無駄な経験はない。資産運用YouTuber・小林亮平に学ぶ、理想のキャリアへの近づき方

今は第一線で活躍しているビジネスリーダーの方に、10~20代の頃のまだ何者でもなかった頃から、現在に至るまでのストーリーをお聞きする連載企画「#何者でもなかった頃」。今回のゲストは資産運用YouTuberの小林亮平さんです。

ブログやTwitter、InstagramでつみたてNISAやふるさと納税などの金融知識を発信されてきた小林さん。現在はYouTubeチャンネル「BANK ACADEMY」の運営に注力しており、2021年9月には書籍「これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生」を出版されました。

フリーランスとして活躍されている小林さんですが、新卒で入社したのはメガバンクでした。今回は、現在のキャリアを形成するに至った考え方に迫ります。

新卒でメガバンク。入社の決め手は「人」だった

ーまずは、簡単に自己紹介をお願いします。

小林亮平と申します。新卒で三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)に入社し、法人営業を4年弱経験しました。

その後独立して始めたのが、ブログとTwitterを通じて金融に関する情報発信です。次にInstagramを開設し、現在はYouTubeチャンネル「BANK ACADEMY」をメインに活動しています。フリーになってから6年ほど経ちましたね、

ーファーストキャリアにメガバンクを選ばれていますね。もともと金融には興味があったのでしょうか?

正直にお伝えすると金融志望ではなく、入社した会社以外のメガバンクは受けてもいませんでした。

実は、就活の最中に東日本大震災が起きたのです。大学のゼミで企業訪問をする機会が多く、なんとなく「メーカーに行きたい」と思うようになっていたころでした。工場が止まったり面接がすべて延期になったりしたので、漠然とした焦りを感じていました。

このような状況下で銀行を受けた理由は、面接をやっていたから。志望度が高くないまま面接に行きましたが、面接官の人柄に惹かれて入社を決めました。

本当に人の役に立てているのか?葛藤した行員時代

ー新卒で実際に入行してみて、ギャップはありましたか?

入社理由になった「人」の部分では、ギャップはなかったです。「仕事の人間関係が辛い」と悩む人をよく見かけますが、そのような悩みはほとんどありませんでした。

一方で、仕事内容への悩みは年々大きくなりました。銀行では主に法人のお客様に対する融資の提案をしていましたが、続けているうちに「そのような提案を本当に必要としているお客様はあまりいないのではないか」と思うようになって。

疑問を抱いたまま行内のノルマ達成を目指していたので、だんだんとお願いベースの営業になってしまいました。「お客様にとって本当に必要な提案ではない」と思いつつ働くのはあまり楽しくなかったですし、うまくできなかったですね。お客様とノルマの間でずっと揺れていました。

4年近くこのような葛藤をし続けたのち、これからは真に人の役に立つことを仕事にしたいと思い、ほぼノープランでしたが退職を決意しました。

ー決断力がすごいですね!会社を辞めたいと長い間思っているのに勇気を出せない方が多いと思うのですが、そのような気持ちはなかったのですか?

不安はゼロではなかったです。しかし、当時はまだ26歳で独身だったこともあり、会社を辞めても再就職すればなんとかなると思う気持ちの方が大きかったですね。

もともと独立志向だったのも影響しているかもしれません。幼少期から自由が好きで、人からあれこれ言われるのが苦手なタイプで。広い公園で少し目を離すと豆粒サイズになっているような子どもだったんです。

「お役立ちの実感」が原動力だった

ー独立し、まずはブログとTwitterを開設されていますね。これらのツールでお金にまつわる発信をすることは、退職前から決められていたのですか?

いえ、退職してから考え始めました。

ですがゼロから考えたわけではなく、在職中からブログを読むのが好きで、自分も書いてみたいとは思っていましたね。若い世代のブロガーがたくさんいるのを見ていたので、自然とそのような気持ちになりました。

発信できる内容を探していて、思いついたのがお金だったんです。銀行員時代に金融の基礎知識はある程度身についていましたし、行員目線を加えた発信ができると思い、資産形成をテーマに定めました。

とは言え最初からうまくはいかず、収入が不安定な状態が1年程度続いてしまって。会社員時代の貯蓄が目減りするのを見るのは、本当に辛かったです。この時期に「お金がないとこんなに不安になるのか」と身をもって感じたことは、今の発信に活きていると思いますね。

ーなかなか成果が出ない中で、会社員に戻る選択肢が浮かぶことはありましたか?

根本的には発信することが好きだったので、それはなかったですね。ブログ運営が楽しかったですし、SNSでできたブロガー仲間と励まし合っていたので乗り越えられました。

また、役に立てている実感も原動力になっていました。少しでもコメントが来ると嬉しいんです。Twitterのフォロワー数が徐々に増えるのも本当にありがたくて。「人の役に立てていない」という銀行員時代の悩みを自分で解消できた気がしました。

続けるうちにさらに反響が大きくなり、SNS上でお金にまつわる質問をいただけるようになりました。量が増えてきた今でも、質問返しは続けています。どのようなことで困っている人が多いのかが分かるので、僕にとっても実はありがたいですね。

質問を返したことがきっかけでYouTubeを観てくれた方もいるんです。ブログ、Twitter、Instagramに続いて今はYouTubeチャンネル「BANK ACADEMY」で主に活動しているので、嬉しいですね。

ブログ運営の経験と強みを活かしてYouTuberに

ー小林さんのYouTubeチャンネルには2021年10月現在、登録者数が31万人以上いらっしゃいますが、1年ほど前には4万人程度だったと伺いました。伸びた秘訣があれば教えてください。

特別なことはしていませんが、ブログを運営していた経験が活きているとは強く感じます。無駄な経験なんてないんです。

検索に引っかかりやすいワードを盛り込んだり、離脱防止のために結論を先に言ってから丁寧に解説をしたり……このあたりの工夫は、ブログでもYouTubeでも有効です。

加えて僕は、もともと分かりやすいコンテンツを作るのに向いていたんだと思います。

ーご自身の強みを理解されていてすごいですね。自分ではなかなか気が付けないと思います。

僕も無自覚で、周りから言われて気が付きました。僕の場合は動画やブログの構成やイラストに対して「分かりやすい」と感想をいただくことが多くて。他の人と似た内容の発信でも、分かりやすさでは差別化できている自信があります。

逆に、バズる動画や笑いながら観られる動画は僕には撮れないですし、撮れる人は天才だと思っています(笑)。

目標は、さらに多くの人にコンテンツを届けること

ーご自身の想いや強みを活かして発信されている小林さんですが、今後のビジョンがあれば教えてください。

身近なお金の知識を発信し続け、今よりも多くの人に自分のコンテンツを届けたいです。みんな困っているのに知らない人が多いことがまだまだあるので、ネタは尽きないですね。

SNSでの質問返しも、できる限り現在のように丁寧に答える形で続けたいと思っています。独学で投資を始め、少しマイナスになったときに誰にも相談できず、怖くなってやめてしまう……。このような経験をしている人は多いですし、社会人1年目の僕もそうでした。お金の質問に一対一で回答をくれる人は貴重だと分かっているので、僕がその存在でありたいんです。

ー最後に、U-29の読者へのメッセージをお願いします。

やりたいことがない方がいるかもしれませんが、気がついていないだけで、誰にでもあると思います。今の仕事や将来について悩んでいる人も、自分がこれから何をしていきたいのか、一度ゆっくりと考えてみて下さい。あなたが夢中になれることも、もしかしたら仕事にできるかもしれません。

ただ好きなように生きていくためには、お金について困ることがないよう、その仕組みを最低限知っておく必要があります。拙著「資産形成1年生」は、そんな若者に向けても熱意を込めて書いたので、ぜひお手に取っていただけると幸いです。

たった一度の人生、後悔しないようにとことん楽しんでいきましょう!

ー本日はありがとうございました。小林さんの今後のご活躍を応援しております!

小林さんが運営されているYouTubeチャンネル、初の書籍の詳細は下記のリンクからご覧ください。金融知識ゼロでも資産形成を始められるヒントが詰まっています!

>>YouTubeチャンネル「BANK ACADEMY」
>>書籍『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』

取材・執筆:田中沙都(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter