できることを磨く!写真家・映像クリエイター有賀翼から学ぶ「行動すること」の大切さ

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第616回目となる今回は、写真家・映像クリエイター有賀翼さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

自分のできることに向き合い、子どもの頃の夢や企業で働くことを手放し、その後起業をする。常に行動を起こし、自分の道を切り開いてきました。そんな明日死んでも後悔しない人生を選んでいる有賀さんの生き方を、これまでの人生からひも解いていきます。

カメラで“愛に鍵をかける”事業をする

ーまず、簡単に自己紹介をお願いします。

現在、写真家兼映像クリエイターをしています。2021年3月にKeyBookという会社を創業し、代表をしております。そして、ウェディングのロケーションフォトサービス『KeyBook Wedding』のブランドを立ち上げました。

ーKeyBookでは、具体的にどのような事業をされていますか。

KeyBookでは、3つの事業を行っております。1つめは、全体の3割を占める映像製作です。これは企業様のプロモーションや、広告映像などを撮っています。

2つめは、全体の1割を占めるクリエイティブ制作事業です。SNSのコンテンツの作成や、YouTubeの運用をさせていただいています。

3つめは、全体の6割を占める、さきほどお話ししたウェディングフォト事業です。ウェディングの写真・映像撮影を行なっています。

ー「KeyBook」という社名にはどのような由来があるのですか。

「鍵という意味のKey」と「本という意味のBook」で成り立っています。そして、本はストーリーと置き換えられています。それぞれにいろいろなストーリーがあって、それに鍵をかけるイメージです。

もともとウェディング事業から始まっているので、「永遠の愛に鍵をかける」という意味を表しています。

ー「KeyBook」はどのようなメンバーで行われているのですか。

基本的には、自分と映像クリエイターの2人体制で行なっています。状況によって、他のクリエイターやエンジニアなどのメンバーが協力してくれる形でやっていて。自分が撮影に従事できるように、軽い仕事などは業務委託を使うこともあります。

サッカー三昧の人生に幕を閉じ、新たな道へ向かう決意をする

ー幼少期のお話を聞かせてください。小さいときの夢は何でしたか。

小学校3年生の終わりくらいに地元のクラブでサッカーを始めました。そこから、高校卒業までサッカーを続けました。そして、将来はサッカー選手になりたいと思っていたほどです。

ーサッカー三昧の生活を送っていたと思うのですが、高校2年生のときに、サッカーができなくなってしまったとか。

はい。高校2年生の終わりに、腰の骨を疲労骨折しました。リハビリに半年かかると言われて。高校3年生の最後の大会にギリギリ間に合うかどうかの大怪我だったのです。

ー部活の仲間たちが最後の大会に向け練習をしていくなかで、自分は部活に参加できなかったときのお気持ちはいかがでしたか。

最初はめちゃくちゃ悔しかったです。メンバーに選ばれて、試合に出れていたのに……。試合のときには、自分が応援している状況がなかなか受け入れられなかったですね。

リハビリを通して最後の大会には復活し、メンバーに入ることができました。しかし、試合に出ることはできませんでした。最後まで思うようにサッカー人生を送れず、悔しさが残ったままの引退となりました。

ーここで、10年間続けてきたサッカー人生を終えたとのことですが、固い決意で辞められたのでしょうか。

そうですね。サッカーを辞めることは、生活を変えるようなもので、勇気のいる決断でした。

もちろん最初は大学でもサッカーをやろうと思ったのですが、この悔しさを他のものに向けようと思って。何かほかに熱中できるものを見つけたいと思い、完全にサッカーを辞めることにしました。

暇で始めたカメラにのめり込むようになる

ー今の活動につながるカメラは、部活を引退してから始めたとか。

今までは放課後にサッカーの練習がありましたが、部活を引退してから本当にやることがなくて暇になってしまったのです。

そのときに「日々を思い出に残したい」と思い、初心者が使うような小さなミラーレスカメラを買いました。毎日学校に持っていき、写真を撮っていました。

ー有賀さんはもともとカメラが好きだったのでしょうか。思い出や記憶を残していきたいという気持ちは前々から?

思い返してみると、中学生のときの修学旅行でたくさん写真を撮っていましたね。

また、父がサッカーの試合を毎回映像として残してくれていて。小学校6年生のときに、今までの映像をDVDにまとめて、ちゃんと作品として残してくれたことがありました。とてもうれしくて、楽しく、わくわくした気持ちになったのを覚えています。

そのときから、思い出は記録としてちゃんと残したいという気持ちがあったのだと思います。

ー大学に進学し、普通の大学生をしていたとのことでしたが、カメラは続けられたのでしょうか。

続けていたら、お仕事を少しずついただけるようになりました。なぜか外国人旅行者の東京観光に1日密着して、写真を撮る仕事の依頼が多かったですね(笑)。InstagramのDMから直接依頼をいただいていました。

ー当時、やりがいはありましたか。

やりがいや達成感は感じていました。しかし、途中から写真を撮ることの目的が変わってしまったのです。

はじめは、写真を記憶として残す目的だったものが、途中からInstagramをやることになってしまったのです。多くのいいねをもらうとか、フォロワー数を1万人にするとか。

数が目標になってしまっているのが嫌で、アカウントを1度消しました。そして、必然的に仕事の依頼もなくなりました。

それがきっかけで、写真との向き合い方が変わりました。いいねが欲しいから、シェアしたいから撮るではなく、純粋に自分が撮りたいものを撮りたい「写真を撮る」ことを楽しみました。

海外留学が僕の原点。日本では得られなかった価値観を知る

ーそこから、どのような学生生活を送っていたのですか。

アメリカに留学に行きました。

ーアメリカ留学!きっかけは何だったのでしょうか。

外国人の方を撮るときには英語が必要で、もう少し話せるようになりたいと思って。また、幼少期に父からアメリカ出張の際のいろんな話を聞いていて、アメリカに対する強い憧れを持っていたのもありますね。

ー実際に留学に行ってみてどうでしたか。

語学を学べたのはもちろんですが、それ以上に学べたことがありました。たくさんの人と出会い、いろいろな人の考え方や価値観の吸収ができました。日本では知ることができなかったことばかりで。当初の目的だった言語以上の財産を得ました。

ー財産となった価値観とは、何だったのでしょうか。

自分がいたサンフランシスコではLGBTの方がたいへん多く、着いて2日目くらいに街でゲイのカップルを見たのです。当時の日本だったらあり得ない光景でした。

街ではそういった光景が定着していて、周りの人たちも軽視せず、どんな人もみんなフェアな価値観がありました。

日本だと固定概念が強く、誰かが作った当たり前の考えが全て正しいと思っている人も多いと感じていました。一方で海外では、固定概念とかを気にしない人が多いです。

例えば、就職で考えてみると、日本では「みんなが就職するから、自分も就職する」という考え方の人が多いです。対して海外では、「まず自分が第一優先」「自分のやりたいことをやる」という考え方の人が多いような気がします。

アメリカ留学で得た考え方や価値観がいまの自分の人生に活きています。

自分のできることをしていったら、楽しいと思えることに出会った

ー留学から帰ってきて、大学卒業後、就職をしたものの半年で退職されたとか。

起業したいと思ってはいましたが、まず一度は就職しようと決めました。もともと興味のあった住宅の仕事をしようと思い、大手住宅メーカーの営業マンになりました。

「トップ営業マンになりたい」と意気込んでいたのですが、人間関係や会社の雰囲気がどうしても合わず辞めてしまいました。辞めた後はこれからの人生どうしようかと毎日不安でした。

ー退職後、どのようにいまのサービスへと繋がっていったのでしょうか。

やることがなかったので、まずは自分ができることをやろうと思いました。できることが映像しかなかったので、知り合いのお店の人に映像作りますよと話を持ちかけたところ、1本撮影させていただけました。

そうしたら、その映像を見た他の社長の方からお店のプロモーション撮影をご依頼いただいて。そこからだんだんと仕事が広がっていきましたね。

ー写真だけではなく、もともと映像もご経験があったのですね。

写真をやっていたときから、映像も好きで少しずつ作っていました。今まで仕事として受けたことはなかったのですが。旅などに行き、だいたい1分くらいで自撮りをしたり、国内外問わず現地の自然や人を一眼レフで撮影をしていました。

歩いていていいなと思ったところをひたすら撮るストリートフォトグラフィーを題材にしていました。

ーストリートフォトグラフィーをしていたなかで、ウェディングがKeyBookのメインサービスとなるきっかけなどはあったのでしょうか。

きっかけは、ちょうど1年前に、いま行なっているようなウェディングのロケーション撮影の依頼をいただいたことでした。そのときの撮影が笑顔しかない撮影で、わくわくしてとても楽しかったのです。

また、お客様がとても喜んでくださり、「ありがとう」の声が直接聞けてうれしかったです。企業の案件とはまた違う反応がいただけて。

このときに感じたわくわく感楽しさをもっといろんな人に伝えたいと思い、『KeyBook Wedding』としてロケーション前撮りブランドを作りました。

行動することで、自分の人生を後悔しないものにする

ー今後、やりたいことや目標を教えてください。

やりたいと思っていることは2つあります。1つめは、今後はウェディング事業で、自分たちが動かなくてもサービスが動く仕組みを作ろうと思っています。そのために、いまはクリエイターを集めていて。

自分たち以外にも動ける人を作ることで、そのぶんKeyoBookの他の事業の映像制作や、クリエイティブ制作といった部分をもう少し強化していきたいと思っています。

2つめは、増やそうと思っているもうひとつの事業です。実は、今後ドローン事業もやっていこうと考えていて。ドローンがもともと好きで、ずっと仕事にできないかなと思っていました。

せっかく撮影でもドローンを使うので、撮影以外で何かできるのではと調べたのです。そうすると、使用場面が多くあることがわかりました。例えば、農業や火災現場での安全確認、家屋の調査、測量など。新しい分野に挑戦してみようかなと思ってます。

ーでは、最後にできることからやりたいことへと行動していった有賀さんから、みなさんへ一言メッセージをお願いします。

逆にアドバイスしてもらいたいくらいです(笑)。僕よりスキルを持っていたり、優秀な人はたくさんいると思います。でも、行動に移す人は少ないのです。

自分が独立してから、いろいろな友達からやりたいことがあると相談を受けるのですが、結局みんなやらない人が多いのです。

なので、僕からお伝えしたいことは「とりあえず考えるんだったら、行動すること」です。自分のできること、やりたいことを1つずつ行動に移していけば、道は拓けると思います。

自分もまだまだ成功はしていませんが、行動した人にしか本当の成功や本当の自由は掴めないと思っています。

ーありがとうございました!有賀翼さんの今後のご活躍を応援しております!

取材者:田中のどか(Twitter/note)
執筆者:田中彩子(Twitter
編集者:えるも(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter