様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第460回目のゲストは一般社団法人 KOREWOKINIで理事をされている鈴木 良祐さんです。学生時代に様々な経験を通じ、自分がありのままでいられる居場所やコミュニティが必要だと考える鈴木さんに、多様性や心理的安全性、自分らしさを発揮するためにどんな要素が必要なのかをお聞きしました。
自身の過去の体験が今につながる
ー簡単に自己紹介をお願いします。
埼玉県所沢市出身で、一般社団法人 KOREWOKINI(以下、コレヲキニ)で理事をしています。
大学時代、内閣府の青年国際交流事業に関わったり、日米学生会議の運営、フィリピンやインドでインターンをするなど海外に重きを置いて活動していました。卒業後は、楽天グループ株式会社に2016年に入社し、直近まで新規事業の担当を行っていました。さらに、楽天が社会課題を解決する社会起業家と伴走するプログラム「Rakuten Social Accelerator」の事務局長をしておりました。
個人活動では、コレヲキニの活動や「MOON「문」~ここからはじまる日韓交流~」代表として、移動の難しい時代における新しい日韓交流プログラムをオンラインで主催しています。
ー鈴木さんはマルチに活動している印象があるのですが、中学時代に印象に残っている出来事を教えてください。
中学校のころは、いじられっ子といじめられっ子の中間のような出来事を経験し、ビクビクしながら過ごしていました。その反動で高校は安心して過ごせる場所がいいなと思い、埼玉県立川越高等学校に入学しました。
男子校だった川越高校は自由闊達・文武両道の中で、クラスメイトはアニメやサッカーなどオタク気質な側面もあり楽しい雰囲気で、どんな人でも光が当たる可能性があるなと感じながら、色々な人と関わっていました。
ー鈴木さんは高校時代、何にハマっていたのでしょうか。
サッカー部に所属していたので、サッカーにハマっていたのと、勝負の感覚が楽しかったので、トランプの大富豪は高校3年間ずっとやってました。
ー高校時代は、将来どんなことをしたいと考えていたのでしょうか。
見えている世界が狭かったと思うのですが、当時は公認会計士になりたいと思っていました。資格が欲しかったのと、自分の実力で一番偏差値の高い大学に入ることが目標になっていました。
商学部や経済学部といった選択肢は浮かんでいましたが、このレベルの大学に通うこと以外はあまり深く考えていなかったように思います。
国際交流に出会い、人生が変わる
ー大学時代に様々なことを経験したと思いますが、印象に残っている出来事を教えてください。
国際交流と出会ったことですね。
大学2年時に、内閣府の国際交流事業で韓国に行ったのですが、その経験が自分の人生の次の扉を開くきっかけとなりました。
もともとはサークル活動に励みながらアルバイトをするという、一般的な大学生のルーティンワークの中で過ごす中で、この生活を2年次もするのか、このまま何者でもない状態で終わって良いのだろうかと不安を抱くようになりました。そして、今後自分がどんなことをしたいのか周りの友人に話してはみたものの、「意識高いね」と馬鹿にされてしまう状態。今思えば、相手からすると本気で発言したことではなかったかもしれませんが、自分にとってはまだ何者にもなれていない時期だったので、周りの友人の視線・発言に過剰に反応していた気がします。
このままの環境だと、自分を認めてくれる人が少ないなと思っていたときに、内閣府の国際交流事業を通じて韓国に派遣されました。派遣された他のメンバーと話しているときに、わたしがやりたいことを真剣に受け止めてくれたことで、ここが居場所だと感じました。
ー不安が原動力となって行動に変わり、その結果自身の居場所を見つけることになったのですね。鈴木さんのように自分のやりたいことを受け止めてくれる仲間を見つけるのが難しいという方もいそうですが、どういった行動をすればそういった人と出会えると思いますか。
若干話はずれますが、わたしが理事をしているコレヲキニでは、何でも話せてどんなフェーズにいる人でも応援する”心理的安全性の高い”世界を作ろうとしているので、今の話を受けてそういった人々を救えるようにしていきたいなと思いましたね。
大学生の時を振り返ると、自分は最初の頃はどこでそういった人に出会えるのか、何をすれば満たされない気持ちが満たされるのかと思い、すぐに行動しました。内閣府の国際交流事業といった学外のセミナーや団体の活動に顔を出して、その中で肌感が合うところを選んだ結果が今につながっています。なので、考えてわからない時は行動量を増やしていく、踏み出していくと、自分の中で居心地の良いコミュニティと感じる軸が見つかるのではと思います。
ーとりあえずやってみる、行動してみるということを大事にしていたのですね。
考えても答えは出ないことがありますし、わたしの人生を通じても同じことが言えますね。新卒で入社した会社も様々な軌道修正をしながら、自分がどうありたいのかを考えていったことで、入ってくる情報も向かっていく方向も変わった気がしています。
ーまさしく、コレヲキニなのですね。
1歩目を動かすのはパワーを使いますし、踏み出すのに迷いや戸惑いがあると思うのですが、心理的安全性の高い場所で学生時代のことなど個人の深層を掘り起こしてあげて、一緒にやろうよと言っていくことは必要とされていると思います。
最初の一歩目を応援することは、一歩目を踏み出せない人の力になるので、そこに自分も注力したいなと考えていました。
ー鈴木さんの考え方を移し出したような団体がコレヲキニだなと、感じました。
コレヲキニを立ち上げてから、次第に団体のことを考えると、自分ごと化される部分が増えていきました。鈴木 良祐としてやりたいこと、法人としてやりたいことが重なり出し、少しずつ一体化していく様が面白いなと感じています。
存在を肯定することが最初の一歩につながる
ーコレヲキニの立ち上げ前に新卒入社したと思いますが、楽天でのエピソードを教えてください。
楽天に入社して、法人営業をしていました。一つのことに注力することが得意ではなく、飽き性な部分もあったので、半年後に難民支援の活動をしたり、対話を重視した読書会をはじめたり、シェアハウスに住み始めてコミュニティを広げたりしていました。
会社での仕事を頑張りつつ、他の活動で自分のモチベーションを高めながら、仕事と他の活動をバランスをよく頑張っていました。
ー楽天で法人営業し始めたタイミングと、シェアハウスでの生活をスタートさせたのは同時期だったのでしょうか。
社会人になって1年が過ぎたタイミングで、シェアハウスの生活をスタートさせました。
ーシェアハウスも心理的安全性の高い環境だったとお聞きしていますが、それも高校時代の経験が根底にあるのでしょうか。
今考えると、そうだなと思いますね。
6人で住む中でそれぞれの個性が表れる瞬間があり、暮らしの中での多様性を尊重したり、それぞれのありのままを大切にする重要性を実感しました。
シェアハウス引っ越す前は一人暮らしをしていましたが、プライベートでも職場でも話し相手はいたものの、家に帰るとなんとなく孤独を感じることがありました。それがシェアハウスに住むようになってからは、何かをしているわけではないけれど、リビングでテレビを見ている時に何気なく一言声をかわしたりといった、そこにいることを許容してくれる温かさ、ここに存在していて良いのだと安心感を感じるようになりました。何か頑張っている自分ではなくて、ただ暮らしている自分を認めてもらえることを実感できたのは大きかったですね。
ー自分のことを認めてくれることって少ない気がしていて、一緒に住んでいる人が存在を肯定してくれるのは幸福度にもつながりますよね。
それまでは逆の考えで、結果を残してナンボだと思っていたので、キラキラした自分でいたいという考えは強くありました。自分自身で自分を肯定するのって難しいことで、目の前の人がただそこにいてくれるだけで存在することを認めてくれるのはありがたいなと思います。
ー多様性や自分らしさを認めることは、コレヲキニの活動にもつながっているのでしょうか?
コレヲキニでは「korecolor」というオンラインの内省プログラムも展開していますが、過去の自分や親との関係性、満たされなかった経験やバックグラウンド、今の状況を含めて受け止めた上で、存在していていいんだよと認めてあげることは大事だと感じる場面が増えました。
ー立ち上げのタイミングは苦労した場面もあったかと思いますが、本業もありながらコレヲキニの活動をする中で、どのようなモチベーションで動いていたのか教えてください。
一つのことだと飽きるので、本業・本業外それぞれにエネルギーを使えている状態はいいなと思っています。コレヲキニはただの飲み会からスタートしたのですが、コレヲキニというキーワードで何かイベントができたら面白いのでは?ということでコレヲキニは立ち上がりました。
最初は150人ほどの方が集まる一日限りのイベントだったのが、3ヶ月のオンラインプログラム「korecolor」を運営するようになりました。そこで、相手の人生の核に触れられる確率、この人の人生これから変わっていくのでは?と自信を持てる瞬間が増えました。
誰かの最初の一歩をサポートできることで、幸せになれる人が増えていくのかもしれないと、予想が確信に変わっていきました。
直感を大切に次のステージへ
ー本業をやりながら、エネルギーを分散させている鈴木さんですが、先日楽天を退職されたそうですね。
卒業という形で最終出社を終え、現在はフリーとなっています。
ー違うフェーズに進むのかと思いますが、その決断に至った経緯を教えてください。
次に何するのか聞かれるのですが、実は何も決めていないんです。それも自分らしいなと思ってます(笑)
もともとは起業しようかな、スタートアップ進もうかと考えていましたが、自分の気持ち・感覚にしたがった方がうまくいくのではと考えるようになりました。思えば、自分が決断した時は直感を大事にしていたなと。
スタートアップの方のお話もお聞きしたものの、自分の直感がピンとこず、今じゃない。今ここで走り始めても、昔のように良い会社で働いている自分、輝いている自分を目標に頑張ることになってしまうと思ったので、一旦全てを手放して広い選択肢から選ぼうということで、この決断に至りました。
ーkorecolorをやっていたことが決断に大きな影響を与えているのですね。
心が純粋に楽しいと思えるものをやっていくことで直感は磨かれていくので、この数ヶ月は自分がやりたいことに素直に向き合える心理状態を整えていきたいと考えています。
ー鈴木さんはずっと走り続けてきたのかと思いますが、その原動力にはどんな思いがあるのでしょうか。
原動力のさらに奥には、バカにされたくないという負の原動力があった気がします。
ネガティブな原体験でアクセルを踏むことはできますが、その世界観で走り続けた先に待っているものは虚無になるのではと感じるので、ありたい世界観を作っていくためのプラスの原動力も持ち合わせたいですよね。
ー今後、中長期的に何か考えていることはありますか。
目の前のことがつながっていく感覚で過ごしていたので、直近1,2年のイメージですが、自分で何か起業したいと考えています。
行動の源泉は、自分がこれまでやったことないこと、見たことないことを見てみたいというもので、その1つが起業につながってきます。これまでは雇われてきましたが、自分で事業を起こしてみて、それに対して人を巻き込みながら進めていきたいと思います。
ー今日は素敵なお話をありがとうございました!これからの鈴木さんのご活躍を心から応援しています!
取材者:新井 麻希(Facebook)
執筆者:大庭 周(Facebook/note/Twitter)
デザイン:高橋 りえ(Twitter)