フィンランドから日本の中高生のキャリア支援を行う、船津一弥の教育にかける想い

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第638回目となる今回は、教育コンサルタント・船津一弥さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

フィンランド在住ながら、日本の中学・高校生へのキャリア支援を行う船津一弥さん。ご自身の学生時代のお話や、現在のキャリアに至ったターニングポイントなど、これまでの歩みを伺いました。

教師になる夢を諦めて有名大学へ

ーまずは自己紹介をお願いします。

船津一弥と申します。昨年の5月からフィンランドに住んでおりまして、学生・同世代向けのキャリアサポートと、ママさん向けの問題解決事業をオンラインのみで行っています。

ー現在教育関係のコンサルティングを行われていますが、きっかけはいつだったのでしょうか?

高校2年生ごろまでは教師になりたいと思っていました。もともと人と話すことがとても好きで、教育関係にも興味がありました。高校時代は野球部に所属していたので、将来は野球やスポーツ関係か、教育の道に進みたいと考えていましたね。

ただ、高校3年生になって大学進学を考えたときに、野球部の先輩から推薦で先輩と同じ大学に行くことを勧められました。でも推薦でいける大学には教員になれる学部がなかったんです。親や先生とも相談して、「ネームバリューのある大学へ進学したほうが将来安心だ」という結論にいたり、教師になる夢を諦めて青山学院大学への進学を決めました。

ー青山学院大学ではどんな大学生活を送られていましたか?

みなさんのイメージ通りの青学生らしい大学生活を送っていたと思います(笑)。英語のクラブに所属していたので、一応真面目だったとは思うんですが。授業に出て、飲み会に行って、バイトしてみたいな、典型的な大学生でした。

せっかく経営学部にいたので、もっといろんな視野をもって勉強しておけばよかったなと、今さらながら少し後悔していますね。

会社員時代に迎えた人生のターニングポイント

ー青山学院大学卒業後は損保会社に就職されたのですね。ご自身が変わるきっかけになるエピソードがあれば教えてください。

入社してはじめの3年間は仙台勤務でした。中学・高校が福島だったこともあって、私自身東北の人たちと肌感が合うと感じていて。東北の方はみんな優しくて穏やかで、とても良くしてもらいました。同期も結構多かったので、良い意味で競い合いながら、切磋琢磨していましたね。

4年目に入って本社に異動になり、営業のトップセールスマンが集まる、いわゆる花形の部署に配属になりました。尊敬できる上司や先輩はたくさんいたんですが、「ここがこの会社のトップか……」と会社の限界を知ることになったんです。40〜50代の人たちの働き方を見ていて、「将来自分はこうなりたいのかな?」と疑問を抱くようになりました。

ちょうどそのころ社外のセミナーや交流会に参加することがあって。自分のやりたいことや夢に向かって楽しそうに生きている会社外の人の姿に刺激を受けました。そこから自分の将来について本気で考えるようになりましたね。

ーなるほど。人生のターニングポイントを迎えたわけですね。そのころ実現したいと考えていたのはどんなことでしたか?

正直、会社員時代はこれがやりたいというものはありませんでした

会社員あるあるだと思うんですが、外の世界を見ると「あの人たちいいな」って思うんですよね。でもいざ自分ごとにして考えてみたら、「あれ?特にやりたいことないな……」っていうスランプのようなものに陥ってしまったんです。会社員という環境から出たいという想いはあっても、なにかこれがやりたいというものはなくて……。

転職活動も副業も行いましたが、どちらも上手くいきませんでした。そんなときに自己分析や自己対峙をやってみたら、海外というワードが出てきたんです。もともと大学のときから海外に住みたいという想いはありました。ほかに選択肢もなかったし、転職先もなかなか決まらなかったので、海外に行けば自信が付くだろうと海外に行くことを決断しました。

