「パラレルワークに興味はあるけど、学生の頃からビジネスに関わっている人じゃないと無理だよね…」と、不安に思う人は多いんじゃないでしょうか。
色々なキャリアの人たちが集まって、これまでのキャリアや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ第38回目は、ベンチャー企業の経営企画・マーケティングの担当者として活動しながら、複業で地域活性団体の共同代表を務める、など多岐に渡って活躍される吉田柾長(よしだまさなが)さんにインタビュー。
パラレルワーカーとして活躍され、この4月からは独立してフリーランスとなる吉田さん。意外にも、学生の頃は何がしたいのか全く分からなかったとのこと。そんな学生がどのように独立にまで至ったのか。熱意をつかみとった吉田さんにお話を伺います。
焦りから、行動してつかんだ飲食店への想い
― ベンチャー企業の会社員・地域活性団体の共同代表・コミュニティバーの立ち上げ、と多方面に活動なさっていますが、活動の軸などはあるのでしょうか?
軸としては2つありまして。1つは「飲食店の可能性を広げる」、もう1つは「多様な働き方を体現する」です。
― その想いは昔からあったんですか?
色々行動しながら見つけたものですね。そもそも就活を始めるときは、自分が何をしたいのか全く分からなかったので。
― その状態から、どのように動いてぐるなびさんへの新卒入社に繋がったんですか?
私、本当に平凡な学生だったんです。ほどほどにサークル活動して、ほどほどにバイトして、ほどほどに勉強する。どこにでもいる学生だったんですけど、3年生になり就活をぼんやり意識し始めたとき、このままで良いのかな、と少し焦ったんです。
絶対何かを成し遂げたいという想いもなかったですし、興味のある業界とか分野も全然浮かばなくて。これはマズいな、と思って色んな会社のインターンに参加するようにしたんです。
― 何社くらい参加したんですか?
1dayとかも含めてですけど、30社くらいは行ったと思いますね。
― 30社はすごい…! すぐに軸や業界は定まりましたか?
すぐには決まらなかったですね。インターンに参加する度に、感じたことや自分の頭の中を整理して、ようやく見つけた、というイメージです。新卒で入社したぐるなびも、ほぼ30社目くらいでしたしね。
毎週自己分析して、試行錯誤をし続けていました。
― そうして動いてる中で、ぐるなびさんと運命的な出会いをしたわけですね。
そうですね。様々な企業を知り、自己分析もして「頑張る人を応援したい」という絶対的な軸を見つけることができました。
でも、出会えてラッキーだった、というよりは自分でその出会いをつかみとったんだ、と思うんです。本当に平凡な学生だった自覚はあったので、自分から情報を取りに行く姿勢だったり、分からないなら分かるまで探し続ける、だったり。
その結果、入りたいと思える会社に出会えたので、自分でつかんだ出会いだったと思います。
― ぐるなびさんとは、どのような出会いだったんですか?
まず、飲食業界に惹かれたんです。飲食業界って、労働環境や利益率がどうしても他業界よりも厳しくなってしまうんですけど、その中でも誇りを持って働いている方々がいて。単純に尊敬したんです。何で、ここまで情熱を持てるんだろう、自分もこんな大人になりたいと思うようになりました。
そう思っていたので、ぐるなびのインターンで「飲食店の想いをユーザーに届ける」という理念を聞いたときに、もう鳥肌が立つくらい感動したんです。「あ、ここに入りたい」と思えたのは初めてでしたね。
その後、早めに選考を受けさせてもらって。恐らく、同期で一番早くに内定をもらったと思います。
― やっと見つけた出会いですもんね。熱意がすごい。
そこからは飲食店にどっぷりでした。就活が終わったので、勉強しようと思って、飲食店のバイトを2つ始めたんです。
―次を見据えての勉強なんですね。伝えることになるお店側の想いを知ろう、と。
長津田というベッドタウンのイタリアンと、渋谷センター街のカフェの2店舗でバイトしていましたが、面白かったですね。
イタリアンのお店では、シェフが持つ料理のこだわりを、お客さんにどう伝えればよいか考えたり。カフェの方では、料理の美味しさももちろんですけど、場所としての役割が求められているんだ、と実感できたり。そういう違いを知れるのが面白かったです。
― 実際に働いてみることで、より想いが強まったんですね。
そうですね。飲食店が持つ可能性を実感したのは、そのときが初めてかもしれません。色んな形態やジャンルがあって、変化も激しい。この業界は一生面白がれるな、と感じました。
「狂ってる」と言われるほどの熱意で動いた新卒時代
― 同期で、そこまでの熱意を持っている人はいたんですか?
いなかったと思いますね。先輩から「狂ってるくらいの熱意」と言われたくらいなので(笑)。
― 最初は営業配属?
そうです。ぐるなびって広告だけでなく、注文に使うタブレットなども扱っているんです。飲食店の課題をヒアリングして、どういう商品が良いのかを考えて、提案することは楽しかったですね。
お店の人からも「そこまで言ってくれるなら、賭けてみようと思う」と言ってもらえたり。熱意を持って仕事ができていたと思います。
― 2年間営業をやって、企画に異動したんですよね。異動は希望していたんですか?
入社当時から言っていましたね。もっと上流でやりたいと思っていたので。上司との最初の面談で「企画行きたいんです」って伝えたり、意志を発信するのは意識していました。
― その結果、希望通り異動してますもんね。言い続ける、って大事。企画のお仕事はどんなことを?
ぐるなびの広告を扱うのではなく、飲食店や料理人のネットワークを使って、企業や地方自治体のプロモーションをお手伝いする仕事でした。
意外なところで料理人のニーズがあることに気付いたりして、飲食店の可能性をより強く実感しましたね。
― 印象的な企画ってあります?
とある高級家具屋さんとの取り組みは、かなり衝撃的でした。そこの会員さん向けに、家具屋さんのショールームでイベントをする、という案件で、「お金を持っている人が応援したくなる料理人をアサインして欲しい」と言われたんです。
厨房の外にも料理人の活躍する場があるんだ、と思いましたね。しかも、厨房の外に出ることで、その人が持っている想いを広めることができる。飲食店の可能性を広げるヒントを感じられて、印象深いですね。
新しい可能性を感じる仕事が他にもいくつもあって、本当に楽しかったです。
きっかけは違和感。外の世界への興味からパラレルワークへ
仕事は充実していたんですけど、パラレルワークを始めたのもこの頃なんですよ。外の世界も知りたいな、と思って。
― 希望していた部署で楽しくやっていた中で、なぜ外を知りたいと思ったんですか?
異動しても周りの環境が変わらなくて、少し違和感を感じたんです。営業部ほどは多くはなかったですけど、辛そうに働いている人が多い、という環境が営業部と変わらなかった。
企画部を理想化していたからかもしれませんが、少しだけがっかりしてしまったんです。そこからですね、外にはもっと色んな働き方をしている人がいるんじゃないか、と興味を持つようになりました。
― 外に興味を持って、何から始めたんですか?
企画で地方自治体と関わることが多くて、地域活性って面白いな、と思っていたんです。なので、面白そうな地域活性系のイベントを見つけては、とにかく参加していましたね。
ここでも、週4回くらい狂ったようにイベントに参加する時期もありました(笑)。
― 興味が溢れると、もう一直線なんですね。イベントへの参加から、どのようにパラレルワークに移っていったんでしょう?
イベントに参加して、少しずつ知り合いが増えてきたところで、「うちのイベント手伝ってくれない?」とお誘いをもらうことが多くなったんです。
最初はもちろん無償でしたけど、元々興味でやっていることだし、お金よりも得るものが大きいと思って、そういうお誘いは受けるようにしていました。
― 最初はGiveから始めたんですね。
いくつかお手伝いしていく中で、初めてお金をいただいたことがあったんです。参加費が投げ銭制のとあるイベントだったんですけど、かなり盛り上がって、結構な額が手元に残ったんです。
その残ったお金は打ち上げでほぼ消えてしまったんですけど、趣味としての活動でお金をもらえたのは初めてで。ものすごく嬉しかったんですよ、金額にしたら本当に少なかったのに。
そこからでしたね。この感覚が忘れられず、没頭するうちに共同代表に誘ってもらったりして、段々と趣味が仕事に近づいていきました。
フリーランスは、ぶれずに「今を楽しむ」ための選択
ー 外で活動の場を広げる中で、転職もなされました。この選択は、外で色んな働き方を見たことが大きかったんですか?
それもありますが、飲食店の可能性を考えたとき、これからITとシェアリングが大きく関与してくるな、と確信じみた予感を持っていたんです。
その予感が大きくなるにつれ、より多角的に飲食店を見たいと思うようになり、転職を視野に入れはじめました。
ー アスラボさんは転職活動の中で出会ったんですか?
アスラボは転職を考え始める前から知っていて。企画部で競合調査するときに、唯一興味を惹かれていた企業だったんです。ITとシェアリングをどっちも扱っていたので、ここだ、と思って一社だけ受けて転職を決めました。
― そこから、何をきっかけに独立を決めたんでしょうか?
一つは、もっと飲食店のことを勉強したい、という想いです。飲食店の可能性を広げたいと言いながら、実際に飲食店の内部で働いたことは学生時代のアルバイトくらいしかないので、週1でもいいから飲食店で働いてみよう、と思ったんです。
近しい話で、1月からコミュニティバーの立ち上げに参加しているんですけど、やはり自分主体でお店と関わるのは勉強になります。
― 内部にいないと分からないことはありますもんね。
もう一つは、お誘いしてもらった面白い仕事を「許可のない複業は会社的にNG」という理由でお断りしているのが、単純にもったいないと思ったからですね。せっかく一緒にやりたい、と思ってもらえるのなら可能な限りやってみたい。
そう考えると、独立してフリーランスという形が今は一番良いな、と。4月からは、いくつかの企業で業務委託として働きながら、飲食店の現場にも立ってみようと思っています。
― 今は、ということは会社員に戻る可能性もあるんですか?
そうですね。今を一番楽しめるのがフリーランスだと考えているだけなので、会社員として所属した方が楽しめると思ったら戻ると思います。
― 「今を楽しむためのフリーランス」という考えは素敵ですね。
私にとって、働くことは趣味に近いんだと思います。テレビを見たり音楽を聴くのとあまり変わらないんです。稼ぐ、というよりは、楽しい。この感覚は忘れないようにしたいですね。
ぶれないために、就活のときにやっていた自己分析を、今でも毎週やっているんです。今の方向性が合っているか、大切なものを見失っていないか、確認する時間をとっています。
今は失うものがないので、とにかく挑戦していきたいと思いますね。「頑張る人を応援する」という絶対的な軸だけはぶらさずに、今の自分を一番楽しめる方法を選択し続けたいです。
取材:西村創一朗
写真:山崎貴大
文:安久都智史
デザイン:矢野拓実