山田孝之さん絶賛!映画監督・脚本家 村上リ子に学ぶ、変化を恐れない生き方

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第464回目となる今回は、映画監督・脚本家の村上リ子さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

完全未経験の初監督作品が全国上映決定した村上さん。今回は未経験から映画監督になった経緯や原動力、今後のビジョンについて語っていただきました。

自分の強みを生かしたい、映画学校に行かず映画製作をはじめる

ーまずは現在の活動や取り組みについて教えてください。

現在、映画監督・脚本家として活動しています。

映画監督になろうと決めたのは2020年の10月頃でした。同年3月に大学を卒業し、映画学校には通わず自分で脚本を書き、10月から1月に短編映画を製作。30名ほど協力者を集めてロケ地なども自分で選ぶところから始めました。

はじめは、カンヌ国際映画祭の短編部門応募を目標にしていましたが、山田孝之さんら主催の「MIRRORLIAR FILMS」(短編映画制作プロジェクト)に選んでいただき、イオンシネマを中心に全国50館以上の映画館での上映が決定しました。今は短編映画の反響でいただいたお仕事をしながら、色々と挑戦しています。

ー去年の10月に映画監督になろうと思ったとのことですが、どういったきっかけがあったのでしょうか。

それ以前にもフリーランスで映像制作をしていたのですが、映像制作をしている人は非常に多くて。自分の強みを生かした仕事がしたいと思い、中学生のころから好きだった小説を書くスキルを生かして、物語のある映像をつくろうと考えたのがきっかけです。

また、私はクリストファー・ノーラン監督が好きで、特に「メメント」という映画に憧れていました。映画を観るうちに、ノーランみたいな監督になれたら楽しそうと感じて映画づくりをはじめました。

ーなるほど。映画を作りたいと考えたとき色々悩まれたと思うのですが、具体的にどう進められたのですか?

はじめはアメリカの有名な映画学校に行きたいと考えていたのですが、調べるととてもお金がかかることがわかって断念。

そこで、短編映画を撮って賞を取り次のステップに進むのが一番の近道だと考え、映画撮影することを決めました。私は映画製作をはじめたのが早い方ではなかったので、最初の取っ掛かりをつくるという点で、最初に1本映画を作るというのは良かったと感じています。

ー映画を作っていて一番大変だったことは何ですか?

やはり映画は一人では作れないので、色々な方に協力していただくことが一番大変でした

私は映画関係の知り合いがいなかったので、ネットでメンバーを探しました。最終的には30名ほどの協力を得られ、中には脚本を読んで面白いからと参加してくださった方もいました。

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自身で文芸部設立、創作を続け「田辺聖子賞」受賞

ー創作活動の積み重ねが今の実績に繋がっていると思うのですが、昔から創作活動はされていたのですか?

そうですね。小学生のころから読書が好きで作家になりたいと思っていました。ミステリー小説にハマり、休み時間に友達と遊びで短い小説を書いていた経験も。中学校に入ったら本格的に小説を書こうと決めていました。

中学受験をして文芸部のある中高一貫校に入学したのですが、その学校の文芸部はあまり積極的に活動をしておらず想像とギャップがありました。中高生が同じ部活に所属するということもあり、中学生だけの文芸部をつくることを先生に交渉し、新しく部活をつくりました。

ー新しく部活を立ち上げたのですね!それは大変でしたね……。

実質ゼロベースからの部活新設だったので、部員を集めたり毎週活動内容を考えたりするのが大変でした。部誌やフリーペーパーを創刊したり、部員同士の小説批評会の評価項目を考えたり、句会を開いてみたり、どうしたら部員の皆に楽しんでもらえて実力も上がっていくかを考えていました。そのときのことは今でも印象に残っています。

おかげで、中学3年生で全国2万点中最優秀賞である「田辺聖子賞」受賞、高校生になって「全国高等学校総合文化祭」という全国大会にも出場することができました。ですが、賞を取ったことで満足してしまったことと自分の経験不足で小説が書きにくくなったことが相まって、創作活動は一旦やめて受験勉強に専念することにしました。

ー高校時代は落ち着きつつ、大学時代はまた創作活動を再開されたのですか。

大学では、インターンや授業・ゼミ・サークルなどやりたいことが沢山みつかり、創作活動がメインではありませんでした。でも、当時入っていたアカペラサークルでエンドロール映像の制作を頼まれたことがあって……。ライブ中に伏線をたくさん仕込んでエンドロールで全ての伏線を回収すると面白いのではと思い映像制作をしたところ、大きな反響をもらいました。たくさんの方に協力していただいてエンドロールを完成させた経験は、今回の映画制作に繋がっているなと感じます。

