様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第856回目となる今回は、低糖質スイーツ専門のパティシエをしながら、パーソナルトレーナーとしても活躍されているミランダさんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯をうかがいました。
病に倒れ、1度パティシエの道を離れざるを得なかったミランダさん。つらい過去や制限を乗り越えて、低糖質スイーツパティシエとして躍進するまでの過程をお伺いしてきました。
「食べ物で人に幸せを届けたい」とパティシエの道を志す
ー最初に簡単な自己紹介をお願いします。
低糖質スイーツパティシエのミランダです。元々ホテルや個人店でパティシエをしていたのですが、尿路結石や持病の影響で健康を一から学ぶために、ジムのパーソナルトレーナーとして活動していた期間もありました。現在は低糖質を含む、健康にまつわるスイーツを販売しています。
ー将来の進路はどのように決めましたか。
ものごころがついたころからパティシエになりたいと思っていたので、製菓の専門学校を受験しようと考えていました。そこで悩んだのが、地元新潟と東京のどちらで受験するかです。
「専門学校をどこにしようか」ではなく「どこで就職したいか」を考えた結果、都内の学校を受験しようと決めました。進路が定まったあとは、東京でケーキ屋巡りをして美味しいお店を調べはじめました。
ーパティシエになりたいと思ったきっかけを教えてください。
幼少期のころから、食べることも美味しいものを食べているときの人の顔を見ることも好きで。食べ物で様々な方に幸せを届けたいと思ったのです。
また、幼いころは「家族に認められたい」「親に少しでも褒めてもらいたい」という気持ちがありました。料理やお菓子作りをすると親が褒めてくれたのも、パティシエになりたいと思ったきっかけだと思います。
修行店に就職。販売業務で話を聞くことの大切さを実感
ーケーキ屋巡りをして、自分が働きたいと思うお店は見つかりましたか?
専門学校1年目の後半には目処をつけ、「給料なしでよいので仕事をさせてください」とお店にお願いしました(笑)。無給でも厨房を経験できることに意味があると思ったからです。
お店側も私を受け入れてくれて、授業が終わったらお店で修行する毎日をおくるようになりました。専門学校卒業まで修行を続け、その後は同店への就職も決まりました。
―就職後のことを教えてください。
就職してからは販売業務が多くなり「お客さんにお菓子の魅力をどうやって伝えるか」を学びました。修行時からお店のケーキをたくさん食べてきて味を熟知していたため、お話を聞いてお客さんの好きそうなケーキをおすすめしました。性別や年齢別に人気な商品の傾向を把握しておき、提案時の参考にすることも。
そう考えると、販売業務を通してヒアリング能力が鍛えられたと思っています。たまに自分のお店の評価を見るのですが、自分の接客が褒められているととてもうれしいです。どれだけ商品の魅力を伝えられるかで、お客さんが購入するかどうかも変わってくるので、接客はとても大切であることを学びました。
病に倒れるも、パティシエとして生きていくことを決意
ー24歳でパティシエを1度辞める決断をされましたが、当時のことをお話しいただけますか?
1社目の個人店を卒業して、様々なケーキを作るためにホテルのパティシエに転職しました。仕事に慣れ、ケーキの開発やデザインに携われるようになったタイミングで、尿路結石が原因で倒れてしまいます。
医師からは糖質の高い食べ物は控えるよう言われました。私の場合は遺伝が原因で発症したため、防ぎようのないことでもあるのですが、運動と食事改善で発症の確率を下げられることを知りました。
パティシエは試食だけでもホールケーキ1つ分は食べることになります。そのため、まずは健康でいることが第一だと考えてパティシエを辞めました。下積み期間からやっと抜け出して、やっとやりたいことができるようになったときに発症したため、すぐに前向きにはなれませんでしたが。
ーパティシエを辞めてからのことを教えてください。
身近な人の話を聞き、自分自身を見つめ直した結果、やはりパティシエを諦めたくないと思いました。健康改善について学べば、家族や身近な人を助けられると思い、進路を決めたのです。
まずは低糖質に特化したジムでトレーナーとして働き、健康改善を学びました。上司やお客様に「3年後にはパティシエに戻りたい」ということをあらかじめ伝えていたため、まわりも自分がしたいことを理解してくれました。私の作ったお菓子を食べたいと思ってくださる方もいて、トレーナーの仕事と同時並行でお菓子の販売をしたこともあります。
ヒアリングをして、お客さんの健康状態に適したお菓子を作ることもありました。そうしてジムでの仕事やお菓子の販売を通して「健康という武器」を手に入れることができたと思っています。
ーそのときに学んだことや感じたことを教えてください。
どん底に落ちた気持ちやマイナスな気持ちは、のちに自分の武器になることを学びました。また、お客さんやまわりの方々との関係をより一層大切にしたいと思うようにもなりました。
トレーナーとして仕事をするうちに人と接する機会が多くなり、まわりの方に救われた部分がたくさんあったからです。
特にジムのスタッフの方々は人生の先輩としてアドバイスをくれたり、私の挑戦を応援してくれたりして、とても励みになりました。
―トレーナーとして3年働いたあと、27歳で低糖質スイーツの販売を開始されましたが、当時のことを教えてください。
1人でお菓子のデザインや分量決め、包装、販売などをしなければならないのが大変でした。
その反面、販売イベントの際は人との出会いがあり、お客さんの笑顔や「美味しい」という言葉をいただけてうれしかったです。お客さんの顔や言葉を思い浮かべると、たとえ作業が大変でもがんばれるんですよ(笑)。このような経験を通して、改めてお客さんのありがたさを感じました。
―ほかに、1人で仕事をしていてよかったことはありますか?
運用しているInstagram上でお客さん1人ひとりとメッセージのやり取りができるので、ヒアリングを通してお客さんのニーズをくみ取れるようになったのがよかったと思っています。
お客さんから「低糖質とは思えないくらい美味しい」と言われることがあり、そのようなお声を聞けるのはうれしいですし、パティシエを続けてよかったと思えます。病に倒れて味わったつらい経験を糧に低糖質のケーキを作っているので、私と同じような境遇の方に美味しく食べてもらえるのは、やはりうれしいです。