コロナ禍で自ら掴み取ったコーチングとの運命の出会い

ー現在の学生向けコーチングと出会われたきっかけを教えてください。

3月に会社を辞めて、4月からフィンランドに渡航する予定でした。そんなときにコロナウイルスが流行しはじめて、当初の予定はすべてキャンセルに。仕事もないし、とにかく家にいるしかなかったので、オンライン起業について調べたり、セミナーに参加したりしました。

そこで出会ったのが、学生向けのコーチングで。やっていくうちに教育に興味があることを思い出し、高校生のころの夢がフラッシュバックしてきました。自分がやりたいことと自分が実現したい未来がここなら叶うという確信がありました。

ー素敵ですね。学生向けのコーチングというのは、就職活動のサポートみたいなことなのでしょうか?

大学生向けにもやっていたんですが、現在メインとしているのは中学生・高校生へ向けたキャリアサポートです。

フィンランドでは学校に3〜4人、キャリアサポートティーチャーと呼ばれる人がいて、進路のことや生活のことを相談できる体制が整っています。日本でも取り入れている学校も徐々に増えてきてはいますが、まだまだ普及していないのが現状です。なので、そのポジションを個人でやっている感じですね。

ー具体的には進路相談やお悩み相談のような感じですか?

そうですね。一応カリキュラムはありますが、お子さんに合わせた形でオリジナルで提供しています。

私のコーチングは、偏差値とか周りの目を気にするとかではなくて、「自分のやりたいことを実現するために進路選択しようね」というところを最終ゴールとしていて。やっぱり日本の中学生・高校生ってまだまだ制限がかかっている人が多いので、選択肢を広げてあげたいなと思っています。

私自身起業してみて、会社員だけが稼ぐ手段ではないというのを肌で感じました。日本の教育は30年以上ほとんど変わってなく、正社員になるための教育がいまだに続いています。学生にも、もっと選択肢を広げてもらいたいという想いで活動しているというのはありますね。

ーママさん向けの問題解決事業についても教えてください。

学生向けのコーチングをやっている中で、子どもたちのモチベーションや選択肢を広げられるというのはとてもいいなと思いました。私自身やっていてとても楽しいですし、天職だなと感じたんですが、その反面親の影響がとても大きいという新たな気づきもありました。

日本人の親は、先回りして子どもが崖から落ちないようにするとか、レールを敷くとか、子どもに依存してしまっている人が多い気がして、「これは親が自立しないと子どもも変わらない」って思ったんです。

なので今はママさんのサポートや、20〜30代のこれから親になる同世代のサポートをする事業を、フィンランドからオンラインのみで手掛けています。

「いろんな選択肢を広げられる箱を作りたい」船津さんの教育にかける想い

ー現在フィンランドで生活されていますが、ご自身の価値観を通してこれからもっとこういうことをやっていきたいなど、今後の展望があれば教えてください。

自分のビジョンとミッションを叶えたいですね。

まず、自分自身が豊かになって、すべてのことから自由になることが私のミッションです。これを達成することで世の中に与えられる影響が大きくなると思っていて。自分自身が24時間ワクワクしている状態を32歳までに作って、24時間ワクワクしている人を増やしていければ、日本人の幸福度も上がると信じています。

加えて、会社員時代の経験からライスワーク(食べるために生活をしている人たち)をしている人が多いなというのを感じたので、1人でも多くの人をライフワーク(幸せに生きる手段としての志事)にシフトさせていくというのが私のビジョンです。

教育を変えたいという想いもあります。最終的な目標としては、机上の教育ではなく、学生たちがいろんな大人の話を聴ける箱を作りたいと考えています。私の周りの人たちは、色んな経歴を持った、変わった人たちが多いので、その人たちを集めて、子どもたちの選択肢を広げられる箱を作りたいと思っています。そのために今は日本の常識に染まらない、面白いことをやっている人と繋がりたいです。

ーありがとうございました!船津さんの今後のご活躍を応援しております!

取材:渡邊眞雪(Instagram / Facebook
執筆:黒木伶(Twitter
デザイン:高橋りえ(Twitter