すべての労働の自動化を目指して。PLAY株式会社・与田明が挑戦を続ける理由

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第260回目となる今回は、PLAY株式会社代表取締役の与田明さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

「すべての労働を自動化し、誰もが『好きを仕事』にできる世界へ」をビジョンに掲げ、PLAY株式会社を創業した与田さん。学生時代から起業後まで、数々の苦難を乗り越え、常に新しいチャレンジをする与田さんのビジョンにかける想いについて語っていただきました。

「普通じゃない存在になりたい」プロ野球選手を目指して野球漬けの日々

▲プロ野球選手を目指して練習に励んだ学生時代

ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。

PLAY株式会社・代表取締役の与田と申します。元々はRPA(※)の導入支援など企業向けの業務改革を中心事業として行なっていました。

直近1年は、業務自動化の前段階にあたる業務可視化が自動化を進めるカギだと考え、という、業務可視化を簡単にするためのソフトウェア『Arkプロセスマイニング』の開発、事業開発を行なっています。

※RPA…Robotic Process Automationの略。コンピューター上で行われる業務プロセスや作業を人に代わり自動化する技術のこと。

ー社会人2年目で起業をされた与田さんですが、どんな子供・学生時代を過ごされましたか?

小学校からずっと、学生時代は野球漬けの日々でした。

小さい頃から「普通じゃない存在になりたい」と思っていて、本気でプロ野球選手を目指していました。多分野球じゃなくて何でも良かったとは思うのですが、当時、1番普通じゃない職業が野球選手だと思っていたので。

でも、僕はあんまり野球が上手くなくて。小学生の時はずっとベンチでした。それでも努力や根性で夢は叶うと信じて、ランニング10kmと素振り500本を日課に、ひたすら練習をしていました。

ーとてもストイックに練習をされていたんですね……!

その時読んだ長嶋茂雄さんの伝記の影響で、プロになるならそのくらい努力しなくちゃ!と思っていましたね。努力のおかげか中学ではレギュラーになり、高校は野球の強豪校に進学できるくらいには成長できました。

しかし100人くらいの部員の中で、また1番下手なところからスタートして。プロ野球選手は本当に一握りの優秀な選手だけがなれる、険しい道だと実感しました。結局、3年間実らず、努力だけではどうにもならないとプロ野球選手を諦めました。

その後、大学に進学し野球部でマネージャーをすることにしました。自分の叶わなかった野球選手という夢を応援する立場だったら、新たなやりがいを見出せるかもと、新たな挑戦でしたね。

夢を諦めた経験の中で見つけた夢は「生きるために働かなければいけない世界を変えたい」

▲大学ではマネージャーとして選手のサポートに。しかし…

ー大学時代の苦労したエピソードはありますか?

家庭の事情で学費が払えなくなってしまい、野球部を辞めなくてはいけない状況になったことですね。学費を払うためのバイトと野球部の両立は不可能だったので、辞めるのは苦渋の決断でした。

辛いマネージャーの仕事を頑張った1年生を終えて、やっともっと面白い仕事ができる2年生になって突然のことだったので、当時は本当に悔しかったです。

そこからは一転、バイト漬けの日々でした。目標もなく、ひたすら生きるためだけに昼夜働く日々がとても辛く、人生で一番のどん底の時期でした。

ーずっと続けてきた野球ができなくなって、とても辛かったのですね……。

はい。でも今振り返ると、その経験は「ご飯を食べるだけに稼ぐ仕事を、自動化で無くしたい」という、今の会社のビジョンの原点もなっています。

また、その頃に性格が大きく変わったことも今に繋がっているのかなと。元は大人しくて、あまり前に出ない性格でした。しかし、働かないと明日の飯がない状況では、否が応でも行動しなければいけない。その経験が無かったら起業もしていなかったと思います。

「すべての労働を自動化する」と決意してRPA業界へ

ー大学卒業後はどのような仕事をされていましたか?

IT企業でRPA関連事業の立ち上げを行なっていました。

僕自身にRPAの知識や経験があったことと、会社がちょうどRPAに力を入れるタイミングだったので、ありがたいことに1年目から事業の立ち上げに携わらせてもらいました。

ー文系だった与田さんがRPAに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

きっかけというよりは、3年生の就職活動中の自己分析の中で「自動化をやりたい」と少しずつ明確になっていきました。

始めの頃は夢を追いかける人を応援する延長線上で、プロ野球の球団職員なども考えていました。でも球団職員では「普通じゃない存在」にはなれないと悩んでいて。

そんな中、出会った会社の社長さんの「第4次産業革命を起こす。革命を起こしたい人ははうちに来ないか」というスピーチに感銘を受けて、その会社でRPAエンジニアとしてインターンを開始しました。

ーいきなりRPAエンジニアに?

はい。インターンでもお客さんのところで開発をするなど、実践的な仕事でした。僕は文系でRPAの知識はなかったので、仕事の中で少しずつ学んで力をつけていましたね。仕事をする中でRPAの技術やIT関連の知識をつけられました。

インターンをしていた会社に内定もいただいていたのですが、もう1つの内定していた会社のほうが「自分のRPAの知識を活かして、新しく切り拓いていける」と思い、前職のIT企業に就職を決めました。

起業半年で倒産の危機。挫折を経てなおチャレンジを続ける理由

ー会社を辞めて起業したきっかけはありましたか?

