様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第457回目となる今回のゲストは、スーツケース1つで旅するように暮らす「旅する起業女子」杉野遥奈さん。
自分のやりたいことに向き合い、大手IT企業を辞め、フリーランスとして活動し、その後起業を経験。常に夢を叶えるための手段としてキャリアを変化させてきました。そんな自分らしさを求めて働く杉野さんの生き方を、これまでの人生から紐解いていきたいと思います。
自分らしく自由でありたいを突き詰めていったら、旅する起業女子に
ーまずは過去のご経歴など、自己紹介をお願いします。
「旅する起業女子」という肩書きで、スーツケース1つで旅暮らしをしています。大学時代に海外留学と40ヶ国ほどを1人で旅をして、「自由な生き方をしたい」と強く思うようになったんです。
自由な生き方をするために、大学卒業後2年半ほどサイバーエージェントで働き、ITスキルを身に付けました。25歳のときにフリーランスのWebデザイナーになって。その1年半後にWebデザインオンラインスクール「DeLife」を友人と共同で立ち上げました。
今はデザインスクールの経営とWeb制作をしながら、国内をメインに旅暮らしをしています。状況が落ち着いたら、すぐにでも世界一周に旅立つ予定です。
ー現在はどのようなことをされていますか?
今年の6月に、自分らしい働き方や生き方を実現するための、手段の1つとして株式会社STARTYを立ち上げました。STARTYでは、独立に特化したWebデザインのオンラインスクールの運営とWeb制作事業を主な軸として展開しています。
ー「STARTY」という社名にはどのような思いを込めているのですか。
STARTYは「始めるという意味のstart」と「輝かせるという意味のstarry」が掛け合わさり、『輝かせ始める』という意味を表しています。社名はこだわりました。決まらないことで起業を半年伸ばしたくらい悩みました(笑)。
STARTYには、3つの『輝かせ始める』があります。1つ目は、Web制作のお客様です。いい企業でも、表現が下手で魅力を伝えきれていないお客様の魅力を発見して輝かせ始めたい。
2つ目は、スクールの受講生です。まだまだ自分らしく生きられていない受講生が、どうしたら「なりたい」を実現できるのか。彼らがそれぞれの可能性を開花させ、輝き始めるお手伝いをしたい。
3つ目は、自分自身。相手をハッピーにさせようと思ったら、自分もハッピーでないと、とよく言いますよね。企業、個人としてもちゃんと自分磨きをし続けて理想に近づく努力をして輝いていたい。この事業を通して「輝き続ける」ということをやっていきたいです。自らがまず理想を実現して輝くことによって、STARTYに関わってくれる全ての事業や個人にも、何らかのプラスの影響を与えるようになりたいと思っています。
思い描いていた学生生活ではなく、自分を見つめ直す
ー人生のターニングポイントは18歳のアンハッピーだった時期とのことでしたが、どのような学生生活を送っていたのでしょうか。
実は、中学高校ともにいじめられていた経験があります。周りからの圧が強く、押さえ込まれる環境で過ごしていました。何を言われても自分らしくと思っていましたが、否定ばかりされ、自信もなくなり、自分にはどうせできないと思い込むようになって……自分の可能性を全く感じられなかったです。悩みも相談しにくく、夢を語ることもできませんでした。
大学に入ったら毎日が変わると思っていましたが、全く変わりませんでした。自分で環境を変えるアクションを起こさないといけなかったのに、アクションを起こす勇気もなければ「どうせ私にはできない」と受け身の姿勢になっていました。この先も私の人生はずっとこうなのかと思い、絶望を抱いていた時期でしたね。
ーこの頃は夢も語れなかったとおっしゃっていましたが、どんな夢があったのですか。
当時、夢はありませんでした。やりたいこともなりたいものもなくて……。夢ややりたいことがある人たちが羨ましくてたまらなかったですね。でも、とにかく旅が好きだからCAを目指そうかなとぼんやり思っていました。
ーそこから、まずどんなアクションをして自分を変えていったのですか。
自分を見つめ直すことから始めました。今まで自分が何に楽しさを感じたのかを考えて。すると海外や国際交流が好きだと気づき、留学に行きたい気持ちが芽生えたんです。
そして、お金を貯めて1ヶ月半オーストラリアに留学しました。留学が自分の価値観や考え方を変えるきっかけになったと強く思います。
自分の思いを持つことができた海外留学が今の私の原点に
ー留学に行って、考え方や行動は何か変わりましたか。
自分を大きく変えることはできなかったです。でも気づきを得て、今まで持てなかった目標を見つけることができました。
自分が思っていたよりも英語が喋れなくて、ショックを受けて……。それでも来たからには経験を物にするぞと、現地の人に自分から話しにいきました。すると、現地の言葉が喋れなくても、思いでぶつかれば伝わるとわかったんです。
何事もやってみれば意外とできると感じました。自分が思い描いていた目標達成とまではいきませんでしたが、プラスの経験となりました。
そこで次は長期留学をし、英語の習得と現地で友達をたくさん作るという目標を立てました。
ー新たに目標を持って帰ってきたわけですが、すぐに次の留学に行ったのでしょうか。
いいえ。2年後の、3年生が終わったタイミングで休学して長期留学に行きました。留学資金が300万円必要だったので、帰国後2年間は新聞の契約を取る飛び込み営業のバイトをしていましたね。
今まで営業をしたことはなかったのですが、やってみたら自分に合っていて。バリバリ働いて無事に300万円を貯めることができました。そして、21歳のときにフロリダへ長期留学に行きました。
ー営業が初めてとのことでしたが、営業のどんなところが自分にはまったのでしょうか。
コミュニケーション力を使う点で自分に合っていました。もともと人と喋るのは好きで。昔のいじめられた経験もあり、自分が他人からどう見られているか、人がどう考えているかを汲み取ることを無意識にしていたことが営業でも使えたのです。
商品ををよく思ってもらうにはどうしたらいいか、どうしたら私から買いたいと思ってもらえるかを考え、それぞれお客様に合った提案をするよう心がけていました。
ーお金を貯めて行った長期留学はどうでしたか。
人生27年間のうちでトップに入るくらい経験値が上がったと思います。長期留学での気づきが今の私の行動の裏付けになっていますね。
進んで現地の人に話しかけていったのですが、英語が上手く伝わらず。またもや英語ができないことにショックを受けました。
もっと気楽に考えたらと今では思いますが、当時は理想のレベルと自分の能力の大きなギャップに落ち込んでしまいました。
ー自分の理想のレベルとの大きなギャップに気づいたとき、何か行動を起こしましたか。
理想に近づくために、自分が理想とする人の考え方を参考にしました。すると、自分の信念のもと努力していることがわかったんです。そして、私も自分の思いに素直に、信じてやってみようと行動を変え始めました。
自己嫌悪や劣等感の塊だった自分が嫌で変わりたいと思ったからこそ、理想といまの自分にギャップがあるのが辛かったです。努力を続けたらこのギャップは埋まっていくと信じ込むようにしました。
そして、フロリダ留学の9ヶ月英語習得に励むとともに、現地の魅力をたくさん感じました。日本にない良さや魅力がこんなにもあるのかと気づき、残りの数ヶ月間でアメリカ1周や中南米を回る旅をしました。
がむしゃらに頑張った社会人時代。どれだけ頑張っても、自分の「やりたい」と一致しないとだめだとわかった
ー人生が大きく変わる1年間を過ごした後、夢に変化はありましたか。
留学や旅を通して、たくさんの現地の人や生活に触れたことによって、世界には自分が知り得もしない素晴らしい魅力を持っている国がいくつもある。それを知らないのはもったいないと思い、できるだけ多くの国の魅力を探し続けたいと思うようになりました。
そこでパソコン1台で仕事ができるようになれる期待を持って、IT企業への就職を目指しました。
ーこのときから旅して暮らすというワードは出ていたのでしょうか。
「いつか、好きなときに好きなところへ行けるような生活がしたい!」とは思ったものの、選択肢が思い浮かばず……。ただなんとなく自分の興味のあることを叶えられる仕事がしたいなと思っていたくらいです。
ー結果的にサイバーエージェントに就職したと思いますが、数あるIT企業の中で選んだ決め手は何だったのか?
自分がどれだけ成長できるかを就活の軸としていて、それとマッチしたからです。旅経験を通して若いうちの1、2年はとても貴重だと感じていましたが、大手の会社では雑務を経てステップアップするイメージがあって……。それに対してサイバーは、いきなりやってみろと裁量を振る会社でより実践的な学びにもなって、早く成長できると思いました。
ーこのサイバーエージェント社では、どのようなお仕事をしていましたか。
広告のアカウントプランナー、新規広告営業、新規事業立ち上げの仕事をしました。広告のアカウントプランナーは広告に関するプランニングを行う仕事です。お客様の商品をどの媒体にどのような広告を載せれば売り上げに繋がるのか、企画や提案を行なっていました。
次の1年くらい新規広告営業では、サイバーの自社メディア枠を売る仕事を、最後の1年間は新規事業立ち上げの責任者として、チームのメンバー集めから、サービスの仕様やコンセプトの設計、アプリの立ち上げ、収益モデルの戦略設計などまで、あらゆる業務を行いました。
ーサイバーエージェント社で、挫折経験があったとか。
サイバーでの挫折経験は2回あります。1回目は、広告のアカウントプランナーをしていたとき、得意だと思っていたマルチタスクが苦手だと感じたんです。今までのバイトでは器用にできていたのに、周りの同期と比較してできないことが悔しくて。
どれだけ自分が努力しても環境が合わないと成果は出ないこともあると気づきました。どんな環境で頑張るかも大事ですよね。
2回目の挫折は、新規事業をしていたときです。自分の「やりたい」ではなく、「こうあるべき」という義務感で仕事をして、体調を崩してしまいました。
新規事業の責任者になったとき、チャンスをくれた上司に恩返しをしなければと仕事に取り組んでいました。でも、もともとやりたかったことでも、好きな仕事でも、得意な領域でもなく、ストレスで自律神経失調症になりました。
そんなとき、仲の良かった方に「ずっと無理して責任感持って成し遂げようとしているけど、そんな体壊してまでやるべきことか?」と言われて、我に返ったんです。「何でここで私の人生を終わらせないといけないんだ」と思い返しました。そして、自分のやりたいことを見つめ直しました。理想の自分を実現するための挑戦を、1から始めようと仕事を辞める決断をしました。
旅暮らしを実現するための手段が「フリーランス」だった
ーサイバーエージェント退職後、なぜフリーランスの道を選んだのですか。
転職も考えましたが、いま別に行きたい会社も、やりたい職業もない状態で、無理やり転職先を決めても結局同じこと繰り返すと思ったからです。
フリーランスになろうというよりは、自分のやりたいことを叶えようと思ったら、このスタイルになった感じです。やりたいことは「自由に旅暮らしがしたい」だけだったので。やりたいことを叶えられる仕事を考えた時に、一番興味があり再現性が高いものがWebデザインの仕事だったんです。
ーまずどんな人生を歩みたいのか考えてから、そこに合う手段を考えたのですね。
そのときどきで自分の興味関心を深掘りし、自分が好きなものや好奇心が赴くものを考え、一番ワクワクしたものをやるようにしています。そのときにどうなっていたいか、2、3年後に何をしていたいかを逆算しています。
また、あまり先すぎる未来の設定はしないようにしています。あまりにも先の未来を固定してしまうと、逆に思い浮かべた未来のこと以上できなくなってしまうので。きっとスモールステップで設定した未来に近い自分の方が、そのときに考えられる可能性の範囲は広くなると思っています。
常にこうありたい、こういう生き方はしたくないというブレない軸は置いて、そこに従ってやりたいことをどんどん選択していくようにしています。
ーWebデザインなど、全く未経験のことにチャレンジするときに不安はないのでしょうか?
不安はあります。もともと中学高校のときは一歩が踏み出せない性格でした。しかし、留学経験を通して、一歩踏み出してみると意外とできるとわかったので、まずは何かしら進んでみるようにしています。
無知であること、先の未来や自分がやりたいことの具体性が不明確なことが大きな不安に繋がるようなので、私は最近、不安を感じたらまずは「その不安を理解する」ことから始めています。詳しい人に聞いたり、調べたりして、漠然としたものを明確にするように心がけています。
自分に素直に、理想を叶えるために、日々ワクワクを求める
ー今やフリーランス、そして、起業家として活動している杉野さんですが、やりたいこととやらなければならないことの取捨選択において、ご自身の中で何か軸はあるのでしょうか。
「自分がワクワクするか」という軸で考えています。どれだけ金額が良くても、自分がワクワクしなかったらお断りするときもありますね。
人生は楽しむためにあるものだと思っていて、仕事もその一部だと思っているんです。仕事を別軸で考えるのではなく、自分が自由に生きるための手段として考えています。
Webデザインスクールも仕事だからやるではなく、このサービスを通して自由に生きる人を増やしたく、ダイヤの原石である受講生たちが輝き始めていくお手伝いができる。それに自分自身がワクワクしているんです。
ー今後やりたいとや目標を教えてください。
会社としてやりたいことはいろいろあります。なかでも、特にやりたいと思っていることは、持ち運びしやすいグッズを作りたいと思っていて。機能性、デザインともに兼ね備えた服やリュックとか。身軽におしゃれを。旅暮らしをもっと自由にしたいですね。
個人としては、世界一周をしたいです。今後もどんどん旅暮らしを追求していきます。そして、また新しくやりたいことを見つけては、挑戦し続けられる自分でありたいですね。
ーでは、最後に自由に生きようと自分のやりたいことに向き合ってきた杉野さんから、みなさんへメッセージをお願いします。
「人生はマラソン」です。今すぐにどの仕事が正解なのか、どうしたら成功するのかを考えるのではなく、長期的に自分がありたい姿と、なりたくない姿を考え、自己分析を繰り返して自分の軸を探してみてください。軸が見つかったら、あとは自分がワクワクすること、やりたいこと、将来ありたい姿へのwantから逆算をして、そのためにやらないといけないことをしましょう。
「努力は夢中に勝てない」という言葉がありますが、本当にそうだと思います。好きなこと、自分の夢を達成するために頑張っていることって、やらなきゃとか意識しなくても頑張り続けると思うんですね。
私は会社員、フリーランス、起業という道を辿ってきましたが、あくまでそれは自分の理想を叶えるための手段の1つであって、なりたかったわけではないです。しかし、自分の理想に向かってワクワクすることだから努力とは思わずに頑張れました。少しずつ理想に近づいている感覚があります。
自分がワクワクすることに素直になって、もやもやせずに好きなことをやって、自由に生きる人が増えてほしいなと強く思っています。
ーありがとうございました!杉野遥奈さんの今後のご活躍を応援しております!
取材者:あおきくみこ(Twitter)
執筆者:田中彩子(Twitter)
編集者:えるも(Twitter)
デザイン:高橋りえ(Twitter)