自分でチャレンジして初めてわかる!ライター・中野里穂に聞く「好き」を見つける方法

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第529回目となる今回は、ライター・編集者の中野里穂さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

営業職を経てライターになり、その後もフリーランスや正社員+個人事業など様々な働き方に挑戦してきた中野さん。自分の「好き」や「やりたい」を知るため、まずは経験してみることの大切さをお話しいただきました。

社会を知らずに教師になることに不安を感じて就職

ー自己紹介をお願いします。

中野里穂――ビジネスネームでりほまると呼ばれています。現在はセブンリッチグループの株式会社SRACreativeで広報支援の事業をする傍ら、個人事業主として執筆・編集・コンサルティングなどの仕事をしています。

ー学生時代はどのような夢を思い描いていたのでしょうか。

部活の顧問の先生に憧れ、学校の先生になりたいと思っていました。当時の先生は25〜26歳で中学生のわたしたちと比較的歳が近く、まさに憧れのお姉さん。その先生とは関わりが多かったので「学校の先生って素敵だな」と思うようになりました。

ーそこから学校の先生を目指していったのでしょうか?

英語の教員免許を取れる大学に進学して、言語科学を専攻しました。

メインで学んでいたのは英語で、発声の視点から学んだり、子どもが第二言語を習得するまでの過程について研究したりしました。専攻の学びに加え、教員免許を取るための勉強もしていました。

ですが大学3年生になり、先生になるか選択を迫られる時に「学校の先生になるのは違うんじゃないか」と思いました。教えることや英語の読み書きは好きだったのですが、社会に出たことがないのに、先生として本当に子供たちにものを教えられるか不安になったんです。それで方向転換をして就職する道を選びました。

「好きなものに携わりたい」で選んだ営業職

ー最初の会社はどのような軸で選んだのでしょうか?

新卒の就活は、自分がやりたいことよりも、好きなもの・ことに携わる軸で選んでいました。就職することを考えた時にあまりやりたいことがなかったんです。好きなものの中で一番心惹かれたのが写真でした。写真の業界を中心に就職活動をして、写真の会社に営業職として入社しました。

ーどのようなお仕事だったのですか?

学校や幼稚園、保育園といった教育機関に営業に行くお仕事でした。私たちが子供の頃、遠足や運動会でカメラマンが撮った写真が教室の壁に展示されて、番号を書いて買っていた思い出があると思います。かつてはそのようにアナログで販売されていた写真を、インターネットで販売する会社に入社しました。

すでにお取引のある幼稚園や学校を回り、撮影の機会を増やしていただく既存営業をしていました。

最初の1年はとても楽しかった印象です。大学生活では経験したことのない営業に挑戦できたし、できなかったことができるようになっていくのも楽しかったですね。

ー営業職をしていてどんなことを感じていましたか?

営業職は楽しかったですし、自分なりに成長している実感もありました。

でも入社した時から、「自分は営業職にマッチしていないかも」と違和感がありました。商材が好きで入社したので、人と話すのが大好きだったとか、何か成し遂げたいことがあって営業職になったわけではないんです。

はじめは「やっていくうちに好きになるんじゃないか」と目をつぶっていましたが、少しずつ違和感が大きくなっていきました。

当時は世間で「好きを仕事にしよう」と言われ始めた時期。私もその風潮に感化され、好きなことを探したい気持ちが強くなりました。

「得意かも」の気持ちからライターへ

ーライターになろうと思ったきっかけは何でしたか?

営業職をしていたころから、会社で社内広報誌を書いたり提案書を作ったりと、文章に触れる機会をたまたまいただいていました。やっていく中で「営業より楽しくできるし、もしかしたらライターのほうが得意かも」と気づきました。

ライターの仕事は副業でもできて、未経験からOKの会社も多いですよね。本業を続けたまま、リスクなく新しいことにチャレンジできたので、副業からライターを始めました。

ーライターとしての最初のお仕事はどのようなものでしたか?

クラウドソーシングサイトでSEO記事を書いていました。当時は、いろいろなサイトを真似ながら、自己流で書いて原稿を出していました。

ー副業と本業はどうやって両立していましたか?

定時で上がれる仕事をしていたので、終業後に副業をしていました。好きだからこそ、趣味の延長でできていたのだと思います。1年ほど副業ライターをしたのち「これを仕事にしていきたいな。これでやっていけそうだな」と思うようになり、正社員ライターとして転職しました。

ー正社員ライターになった経緯を教えていただけますか?

きっかけは、古くからの友人が運営するメディアに誘われたことでした。

私が入ることになった部署は立ち上がったばかりで、とにかく人を必要としていました。実務経験はほぼなかったのですが、副業で書いたものやブログを引っさげて入社しました。

ー正社員ライターをしていて気づいたことはありましたか?

「ライターの次のキャリアは編集者」や「ディレクションもしないといけない」など、上流に行くのが当たり前と考える会社のシステムのあり方に疑問を感じました。

私が所属していた会社ではライターを経験したら、ディレクターや編集者といった職種になって、その後はチームメンバーのライター・編集者をマネジメントしていく立場になります。さらに上に行くと事業を動かしていくポジションになる。上に行くほど自分で書くことはなくなると思います。

私の場合は書くことが本当に好きで、一生プレイヤーでいてもいい気持ちでした。でも会社という箱の中で働いていると「何年後にこうなるために、あなたの次のステップはこれだよね」と、どうしても会社の「あってほしい姿」に合わせて動かなければいけない場面も多い。自分の思い描くビジョンと一致しているかと考えると、違うと思う場面もありました。

ーライターを続けたいビジョンが見えていたんですね。動いていて「好き」を見つけるのは得意なのでしょうか?

好きを見つけるのはきっと得意ですね。その分嫌いを見つけるのも得意なんですけど。

自分がやってみて初めてわかることって、世の中たくさんあるじゃないですか。新しいことに踏み出す前は、「できるかもしれない」とか「嫌いかも」と想像だけで結論を出そうとしてしまいますが、私の場合は、自分でやって初めて納得できます。「やってみたい」と思ったことにまず飛び込んでみて、経験した上で好きか嫌いかを決めていく生き方をしているかもしれません。

ー今までの仕事で見つけた好き嫌いはありますか?

人と話すこと自体は好きだと思います。

営業職をしていた頃は、いわゆる「営業トーク」が苦手で、自分は人と話すのが嫌いなんだと思っていました。でもライターや編集の仕事で取材していると、人と話すことがむしろ好きだと気づきました。

営業では相手のパーソナリティを深く知ることができなかったのに対し、取材は相手に好奇心を持って話を聞くのを許される場です。人の話を聞いて、自分の知らない世界をその人のフィルターを通して見られる面白さもあります。営業と取材、人と話すのは同じですが、そういったところに違いがありました。

フリーランスになって見つけた自分の新たな一面

ーフリーランスになったきっかけは何でしたか?

コロナが流行し始める少し前に、転職するかフリーランスになるかの選択を迫られました。

迷っているうちにコロナが流行り始めて、転職の求人が減って思うように転職活動ができなくなったんです。そのうち「これは世が私に与えてくれたチャンスではないか」と思うようになりました。会社員でいると、誰の目も気にせずにやりたいことを思いきりやる機会はあまりないじゃないですか。「会社の看板がなくなった時に、私はどのくらいのパフォーマンスを出せるんだろう」と新しい自分に出会ってみたかった気持ちがあり、フリーランスになりました。

ーどのようにフリーランスとしてどのようなお仕事をしていたのですか?

不思議なことに「フリーランスになりました」と報告した途端、今まで一緒に会社でお仕事をしてきた人から声がかかることが多くなりました。

フリーランスになりたてのときはインタビュー記事の執筆のお仕事が半数、もう半数がコンテンツライティングの仕事でした。当時は名前が出ない記事も書いていました。

ーフリーランス時代に新たな気づきはありましたか?

人とコミュニケーションを取りながら、色々なことを考えていくのが好きだと気づきました。

フリーランスになってみると、企画から一緒に考えたり、上流から0→1を考えたりする作業が増えました。「誰かと一緒にゼロから考える作業が好き」と気づけたことはフリーランスになってみて良かったことの一つです。

「好き」を追い求めてたどり着いた働き方

ー現在はフリーランスから再び正社員に戻ったそうですが、どのような気持ちの変化があったのでしょうか?

フリーランスをしていた時は、自由度が高い・好きな時に好きな場所で働けるといった、フリーランスならではの良さを感じながら働いていました。一方で、チームで何かに取り組む楽しさも恋しくなってしまったんですよね。軸足を置く企業やチームがあったほうが、深く人間関係を築いた上で大きなものを作っていけるんじゃないかと考えて正社員に戻りました。

今まではフリーランスか正社員、どちらかしかできないのではないかと思っていました。でも周りが少しずつライフステージによって生き方を変えていくのを目にして、色々な働き方を良いとこ取りする生き方もできると考えるようになりました。

ー今はどういった時間の使い方や働き方をしていますか?

9時から18時まで本業の仕事をしています。副業は、平日に早起きして朝に仕事をすることもありますし、日によっては土日にすることもあります。

ー自分の「好き」をしっかり選択できているのでしょうか?

100%、「好き」を選択できています。本業ではチームで大きなことに向かって走りながら、大好きな書く仕事ができています。また正社員でありながら、働き方の自由度が高くて自由な働き方を実現できているので、言うことなしですね。

ー今後見据えているキャリアや、やりたい事はありますか?

今後も目の前にある楽しいこと・好きなこと・自分がバリューを発揮できそうと思うことを逃さず捕まえて、そういうもので満たしていきたいです。

私は「何年後にどうなっていたいか」という考え方ではなく、目の前の好きなこと・楽しいことを積み重ねていって「気づいたら5年後にここにいた」という考え方をしています。

書く仕事はずっと続けていきたいと思っているので、本業が仮に編集やライティングから外れてしまうことがあっても、個人事業ではしっかり書き続けられればと思っています。

ー自分の「好き」やキャリアに悩んだり、モヤモヤを抱えている人にメッセージやアドバイスをお願いします!

世の中には、自分でチャレンジして初めてわかることが本当にたくさんあると思っています。

だから「やってみたい」や「苦手なんじゃないかな」と思うことがあれば、まずは自分で取り組んでみるといいと思います。

そこで本当に得意なのか好きなのか、苦手なのか嫌いなのかを、しっかりと自分の経験を通して判断していくといいのではないかと思います。

ーありがとうございました!中野さんの今後のご活躍を応援しております!

取材・編集:えるも(Twitter
執筆:馬場史織(Twitter/note
デザイン:高橋りえ(Twitter