日本文化の発信方法を追究するVR神主・富澤明久のKOREWOKINIでの挑戦

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第374回は一般社団法人KOREWOKINIでReligion Now 事業責任者・VR神主としてご活躍中の富澤明久(とみざわ・はるひさ)さんです。富澤さんが宗教に興味を持つようになったきっかけや一般社団法人KOREWOKINIに関わることになったきっかけについてお伺いしました。

また、ユニークキャリアラウンジ第365回では一般社団法人KOREWOKINIでコレキャン事業責任者としてご活躍中の中村光さんにもインタビューさせていただきました!こちらもあわせてぜひご確認ください。

 

Religion Now事業責任者、VR神主としてKOREWOKINIで活動

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

一般社団法人KOREWOKINIVR神主として活動しています、富澤明久です。大学時代に神主の資格を取得し、現在は東京都内の神社に住みながら一般社団法人KOREWOKINIの活動を行っています。

ー一般社団法人KOREWOKINIについてもう少し詳しく教えてください。

一般社団法人KOREWOKINIは内閣府青年国際交流事業のOBOGで立ち上げた団体になります。昨年の6月に一般社団法人となりました。

大学生・若手社会人を対象としたミートアップやキャンプイベント、日本文化体験イベント等、個人の学びや気づきを深めるワークショップ・イベントを通して、参加する人の次の一歩を応援するような取り組みを行っています。また、どんな人生のフェーズにおいても居場所を見つけられるようなコミュニティとして存在しています。

その中で私はReligion Nowの事業責任者として日本文化や宗教の体験事業の企画を担当しており、その中の企画として、今年の1月にはVR神社企画を行いました!

ーReligion Now事業とはどのような取り組みですか。

この事業は、日本の宗教を学んで理解を深め、自分のルーツである宗教を說明できるようにすることを目的として始めました。主に体験、比較、ディスカッション等を通して、宗教について理解するコンテンツを提供しています。

これまでイスラム教のモスクと神道の神社へ行き、祈りや食について考えたり、お寺で座禅した後、神社でご祈祷を受けることで神道と仏教の違いを学ぶイベントを行ってきました。国際交流事業で宗教について語れなかった人が自国の文化を語れるようになるきっかけとなったり、宗教者側の発信方法を学ぶことができるので私自身もやりがいを感じています。

ーVR神社とはどのようなイベントだったのでしょうか。

コロナにより、例年のように神社での年越しが難しいということで企画したオンラインの初詣ツアーになります。VR事業を行うラストマイルワークス株式会社とご縁があり、実現しました。スマートフォンやPCを使い、VR空間でコミュニケーションを取ることができるcomonyというプラットフォームを活用し、神主と交流していただいたり、神社について知っていただいたり、初詣の代わりとして皆さんに楽しんでいただきました。

また、このイベントに関するnote「年中行事を当たり前に楽しむために。VRイベント「まつり神社 おうち時間で初詣」をcomonyで開催しました」はリクルート主催のコンテスト#いま私にできることで賞も受賞しました!VR神社をきっかけにまた新しいご縁が生まれてとても嬉しいです。

 

水泳中心の中高生活から海外・宗教に目を向けた大学生活

ー現在に至るまでのお話もお聞きできればと思います。どのような幼少期を過ごされていましたか。

幼少期から大学までずっと水泳をやっていました。体を動かすのは好きで、今も休みの日は草野球をしたり、たまに泳いだりしています。高校時代、水泳で最もベストな形で試合に挑むにあたって、ルーティンを確立させ、試合何分前にどういった行動をする等とデータ収集を徹底的に行って体だけではなく頭を使いながら自己管理を行っていましたね。大会での真剣勝負の経験からメンタルは鍛えられたなと思います。

また、大学の水泳部に所属し、水泳部史上初めてのリーグ昇格を経験することができました。水泳は個人スポーツですが、結果としてリーグ昇格に貢献できたことは自分の自信にもつながりました。

ー水泳漬けの日々を送っていたようですが、将来についてはどのように考えられ、どのような大学進路を選択されていたのでしょうか。

高校3年の時は特に学びたいと思う学問がなかったため、あえて浪人する道を選びました。浪人期間中に祖父のご縁があり、岡山県にある黒住教の神道山に行く機会をいただき、そこで神道を学ぶことができたんです。もともと正月に神社でお手伝いしていたのでなんとなく神社や神話については知っていましたが、しっかり学べば学ぶほど面白いと思えてきました。また、御神幸(ごしんこう)というお祭りなどに参加して改めて信仰の力について興味が湧いてきたのです。神道山での経験をきっかけにさらに神道の学びを深められる大学へ進学を決意しました。 

ー浪人すると決めること自体には抵抗や不安などはありませんでしたか。

浪人するきっかけのエピソードがありまして、高校3年の時に通っていた塾で進学先をどうするか迷っていたときに小学2年生の女の子と話す機会があったんです。その子から「粘土は1に1を足しても1にしかならないやん」と言われ、学びたい学問が自分の中で決まっていないまま進学してもただ遊ぶだけの大学生活で終わってしまうと感じてしまいました。大学に進学するからには、1+1が10以上になるような選択肢を選びたいなと思い、浪人しようと決意しました。迷いや不安は有りませんでした。

ー浪人生活を経て進学された大学ではどのように過ごされていたのか教えてください。

大学に入学してから内閣府が行う「日本・韓国青年親善交流事業」で韓国に行きました。海外にはほとんど行ったことがそれまでなかったこともあり、大学生活の中で特に印象に残った出来事です。

現地の同世代の韓国の方々へで大学で宗教について勉強している話をすると、思いの外興味を持っていただき、神社や日本文化なども含めた宗教の話をしました。高校までは特別に感じたことはなかったのですが、プログラム中は日本人参加者からも「お寺と神社の違いを教えて欲しい!」などと言われたことから、自分にとって当たり前だったことを知らない人が意外に多いことに気づきました。

このプログラムをきっかけに海外に関心を持つようになった他、日本文化や宗教を発信するということが自分にとっての武器になるのかもしれないと思うようになりました。

ー宗教について活動を行うきっかけとなったんですね。

そうですね。宗教について自分が知っていることを伝えることで喜んでくれる人がいたという経験が自分自身も宗教について学びを深め、発信する原動力になっていると思います。

宗教への関心も直近では高まっているなと感じています。國學院大學の日本文化研究所が定期的に出している実態調査で、2015年2月に行われた調査では信仰ありと答えた人が10%前後、信仰はないけれど興味はあると答えた人が30%くらいだったようなのですが、直近では信仰はなくても興味がある人が50%にまで上がっているというデータも出ているんです。海外の方と接する機会が今まで以上に増えてきていることも影響しているかと思いますが、参考の一つとしては面白いデータだと思います。

 

縁を繋いで、宗教体験を提供し続ける

ー大学卒業後はさらに大学院にも進学されていますが…

はい。宗教学について研究するため大学院に進学しました。指導教授の石井研士先生には、学部時代、国際交流事業の参加に当たり背中を押してもらえた存在でもあり、研究含め大変お世話になりました。

大学院在学中は石井先生の紹介で、日本文化体験のワークショップを主催したり、プログラムを提供している一般社団法人心游舎学生向けに新潟で米作りワークショップの立ち上げに関わらせて頂きました。

田植え、草取りから最後は神社へお米を奉納することで米作りを本質を理解することができましたし、多くの農家さんからお話を聞くことで得られた知識や学生と一緒に作業することで学びや思い出も多くできました。ただ聞いたり、調べて学んだりするのではなく、実際に当事者の方からお話を聞き、体験することでより身近に感じることができるのはこの活動を通して得た学びです。本当に様々なフェーズで人の御縁に恵まれている人生だなと感じています。

ー大学・大学院在籍中で得た学びや気づきなどが他にもあれば教えていただけますか。

在学中に宮城県にある東日本大震災の慰霊碑の前で追悼や鎮魂や復興を祈願した行事に参加する機会があったのですが、その場には仏教からカトリック、プロテスタント、神道、イスラム等たくさんの宗教、宗派の方が100名以上集まって、それぞれの儀礼で追悼していたのです。私は黒住教で参加していましたが、他の宗教宗派の様子を見ていると、それぞれ作法が全く違っていて、教義や神様の違いを比較して見ていると宗教を比較して考えることは勉強になると思いました。実際、修士論文も宗教施設ごとの取り組みを比較したものとなったのですが、比較して学ぶという点はそのときに参加していなければ気づけなかったと思います。

ー宗教に詳しくないというU-29世代も多いかと思いますが、そんな同世代へのメッセージがあればぜひお願いします!

なんとなく日頃からやっていることに疑問を持って、調べてみて欲しいです。神社に初詣に行くことなど、日々なんとなくやっていることが宗教と密接に関係しているんですよね。私自身は宗教に詳しくなくても気軽に参加していただけて、宗教を身近に感じていただけるようなイベントを通してそんな方達が宗教について考える時間を提供し、一緒に考えるサポートができたらと思っています。

KOREWOKINIのReligion Now事業では引き続き縁を繋いで、たくさんの宗教体験を提供していこうと思っているので興味を持っていただけた方はぜひご参加お待ちしています!また、他にもKOREWOKINIでは多種多様な事業を行っていますので、HPをチェックしてみてください!

インタビュー:新井麻希(Facebook
執筆者:松本佳恋(ブログ/Twitter
デザイナー:五十嵐 有沙 (Twitter