心の炎が消える前に行動する。環境活動家&ラッパー・神澤清の生き方

「心の炎が消える前に行動する」環境問題へのアクションの始まりは“駅前で叫ぶこと”

ー関心があったという環境問題については、渡航前と渡航後で何かご自身のなかでの変化はありましたか?

渡航に直接かかわっているわけではないのですが、帰国してから約2週間後に日本に大きな台風が直撃したんですね。千葉県と長野県が被災した様子を知ったときに、気候変動や地球温暖化などの環境問題は、まったく遠い話ではないと感じました。

もしも地球温暖化の影響でシエラレオネに大きな干ばつが起こったら、彼らは太刀打ちできない。農業技術がそこまで高くなく、マンパワーに頼っている部分が大きいからです。

台風被害からシエラレオネを始めとする発展途上国のことを考えているうちに、早く環境問題にアクションを起こさなければと考え始めました。

ー渡航経験と身近に起こった台風被害から環境問題へのアクションを考え始めたわけですね。

はい。ただ具体的なアクションと言っても何をしてよいかわからなかったので、最初は1人で静岡駅前で叫んでいました。近くの交番に連絡をして、叫ぶ許可をもらって(笑)。

環境活動家のグレタ・トゥンベリさんを始めとする世界の若者がスピーチや路上デモをやっているのを見て、自分の抱く環境問題への危機感を叫ぶことで共有したかったんです。

音楽を通して戦争のリアルを届ける「俺らなら世界を変えられる」

ーなんという行動力……! ここから環境活動家として一歩を踏み出すわけですが、2022年2月にウクライナ軍事侵攻が始まったことが神澤さんに大きな影響を与えたと伺いました。

ウクライナ軍事侵攻のニュースを知った瞬間はやはりショックで、頭のなかが戦争や安全保障というトピックで埋め尽くされました。自分には何ができるんだろうと考えて、最終的にたどり着いた答えが「ウクライナに行きたい」だったんです。

メディアで報道される惨事を見ても「映されている場面」しかわからない。国際協力、つまり世界平和を目指していても、戦争のリアルを知らなければ妄想のストーリーしか描けないと考えるようになりました。

もちろん、戦争の現場に行くことは怖い。だからこそ情報を集めて十分な下調べをしてリスクを測ったうえで、行けると判断して2022年の11月にウクライナへの渡航を決めました。

ー実際に“戦争のリアル”を目の当たりにして、無事に帰国してからは何を感じましたか?

無力感ですね。戦争はあまりにも悲惨で、本音を言うと「戦争は止められないかもしれない」というような言葉ばかりが頭に浮かんできました。

「自分が見てきたものを発信をしなければ」と思えたのは、ウクライナ渡航をクラウドファンディングで支援していただいていたからです。批判の声もあるなか応援してくださった方々に何か還元しなければと思いイベントや講演で発信を続けていました。

ー神澤さんは、講演やスピーチだけではなく音楽・ラップを通すことでもメッセージを発信していますね。

講演やスピーチで発信するメッセージに音楽を乗せることで、今まで届けられなかった層にも声が届くのではないかと思って。音楽は講演やスピーチよりも馴染みがあると思ってくれる人が多いので、メッセージが心に浸透しやすい実感があります。

頭で社会問題を理解しても、結局は心が動かせないと人々の行動を変えることはできないですよね。

音楽は自分の強みだと思っているので、自分の経験を自分なりの形で発信することで少しずつ前進したいです。

ーメッセージを届ける手段に音楽があるのは強みになりますね。

メッセージをより多くの人に届けるためにも、音楽を通してさらに影響力を高めていきたいと考えています。

ー最後に、10代20代の読者に向けてメッセージをお願いします。

自分自身人生の選択を迷ってばかりですが、自分の心に従って生きると後悔がないと思って選択しています。やりたいと思う方向に進むと必ず面白い出会いがある。たとえうまくいかなくても自分を責める必要はない。

「いいな!」と思えることがあったら、心の炎が消える前に行動してみることが大切だと思っているので、一緒に頑張りましょう。

ー素敵な言葉をありがとうございました!神澤さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:山本佳奈(Twitter
執筆:こつ(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter