様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第426回目となる今回は、「要点把握プロデューサー」として幅広くご活躍されているフリーランスの樋口誠貴(ひぐちせいき)さんをゲストにお迎えしました。
樋口さんが現在携わっている事業は6〜7事業にも及びます。個人や法人の才能発見とそのプロデュースから、ワインバーの店長やテニスコーチまで。活躍のフィールドがバラバラのように思えますが、すべての事業には共通点がありました。
自らの才能に気がつき最大限に活かしている樋口さんに、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。
生まれた瞬間が一番の転機だった
ーまずは、簡単に自己紹介をお願いします。
樋口誠貴です!母が3回の流産を経験しており、僕は4回目の妊娠で産まれました。ですので、「誠に貴重」で誠貴と覚えてください!生まれた瞬間が一番の転機だったかもしれないですね。
また、自由に育てられたからか、「その日一番やりたいことをしたい欲」がとても強いです。受験をしたくなかったので中学までは公立に通いましたし、大学受験をしないために大学付属の高校を選びました。大学の学部選びで重視したのはもちろん、「出席しなくても良いか」でした(笑)。
その後、有名な社長を知らないままソフトバンクに新卒入社しました。2年目の途中に退社し、別の会社に所属しながら個人でも活動していましたが、2021年1月に独立し、現在に至ります。やっていることは、個人の才能を発見しプロデュースする仕事や完全予約制ワインバーの店長など6〜7種類ありますね。
ー現在、さまざまな分野でご活躍されているのですね!それぞれの事業がバラバラのようにも思えますが、共通点はあるのでしょうか。
あります!僕には2つの才能があって、1つが「要点把握力」。簡単に言うと、専門外の話をされても大事なポイントを理解できる力です。もう1つが、「要点を分かりやすく伝える力」で、今取り組んでいるすべての仕事においてこれらの力を活かせていますね。
たとえば、中目黒にある完全予約制ワインバーの店長業務。経営者や政治家が多く来店して専門的な話をされますが、僕は要点把握が得意なのでどんな話にでもついて行けて。さらに、ワインやお店自体の魅力を、彼らに伝わるように説明できます。
個人や法人の才能をプロデュースする時にも、これらの力を使います。まず、目の前にいるAさんの特徴が誰にどのように響くかを要素分解するのが、要点把握ですね。Aさんがもっとも輝けるであろう場にいる人にAさんの魅力を伝えるとき、もう1つの力を使います。
結局、すべての仕事で似たようなことをしているんですよね。なので僕のことは「要点把握力」と「分かりやすく伝える力」の2つを提供しているフリーランスと覚えていただければと思います。
現在に活きる強みが育まれた幼少期
ーすべての業務に通じる「要点把握力」と「要点を分かりやすく伝える力」がどのように形成されたのか、気になります。それらは子どもの頃から樋口さんの強みだったのでしょうか。
そうですね。自覚していたわけではありませんが、当時の話を両親から聞いてそのように感じました。
「要点把握力」が身に着いたのは、知育に熱心だった両親の影響で幼少期から難しいことに触れていたからですかね。幼稚園年中の頃にあるゲームを買い与えられましたが、当たり前のように漢字が使われていたんです。
一般的には小学校高学年あたりでやり始めるものだったので、ゲームの内容はちんぷんかんぷん。でも僕はゲームの大筋を楽しめました。漢字が読めなくても魔法はかっこいいし、BGMがあれば場面の雰囲気をなんとなく掴むことだってできますよね。
このように、早めに難しいものを買い与えられた経験があるので、分からないものに対する抵抗感が僕にはまったくありません。むしろ、分からないのが当たり前だと感じていました。「要点を分かりやすく伝える力」もこのような環境の中で育まれたと思っています。
ー「要点を分かりやすく伝える力」を習得された流れも、詳しく教えてください。
笑いを追求していたら、「伝わりやすさ」を考える癖がつきました。
5歳のときにあるキャラクターのモノマネをしたら、周りの大人たちが笑ってくれたんです。嬉しかったので頻繁に笑いを取りに行くようになり、相手に伝わらない表現をすると滑ると学びました。相手の知らないキャラクターのモノマネをしても笑ってもらえないじゃないですか(笑)。
また、中学時代には特に「伝わりやすさ」を意識しました。当時の僕は学習量が多く成績が良かったのですが、自分が知っていることを友人も知っていると思うと会話が噛み合わなくて。学習量が少ない友人にも伝わるよう、言葉を選んで話していましたね。「伝わりやすさ」の土台はこのように作られていったと思います。
ー冒頭で、「大学受験をしなくて良いから大学付属の高校に進まれた」と伺いました。大学卒業後にソフトバンクに新卒入社されたのはなