掛け合わせでもっと世界を愉しむ。パラレルワーカー藤長郁夫が考える、パラキャリ時代の自己表現とは

JT入社や、パラレルワーク、新しい分野への挑戦を通じて自己表現を

ー「掛け合わせ」という視点からJTに入社されたのですね。

はい!動物としてのヒト、社会的な生き物としての人間、次世代の医療のあり方、科学や研究の表現、コミュニケーションなどを包括的に取り扱えて、かつその結果40年後の自分が「どんな人物になり、何を探究し、問い、創っているのか」最も想像がつかない環境がJTでした。人として目指しているのはリリーフランキーさんです。

就活時は「時に荒唐無稽に見えるようなコンセプトを確かな形にできる場所」がいいなと思い、主にメーカーの研究職を志望していました。また、東京大学で医療に近い立場で勉強や研究をしていたこともあり、多様性社会を支えるwell-beingが、その手段の一つである医療やヘルスケアの過度な合理化により“must-being (あるべき姿)”を押し付けるものとなってしまわないよう警鐘を鳴らすこともJT入社の動機で、人の”ありたい姿”に関わる健康意識や心の豊かさをJTで探究し、それらがバランスするwell-beingをデザインしたいと考えていました。

入社後は新しいたばこの形態である加熱式たばこの研究開発をしていましたね。研究開発を通じて、たばこならではの価値を解きほぐして他のモノや事へ拓いていくような、次世代の嗜好品に関する仕事もしたいとも考えていました(たばこの研究開発に関する想いについての記事はこちら)。

ーどうして現在のようなパラレルキャリアになったのでしょうか?

一直線でしかキャリアを描けないことが好きではなかったんです。研究開発で入社して、そこから色々な役割を順番に担当して……というキャリアでいいんだっけと。幸か不幸か、入社2年目の時にコロナ禍で数ヶ月間、実験がメインの研究開発業務がやりにくくなり、パラレルキャリアを歩むことに決めました。

実は、大学院生の頃に国立科学博物館の講座で「認定サイエンスコミュニケータ」の資格取得を通じた勉強や、東大の公共政策大学院・STIGで科学技術とガバナンスの掛け合わせの探究などをしていたので、アカデミアと社会の接点を増やす仕事をすることにしました。

ちょうど同時期に、アカデミアの研究者に副業という形で企業の研究開発や新規事業創出にコミットしてもらうことを通じて、アカデミアや研究の価値や魅力を最大化することを目指すスタートアップ(株式会社アークレブ)を共同研究先の先生が立ち上げたので、コンサルタントとして参画させてもらいました。同じ志を持つ様々な分野の研究者の有志団体AASNも立ち上がり、アカデミアや日本、世界のこれからについて活発に議論し、活動しています。

また、大学の成果をプレスリリースやニュース記事などにする科学広報支援を行う企業にサイエンスコミュニケータとして参画したり、真に就活生に寄り添うために大学の先輩が立ち上げたスタートアップに理系就活アドバイザーとして参画したりと、合計3社で兼業をしています。

大企業ならではの課題として、組織体制がしっかりしている反面、若手目線では、時に組織と組織のすきまに本当に大切なものが落ちていることがあるように感じました。なので、JTの有志団体O2に参加して、他社の有志団体とも連携しながら、組織の壁を超えたプロジェクトを立ち上げ、より仲間がワクワク働ける会社にできないかと奮闘しています。」

ー本業では研究開発から経営企画へ異動されていますが、ご自身の希望によるものだったのでしょうか。

はい!JTの研究開発で経験を積み、兼業などでいろいろな人や課題と関わるにつれ、もっと社会へ大きな論点を提起して、それを社会的なうねりに繋げられる人になりたい、そのためのビジネスの力を身につけたいと思い、JTの経営企画部で事業開発がしたいと異動を志願しました。

念願叶っていざ実務に触れてみると、自分の無知さに絶望しましたね。経営や戦略、財務、会計、法務などのあらゆる知識・スキルが足りないことに気がついて。

でも、不足しているということは、それだけ伸びしろがあるということ。越境や掛け合わせの妙を知っている自分だからこそ、この苦労を超えた先にはどんな景色があるのだろうと妄想しながら、M&A、新規事業開発、アライアンスなど、社会で大きなうねりを創り出すための事業開発に日夜奮闘しています!

研究とビジネスの力で、常識を問うていきたい

ー藤長さんが今後挑戦したいことについて教えてください。

掛け合わせの妙を知ったからには、これからも一見分断された物事をつないでいきたいですね。

自分ひとりでゼロから何かを描くよりも、誰かと何かを掛け合わせた方がより大きな論点や価値が生まれると思っています。自分にとってもはや“嗜好品”でもある論点を起点として、事業という大きな単位で物事や人をつないでいき、人類が直面している分断やバイアスを解消していきたい。ビジネスの力で論点や価値を拡げていくことで大きな変革のモメンタムが創れると信じています。

また、研究(≒ 探究)なしに本当の意味での変革は生み出せないと考えているので、研究の価値を最大化することが大事だとも考えています。あるときお世話になった元研究者で現在経営者の方が「研究開発の本質は、常識ではトレードオフと思われている物事を両立することである」と仰っていて、私もそれを心に刻んでいます。

探究して論点を発見・発明する、事業にしてモメンタムを創る、そして常識を創り変えていく。そんな自己表現を通じて、人間の理解を深め、社会を持続的に発展させていければ嬉しいです。

ー最後に、U-29世代へのメッセージをお願いします!

3つ伝えたいことがあります。まず、コンフォートゾーンを出る“越境”が大切だと思っています。

次に、越境して見つけた”何か”を使って「どんなことを世に問いたいか?」ということもぜひ考えてみてほしいです。論点を立てることで、周囲や後に続く世代の探究にもつながっていくと思います。

そして何より、自分や周りの人、自分たちのやること為すことを圧倒的に信じ、愉しんでほしいです。背景を深掘りすることで、どんな物事にも社会的・個人的に重要な論点が見つかると思います。

そしてそれをストーリーテリングしながら問い、対話を繰り返すことで、何事も信じ、愉しめるようになると信じています。

ーありがとうございました!藤長郁夫さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:八巻美穂(Twitter / note
執筆:ひの
デザイン:安田遥(Twitter