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人との繋がりを大切に。変化を恐れず行動を続けることが今の自分をつくっている

ー村上さんは、非常に勇気ある行動を起こされていますよね。行動する上で日々大切にされていることはありますか。

はい、3つあります。

1つ目は、人との出逢いを大切にすることです。やりたいことを始めるとき、人とのご縁がきっかけになることがとても多いです。私の場合は映画をつくる前に、色々な挑戦をされている大人の方と出会ってゼロから映画をつくる勇気をもらったり、そこでの繋がりからご自宅をロケ地としてお借りしたり。たくさんの方から映画をつくる後押しをしてもらいました。思わぬ出逢いから色々な活動に発展しているので、様々な場所で友達をつくることを大切にしています

2つ目は、他の人の挑戦を応援することです。挑戦を続けていると、否定されることがよくあります。その辛さがわかるからこそ、私は挑戦している方をできる限り応援したいし、みんなが応援しあえる社会の方が面白いと考えています。

3つ目は、変化を恐れないことです。実は私自身、変化していることを周りに気付かれるのがとても怖かったんです。一貫性がない人間だと思われたくなくて……。でも、今日と10年後に言っていることが同じであれば、それは成長していないということだと気付きました。毎日違う自分になることを恐れないことが、挑戦に繋がるのかなと思います。

人生のテーマは「子どもが理不尽な目に遭わない社会づくり」

ー変化を恐れず行動し続けている村上さん。人生のテーマはありますか?

私の人生のテーマは、「理不尽な目に遭う子どもがいない社会を作りたい」というものです。幼少期から「なぜこんなに生まれた環境によって違うんだろう」と感じることが多くあって。生まれた家庭によっては、子どものうちに虐待されて亡くなってしまうこともありますよね。周りの家庭を見ても、こちらは裕福そうだけどこちらは大変そうとか、4歳くらいからとても不公平で理不尽だなと思っていました。小さい頃から理不尽に対しての反発心は強く持っていました。

大学2年生のときにNPO法人で生活保護受給世帯の子どもに勉強を教えるという活動をしていたのですが、そこでの研修で「あなたが一番怒りを持っていることはなんですか」と聞かれました。そのときに、自分は子どもが理不尽な目に遭うことに一番怒りを覚えると改めて気付かされて。やはりそれが私の人生のテーマだと再認識しました。

大人になっていくにつれて、人生は自分でどんどん選択肢を選べるようになっていきます。でも、生まれるところだけは誰も選べないし変えられないので、そこで理不尽な目に遭う人をなくしたいと思っています。

ー映画製作や子どもに対しての思いを伺いましたが、今後の展望についてもお伺いしたいです。

映画製作でいうと、ハリウッドやNetflix作品のような規模の大きな作品をつくってみたいです。あとは、世界史の教科書に載りたいという夢があります。

現在はミュージックビデオの脚本・監督や企業のブランディングムービーのプロデュース、SNS映像の企画など、映画だけでなく様々な映像制作をさせていただいていますが、映像以外でもやってみたいことが沢山ありますし、来月は何をやっているか自分でもわかりません。色々挑戦を続けていこうと思います。

もう1つの人生的な目標としては、いつか子どもが理不尽な目に遭わない仕組みを作りたいです。実は、今回の映画にも虐待される子どもが出てきます。自分の描きたいテーマは自然と自分の思いが入るので、映画を通じてこれからも伝えていきたいと考えています。

▶ THE NOTES 予告編

ー最後に、こちらを読んでいるU-29世代の方にメッセージをお願いします!

色々挑戦したり、幸福に生きていく上で最も大切なことは、自己肯定感を持つことだと思います。挑戦するときに自己肯定感があればできてしまうこともとても多くて。

私は周りから「自己肯定感が高いね」と言われることが多いのですが、それは、変わり者の親が小さいころに「天才だね」と何の根拠もなく言ってくれた影響が大きいと思っています。

何かを言い聞かせると現実になると感じているので、ぜひ今日から鏡に向かって自分に天才だと言ってみたり、友達、恋人、知らない人などにも天才と伝えたりしてみてください。そうすれば、みんな自己肯定感が上がってハッピーになれる気がします。皆でお互いに褒め合っていけたら良いですね。

ーありがとうございました!村上さんの今後のご活躍を応援しております!

▶︎村上さんのSNS(Twitter/Instagram

取材者:高尾 有沙(Facebook/Twitter
執筆者:柚月 歩(note/Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter