色々なキャリアの人たちが集まって、これまでのキャリアや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。今回のゲストは、HeaR株式会社の代表取締役社長・大上諒(おおうえ・りょう)さんです!
「青春の大人を増やす」をミッションに掲げ、事業を展開するHeaR株式会社を起業するに至った背景はもちろん、学生時代や新卒時代のエピソードなど、大上さんのこれまでの人生についてに迫りました。
いつか起業したいと考えている方、これから社会人になろうとしている方にはもちろん、「最近、仕事が楽しくないな」「学生時代に戻りたいな」と悩んでいる方にも響く、大上さんの「働く」に関する考え方とは…?
人気アイドルグループ「SMAP」の姿に心を打たれ、起業家という選択肢を志す!
ー大上さんの自己紹介と、現在のお仕事を聞かせてください!
僕の経歴は、新卒でサムライト株式会社に入社しまして、24歳の終わりに起業しました。今は26歳でHeaR株式会社を運営しています。
僕たちは社名も2回変わっており、事業内容も5回くらいピボットを繰り返して色々な変遷をしてきて、現在は企業の採用支援と、toC向けに転職支援サービスを最近立ち上げました。
ー事業を5回!すごいですね。それまではどのような事業を?
創業当初はeスポーツ+プラットフォームを組み合わせた「エスプラ」という社名で、その名の通りeスポーツ領域の事業をやっていました。
ただ、それがなかなかうまく行かず、事業内容をピボットしようと考え、とはいえ事業内容と社名は親しいほうが良いよねということで、次は「シニアル」という社名にしました。
こちらは高齢化社会の課題を解決したいという想いから、シニア(Senior)に可愛らしい雰囲気の“ル”をつけ、高齢者向け住宅のマッチングメディアを作っていました。
続いて、PRテックとしてメディアと企業のマッチングプラットフォームを作り、その次はオープンイノベーションで大企業とスタートアップ企業のマッチングサービスを作って、その間に「孫レンタル」という高齢者向けのシェアリングエコノミーサービスのようなものもやっていました。
しかし全てあまりうまく行かず、結果的に今のHeaRで行っている採用支援に行き着いたという感じですね。
ー高齢者サービスからオープン・イノベーションサービスまで、幅広いように感じますが事業コンセプト等はどのように考えるのですか?
僕個人は、起業家として「100年先の日本に責任を持つ」というミッションを軸にしています。その軸に沿って先述の事業はすべてチャレンジしました。
上記ミッションに加え、自分自身の心が燃えるものが事業になっていると良いと考えており、さらに今後伸びていく市場かどうか・これまでの自分の知見や経験が活かせるかどうかという点を重視しています。
ーユニークな発想でいいですね。そもそも起業家にはずっと憧れていたのでしょうか?
僕が起業した要因になったのは、17歳で経験した東日本大震災です。その当時は高校2年生で、学校にいたのを覚えています。
地震と津波で日本が大変なことになっている中、何もできない自分に悔しいと感じました。僕は、そこで当時活躍していた“SMAP”に心を打たれたんです。
ーあの、解散してしまった「SMAP」ですか?
そうです。もともと、ジャニーズが好き!というわけではなかったのですが、SMAPの木村拓哉さんがすごく好きで、SMAPも好きだったんです。それまではただカッコいいな〜と思っていたSMAPへの憧れが、東日本大震災を経て尊敬の念に変わりました。
理由は2つ。1つ目は、当時放送していた「SMAP×SMAP(フジテレビにて約20年間放送された人気番組)」でずっと東日本大震災の義援金を呼びかけていたんです。グループを解散するまで、この一貫した行動が素晴らしいなと思いました。
もう1つは、福島の被災地でコンサートを開催したことですね。そこで、現地の人たちを元気にするためにうたった歌をすごく覚えています。それを聴いた福島の人たちの顔もすごく輝いていて…。高校生の僕は「あんな大変なことが起きたのに、こんなにも人を笑顔にする力ってすごいなぁ。SMAPになりたい!」と考えたんです。
ー「SMAP」になりたかったんですね!では事務所に…?
まさか……(笑)ジャニーズになるためには色々足りません、言わせないでください……(笑)そこで「僕のやり方で、SMAPみたいになるにはどうしたら良いんだろう?」と考えたんです。その時の選択肢が医者か教師か起業家の3択でした。
起業家は、東日本大震災の際に、ソフトバンクの社長であった孫正義さんが多額の寄付をしたというニュースを見てなんとなく夢の選択肢に入っていました。そこで当時の担任の先生にこの3つのどれかになりたいと相談したいんです。
ーその先生はなんて…?
まず、僕は当時文系を専攻していたので、医者になるのは難しい上に理系に変わったとしても医者になるのに何年もかかると言われて諦めました。
次に教師はどうだろう?と先生に尋ねたところ、「俺もお前くらいの年に起業家になるか、教師になるか悩んで、結局教師になったけど後悔しているんだ」と言ったんです。「なぜなら、目の前の生徒を幸せにする自信はあるけれど、教師は幸せにできる人数に上限があるからだ」と。
担当するクラスメート40人は幸せにできるけれど、それ以上の人間を幸せにする術がない教師になったことを後悔しているとその先生に聞かされ、「お前はここで教師ではなく、もっと多くの人を幸せにするSMAPのような存在になったほうが良いぞ」と言われ、起業家という選択肢が将来の夢になりました。
未だにその先生とは節目節目でやり取りが続いており、僕にとっての恩師ですね。
社会人として最も伸びる「ゴールデンエイジ」に、自ら負荷をかけられる環境へ新卒入社!
ー高校生のときに進路を選択して、その後はどんな人生だったのでしょうか?
SMAPのように多くの人を幸せにするため、起業家を目指すと決めてから、高校を卒業して大学に進学し、大学時代は様々な企業でインターンとして働いていました。
内定をもらった会社はちょうど上場準備に入っている時期だったので「将来起業する時のためにも、上場を間近で見れるのは面白そう」と思っていたんですね。そこで内定者としてインターンシップも行っており、週3〜4日ほどは働いていました。
しかし、上場準備に向けて勤怠管理も厳しくなるため、どんなに働きたくても20時には帰らないといけないんです。これは、僕が思い描いていたバリバリ働くスタートアップの姿とは少しズレているなと感じました。
ーズレているというのはどのような感覚ですか?
言葉を選ばずに言ってしまえば「このままでは僕自身の働き方が、ぬるくなってしまう」と感じたんですね。よくスポーツやトレーニングに例えて考えるのですが、最初に高負荷をかけるのか、低負荷をかけるのかによって、その後の“当たり前の基準”って変わると思うんです。
新卒で入社して働くのであれば、もっと高負荷を自分にかけられて、もっと働ける会社にいようと思いました。当時の僕は、労働時間が長いほど成長も早く、起業も早くできるだろうと捉えていたので、申し訳ないことに内定承諾した企業を入社直前の3月に辞退しました。
ーあと1ヶ月で入社なのに!その後はどうなったんですか?
1ヶ月で職探しをしないといけない!となってたまたま本屋に行ったところ、『未来を創るスゴいベンチャー101』という本が目に入ってきました。これは良いテレアポリストができた!と思って、片っ端から「就職したいのですが、空いている枠ありますか?」と電話したんです!
そこで、運良く巡り会えたサムライト株式会社に新卒入社しました。
ーすごい(笑)100社もテレアポ…!それで新卒入社の会社に出会えたわけですね。
サムライトは「枠は空いているけれども選考を受けてほしい」という流れになり、選考で2日間実際の業務を行うプログラムに参加しました。
その時は選考だったので、定時で帰るルールではあるのですが、以前働いていた企業と比べると、1日が非常に濃くて体感時間が全く違いました。5秒で1日が終わると思えるほどだったんです。こんなに仕事が楽しく、濃い時間が過ごせるのか…!と感じたのが入社したいと思えた理由でした。
ー入社後はどうでしたか?
仕事はめちゃくちゃ楽しかったですね!優秀な先輩も多く、どうやったら追い抜けるのか・勝てるのかと考えながら日々働いていました。新人にも対等に接してくれ、周囲の方々に本当に恵まれた1社目でした。
先輩方とディスカッションしたり仕事をする上で、もちろんいつかは勝ちたいですし、仕事の知識や経験も足りなかったので、まずは働く時間・量で勝負しないと!と思ったんです。そこで、会社に泊まる許可を社長からもらい、12時まで働いて銭湯に行き、会社に泊まって仕事をするのが日常になりました。
ー大上さんは、なぜそこまで負荷をかけて働くことができたんですか?
よく「なんで土日も働き続けるの?」と聞かれることがありますが、僕は仕事をスポーツや受験勉強と同様に捉えていますので「五輪出場を目指す選手は土日も練習はするし、受験勉強には土日も休みもないから」と回答しています。
これには、かつて僕自身がプロサッカー選手を目指していたことが関係しています。
僕にとっては、プロサッカー選手を諦めたことが結構なコンプレックスになっていたのですが、プロを目指して練習している人とはそもそも日常生活から違っていたんです。カードゲーム等で遊んでいた僕なんかより、何倍もの努力量をこなしていたんです。
子供の身体能力、運動能力が著しく発達する一生に一度のタイミング…いわゆる“ゴールデンエイジ”があるように、社会人にもそのゴールデンエイジはあると思っていました。
社会人としての基盤とその後成長する力をつけるのは、社会人1〜2年目なのではないかと考え、なるべく負荷をかけて働きたかったんです!
ーたくさん働ける会社という点以外に、会社選びで大切にしていたことは?
伸びていく市場かどうかをチェックしていました。
内定はコンサルティングファームや他の企業からもいくつかもらっていたのですが、たしかに優秀な方が多いですし自己成長の場になるかもしれないけれど、毎年成長している市場か?と問われると少し違うなと感じていました。
市場が伸びていくのに応じて、会社や自分がこの先どう伸びていくんだろう?という好奇心に勝るものはなかったですね。
起業、そしてHeaR株式会社が誕生。「青春の大人を増やしたい」というミッションの理由
ー起業を決めたタイミングはいつだったのでしょう?