自動化を推進して実現したい世界に近づくためには、自分で会社を起こすのが最適だと思い、2019年4月にPLAY株式会社を創業しました。

起業は人生のターニングポイントではなく、単に自動化で成し遂げたい世界を実現する延長線上の位置付けです。

ー起業はやりたいことの延長線だったのですね!与田さんがそこまで自動化をしたい理由は何でしょうか?

現代人は働きすぎたと思うんですよね。やりたいことがあっても時間がない。

その働く時間を減らせば人生を豊かにできると思っています。そこに最も貢献できるのが自動化だと思い、僕個人として、会社として自動化の事業に取り組んでいます。

ーPLAY株式会社では今までどんな事業をされてきて、現在はどんなことをされていますか?

起業時は2つの事業をしていました。1つは始めにも言ったRPAの導入支援です。

もう1つはRPAの教育事業を行なっていました。企業へのRPA導入支援を行う中で、自動化を担う開発者がいないという課題が見えたので、開発者の教育をPLAYでしようと思ったのが始まりです。

そして現在は業務の可視化「プロセスマイニング(※)」に取り組んでいます。

こちらも企業への業務効率化支援を行う中で、開発の前段階である上流工程、自動化する業務の把握や設計に時間がかかっていると気が付きました。オフィス業務はデータの移動・加工なので、技術的には自動化できるはずですが、業務を把握できていないために自動化が実現できていません。

そこでPLAYで業務のログを収集して、オフィス業務を全て把握できれば全ての労働の自動化ができると考え、プロセスマイニング事業を行なっています。

※プロセスマイニング…企業において従業員が行うさまざまな業務活動のログを取得、分析し、業務プロセスを可視化することで、現状を把握して業務改善に活用する手法。

ー起業をしてから苦労したエピソードはありますか?

起業して半年ほど経った時に、会社が倒産の危機に直面したことですね。起業当初に行なっていた教育事業が上手くいかず、資金が尽きてしまいそうになりました。

今月資金が尽きるかどうかのレベルの危機で。そこでRPAの導入支援を中心事業に切り替えて、企業さんに営業を回ってキャッシュを作ることに専念し、とりあえずの危機を脱することができました。

ーいま振り返って、事業が失敗した原因は何だったのでしょうか?

失敗の理由はビジネスモデルを考えきれていなかったことでした。

始めは他社と同じような、1講座数十万円のプログラミングスクール事業を行なっていました。しかし、お金を払っても就職できなければ価値提供ができていないことに気がつきました。

では就職支援を主軸にしようと、人材紹介を前提とした教育事業を学生向けに展開しました。でも、学生の新卒紹介は4月まで売り上げが確定しない、という落とし穴に途中で気づいてしまい。どんなに市場が大きくても、売り上げの確定まで時間がかかるモデルはスタートアップには合わないんです。

ビジネスモデルや事業計画が考えきれておらず、事業を継続しない判断をしました。当時はスタートアップ型のビジネスも知らなかったので、自分のアイデアのまま事業にしてしまったことが失敗の要因でしたね。

ーそこから新しい事業に挑戦した経緯を伺いたいです。

一昨年の12頃に大きな資金調達ができ、ピンチを脱することができました。僕は「クリスマスの奇跡」と呼んでいますね(笑)

スタートアップとして新しい価値を生み出していこうと、導入支援と並行して新しい事業アイデア練り、2020年4月から今の事業「Arkプロセスマイニング」をスタートさせました。

ー新しい挑戦として、与田さんがプロセスマイニングに取り組む意義は何でしょうか?

自動化を実現するには、業務の可視化を進めること自体に大きな価値があると思っています。しかし、実際は可視化の重要性はあまり認知されていないのが現状です。

世界の中でも特に自動化が盛り上がっている日本では、今後少子高齢化で労働人口が減っていくのが目に見えているので、さらにニーズが高くなると予測しています。プロセスマイニングは海外では少しずつ増えている分野なので、自動化が盛り上がっている日本でも必ずムーブメントが来ると思うんです。

だから、僕たちPLAYが先行して業務の可視化、プロセスマイニングに取り組むことで、自動化を進めていくムーブメントを作っていきたい。

業務可視化ソフトウェア「Arkプロセスマイニング」と、現在作っているプロセスマイニングのメディアを起点に、プロセスマイニングと自動化のムーブメントを作ろうと考えています。

自動化でだれもが好きを仕事にできる世界をつくる。「WORK→PLAY」に込めた想い

ー会社の今後のビジョンを教えてください。

会社のビジョンは大学生の時から変わらず、「働くために生きることを無くして、好きなことを追求して生きていけるようにする。WORKをPLAYに変革していく」です。

そのためにPLAYではいま、自動化とプロセスマイニングに取り組んでいます。一旦は足元を固めて、今年中に単月黒字化を目指し会社を成長させていくことが目標です。

ー与田さんは今後、どんなことに挑戦したいですか?

僕個人では、Twitterやnoteでの発信をしていきたいですね。起業の際に書いたnote以降、僕自身の考えを発信できていないので、まずは今の想いやビジョンをnoteに書いていきます。

また想いが先行しているわりには人に伝えきれていないので、Twitterで僕の想いや自動化の未来を伝えていって、印象付けていくのが2021年の目標です。

ー最後に、U-29世代へメッセージをお願いします!

人生100年時代、人生の中ではまだまだ挑戦できる時間があるので、リスクを取ってたくさん挑戦する2021年にしていきましょう!

ーありがとうございました!与田さんの今後のご活躍を楽しみにしています!

執筆・インタビュー:えるも(Twitter/ブログ
デザイン:五十嵐有沙(Twitter