野球少年が香りのスペシャリストになるまで。ケンティー香水学校・ケンティー

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第318回目はフレグランスセールススペシャリストとして活動されているケンティーさんです。「自分に合う香りを見つける場所」をテーマに主に香水に関する情報を発信中のケンティーさんに現在に至るまでの経緯と、香水を選ぶに当たって大切なことを教えていただきました。

15年間続けた野球生活

ーまずは簡単な自己紹介をお願いいたします。

「自分に合う香りを見つける場所」テーマに、ブログInstagramTikTokYouTubeなどのSNSを活用して発信しています、ケンティーです。また、企業からご依頼いただきSNSの運用をさせていただいたり、香りに関する商品企画開発にも関わらせていただいています。

ーまずは過去に遡って現在に至るまでのお話をお伺いできればと思います。幼少期から「香り」というものには興味をお持ちだったのでしょうか。

母の香水や化粧品が置かれたドレッサーには小さい頃から興味を持っていたかと思います。また、エレベーターの匂いやチラシの匂い、体育館の倉庫の匂いなど、よく考えたら小さい頃からの匂いの記憶が残っているので、匂いに敏感だった方かもしれないですね。エレベーターの匂いとか、結構好きでした(笑)

ー匂い以外で幼少期〜高校生活で今に繋がる出来事などはありますか。

野球好きの父の影響で小学生の頃から始めた野球でしょうか。高校は野球の強豪校に進学したので練習についていくのが大変でしたが、日本一を目標に努めていました。中高時代での野球生活は自分にとって必要な経験だったと思います。

それまで、大口を叩きがちでよく口だけで行動が伴っていないと言われていたのですが、野球部のコーチが愛を持って怒ってくれ、指導してくれたことで少しずつ人から信頼を得られるような行動や言動ができるようになりました。プライドが高く人の意見を聞く余裕がなかったのが、野球生活を通して改善されたと思います。

ー大学でも野球は続けられていたのですか。

大学では野球部にマネージャーとして関わっていました。高校野球では最後の一歩というところで試合に負けてしまい、応援してくださった方々の期待に答えることができなかったので引き続き野球は続けたいと思っていたのですが、人としてもっと成長したいと思ったことからマネージャーを選びました。

野球中心で進路についてもずっと考えていたので学部選びは特に深く考えず経済学部を選んだのですが、マネージャーとして雑用などをしている中でふと、これから先果たして生きていけるのかと思うことがありました。何もできないことに対する危機感を初めて覚え、生きていくためには野球以外もしなければいけないと思ったことがきっかけでたくさんの本を読むようになりました。

人のために何かできた喜びから香りの道へ

ー香りを追求するきっかけとなったのも大学での時のことですか。

おしゃれでかっこいい先輩がいたのですが、その先輩がとても良い匂いをしていたことがきっかけで香水に目を向けるようになりました。その後、友達に香水の相談をされたので自分なりに考えておすすめを伝えてみたところとても喜んでくれて…人のために何かできたのが嬉しくて、その時をきっかけに香りを追求するようになりました。そして1対1でおすすめの香水などを伝えるのには時間に限界があるので、SNSでも香りに関する発信を始めることに。初めは自分が好きな香りをただ発信していましたが、フォローしてくださっている方に向けた発信へと発信方法も工夫して行うようになりました。

ー卒業後の進路についてはどのように考えられていたのでしょうか。

最初は大手企業に就職しようと思い就職活動をした結果、内定もいただいていたのですが、やっぱりやりたいことをやりたいと思い、内定を辞退。香水に関わる仕事をするため、ご縁があって出会えたスタートアップの会社にアルバイトとして入社しました。自分の強みでもあったSNSの仕事を担当させていただき、SNS運用スキルを磨かせていただいたり、スタートアップの現状や課題を知ることができた他、仕事において全体像を理解する力を身に付けさせていただきました。

同時に、この期間に香りに関する知識を深め、フレグランスセールススペシャリストという資格も取得しました。

ーそしてケンティー香水学校を設立することになるのですね!

そうです。いろいろと試行錯誤しながら発信活動を行う中で、香水が敷居高く感じている方が予想以上に多いこと、カタカナが多いや説明が長いなどといったことが理由でどの香水を選んで良いかわからないという方がたくさんいることが分かりました。自分ができることは、できるだけシンプルにわかりやすく香水について発信することだと改めて実感し、良い香りを人をつなげる活動をもっとやっていこうと思いました。

良い香りと人をつなげていく

ー確かに香水の選び方って難しいなと思います。香水の選び方のアドバイスをいただけませんか。

香水を選ぶときは自分の直感を信じてみてほしいなと思います。そして好きかもと思った香りをとりあえず買ってみること。それが初めの第一歩かなと思います。

一方で、買う目的をしっかり分析した上で香りを選ぶという方法もあります。その場合はなぜ香水をつけるのか、どんな場所につけていきたいのかなどといった目的を明確化することが必要です。例えば会社につけていく香水を探しているのであれば、カジュアルな雰囲気のある会社なのかどうかによって提案できる香水も変わりますし、満員電車で通勤しているのであれば匂いがきつすぎると周りの目が気になってしまうので、つけるタイミングも変わってきます。大事なのはどんな目的で、どんな場面でどの時間帯に香水をつけたいのかとシーンを確認すること。そうすることで適切な香水を選ぶことができます。

ーなるほど…具体的なイメージを持った上で香水は探した方がいいんですね!最後に今後の展望などがあれば教えてください。

幸いにもTikTokが発信媒体としてうまくマッチして、今たくさんの方にフォローいただいています。これを活かして香水がもっと身近なものとなるように良い香水をもっと広めていけたらと思っています。直近では実際に香水を作られている方とお会いする機会をいただくことが増えたので、製作者の声をしっかりと届けることを意識しています。製作者と利用者の間に立つ者として正しい情報と正しい思いを伝えることを大切に活動していきたいです。

一時期はSNSでの発信においても、形にとらわれてしまったり、数字を意識しすぎてしまったりして本当に伝えたかったことを伝えられていなかったり、価値観の押しつけになってしまいっていたこともありました。今は焦らず、長い目で、少しでも多くの人に香りと接点を持つ機会を提供できたらなと思っています。

執筆者:松本佳恋(ブログ/Twitter
インタビュー:山崎貴大(Twitter
デザイン:五十嵐有沙(Twitter