学生時代に起業することは決めていたので、あとはタイミングの問題だったのですが、最初は新卒入社してなんとなく30歳くらいで…と考えていました。
ですが様々なニュースやメディアにどんどん年下の起業家が登場するようになって、カッコいいと思う反面、悔しくなってしまって…。打席に立たなきゃ、ホームランは打てない事を悟った僕は、「早く起業したい!」と思うようになっていました。
そこで四捨五入して「20代で起業しました」と言うためには、25歳になる前に起業をしたいとなり、24歳10ヶ月目にして登記しました。起業のタイミングはそんな理由でした(笑)
ー起業時、事業内容はどうやって決めていったんですか?
サムライトに入社して1年半が経ち、起業を早くしたくなったので「辞めます」と言ったんです。すると「まだ全然力がないから、もう少し働いてから考えた方が良い」と言われ、働く期間を伸ばしました。
その期間に、1週間に1個は事業内容を考えて40個以上の事業アイディアを溜めて考えていました。サムライトの皆にはすでに起業したいことと、そのために辞めたいことは伝えていたにも関わらず、ありがたいことに作った40個ほどの事業内容の壁打ちに付き合ってくれました。
ーそして起業後しばらくは冒頭の事業内容の変遷に戻るわけですね。現在のHeaRでは、なぜミッションに「青春」を選んだのですか?
起業の大前提は、「100年先の日本に責任を持つ」ですが、これは日本の社会課題を解決したいという想いがあるからです。これを事業内容に紐付けて考えているのですが、現在の事業内容の“採用”に関しては、日本人の仕事満足度が世界35ヵ国中最下位という結果を見て考えたものでした。(※Indeed調べ)
この課題を解決するために、どこが最も問題なのか?を考えた際に、まずは採用の時点で企業と候補者のミスマッチが原因なのではないかと考えたんです。なので採用に関わる事業をスタートしました。
なぜそこで”青春”なのか?というと、僕がずっとサッカーをやっていたので、割と身近な言葉だったという理由があります。
そして青春って、学生時代のものと捉えがち。社会人になった仲間と久しぶりに集まると「楽しかった学生の頃に戻りたい。青春時代に戻りたい。」という人も多いですよね。
しかし僕は、大人になってからも青春はできると思っています。それを伝えたいので、あえて「青春」というワードを使って証明したいと考えています。何歳になってもイキイキしている、大人になっても青春している。そんな社会を創りたいなと思います。
ー「青春」とは目に見えないものですが、仲間同士でどう認識を合わせているのですか?
最初は、僕がトップダウンで青春の定義を決めていました。すると、仲間同士で青春の定義についてズレが生じてしまったんです。
「青春って、自分の心で実感するものだよな…」と気付き、トップダウンで決めるのではなく各々の青春の感じかたがあっても良いと考え、「仕事に恋をしている瞬間=青春」としました。
また、恋をしている瞬間や恋に落ちる瞬間も人によって異なりますよね。僕にとってはかつて流行った“脳内メーカー”のように、仕事のことで頭がいっぱいになっている状態だと捉えています!
ーHeaRに欠かせない、一緒に働く仲間はどういった目線で採用しているのでしょうか?
大前提として、一緒に青春をしたいと思える仲間かどうか!ここは絶対にブレない基準ですね。
また、僕たちにとっては採用活動であり、求職者さんにとっての転職活動は、Win-Winになっているものだと考えています。僕たちが掲げる事業のミッションや事業で解決したい社会課題が複数あって、そのうち求職者さんが解決したい課題がマッチして、課題解決をするスキルがあるのであれば一緒に働きたいと採用をしています。
僕が人を採用する立場になって大事にしていることは、社名にもあるように「Hear=聞く」ことです。働く前に全部聞こう・言おうというコンセプトは大事にしています。なので僕たちの課題も考えていることも全部話しますし、求職者さんの想いも全部開示してほしいなと思っています。
ー大上さんが仕事に夢中だというのがすごく伝わってきます。起業してから今までずっとモチベーションを高く保ってきた秘訣とは?
辛いことや困難はたくさんあります。けれど、モチベーションが高い・低いという考え方は、HeaRの皆ともしないようにしています。
例えば、プロのサッカー選手が何かプライベートの問題が起きたとして、プレーで手を抜くなんて考えられないですよね。モチベーションの浮き沈みでパフォーマンスにも差が出てくるようなプロフェッショナルではダメだと考えています。
僕がそもそも設定した軸である「100年先の日本に責任を持つ」や「青春の大人を増やしたい」からブレていなければ、モチベーションはずっと100のまま推移していくと思います!
今後、5年…10年はHeaRの事業で青春の大人を増やすために尽力しながら、憧れのSMAPに近づけるように頑張りたいと思っています!
ー働くって何だろう?と考える機会になりました。素敵なお話をありがとうございました!
▼大上さんの想いをもっと知りたい場合はコチラ!
※note
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※HeaR株式会社について
取材:増田 稜
執筆者:MOE
デザイナー:五十嵐有沙 (Twitter)