esportsを身近に!現役大学生の中村俊輔が伝えるesportsの魅力とは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第613回目となる今回は、esportsコーチ・中村俊輔さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

現役大学生でありながら、esportsコーチとしてesportsの魅力を広めている中村さん。そんな中村さんが思い描くesportsの未来についてお聞きしました。

esportsに出会った高校生時代

ー自己紹介をお願いします。

千葉工業大学の中村俊輔と申します。大学に通いながら、高校でesportsのコーチをしています。

ー中村さんは中学生のとき、どのようなことをされていましたか?

ぼくが通っていたのは、1人1台パソコンを持つ中学校でした。パソコンでアニメのPVを初めて見て以降、暇さえあればアニメばかり見ていましたね(笑)。

あとは、ホームページを作るコンテストがあったので、興味のある友達で集まって参加していました。ものづくりが好きだったこともあり、ホームページ作成は自分の思い描いた物を作れたのでとても楽しかったです。

ー高校生のときにesportsに出会ったとのことですが、どのようなきっかけで出会ったのでしょうか?

友達の家に泊まったとき、偶然esportsで使われているゲームを見つけたのがきっかけです。それから1年して全国高校esports選手権の第1回大会が開催決定となって、友達を何人か誘って大会に向けて練習しました。

ー大会に出場したことは、中村さんやみなさんにとってesportsに力を入れるひとつのモチベーションになりましたか?

大会に出場したことで、ゲームに対しての意識が「みんなでワイワイするもの」から「競技をするもの」に変わりました。みんなと夜に集まって「どうすれば勝てるのだろう?」と考えていましたね(笑)。

ーみなさんが没頭できた理由は何かありますか?

一つの目標のために何をやるかを考えたり、夜中にみんなで集まって練習しようとしたりすることがなかったから、新鮮な感覚だったのかなと思います。

今までは、ゲームで何かの目標に向かって頑張ろうという経験はありませんでした。

また、大会はライブ配信されるので、「優勝したいな」という気持ちがみんなの中にあったのだと思います(笑)。

ー大会に向けての準備はどのようなことをしましたか?

ぼくが参加した競技は5人で1チームでした。高校でesportsに興味がある人を募集したら、ちょうど10人集められたので、AチームBチームの2つに分けて練習していました。練習を見返して課題点や反省点などを言い合ってましたね。

自分たちより強い人に聞きに行ってアドバイスをもらったり、YouTubeの解説を見たりもしてました。

ー参加された大会の結果はどうでしたか。

何回か大会に出た中で1番良かったのが高校生最後に出た大会です。全国ベスト8でした。大会に出て「全国の壁は厚くて、優勝は厳しいな」と感じましたね。

ー優勝したチームとの違いはどんなところでしたか?

元プロ選手の強いコーチがいるかいないかですね。ぼくたちは身内で集まって練習するぐらいだったので、教えてくれる人がいなかったことが最終的に勝敗を分けたと思います。何がいけないかわからないところでつまずいてしまうので、教えてくれる人がいると成長速度も変わってくると思います。

ー今通っている大学を選んだ基準はありますか?

家から近かったことと、勉強が嫌いだったこともあり、推薦で行ける大学に行きたかったのです(笑)

学科が人工知能とデザインと音楽という幅広いことが学べるのも大きかったですね。「自分がやってきたこととマッチしているな」と思って。

あることがきっかけでesportsコーチの道へ

ー大学ではどのような転機がありましたか?

大学1年生のときInstagramを眺めていたら、「イベントに参加しませんか?」と広告が出てきたのです。暇だったのでイベントに参加すると、そこで出会った人から起業の話を聞きました。そのときに「自分のやりたいことが叶えられる方法」を知って自分から行動するようになりましたね。

ーその出会いがきっかけで新しく始めたことはありましたか?

esportsの大会の企画と運営をやり始めたことです。ある日、大学でesportsサークルに入ってるご縁でesports全国大会常連校の顧問の方から「うちでアルバイトしてみないか?」とお声がかかりました。

初心者の高校生たちにesportsを教えていたのですが、彼らがいざ大会に出ると1回戦目で強いチームにボコボコにされてしまったのです。

他にも、大会に出場している半分以上のチームがボコボコにされたり、そもそも大会に出場する条件を満たしていなくて棄権したりといった高校生大会の現状があって。それをコーチ目線でみた時に、「せっかくesportsに興味を持ってくれている人たちを楽しませてあげられていないな」と思いました。

ー強いチームと弱いチームでは、あまりにも格差があるのですね?

