慶応卒の過去に囚われない。ホストクラブ『HAMLET』主任 春馬のキャリア選択

慶應大学に入学。嘘をついてる感覚に陥った就職活動

ー大学入学後はどのような生活を送りましたか?

第一志望の大学に不合格の結果、慶應大学に入学していたので「勉強はもういいや」という気持ちでした。田舎から憧れの東京にでたので、最初のうちは飲み会に明け暮れる日々を過ごしましたね。

ただ段々と飽きてきて、留学時の経験から英語サークルに入部することにしました。英語のディスカッションをする大会にも参加し、そこそこいい結果を残せました。ホストに出会ったのも、大学時代のアルバイトが最初でした。

ー就職活動は、どのように進めていましたか?

あまり力を入れていませんでした。志望動機を考えて、絶対この会社がいいと思っていなくても「御社が第一志望です」と面接では言って……。嘘をついている感覚でとても嫌でした。

やりたいことも明確でない中、就職はしないといけない。そのような状況に悩んでいた時、ベンチャー企業の担当者と話す機会が増えました。企業から「きて欲しい」と言ってもらえることがあり、求めてくれる場所があればそこで頑張ろうという思いから、内定をもらった企業に就職しました。

ー入社後、思い描いていた社会人生活とのギャップはありましたか?

最初の半年は、任される仕事に食らいつくのに必死でした。ある程度、仕事を任されるようになる中で、トラブルやリスクが業務上のミスで発生するより、コミュニケーションやモチベーションのばらつきが原因で発生すると感じるようになりました。

そのため「この人はこういう人だ」と理解してうまく付き合っていくことを考えたり、頼ってもらうために人よりも知識を習得したりしていましたね。

ホストへ転身。自己が充実する生き方を求めて

ー今ホストを仕事にしていますが、転身のきっかけは何でしたか?

同世代が「自分の志を目標に頑張る姿」や「世の中を変えるために頑張る姿」を見る中で、自分の姿が理想の状態ではないと思ったことがきっかけです。自分の充実とお金を稼ぐことが両立できていないと思い、このままの自分でいいのか悩んでいました。

この場所で成長できる範囲には、ある程度到達したという思い。さらに成長だけではなくて自分を充実させるのはいつするんだ?と考え始めるようになりました。

考える中で、会社員としては発信しにくい「自分は何ができて、何を学んでいるか」を自己表現できる仕事がしたい。そして、その延長線上には、自分の楽しさ・充実がある生き方がしたいと考えるようになったのです。

その後転職活動をしたのですが、コロナ禍だったこともあり、「ここで働きたい!」という求人に出会えませんでした。また、会社員時代にフリーランスや自由な働き方をしている人に出会っていたので「会社に所属しなくても、生きていける」という思いもありました。

そのため、一度会社を辞め、フリーランスとしてマーケティングや動画編集などの仕事をすることを決意。また大学時代アルバイトでホストの経験があったので、ホストもしていました。

ホストをする中で、コロナ禍で元気がなくなった歌舞伎町でしたが、他の業界と比べて復活するのが早いと感じました。コロナ禍でさまざまなエンターテイメントがなくなりましたが、歌舞伎町では歌舞伎町でしか生活できない人もいるので、団結しているように感じました。

ステイホームの状況で、昼の仕事をしていても楽しさを感じない。であれば、上り調子になっている歌舞伎町で頑張ってみたいと思い、ホストを本格的に始めました。

ーホストとして大きな記録を達成した春馬さんですが、今後についてはどのように考えていますか?

ホスト業界は人の入れ替わりが激しく、ホストクラブの運営が属人的になっています。組織づくりや人材教育が人任せになっているので、新しい人が入ってきても「この人と、この人は、相性が偶然よかったから伸びた」ということが起きています。ホストクラブの運営をビジネスとして考えた時、属人的な方法は時代遅れに感じるので、人任せではなくて安定的な運営ができるように、組織づくりに注力したいです。

また、歌舞伎町のホストのイメージも変えていきたいですね。たとえば「絶えず喧嘩があるイメージ」や「女の子がお金を搾り取られて、悲しむイメージ」はまだまだあるのかなと思います。私は、ホストは対面で接客するエンターテイメントで、娯楽の中でもレベルの高いエンターテイメントであるべきだと考えています。動くお金も大きい分、来たお客様には幸せを感じてもらい、笑顔で帰ってもらえるようなお店づくりがしたいです。

過去の自分に囚われないキャリア選択を!

ー今までの経験を振り返って、今後も大切にしていきたい価値観は何ですか?

自分らしさよりも他人の評価を気にしてしまう場面は多いと思います。私自身もまだまだ実践途中ですが、他人からの評価がどれだけ上がっても、それは直接自分の幸せにつながるわけではない。それであれば、自分らしさや他人とは違う土俵で勝負することが、キャリアを考えていく上で大事だと感じますね。

ー最後に、U29世代に向けてメッセージをお願いします。

「慶応大学を卒業したのに、ホストなんてもったいない」と言われることも多くあります。私としては、慶應大学を卒業したからこそ、ホストを辞めたとしても頑張ったら昼の仕事に戻れる、という考え方をしています。「過去の自分が、もったいなくないキャリア」を考えてしまうことこそが、もったいない!

過去に囚われずに「自分が今この瞬間何をしたいのか」「将来どうなりたいか」を大事にしながら考えて欲しいと思います。

ーありがとうございました!春馬さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:緒形航(Facebook
執筆:長瀬ちか(Twitter)
デザイン:高橋りえ(Twitter