様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第261回のゲストは株式会社Eifer代表取締役の野尻悠貴さんです。昨年に起業し、現在はモンゴルのゲルテントの販売を行っている野尻さんの幼少期から起業に至った経緯までお聞きしました。起業を考えている方へのアドバイスもいただいたので、ぜひ最後までお読みください!
起業2年目、コロナも追い風に。
ーまずは簡単な自己紹介をお願いいたします。
株式会社Eiferを昨年起業しました、野尻悠貴です。株式会社Eiferではまだ日本で注目されていない国の伝統文化や伝統工芸品を扱う事業を行っています。モンゴルでの遊牧民キャンプ事業から始まり、現在はモンゴルの移動式住居「ゲル」の販売事業に力を入れています。
ー昨年起業されたばかりとのことですが、コロナによる事業への影響はやはり大きいですか。
そうですね。でも同時に大きなチャンスだとも思っています。というのもコロナで密を避けて家族や大切な人と一緒に過ごすことを選ぶ方が増えたので、キャンプ用品への需要が高まっています。このコロナをきっかけに組立15分の別荘テント、ゲルテントを販売したところ大きな反響をいただくことができました。
モンゴル現地のパートナーに直接会うことができなくなったり、物流が不安定になったりといったコロナによるマイナスの影響ももちろんありますが、全体的にはポジティブに捉えることができています。
海外への興味は幼少期の頃から
ー過去のお話をまずはお聞きできればと思いますが、幼少期の頃で今につながるエピソードは何かありますか。
幼少期のころからとにかく両親に褒められて育ったのは今の自分に大きな影響を与えていると思います。ある意味親バカな両親が常に自分の事を肯定してくれて、たくさんの愛を注いでくれるという恵まれた家庭環境で育ったからこそ、こうやってポジティブに何事も挑戦し続けることができています。
―幼少期の頃から海外への興味もあったのでしょうか。
両親が海外転勤を伴う仕事をしていた関係などもあり、海外への漠然とした憧れはずっとありましたが、海外に関わる仕事をしたいと思うようになったのは16歳の時に学校のプログラムでイギリスのケンブリッジ大学に訪れたのがきっかけでした。世界最高峰の研究力を持つ名門大学に集まった同世代がとにかくすごくて刺激的な日々だったんです。また、世界を変える研究が行われているのを目の当たりにしたことで、「自分も世界に影響を与えられる人物になりたい、海外の人と一緒に社会を変えたい!」と思うようになりました。
在籍していた私立の中高一貫校は帰国子女が多く、自分の英語の実力との差に落ち込むことも多かったのですが、英語ができれば見える世界が変わるというのを実感したのもこの時でした。英語の勉強さえすれば人生の選択肢と可能性が増えると痛感し、それ以降勉強に励むようになりました。
―中高時代を振り返って他に何か印象的な出来事などはありますか。
正直、高校は自分にとって暗黒時代なんです(笑)花形の部活をしている人やバンドをしている人がすごいという考えや、体育会系の部活に3年間歯を食いしばって頑張るというのが当たり前という考えが主流な中、高校に入ってすぐ部活を辞めてしまった自分は活躍の場を見つけにくかったんです。今では、なんであんなこと気にしていたんだろう…と思うのですが、こんな俺が海外大学進学とか言えば、周りになんて言われるんだろうとか気にしていましたね。結局大きなチャレンジができないまま、卒業を迎えた高校生活は今でも心残りですね。だからこそ、若いうちから挑戦していく感覚を今では大事にしています。
起業の厳しさを痛感し、ドイツへ逃げるように留学
―そんな暗黒時代(?)を経て、大学へ進学されたのですね。
はい。本当は海外大学へ進学してみたかったのですが挑戦することができず、国際基督教大学(ICU)に進学しました。
入学してみるとなんだかんだサークルが楽しく、海外とは無縁な、日本の典型的な大学生活を送っていました。それでも大学1年目が終わるころに大学生活すべてをサークル活動に捧げることに違和感を感じ、他の選択肢を模索するようになりました。
ー実際に何か新しいことに挑戦されたのですか。
ICUの卒業生の方に会ってお話を聞く中で、大学を卒業して企業へ就職するという一般的なルート以外にも可能性を模索したいと思い、起業を考えるようになりました。そしてご縁があり、株式会社サイバーエージェントの学生起業家コンテストに参加させていただきました。
当時仲良かったとても人柄の良い友人がなかなか彼女ができないと嘆いていたことから、モテない人をサポートするビジネスアイディアを考えたのですが、起業に対する覚悟の甘さや自分が考えたサービスに対しての愛情の少なさをインターンでは痛感しました。
ーそのビジネスアイディアで起業は断念されたのですか。
はい。自分が良かれと思ってやっているビジネスが批判されることもあるのが現実で、起業は楽しいことよりも大変なことの方が圧倒的に多いことに対する覚悟が当時は持てないと感じ、大活躍する同世代起業家を後目に、半ば逃げるようにしてドイツに留学をしました。
モンゴルとの出会いで起業を覚悟
ーモンゴルとの出会いはドイツ留学だったのでしょうか。
はい。ドイツ留学中、周辺国に旅行したのですが、その時にモンゴルとの出会いがありました。日本にいた頃は馴染みがありませんでしたが、実は新日派の国であることや、モンゴルの大自然や遊牧民の文化について知る中で、これを日本にも広めてみたいと思ったんです。
ちょうどレオナルド・ディカプリオが大金をかけてモンゴル探検の旅にでかけていたことからも、モンゴルが今後注目を集めると感じ、モンゴルの大自然を感じられるキャンプ事業に挑戦することを決めました。
ーモンゴルの大自然と文化に魅力と可能性を感じられたのですね。
モンゴルに実際訪れたのですが、その時モンゴルの大自然の中で馬に乗り、星空をみて、ゲルで語り合う生活はとても貴重で日本人にもぜひ体験してほしいと思いました。
また、モンゴルの遊牧民には初めて来た人を歓迎する文化が昔からあります。これは困ったときはお互いが助け合うのが当たり前だという考えがあるからこそ続いている文化です。この相互支援の文化と価値観は日本のおもてなしの文化に通ずるところもあると感じました。
コロナ禍の今、その価値観はさらに必要とされていると思うので、あの時起業に向けて動き出してよかったなと思います。
ー留学前は起業への覚悟がなかったとのことですが、今回は起業に対して迷いはありませんでしたか。
不安はもちろんありました。日本は新卒採用のアドバンテージが大きいので、やるからには、就職して働く未来よりも、角度高く圧倒的にレバレッジのかかる未来を描かなければいけない。一瞬就活をしたり、他の会社でインターンをした時に、ああ会社勤めでも自分はこうやれば出世していけそうだなとも思っていました。それでも、今すぐ起業した場合の2年後と、一度就職してから起業した場合を想像した時に圧倒的に前者の方が想像つかなかった場所に到達できるんじゃないかなと思いました。起業に対する覚悟を決めるためにも、市場調査は徹底的に行いました。また、この事業を自分ごとと捉え続けることができるのか、愛を持ち続けることができるのかと真剣に考えた上で起業を決意しました。
目指すのは令和を代表する商社
ー起業決意から今まで、野尻さんが行動するモチベーションとなっているものは何なのでしょうか。
自分たちにしかできない仕事で社会に影響を与えたいという思いです。自分が行動することで他者に貢献ができることが自分の幸せだなと感じています。起業してからモンゴルの仲間に売り上げを配分できて、感謝の言葉を伝えられたことがあります。やればやるほど感謝してもらえるのが単純に嬉しくて頑張っています。
土日も仕事をしていることが多く、大変なことが圧倒的に多いのですが、挑戦は複利だと思っています。頑張れば頑張るほど見えなかった景色がだんだん見えるようになるのが楽しいです。
ーご自身の経験から、起業を考えているU-29世代に何かアドバイスがあればぜひお願いします!
起業を考えている方にアドバイスしたいことは2つあります。
1つめはタグをとるということ。特に未経験の場合、例えば、「モンゴルといえば野尻悠貴」と覚えてもらえるようなニッチな事業で勝負するのがいいかと思います。起業当時、実際にモンゴルには数回しか訪れたことがないのにも関わらず、大手企業からモンゴルに関連した事業に協力してほしいと連絡をいただくことがありました。勢いで起業して成功する方ももちろんいますが、事前に市場調査をしっかりとし、タグを取れそうな場所から起業することをおすすめします。
もう1つは「レバレッジがかかるか」を考えることです。レバレッジとは一般的に金融業界では少ない資本で大きな利益を得ることを意味しますが、お金だけでなく、人生の満足感や自己成長にも通ずる考え方だと思います。数年後を想像した時に、どちらの選択が自分にとって大きな価値になるのか、将来的にどちらの方が面白いかをきちんと考えてみると、自分で挑戦していく意義や未来へのワクワク感が勝り、起業という選択肢もアリなのかなと思えるのではと思います。
ーなるほど…起業する上でこれは活きたなと感じる自分の強みはありましたか。
自分の強みと思っているコミュニケーション能力と人を巻き込む力は起業にあたってかなり役立ったと思います。特に現地パートナーと一緒に事業を行っているので、それぞれのバックグラウンドが違う中スムーズに話を進めていくにはコミュニケーション能力は不可欠でした。また、応援したいと思ってくれる方がいなければ起業はもっと厳しかったと思います。実力がない分、影響力ある人々を巻き込む力は非常に大事で、そこの可愛がられ力とか、かなり意識しています(全然恩をお返しできていないので、引き続きがんばります。)
逆に細かい数字計算などはめちゃ苦手なので、そのあたりは得意なメンバーに任せています。それぞれの強みが生かせる会社でありたいですね。
ー最後にはなりますが、今後の目標があれば教えてください。
株式会社Eiferを令和を代表する商社に成長させることが目標です。今はモンゴルに特化した事業を行っていますが、今後はアフリカ・中南米などの事業も進めていきたいと思っています。まだ注目されていない素晴らしい文化や商品を持つ国はたくさんあります。それをマーケティング力と一緒に伴走する力で、世界に広めていきたいです!
現在、一緒に会社を成長させてくれる仲間も絶賛募集しています。興味がある方からのご応募お待ちしています。>>>令和を代表するwell being体験を作る。別荘テント販売のPMを大募集!
ー貴重なお話ありがとうございました。今後の益々の活躍を応援しています!
取材者:吉永里美(Twitter/note)
執筆者:松本佳恋(ブログ/Twitter)
デザイナー:五十嵐有沙 (Twitter)