろいろな思いを書き留めたり、浮かんできたことを書き留めたりしていたのでしょうか?
バスでの移動時間が長かったので、その合間はノートに文章を書き留めていました。それ以外の時間は、せっかくの海外だったので、現地の人々がどのような生活をしているのか自分の目で確認しながら旅をしていましたね。
人の話を聞くのが好きな特性を生かし、人の人生の物語を書き始める
ー人の人生を小説にしてみようと思った経緯を伺えますか。
「小説家で食べていけるようになりたい」という夢があったものの、本格的に小説を書き始めたのは20歳のころ。しかも大学を中退した後だったため、しばらくは自分の作品を書かなければならないという気持ちと、新人賞の長編小説を執筆するのに必死でした。
それから3年経ち、執筆活動が落ち着いたタイミングがあったので、何か新しいことを始めたいと思いました。僕はコーチングの経験もあったので「話を聴くこと」と「その人のために小説を書くこと」、この2つを融合させたら面白いかもと思ったのがきっかけです。
ー2つの融合は村田さんだからこそできる仕事ですね……!最初に執筆した小説はどのような依頼だったのか教えてください。
Facebookに「あなたの人生の小説を書きます」という投稿をしたのがはじまりです。
とはいえ初めての試みだったので、まずは高校時代の後輩の物語を執筆させてもらいました。しばらく書いているうちに、自分の中で「このまま続けていけそう」という手ごたえを掴んでいきましたね。
ー何をもって手ごたえを得たのでしょうか?
筆が止まるっていう経験が一度もなかったのと、何よりも相手が喜んでくれたのが一番大きかったと思います。
ー村田さんの才能がまさに発揮された瞬間ですね!これまでの依頼はどのような理由が多かったのでしょうか?
「人生の記録として残しておきたい」という方もいれば、職務経歴書のような定型文ではなく、その人自身の血の通った物語を1つのプロフィールとして使用したい方などさまざまです。
また何かしら前に進むきっかけ、自分の中でこりたまっている感情を何かしらの「カタチ」にしたいと思い、依頼してくださる方が多い印象です。その方がこれから大切にしていきたいであろう物語を、お守りとしてお渡ししています。
ー心強いお守りです。村田さんがその方の人生を物語にする際に意識していることがあれば教えてください。
基本的には感覚でやっています。言語化したりルールを設けてしまったりすると、何かに囚われてしまう気がして……。もともと僕自身、抵抗を感じるものがあまりないんです。
人生において、さまざまなことが起きるのは当たり前で、たとえその方が話しにくいことだったとしても、それに対して僕は何も否定しないし、発言しません。ありのままに書ければと思っています。
とはいえ形に残るものですから、依頼者の修正点には一番気を配るようにしています。
全てを想像するより、予想できない未来を楽しみたい
ー人の人生について小説を書いていくうちに、繋がりが広がっていったそうですね。
はい。人の人生について小説を書き始めたころ、ちょうどコロナが流行り始めて。一旦、名古屋にある実家で過ごしていましたが、オンラインでお話を聞いて執筆するのは孤独な作業でしたね(笑)。
ただ単に小説を書いていることに違和感を抱き、以前から「もっと人と繋がりたい」という思いもあったので、コロナが落ち着いたタイミングを見計らって東京に引っ越すことを決めました。
そんなときに今住んでいる「コアキナイハウス」が生まれると知って、オーナーとZOOMした1週間後には住むことを決めていました。
ーコアキナイハウスとはどのようなシェアハウスなのでしょうか?
ソーシャルバー「PORTO」というバーがシェアハウスと同じビルにあって、僕も月一で店長をしています。
それに加えて「コアキナイハウス」は、好きなことを少しずつ仕事として育んでいきたいと思っている人の背中を押してくれるコンセプトだったので、僕の意向とも合致しました。
また「これからみんなで築き上げていく」という段階だったので、きっと繋がりが生まれるだろうし、求めているものがあるなと将来性を感じるシェアハウスでした。
ーなるほど。当時ご自身の中では何が決め手だったのでしょうか。
仕組みや環境自体が面白いと思ったし、何より実際に遊びに来たときに出会ったメンバーの温かさや「この人たちのそばにいたい」という直感が一番の決め手でした。
ーこれからの出会いが楽しみですね。では最後に、今後の展望を教えていただけますか?
「新人賞に通過して、本を出版して作家としてデビューする」という夢を叶えたいとは思いつつ、同時に手放して生きていきたいです。
ー手放したいというのはどういう意味でしょう?
僕自身、小説を書き始めたころは常に「結果を出さねば」と考えていました。でも考えれば考えるほど、生きづらくなっていったのです。その原因になっていたのは「何者かにならなくては」「築き上げたものを無駄にしたくない」といった不安や恐れなのだとわかりました。
今は、自分が描いた目標通りにいかないと幸せになれないとは思いません。目標や指標は決めつつその通りにならなくても、ほかの幸せを作っていけるというスタンスです。
現在の仕事をしていくなかで、活動を続けていけたならばそれが「運命」だと思いますし、「何か依頼が減ってきて続かない」と感じたら、違う方向に進むべきというお告げかなと。
仕事を続けながら、その都度舞い込んでくる流れに従っていきたいです。全てを想像するよりかは、予想できない未来を楽しみたいと思っています。
そんな想いもあり、2022年の春から一年ほどアメリカを旅することにしました。「みんなで旅をするエンターテインメント」と称して、SNSでのファンディングに挑戦しています!
ファンディングの詳細はこちらです。ご興味ある方はぜひご覧ください。
ーありがとうございました!村田さんのお話を聞いて、改めて自分のやりたいことを貫く大切さを実感しました。村田さんの今後のご活躍を応援しております!