株式を未来への投票券に!Proxy Watcher松木 耕が行動しつづける理由

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第665回目となる今回は、株式会社Proxy Watcherの松木さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

現在、企業と対話したい株主を支援している松木さん。株主を支援したいと考えるようになった経緯と今後の展望についてお話しを伺いました。

小学校の担任の授業が原点、社会を深く考えるようになる

ーはじめに簡単に自己紹介をお願いいたします。

株式会社Proxy Watcherの代表取締役をしております、松木耕と申します。

事業内容は、日本企業に向けて環境問題や人権問題・ガバナンスの改善を求める株主を支援です。株主が企業に変革を求める「株主アクティビズム」の世界の最前線を取材・発信、上場企業向けにESG戦略やIRに関するコンサルティングも実施しています。

ー幼少期で印象に残っていることはありますか?

小学4・6年生のときの担任の先生が、マイノリティのバックグラウンドをお持ちの先生でした。その先生の社会の授業は教科書通りではなく、実際江戸時代や近代で起こった「差別」を一人の人間として教えてくださったのです。正直、小学生の私にとっては難しい内容でした。ですが、実際に起こったセンシティブな事例に対して考えて意見交換をした経験は、僕のなかで非常に印象深いできごとでした。

先生の授業を受けたおかげで、世界のできごとを深く考えるようになりました。この経験が、今行っている事業の原点です。

ー幼少期に一人の人間として接してくれることは、非常に嬉しいことですよね。

そうですね。先生のおかげで社会がとても好きになりました。

また、高校生のときのできごとも非常に印象的です。

交流のあった友人がトラブルの渦中にいたときのことです。友人が不利な状況になっていることを知っていたにも関わらず、私は何もせず傍観していたのです。

たしかに私は直接的に関わりはありませんでしたが、小学校の担任の先生に教えていただいたことがまったく活かせていないと反省し、自分の行動を改めて考えるきっかけになりました。

ーその後、大学進学をされたとのことですが、大学や学部はどのように選ばれたのですか?

大学については高校が大学一貫校だったので、そのまま内部進学をしました。

どこの学部に進学しようか考えたとき、はじめに1つテーマを決めて進学先を決めようと。そこで、中国の「経世済民」という経済の語源にもなった考え方について学びたいと考えて経済学部に進学しました。

ーどのような大学生活を過ごされたのですか?

一番注力したのは留学ですね。アメリカとドイツの2ヵ国に行きました。

アメリカでは、財団のサポートでリーダーシップや市民活動について学ぶインターンシップに参加しました。日本だけでなく様々な国から同世代の学生が参加しており、世界最先端の経済の動きや政治を目の当たりにして世界の複雑性を身をもって感じました。

ドイツは以前から小学校の担任の先生の影響で戦争について調べていたので、直接歴史に触れたいと思い選択しました。

ドイツでは、難民の方々へのボランティアをしつつ難民危機について取材し記事を書く経験をして。周りはみんなドイツ語だったので言語の壁は大きく、コミュニケーションを取ることはとても難しかったです。

実際に難民の方々と触れ合うなかで、ジャーナリストという職業や自分で選択することの難しさを学びました。

メディア業界に入り、メディアのあり方に悩む

ー大学卒業後は、どのような進路に進まれたのですか?

経済メディアの記者になりました。

留学では正直自分の中でなにかが変わるということはなく、むしろ大学卒業後は就職するというレールに乗っていることにしんどさを感じていました。様々な葛藤をしつつもジャーナリストの道を諦めきれず、就職活動をしてジャーナリストになりました。

ー夢を叶えたのですね!素晴らしいです。

入社して経済や株式について学びはじめたのですが、非常に難しくて毎日上司からお叱りを受けました。多分野を学んでいくなかで、ジェンダーバランスや若者の力など様々な分野のマイノリティについて考えるようになったのです。

人口ピラミッドでみるとマイノリティである若者が年上の世代から「選挙に行け」「政治に関心を持て」などと言われることがありますが、現実として若い世代が政治に参画して変化を起こすことはかなり難しいことなのではと思います。

若い世代を含む多くの人々が社会課題について本当に関心をもつような状態をつくるためには、ただ事実を伝えるだけでなく、問題解決のために話し合ったり意思表明したりするところまでがメディアの役割ではないかと考えています。