ご自愛noteの続き。攻めのご自愛と守りのご自愛について

一ヶ月ほど前に書いた『「ご自愛する」という戦い方』というnoteが、3000スキを超える大きな反響を呼んだ。美容院で髪を洗われている時に思いつき、コインランドリーで乾燥を待ちながら書いた記事がみるみる拡散され、こんなにたくさんの人に読まれるとは思ってもみなかったが、みんな同じように働き方と休み方に悩みながら日々暮らしているのだということを肌で感じるきっかけとなった。

記事中で提案した「心身が健やかになる行為全般」= #今日のご自愛 というハッシュタグも多くの人にSNS上で使われるようになり、寝る前にこのハッシュタグでつぶやいている人を探すのは、同志を探すような感覚でちょっとした楽しみでもある。と同時に、「ご自愛とは何だろう」とより深く考えるようにもなった。

ご自愛≠スローライフ 

noteにも書いたが、「ご自愛する暮らし」はゆるふわスローライフではなく、強い精神力とマネジメント力を要する戦いである。しかし、「ご自愛活動」と言うと、早く寝たり栄養のあるものを食べたり、多くの場合「療養」っぽいものが想起される。

実際 #今日のご自愛 でつぶやいている人たちもそういった内容が多いように思われる。もちろん、しっかり健康でいられるように体調を整えるのは大前提なので絶対外せないのだが、さじ加減を間違えると「心身ともに健康になること」がゴールになってしまうと感じたのも確かだ。状況やコンディションによるところはあるとはいえ、ご自愛はあくまで「めいっぱい仕事を頑張って満足のいく成果をあげること」がゴールでありたいと私は考えている。

noteでは働くためのコンディションを整えるためのご自愛をアスリートの「メンテナンス」に例えた。それでは、アスリートでいう「トレーニング」はビジネスマンにとって何なのだろう?

攻めのご自愛


仕事が「試合」なのであれば、「トレーニング」は試合で成果を上げるための修練時間ということになる。それは人によっては資格の勉強であったり、本を読む時間だったり、競合の店へ行ってみることだったり職種で異なるのだろうが、試合=仕事に臨むうえでの自信になるという点で共通している。

メンテナンスが「守りのご自愛」なのであれば、トレーニングは「攻めのご自愛」と呼んでも良いと思う。メンテナンスができていても、トレーニングが足りなければ成果は出せないし、トレーニングが十分でもメンテナンスができていなければ試合にすら出られなくなったりする。どちらか一方ではダメで、バランスが重要だ。このバランス調整が非常に難しい。

攻守のバランス調整の難しさ

noteにも書いたが、私は以前働きすぎた結果2ヶ月間の休職をした。2ヶ月丸々療養してよい時間が与えられたのだが、驚くことに仕事のストレスが無くなり体調が良くなってくると別のストレスが登場した。「社会に何も生産できていない」「何も成長できていない」ことへのストレスである。こう書くと大層真面目な人間に思われるかもしれないが、人は社会の中で必要とされたり、成長したりする実感が全くないと自信を失い、ストレスを感じるようだ。

仕事=試合に出られない状況だった私は、とにかく本を読むことでそのストレスに対処した。今まで知らなかったことを知れている、読みたかった本を消化できているという実感が大きな助けになった。今思えばインプットという「攻めのご自愛」で自信を取り戻す行為だったのだと思う。

このように、攻守のバランスが偏ると働くことへのベストコンディションからは遠ざかってしまうのである。

このバランス調整はビジネスマンにとって永遠の課題であるように思う。その時々の仕事や家庭の状況や年齢によって、ベストなバランスは常に変化していくからだ。「仕事終わってないけど今日は早く寝たい」と「睡眠不足だけどもうちょっと働かなきゃ」は紙一重だし、どっちをとったほうが良いかはその時々で自分で決めなければならない。自分はどこまで働くのが限度で、どこからが人に迷惑をかけてしまうのか、どれくらい休めば回復できるか、いま何をトレーニングすれば自信が持てるのか、全て自分を客観視した上で選び取り実行するのがいわゆる「できるビジネスマン」なのだろう。考えれば考えるほど、ビジネスマンはアスリートに似ている。

心にミサトさんを飼え

攻守のご自愛バランスを保つためにはどうすれば良いのか?おすすめしたいのが「心にミサトさんを飼う」ことだ。(ミサトさんがわからない方は「エヴァンゲリオン 葛城ミサト」で検索してください)

結果を出せるアスリートには良いコーチがいて、試合に勝ったり新記録を出したりするために、それまでのトレーニングメニューを考え指示してくれる。エヴァのパイロットであるシンジくんにもミサトさんという司令がいて、目標(使徒殲滅)のための動きやトレーニング内容を指示してくれる。(ミサトさんのマネジメントには多々問題ありなのだがここでは割愛)

我々も心にコーチもしくは司令=ミサトさんを飼って、自分への指示をあおげば良いのだ。「もう働きたくないよ…僕は疲れたよ…」「落ち着いてシンジくん!まずは自分が何に疲れているのか、どうすれば解決できそうか、順に書き出すのよ!」といった具合に。今の自分に必要なのは攻めのご自愛なのか、守りのご自愛なのか、自分を客観的に見る時間を意識的に取るのである。

決してふざけているわけではなく、自分の中に自分を客観視できる存在(ミサトさん)を作って自分と対話してみると案外気づきがあると思っている。

関連する分野で、目標を達成するための行動を促し、人生を前に進めるためのコミュニケーションを「コーチング」と呼ぶことを最近知った。プロのコーチ(プロのミサトさん)と対話して自分を客観視し、目標達成のためにやることを整理する人も増えているというので、興味がある人はやってみるのもいいかもしれない。私もコーチングについて最近学び始めたところだ。(コーチングは心身が健康な人が対象になるので、心の不調は心療内科やカウンセリングをおすすめする)

ここで挙げたやり方はほんの一例なので、自分にとってちょうどいい自分との対話のしかた、攻守のバランスのとりかたをそれぞれ見つけていけたらいいと思う。そんなふうに自分をよく観察することが、一番大切な「ご自愛」なのかもしれない。
(文・月岡 愛里