自己肯定感の低かった伊藤優泉が語る、「好き」を大切にしたからこそ広がった世界。

自分で一緒にいる人と環境を選び始めた大学時代

ー辛い時期が続いていたようですが、何が前に進むモチベーションとなっていたのでしょうか。

好きなものがあったことが、辛いことがあっても前を向けた理由だったのかなと思います。大好きな少女漫画やAAA、ディズニーが心の支えになっていました。いつかディズニーで働いてみたい!いつ遊びに行っても日常の嫌なことを全て忘れさせてくれる場所の一部になりたい!という気持ちは中高生活を経てどんどん強くなっていましたね。

ー高校卒業後の進路にもそれは影響したのですか。

はい。絵を描いたりデザインしたりするのも好きだったので高校卒業後はその方向に進みたいと考えていたのですが、将来それでは食べていけないと母から反対されていました。そこでもう一つのやりたかったことであるディズニーで働く夢を打ち明けました。母もアルバイトであれば、と言ってMARCH以上の大学に進学することを条件に東京に行くことを許可してくれたんです。中学で真面目だったことが原因でいじめの対象になったこともあって、高校に入ってからはほとんど勉強してなかったのですが、猛勉強して、東京の大学に進学することができました。

ー大学生活はいかがでしたか。

ミュージカルサークルに所属し、念願だったアルバイトも実現し、毎日が楽しかったです。中高生活を経て真面目な人が淘汰されると思い込んでいたのに対して、サークルには「なんで真面目に取り組まないの?」と言ってくれるメンバーがたくさんおり、自分が理想としていた世界観に徐々に近づいている感覚がありました。

それまで人にこれまでの経験を伝えることもできなかったのですが、初めて自分の家庭環境や中学での出来事を打ち明けることができた、気の置けない友人もできました。そして好きになってもなかなか相手には好きになってもらえないのは自分のせいだとそれまでずっと思ってきましたが、大学に入ってからそうではなかったのだと思えるようになったのも、私にとっては大きな気づきと幸せな変化だったと思います。

ーそこからは順調な大学生活を過ごされたのでしょうか。

それが、新たな気づきは逆に人生について深く考えすぎる要因にもなり…このままの自己肯定感が低い自分ではだめだという気持ちや、自分でこれからの人生は選択しないといけないという焦り、目標に向かって真っ直ぐに進んでいる眩しい仲間と比べて生まれた劣等感から、これから何をしたいのだろうと全く未来が見えなくなってしまい、何もできない時期に突入してしまいました。その後、母との関係も悪化し、大学生活を終えてからは住む場所もなくなり、バイトの貯金を崩しながら友人の家に泊まらせてもらったり、漫画喫茶に泊まったりという日々が続きました。

この時に気づいたのが、今まで自分はいつも母の許可をとって生きてきたということ。もっと自分の人生に自分が責任を持たないと、と思うようになりました。

同時に、一緒にいる人も自分の環境も自分で選べるんだと気づいたんです。自分の人生の決裁権は他の誰でもなく自分が握らなくてはいけないんだと。そこから少しずつまた前を向いて進むことができ、今に至ります。

「好き」という気持ちを大切に「好き」の発信を続ける

ーこれまでを振り返って、これからについて悩みを持つU-29世代にメッセージを送るとしたら、何を伝えたいですか。

「好きなこと、好きなものに正直になって」ですね。私自身、ディズニーやミュージカルへの「好き」を大切にした結果、素敵な人たちや心地よい居場所に出会うことができました。自分の好きに向かっていくと、大好きな人がたくさん見つかると思います。なので、好きと思ったことや楽しいと感じたその気持ちはとことん大事にして、その方向に突き進んでほしいです。

また、寄り添ってくれる人はどこかに必ずいます。話してもどうせわかってもらえないと思わず、自分から発信して、寄り添ってくれる人を見つけてみてほしいなと思います。血は繋がっていなくても、家族のようにあなたの味方になってくれる人は絶対どこかにいるはずです。

ー素敵なメッセージありがとうございます。最後に、これからの目標があれば教えてください。

広報の仕事をする中で、好きなことを発信するのが好きだと気づけたので、これからも今の会社で、「好き!」の気持ちを素直にもっと発信していきたいなと思います。

また、好きに対してのこだわりを大事にしつつも、柔軟性を持って仕事をしていくことが今後の目標です。様々なトライ&エラーを続け、その成功体験をもとになんとかここまで自己肯定感を上げることができたので引き続き自己肯定感を高めるため、そして大好きなテーマパークのように魅力(アトラクション)がいっぱい詰まった人間になれるように、色んな挑戦やたくさんの経験を積んでいけたらと思っています。

取材:黒澤朝海(Twitter
執筆:松本佳恋(ブログ / Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter