奥能登で宿泊施設を運営。山口侑香が自分の可能性を信じてチャンスを掴んできた軌跡

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第647回目となる今回のゲストは、ザアグラリアンテーブル合同会社代表の山口 侑香(やまぐち ゆか)さんです。

石川県の最北端である珠洲市で生まれ、一度珠洲市を出たものの再度戻ってきた山口さん。代表になるまでの軌跡や大事にしている価値観について、幼少期から振り返って伺いました。

母親から教わった「上に上がること」の大切さ

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

山口侑香と申します。私が代表を務めているザアグラリアンテーブル合同会社は石川県珠洲市の最北端にあり、宿泊施設「木ノ浦ビレッジ」を管理運営しています。

木ノ浦ビレッジはコテージタイプの宿泊施設で、珠洲市の木を多く使っていたり、珠洲市の特産品である珪藻土の壁紙を使用していたりと、珠洲市の特産にこだわって建設された施設です。

ー宿泊施設以外で、アクティビティも提供しているのでしょうか。

珪藻土のピザ窯で焼くピザ作りの体験や、珠洲市の花であるヤブツバキの油を絞る体験、コーヒー焙煎体験など、様々なアクティビティを提供しています。夏場はシーカヤックの体験が一番人気ですね。夏場も冬場も非日常を味わいに来る方が多い印象です。

ー会社を運営していく中で大切にしていることはありますか?

お客さんや地域の方々、スタッフなど、「人とのつながり」を大切にしていきたいです。その先で、珠洲市全体や奥能登が賑わっていけばいいなと思っています。

ー山口さんの現在の価値観や考え方が、どのような流れで形成されてきたのかを、幼少期から溯って伺えればと思います。幼少期はどんなお子さんでしたか?

実は、木ノ浦ビレッジの300〜400m先に母方の実家があるので、幼少期から木ノ浦という土地にはルーツがあったのです。

子供の頃は自然が大好きで、走り回ったり木登りをしたり、セミの抜け殻をひたすら集めたりしていました。今でもデスクワークより、お客さんと話すことや一緒に体験をすることが好きです。

ー幼少期に印象的だった思い出があればお聞かせください。

小学校5〜6年生の頃、母親から日常的に言われていた、「自分のやりたいことがあるんだったら上に上がりなさい」という言葉がとても印象的です。

当時は意味を理解できなかったですが、今振り返ると「上に上がって、やりたいことを汲み取ってあげられるような人になりなさい」という意味だったのかなと思います。

私も今まで働いてきた中で、言っても通らなかったことが何度もあったからこそ、当時母親が伝えたかったことをなんとなくではありますが理解できています。

金沢のガソリンスタンドへ入社するも、出産を機に珠洲市へ戻る

ー中学・高校生の頃はどのように過ごしていましたか?

中学・高校ではソフトボール部に入っていて、ソフトボールの楽しさに目覚めてからは勉強よりもソフトボールに夢中になっていました。部活のために学校へ行く生活が、高校3年生まで続きましたね。

ーソフトボール一筋だった高校時代、どんな将来を描いていたのでしょうか。

高校卒業後の進路選択のときに、もし専門学校へ行くとしたら車関係の学校へ行きたいなと思いましたが実際に行くことはなく、気づけばガソリンスタンドへ就職することに。

車好きというのは父親の影響を受けていて、子供の頃から父親が自分で車を触る姿を見ていて楽しかったので、ガソリンスタンド業界へ入って自分で車を触るという選択肢を選びました。

当時は「とにかく珠洲市から出たい」と思っていて、周りの友達も就職をする子が多かったのでとりあえず就職という感覚でした。

ーガソリンスタンドへ就職してからのお話をお聞かせください。

一般社員として3年半ほど勤めている中で、ご縁があり結婚・出産を経験。そのタイミングで、珠洲市へ戻りました。私が育った環境は自然が溢れていて、地元の方々みんなで育ててくれる印象が強かったので、珠洲市に戻って子育てをしたいなと思ったのです。

キーパーソンと出会い価値観が変化していく

ー子育て中や、子育てが落ち着いてからはどのように過ごしていましたか?

子供と向き合っていて自分の時間が取れない中で、「やっぱり働きたい」という願望がものすごくありました。そこで、子育てが落ち着いたタイミングでもう一度働くことを決意し、ホームセンターに入社。

グリーンコーナー担当になったのですが、前職はガソリンスタンドなのでまったく知識がない状態で、知識豊富な先輩に支えてもらいながらお花や野菜の苗を販売していました。

ーホームセンターでのお仕事は楽しかったですか?

毎日ひしひしと楽しいと感じるわけではなく、ルーティン化している日常の中で、お客さんやスタッフと話をしたり、自分の知識が増えたりしたときに楽しいと感じていました。

そんな中で、キーパーソンとの出会いがあって。当時主力商品であった地元の方が作っている野菜苗が、生産者の高齢化により卸せなくなってしまい、「どうしよう……」となっていたときに、新しい取引先を見つけ、代表の方とお話をする機会がありました。

その方とお話していると、目がキラキラしていて、すごく楽しそうに働いているのが伝わってきました。今までは、楽しそうだけどどこかしんどそうな方ばかり見ていたので、代表の方の姿が衝撃的で、それから私の価値観は変わっていったのです。

ー代表の方とは、密に接する機会が多かったのですか?

それほど多くなかったです。取引先なので、「きゅうりの苗を◯個欲しいです」とか、「玉ねぎの苗が欲しいので作ってください」というように、業務的なやり取りばかりでした。

ただ私が、「この人楽しそうだな。キラキラ働いているな」と感じていただけですね。そしてその代表が、実はザアグラリアンテーブル合同会社の前代表なのです。