そうですね。コーチのいるチームといないチームでは圧倒的な格差がありますね。毎年優勝するチームが決まっているのは見る側としても面白くないし、優勝する側もモチベーションが保てないから全体として見たときにあまり良い大会ではないなと。

esportsを盛り上げるための土台を作るために、さまざまな大会を企画するようになりました。

ーはじめて大会を企画したときに「良かったな」と思った点と「難しいな」と思ったのはどんな点でしょうか?

50人ほどアンケートを取ったのですが、全部の回答に「めちゃくちゃ楽しかった」「また参加したい」など喜びのコメントがあったことがよかった点ですね。

難しかったのは、資金のやりくりです。経費はなるべく削り、やっとの思いで開催できました。正直、資金面は今でも悩んでいます(笑)。

ー実際に大会を開催したから体感したわけですよね。

今までイベントの企画をしたことがなかったので、何もかも知らない状態で開催しました。そんなときに、大会に関することを教えてくれる方や資金面で協力してくれる方がいらっしゃったので、みなさんのおかげで開催できたと思っています。

ー今までで第5回大会まで開催し終えているのですよね?

そうです。これからは別のタイトルで大会を開催していきたいと思っていますし、高校生以外のesportsを知らない方が気軽に参加できる大会を開催したいと考えています。

ー1回目より5回目のほうがグレードアップして内容や参加チーム数も変わってきているのでしょうか?

そうですね。徐々に参加チーム数が増えてきて、最初やらなかったライブ配信を第2回から家で配信し始めました。第4回からはスタッフみんなでスタジオに集まって配信するようになりましたね。それに伴って機材などもグレードアップしていきました。

理想の未来に向けて

ー最近は、コーチとしても活躍されているとのことですが、esportsの大会に出場するチームに対してコーチをされてらっしゃるのですか?

いえ、ぼくの場合は高校で開かれるesportsの授業の講師兼コーチをやっています。その高校ではesportsの授業は1日2コマぐらいあるんですよ(笑)。

だんだんとesportsの授業を取り入れている高校が増えてきているなという印象ですね。

ー授業をする上で大事にしていることは何でしょうか?

授業で大事にしていることは「esportsを楽しむこと」です。それと同時にコミュニケーション力や問題解決能力をつけてもらえると思います。ぼく自身がesportsを通してトライアンドエラーを繰り返し、成長したと思っているので。楽しみながらも成長に繋げてほしいと思っています。

ー授業をするときに高校生はどのようなリアクションをされますか?

「高校でゲームやれるんだ!」と軽いノリの子が多いですね(笑)。

最初はみんなお通夜状態で誰もコミュニケーションを取らなかったんですけど、今は夜に集まって練習をしているようで、授業も楽しくできていますね。

ーみんなが最初と比べて変わっていったのは何が理由だと思いますか?

それが大会だと思います。「ルールを覚えて優勝したい!」とひとつの目標ができたことで、みんなが同じ方向を向いたからだと思いますね。

ー今までesportsの大会を見てきたなかで、「こんな人が強く」なるという特徴はありますか?

それは他のスポーツと共通していて、「負けず嫌いな人」「ひたすら練習できる忍耐力がある人」だと思います。

ただ一点違うところがあって、esportsの世界にはスポーツマンシップが存在しないんですよ。ネットの世界なので、観戦者が匿名でどんなことでも言ってきますね(笑)。

それに耐える強靭なメンタルが他のどのスポーツよりも必要だと思います。

esportsは今でこそ名前だけは知ってるぐらいには知名度が上がってきたのですが「どうせ遊びでしょ」や「所詮ゲーム」などと言われることはまだまだあります。

ー中村さんのこれからの展望を教えてください。

最終的なゴールはみんなが「esportsは楽しい!」と言ってくれる世界ですね。esportsの分野で起業する人は、世界で1番になること目標として起業していると思いますが、ぼくはesportsが草野球のような気軽に楽しめる存在になると良いなと思っています。もっとたくさんの人にesportsを知ってほしいですね。

ー最後に、参考事例が少ないことや明確な答えがないことに取り組むときに大事にされていることや、原動力となるものはどんなものがありますか?

原動力になっているのは大会を支えてくれる人や、参加者の「楽しかった!」といった声だと思いますね。自分1人だと何もできませんし、喜んでくれる人がいるからこそ大会を開催したいと思うので、人が大事だなと思います。

ーありがとうございました!esportsが世界に浸透していく様子を見るのが楽しみですね!

中村さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:山崎貴大(Twitter
執筆:松村彪吾(Twitter
編集:本庄遥(Twitter
デザイン:安田遥(Twitter