自分らしく活動して人々に寄り添える人生を送りたい。Youth UNHCR代表 金澤伶

困っている方の助けになるのが自分の幸福になると語る

ーYouth UNHCRの活動について教えてください。

2022年は全国の難民に関わる活動を行う学生の個人・団体が結集した組織 Youth UNHCRで若者を連帯させながら、難民支援活動促進のためにアイデアコンペティションを開催しました。その結果、全国から素晴らしいアクションアイデアが集まりました。

岡山県瀬戸内市で表彰イベントを開催し、複数のNPOや企業、大学教授に審査員を依頼し、若者の難民への支援の輪を広げることに尽力。

また渋谷の4拠点以上で『なんみんフェス』を開催。UNHCRと国連UNHCR協会との共催で行い、Youth UNHCRが企画を主導し、13団体の出展や多くの企画をアレンジしました。

複数のメディアで取り上げられ、大きなインパクトを生みました。また2023年は難民に関わる国際会議である『グローバル難民フォーラム』で日本が共同議長国になるので、そのユース版を企画しています。

日本でのグローバル難民フォーラムの知名度を高め、社会全体で難民支援に取り組むきっかけになればと思い、企画発案しました。

ーなんみんフェスについて教えてください。

なんみんフェスは渋谷駅の東口地下広場、宮下パーク、ハチ公前、ヒカリエなど、渋谷の4拠点以上で行われたイベントです。

Youth UNHCRの加盟団体や関連団体、難民に関わる活動をしている団体がブース出展を行い、してそれぞれの活動について発信したり、難民の背景を持つ方がトークショーに登壇したり、多言語でボディペイントをしてくれたりしました。

他にもたくさんのアートやワークショップ、音楽を通して多様な文化に触れてもらい、難民についての理解が深められるようになっています。

ーほかにはどのようなことが行われたのですか?

Youth UNHCR運営する『EmPATHy』に所属する、難民のバックグラウンドを持つ若者の映画上映&トークイベントをヒカリエで開催しました。

そこでは彼らの人生や故郷の平和、復興についての想い、語り継ぐことの重要性を発信するトークイベントも。

EmPATHyメンバーが制作した『Hiroshima』というドキュメンタリーを上映したことで、戦争経験国としての日本が平和に対してどのように向き合うか、改めて考えていただく機会になったと思います。

またUNHCRとの共催ということで、実際に使われている難民キャンプのテントの展示や、国連難民支援キャンペーンなどが行われました。

ー現在注力していることはありますか?

難民を身近に感じてもらえるよう、発信と啓発に注力しています。

難民は日本にもいらっしゃる「身近な存在」であることを知ってほしいのです。多くの方に知っていただくため、ゲームアプリやラジオなどのソフトな発信コンテンツを制作しようとしています。

またEmPATHyで難民のバックグラウンドを持つ若者と日本人のつながりを築いたり、国際会議に参加したり、世界各地の若者とのネットワークも構築する活動も。

加えて、私は個人で難民の申請がおりずに厳しい生活を強いられている高校生への奨学金給付や相談伴走支援や、難民2世・3世の学習支援などの教育サポートもしています。

ー難民の方の就労問題を解決する活動もしていると伺いしました。詳しく教えていただけますか?

様々な原因で難民や外国人への就労差別が問題になっていますが「言語の壁」や「日本の就活の仕組みが分からない」ことで就活がうまくいかない方も多いです。

ゆえに私は、JICA連携講座で一緒に取り組んだ仲間と就労伴走プラットフォーム『R-Navi』を立ち上げて、難民の方々の悩みをリサーチし、個々にサポートができる体制を整えました。

ー難民についての活動をしようと思ったきっかけを教えてください。

最初に難民の方と関わったのは大学1年の頃です。

当時、オリンピックやパラリンピックに出場を果たした難民選手団の個々のヒューマンストーリーを知ってもらうために、Youth UNHCRメンバーと「UNHCR難民アスリート写真展 乗り越える。難民アスリート 希望の体現者たち」という写真展を企画しました。

