深く自分を知って生きやすい社会に。Inspire代表 中村伊吹が語る瞑想のメリット

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第614回目となる今回は、株式会社Inspire代表 中村 伊吹さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

株式会社Inspireの代表をつとめる中村さん。今回は、瞑想の世界に入るきっかけや瞑想をする理由について伺っていきます。

感情の起伏がきっかけで、自分の内面と向き合うように

ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。

株式会社Inspireの中村伊吹と申します。

1994年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。複数の会社を経て、2020年2月株式会社Inspireを設立。企業向けアセスメントやリーダシップ開発、各種ワークショップを展開。

大学時代よりヨーロッパの神秘主義思想やインド哲学、仏教、禅などの東洋思想に親しむ。鎌倉の月読寺にて本格的に瞑想を始める。人間の意識に関して書物や瞑想を通じて探求している。

ー哲学や思想に興味を持ったきっかけはありますか?

中学生のころ、両親がスポーツメンタルトレーニングの本を買ってくれたことがきっかけですね。

少年時代は今では考えられないほど感情の起伏が激しくて。小学校1年生から12年間ひたすら野球に打ち込んでいたのですが、悩むことも多かったのです……。そんなときに両親が、スポーツメンタルトレーニングの本を買ってくれたのがきっかけで、メンタルのおもしろさに気がつきました。

また、高校生のときにたまたま行った本屋さんで、後に瞑想の師匠となる仏教の先生が書かれた本と出会いました。読みすすめるにつれて自分の悩みが解決していくような感覚を覚え、その場でほとんど読んでしまいました(笑)。そこから、自分の内面にとても関心をもつようになりました。

ーなるほど。その経験から哲学や思想に心酔していったのですね。

そうですね。哲学や宗教、思想の世界は一生を費やせるほど非常に深くて際限がないので、学びを進めるたびにどんどん深まっていきました。

私は、自分を知ることが人間を知ることにつながると考えています。特に仏教はそのような考え方で、深く自分を知ることが他者を知ることにもつながっていくと思います。

社会に出て瞑想の世界へ。

ー学生時代のできごとがきっかけで哲学の世界に入った中村さん。大学は哲学や思想を学べるところを選んだのですか?

大学はまったく違う道を選びました。ですが、さまざまな授業を受けるうちに哲学のおもしろさを再発見し、学問としての哲学を学ぶようになりました。

特に印象に残っているのは、日本ではじめての哲学者だといわれている西田幾多郎の『善の研究』と仏教思想家である鈴木大拙の『日本的霊性』という本に出会ったことです。この2人は生涯の親友で、世界的に認められている哲学者と仏教の思想家です。じっくりと考える時間がとれる大学時代にこれらの本に出会えたことは、幸せなことだったと今でも思います。

ー大学卒業後も哲学や思想の世界に触れ続けたのですか?

そうですね、社会人になってからは特に瞑想の世界に足を踏み入れるようになりました。

きっかけは社会人になったころ。高校生のときに悩みを解決してくれた本を書かれた瞑想の先生が主催する座禅会に参加したのです。当時私は身体が固くて、座禅を組めませんでした。先生に相談すると身体の中に滞っているエネルギーを流す施術をしてくださり、実際に少し身体が柔らかくなりました。

先生と出会ってから、目に見えない領域や自分が認識していない働きがあることを身をもって体感しました。今自分に見えている世界だけが宇宙の全てではないのだということを自覚させられて、そこから瞑想とかエネルギーの世界により関心が深まりました。

ー中村さんは時間を決めて瞑想されているのですか?

宗教の世界では「霊」という考え方があります。それは「霊」という目に見えない作用が1日に20分や30分だけ働いているということではなく、24時間常にそういう作用が働いているのだという考え方です。

その考え方では、例えば今こうやってお話ししているときも目に見えない、肉眼ではとらえることができない力が働いているのだという解釈をします。何気ない動作でも霊的な力が働いている、あらゆる瞬間に霊的なものが働いているのだと考えます。

肉体の外側で起こっていることも、内面で起こっていることも、そこで起こっていることをただ観察する。どんな瞬間でも、瞑想の時間になり得るという考え方です。その考え方の影響もあってか、座って瞑想をする際にも特に時間は測っていません。

ー瞑想の仕方を具体的に教えてください。

1番簡単なのは椅子に座って足を地面にしっかりとつけて、全身の力を抜いて目をつぶります。すると、内面にいろんなことが起こってくると思うので、そのことに関して解釈を加えずに自分の思考をただ観察していくだけ。それだけです。

呼吸に意識を集中させる瞑想法もありますが、集中して作り上げたものはすぐに消え去ってしまいます。特殊な瞑想状態を作り上げようとするやり方よりも、内面で起こっていることをただ観察するというやり方の方が多くの人にとってはやりやすいのではないかと思います。

自分の価値観を大切にして、より生きやすい社会を実現していく

ー近年生きづらさを感じる方が増えていると思うのですが、どのように考えられていますか?

特に日本では同じようなものを求め同じような価値観を持って、みんなで足並みをそろえることを大切にしなければならないと考える傾向が強いのではないかと感じています。それは個人的にはもったいないことだと思うのです。

自分と同じ人間はこれまでもこれからも存在する事はありえないですし、すべての人が違う独自性を備えていると思います。すべての人が特別で、自分にしかないものを持っている。それをもっと引き出していくことができれば、自分にとっても周囲の人にとっても良い影響が及んでいくのではないでしょうか。

ーなるほど、自分だけの価値観を持つことが大切だということですね。

基本的に日本の教育体制はテストの点数がその人の評価になっています。たしかに他者が設けた基準における評価を大切にしていくことも、1つの道かもしれません。ですが個人的には、自分自身の内面から湧き上がってくるものを大切にして生きることが重要だと感じています。

社会生活を営む上で社会の価値観が大事なことは言うまでもありませんが、それは大前提として自分の内面から湧き上がってくるものに従って生きる人が増え、それを許容できる社会になっていくことでもっとみんなが生きやすくなるのではないかと思います。

自分自身の内面を見つめることは、自分にとって大切なものを見出していくプロセスになると思います。自身の内面と向き合う人が増えていくと、その人だけでなく、周りの人やその周囲の人、ひいては社会全体にとっても良い影響があるのではないでしょうか。

ー最後に、中村さんにとって瞑想とはどのような存在でしょうか?

「自分」を知るものです。

誰しもが多かれ少なかれ自分がどんな存在かを説明できると思います。ですが、本当の自分は言葉で説明できる分よりももっと深いものだと思うのです。自分というのは今の自分が思っているような存在よりも、もっと奥が深く計り知れないものなのではないかと感じています。瞑想はその深みを知ることができるものだと思います。

「自分」を知るプロセスを通じて、みんなが生きやすく、あるがままの自分を生きていくことができる社会になることを望んでいます。

ーありがとうございました!中村さんの今後のご活躍を応援しております!

取材者:大庭 周(Facebook/note/Twitter
執筆者:柚月 歩(note/Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter