IT技術で「誰もが便利なモノを自分でつくれる時代」を創造したい。スクーミー代表 塩島諒輔

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第951回目となる今回は、株式会社スクーミー代表取締役CEOの塩島諒輔(しおじまりょうすけ)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

塾の運営や水球のコーチをしていた塩島さん。教育者としての経歴をお持ちの塩島さんが、どのようにIT企業の代表になったのかを語ってくださいました。

大学中退。塾講師と水球コーチとして子どもの教育に従事

ーまずは自己紹介をお願いします。

株式会社スクーミー代表取締役CEOの塩島諒輔です。29年間山梨県に住んでいます。

元々塾の先生をしており、その後はIT企業の代表になりました。

我ながらおもしろい生き方をしていると感じているため、様々なことをお話しできたらよいなと思っています。

ー大学を中退されたとお聞きしました。当時のことを教えてください。

幼い頃から学校の先生になりたいという目標があったのですが、入学した大学は工学部系の学校で、教育学部がありませんでした。教育実習をすれば学校の先生になれることを知らなかった当時の私は「自分は教師にはなれない」とふてくされていました。

しかしどうしても教師になりたいという思いがあり、塾講師のアルバイトをすることに。そこで塾で働くおもしろさに気づきました。また同時期に水球のコーチをする中で「学校の先生にならなくても子どもたちと関わり、彼らの成長に貢献できる」ことを学びました。

当時大学を中退したのは「大学以外の場所で経験を積んで教育の道に進みたい」と思ったためです。

ー大学に通わないことに対して、ご両親はどのような反応をしていましたか?

当時は驚かれたのに加えて、不安だったと思います。

私も将来の不安はありましたが、子どもたちの成長や受験成功のために注力しており自分のことは二の次でした。

ー教師になりたいと思ったのはいつ頃ですか?エピソードを交えて教えてください。

両親いわく小学1、2年の頃から思っていたようです。

当時から水球を習っていたのですが、その時代は日本にプロの水球がありませんでした。そして「大人になってもプロとして水球に携わることはできないのか」と悲しくなりました。

しかし部活動を教える教師になれば大人でも水球に関われることを知り、教師に憧れるようになったのです。

また少年時代にお手本となるようなよい教師が自分のまわりにいたこともあり、教師になりたいという気持ちは増していきました。

ー18歳から23歳まで塾のアルバイトを続けられたとお聞きしました。塾でのエピソードを教えてください。

中学、高校の頃から人に勉強をわかりやすく教えることが得意でした。ゆえに塾講師は天職のように感じていて、塾生のテストの点数を上げることに長けていました

独自の教え方によって子どもたちの成績をガンガン上げていく矢先、あるできごとが起きます。

勤めていた大手の塾には「個人ではなく教室単位で子どもたちを育てる」という指導のマニュアルがありました。そして私の教え方は塾の方針に反していると判断されたのです。

その後「塾の方針に従う」か「塾を辞める」か選択を迫られました。

ー選択を迫られ、どのような決断をしたのですか?

高校3年生を30~40人ほど指導していたため、私が辞めたら彼らが困ると考えました。

当時は水球のコーチをしつつ組織の運営もしていたため、組織経営のスキルが身についていました。

このスキルがあることを踏まえて選んだ決断は「塾を辞める代わりに自分で塾を運営すればよい」というもの。この決断が人生の分岐点になったと思っています。

そして塾の運営を始めた矢先、私が教えていた高校生たち全員が私の塾に移ってきました

40人ほど入塾して収入も安定したため「塾を辞めてよかった」と思いました。

IT人材との交流がヒントに。スクーミーの事業を開始

ー5、6年ほど塾を続ける中で、次の事業へのアイデアを思いついたとお聞きしました。当時のことを教えてください。

生徒たちが塾にいない午前中の時間を使い、社会人向けのワークショップをしていたときのことです。

私はエンジニアやプログラマーではありませんでしたが、当時流行していた「IoTやSociety 5.0の技術で課題解決をするワークショップをしてくれないか」と依頼がありました。

エンジニアに協力してもらえればワークショップができると考えた私は、エンジニアの友達に声をかけて一緒にワークショップをすることに

そして「考えたアイデアを基に問題解決のアイテムをつくる」という課題解決ワークショップを行いました。私は技術的な知識がなかったため「どのように課題を見つけるか」「どのようなアイテムをつくるか」というセクションの進行をしました。

ーおもしろそうなワークショップですね。どのようなアイデアが出たのですか?

特に印象的だったのが「畑仕事中のお年寄りが熱中症で倒れたときに通知してくれる装置」です。

今やアップルウォッチなどのスマートウォッチには転倒通知機能が搭載されていますが、当時はそのような商品はありませんでした。

アイデアを形にする中で「お年寄り用ゆえ小さく軽いほうがよい」「コンピューターにセンサーをつなぐだけで作動したほうが簡単に使える」という意見がありました。

そうした意見を踏まえて、みずから開発をして完成したのが『スクーミーボード』という手のひらサイズのコンピューターです。

ー塾の講師だった塩島さんがコンピューターをつくられたのですね。まわりの反響はいかがでしたか?

2020年にスクーミーボードが完成した当時、世間ではプログラミング教育が開始されました。その影響で教師の友達からIT教育の依頼がきて、スクーミーボードを使って学校で生徒たちに授業をしました。

教師の方々から便利だと言われ、子どもたちが自分のアイデアを形にできるため教育にもよいと高評価を受けたのを覚えています。

そして少しずつスクーミーの事業に注力することになりました。

ースクーミーボードを使うと、具体的にどのようなことができるのですか?

例えば長細い形をした『曲げセンサー』をスクーミーボードにつなげて使います。このセンサーを高齢者ベッドに入れれば、夜中にお年寄りが起きたことを感知してナースコールが作動するようになります。

買えば100万円以上する装置を自力でつくることができるため、我ながら素敵なものをつくったなと思いました。

ーほかにも活用法を教えていただけますか?

「子どもが帰宅したら父親の携帯に通知がくる」や「農業用ハウスの温度情報や土壌の水分量をデータで保存する」などの使い方もできます。

農業用ハウスの例のように、プログラミングに精通していないお年寄りが本棚を作る感覚で、ITシステムをつくれるようになったらおもしろいなと考えています