その写真展で取り上げたアスリートの方が直接感謝を伝えてくれ、うれしい気持ちでいっぱいになりました

このできごとが励みになり、活動を本格化することになったのです。

ーNPO法人アラジ(特定非営利活動法人Alazi Dream Project)での活動について教えてください。

世界最貧国ともいわれる西アフリカの小さな国「シエラレオネ」の教育支援NGOのスタッフをしています。

幅広い業務に関わっており、資金調達や事業の進捗管理もしています。

ーNPO法人アラジで活動しようと思ったきっかけを教えてください。

高校1年時に、コンゴ民主共和国で紛争鉱物(紛争の資金源となっている鉱物)が原因で起こってる性暴力の犠牲になっている女性たちと、治療するデニ・ムクウェゲ医師のドキュメンタリーを観たのがきっかけです。

情勢が不安定な国では、産出されるレアメタルの利益が国軍や武装勢力によって独占されることがあります。その結果、現地住民が紛争に巻き込まれたり性暴力に遭ったり、住んでいる場所を追われて難民になったりすることもあります。

その鉱物が使われた商品を利用し、不自由ない幸せな生活を送れていることの恐ろしさや罪悪感を強く感じ、活動を始めました

これからも自分らしく活動して人に寄り添いながら生きる

金澤さんの考える「理想の世界」について教えてください。

「すべての方に居場所がある世界」になるのが理想です。

難民の方々は居場所が奪われ、逃れた国でも受け入れられないことがあります。そのような方に生きやすい居場所を提供できればよいなと思っています。また居場所を設ける仕組みや制度がないのであれば一から創ることも必要です。

ー「人の想いに寄り添いながら、自分の幸福を見つめる生き方をしたい。」が今回のテーマですが、どうしてそう思われたのですか?

様々な問題を乗り越えようとしている難民の方々と一緒に活動をしていて、私にとって本当に大切な存在になりました。

彼らの想いに寄り添うことは友達を大切にすることと同じだと考えており、私との関わりの中で幸福感を感じてくれたら私も幸せを感じるようになったのです。

このように、人の想いに寄り添える人間であり続けたいと考えています。

ー大切にされている価値観を教えてください。

「人の想いや幸せ」が私の幸福に直結すると思っています。

余裕がないときは落ち込んだり、自分を見失ってしまうこともありますが「自分が自分であること」が最大の価値であると信じられるような行動や生き方を、これからもしていきたいです。

ー大学卒業後はどのような人生を歩みたいですか?

自分が自分らしくあり続ければそれでよいと思っています。

自分が自分らしくあればどの職業に就職してどのような活動をしようとも、みずからが救いたいと思っている方々や一緒に歩みたいと考えている方々との関わりは絶対に消滅しないと考えています。

また今後も新しいことにチャレンジして自分の知見を広げたいです。そして利害関係者の枠に収まらないほどの多くの方に影響を及ぼせるような人材になりたいです。

そのために人とのつながりを広げ、今後も関係を継続させていきます。

ー10代、20代の方にアドバイスをお願いします。

学生のうちは学業やインターン、学生団体、就活などで忙しい日々を送る方も多いと思います。その結果考えごとが多くなり、様々なことに追われていっぱいいっぱいになってしまうこともあるかもしれません。

そのような状況下で重要なのは「自分だけで自分の価値を決めない」ことだと考えています。

例えば就活などで自分の価値を否定されたときは「どうしたらみずからを奮い立たせられるか」考えることが大切です。様々な方とふれあい、価値観の多様性を見出すことが生きる上で役に立ちます

ゆえに「自分が自分である」ことを確信できる環境づくりが重要です。

ーありがとうございました!金澤さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:戸田光(Twitter
執筆:uzmuu(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter