ユニークな価値観を持つ29歳以下の世代(U-29世代)のためのコミュニティ型メディア「U-29.com」が主催するイベント『U-29 Career FES』がオンラインで開催されました。
“個”の時代と言われはじめた昨今、個人の発信が与える影響はどんどん大きくなってきました。
そこで今回は、多数のフォロワーを持ち、自身の活動や発信を通じて様々な影響を与えるゲストをお招きし、『影響力の高め方』そして、影響力を高めると『どのようなメリット・デメリットが実際あったのか』をじっくりと聴いていきます。
個人の発信を加速させていきたい方、新しい気づきや学びを得たい方、是非ご覧ください。
ー代表・西村創一朗からのメッセージ
今回は影響力を持つ2名のゲストをお招きし、影響力の高め方、影響力を持つメリット・デメリットについてトークを展開していただきました。
小柳津林太郎
実業家。株式会社GHOST 代表取締役CEO。1981年生まれ、ニューヨーク育ち。2006年慶應義塾大学経済学部卒業。同年、株式会社サイバーエージェント入社。マーケティングプランナーを経て、インターネット広告、Webサイト制作、スマートフォンゲーム制作に子会社の代表として携わる。2018年、Amazon プライム・ビデオにて配信された『バチェラー・ジャパン』シーズン 2 に2代目バチェラーとして出演。2019年、株式会社GHOSTを設立し、代表取締役CEO に就任。DMMオンラインサロンにて、「ハイブリッドサラリーマンズクラブ」の運営や、複数社の顧問業に従事。ビジネスと表現活動、双方のフィールドで邁進中。
千代田まどか(ちょまど)
IT エンジニア兼マンガ家。iU (情報経営イノベーション専門職大学) の客員教授。私立文系の女子大を卒業した後、新卒で入社した日本企業を 3 か月で退職。現在は某大手外資系 IT企業に勤めており、国内外での技術登壇多数。Twitter が好きで、フォロワー数は 7.8万人。共著『マンガでわかる外国人との働き方』Twitter: @chomado
チャンスはどこに転がっているかわからない
ー 2人とも非常に大きな影響力を持っていますが、その経緯から詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか。
小柳津林太郎さん(以下、小柳津):僕の場合はバチェラーへの出演が大きなきっかけですね。長年の友人がキャスティングの仕事をしていて「小柳津にちょうどいい話があるんだよ」と誘われたんです。話を聞くと婚活番組ということで最初は断ったのですが、とても強く推されまして…。とりあえず面接に行きました。
話をしているうちに、当時35歳で独身だったので、結婚相手と出会える可能性があると考えると面白くなってきて。気付いたら「出演してもいいかも」と思っていました(笑)
しかし1つ問題があって、バチェラーに参加するには3ヶ月の間、会社を休む必要があったんです。これはちょっと悩みましたね…。ただ、後悔はしたくないという思いから参加する意思を固めました。
当時所属していたサイバーエージェントの藤田社長も「奥さんが観てるから、観るわ」と言ってくれて(笑)サイバーエージェントの支えのおかげで参加することができました。
ーなるほど、そういう経緯だったんですね。ちょまどさんは表舞台に出るきっかけは何でしたか?
千代田まどかさん(以下、ちょまど):今の会社にエバンジェリストとして入社してから、人前に出る機会が増えました。それまではプログラマーだったので、名刺さえ作ったこともありません。人間と会話をすることがあまり得意ではないコミュ障でして…。プログラミングの他にも、漫画を書くことが好きだったので、副業ではプログラミング言語を擬人化してSNSで発信していました。
じつは、それがきっかけで今の会社の方から「漫画や SNS などを通して若い世代にリーチするエバンジェリストとして働きませんか?技術広報みたいなものなのですが」というお話をいただいたんです。
人と話すことが苦手なので何度も「お声がけいただきまして大変嬉しいのですが正直自信がありません」とお返事していました。しかし、その会社の IT エンジニア向けのプロダクトがとても好きなので、推しプロダクトの「使う側」から「創る側」の仲間になりたいと思い、採用面接を受けて入社を決めました。
人前に出てお話をするのは塾講師のバイト以来で、本当に苦手でしたし、どうなるかとても不安でした。先輩方の親切なご指導や技術コミュニティの方々のサポートのおかげで、最初は本当にビクビクだったのですが、どうにかこうにか今に至ります(笑)
ー 2人とも最初は断っていたんですね。チャンスはどこに転がっているのか、本当にわからないですよね。いざ人前に出始めたときはどうでしたか?
ちょまど:最初は机の下に潜って「無理無理無理」と震えていました。登壇する時にも、恥ずかしくてマスクをつけていたこともあったぐらいで…。
(↑当時の写真。共演した池澤あやかさんにもツイートしていただきました。)
しかし、何度か登壇することで徐々に慣れてきました。聴衆が技術大好きな技術オタクの方だったので「自分と同じ属性の人たちか」と思うようになってから、仲間意識が芽生えたというか、気が楽になったんです。
本当に私はコミュニケーションが苦手なので、技術オタク以外の方と話をすると今でも緊張してしまいます…。
ーぜんぜん緊張しているように見えないですよ!話すことに自信を持ったきっかけはありますか?
ちょまど:じつは、2017年に3000人程の開発者が集まる大きな ITカンファレンスでベストスピーカー賞をとったんですよ。
セッション中に、ライブコーディングのデモをたくさんやった結果、来場者アンケートでとても良い結果をいただけて。それが大きなきっかけですね。自分の技術セッションに対して客観的な高評価をいただけたことが大きな自信につながりました。
ープログラミングが好きなちょまどさんならではの表現ですね。小柳津さんはビジネスから芸能という分野に進んでみてどうでしたか?
小柳津:もともと学生時代に演劇をやっていたので、みんなで物づくりをすることには慣れていました。表舞台に出ることも、そこまで抵抗はありませんでしたね。
3ヶ月の間、1つのことだけをやり切る経験は、大人になるとなかなかないので非常に新鮮でした。ドラマを次のシーズンに繋げることを意識していたので、役者としてだけではなく、番組全体のことも考えて行動するようにしていました。
今まで出会えなかった人に出会えるようになった
ーバチェラーに参加したことで、何か変化はありましたか?
小柳津:まず、街中で声をかけられるようになりました。あと、芸能人やスポーツ選手など、今まで出会えなかった人たちに出会えるようになりました。これは影響力を持ったことによるメリットですね。
一方で「次はもっと大きなチャレンジをしないといけないのでは?」と不安になったことがあります。一旦AbemaTVに異動したものの、タレント活動も継続していたので「自分は何がしたいんだろう」と悩んでいました。しかし、どっちつかずになるのが嫌だったので、いったん会社をやめようと決断したんです。
悩むことは生産的ではないので「会社を辞めたらきっと何か考えるでしょう」と思い、とりあえず行動に移しました。
ーなるほど、思い切りましたね。サイバーエージェントを辞めて、今はタレント活動だけではなく会社経営もしていますよね?
小柳津:そうですね。最近はとくにコロナの影響で芸能関係の仕事が減ってしまったので、ビジネスに集中しています。きっと天が「本業のビジネスに集中しろ」と言っているんだと感じました。
メリットがある反面、言動には気をつけなくてはならない
ー影響力を持ったことによって、他にもメリット・デメリットはありましたか?
小柳津:基本的にはメリットしかないです。経営者としてPR能力が高いと、クライアントに認識してもらいやすいですし、採用力も強くなるので。
ただ、自分の言動には気をつけなくてはいけないと感じていますね。特にお酒飲んでいる時はSNSをいじらないようにしています。あと、仕事の選択肢が広がったので「自分が何をしたいのか」「どこに集中するべきか」決めにくくなってしまいました。ありがたい幸せな悩みですけどね。
ーお仕事のバチェラー状態ですね(笑)ちょまどさんはいかがですか?
ちょまど:小柳津さんと同意見です。うかつな発言は本当にできないですよね。昔はTwitterには「眠い」「お腹すいた」「あの製品意外と使いにくかった」など、思ったことをほぼそのまま自由に投稿していたのですが、今の会社に入社する前にすべて削除しました。今でもツイートボタンを押す前に「本当にこれを送信してよいのだろうか」と何回も確認しています。
一方でメリットは、人脈が広がったり、いろんな方面から仕事のお誘いをいただいたりすることです。たとえば私は、たくさんお声がけいただいた結果、本業のエンジニアの他にも、何回かラジオに出演させて頂いたり、テレビ東京の YouTube 番組にゲストコメンテーターとして出させていただいたり、インスタグラムでモデルをさせていただいたり、大学の客員教授をしたりなど、色々仕事の幅を広げています。
その結果「ちょまどさんはどこを目指しているのですか?」と、よく聞かれるのですが、正直自分でもわからないです。小柳津さんが『仕事の選択肢が広がったので「自分が何をしたいのか」「どこに集中するべきか」決めにくくなってしまいました』とおっしゃっていましたが、本当にその通りですね。ありがたい話ではあるのですが。
ー「何を目指しているのですか?」と聞く人は、人間は1つの枠にしかおさまらないと思っていますよね。ちょまどさんのような人を見ると、自分の思考の枠を超えた働き方をしているので、そういった質問をするのかもしれないですね。
ちょまど:漫画と同じかもしれません。みんな、一言で説明できるラベルを欲しているのかも。ツンデレキャラや学級委員長キャラなど、わかりやすいラベルがあった方が人を認識しやすいので。
影響力を持ったことで、かえって親友の大切さに気付いた
ーみんなに見せている自分と、本当の自分の間に解離を感じるときはありますか?
小柳津:自分の出してはいけない側面を制御する時はあります。本当は親父ギャグが好きなんですけど、イケメン風なキャラに設定されているので素は出せないですよね(笑)
設定されたキャラに合わせるというよりは、むしろ割り切っています。最初は「なんでこんなイケメンキャラで通さなきゃいけないんだ」と、戸惑っていました。でも世の中から求められているのであれば、そう演じようと思うようになったんです。
ちょまど:そうなんですね!私は、普段はまったく解離を感じないです。「プログラミング楽しいー!」って感じなので(笑)
ただ、もちろんいつも楽しいわけではないんですよね。ネガティブなことがあってもSNSには投稿しないようにしています。投稿したらフォロワーさんが心配してくれると思うけど、心配させてしまうのはよくないので、やらないようにしています。その点では孤独を感じてしまうことはありますね…。
ー弱音とか悩み事は誰に相談しているんですか?
小柳津:ぼくは親友や家族にだけ話しています。身近な人と飲みながら相談することが多いですね。
基本、表向きには愚痴とかは言わないようにしているのですが、やっぱり人間なのでストレスを感じるときもあって。
悩みを聞いてくれるだけでも本当にありがたいので、かえって親友の大切さを実感しました。
ちょまど:とってもわかります!私も仲が良くて信頼できる人だけに相談しています。たとえば、定期的に集まっている女子会メンバーがいるんですけど、その子たちとか。
目の前のことを頑張れば、それが将来に繋がる
ーこれから一歩踏み出そうとしている方に向けて、何かアドバイスをください。
小柳津:note、Twitter、Instagramなど、SNSは無料で使えるので、誰かに何かを伝えることから始めるのがいいと思います。
発信をすると反響がくるので、それに応じて「もっとこういう発信の方がいいのかな」と、PDCAを回せます。とにかく始めてみると次のアクションに繋がるので、とりあえずやってみるべきですね。
ちょまど:自分の考えていることを発信しないと、他者から見て、あなたがどういう人なのかわからないです。なので、相手に自分を知ってもらうためにも、発信はするべきだと思います。
フォロワーを増やしたいなら、有益な情報や応援したくなる発信など、フォローしたいと思ってもらうきっかけづくりが必要ですね。楽しいツイートとか、気になるプロフィール文とか、有益な情報発信とか「この人をフォローしたい!」「この人をフォローするとメリットがある」と思っていただけるような発信をするように、私は心掛けています。
ー最近はSNSを使えば誰でも影響力を持つことができるので、かえって何をテーマに発信すればいいのかわからず悩んでいる人も多そうです。
小柳津:発信する内容は、ぜんぜんニッチでもいいと思います。僕も外出自粛期間中に、Instagramに料理の投稿をしたらフォロワーが増えました(笑)いろいろ実験をしながらやるといいかもしれないです。
ちょまど:ポジティブな発信をしている人には、ポジティブなフォロワーさんが増えやすいです。一方でネガティブな発信ばかりしていると、ネガティブなユーザーさんとかアンチの方々が増えやすいように思います。
自分の好きなことを楽しそうに発信すればそれで良いんです。興味のあることはどんどん発信していきましょう!
ー最後に、10代・20代へのメッセージをください
小柳津:みなさんは、まだまだこれから可能性が広がります。役者に憧れた学生時代の自分が、まさか10年後に夢がかなっているとは想像できませんでした。
大切なのは、今頑張っていることに熱中することです。そして、基本的に誘いは断らない。誘われているということは、求められているということなので。
ー軸を持ちつつも周りに流されることが大切ということですね。
小柳津:そうですね。流された結果、行き着いたところが魅力的なこともあります。多くの場合、若いうちは自分の本当の可能性に気づけません。第三者の方が、その可能性が見えている場合も多いんです。
ちょまど:私も、なんでもチャレンジしてみるのが良いと思います。好きなこと、熱中できることに全力でいてほしいです。
私は、大学に入学してから漫画ばかり読み漁っていました。そして次にプログラミングに熱中して、寝る間も無くパソコンに向き合っていました。文系の大学でしたので、当時は家族に「大学の成績に繋がらないのに何やってるの!」と怒られていましたが、今ではそれが仕事につながっています。
将来のことは考えてもわからないので、目の前にあることを頑張れば、それでいいと思います。まずは何か始めてみることが大切だと伝えたいです。
ー皆さんがご自身の体験を積み重ねてきたからこそのお話を聞くことができました!本日はありがとうございました。
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イベントモデレーター:西村創一朗・西舘聖哉
執筆・編集:下出翔太
デザイン:五十嵐有沙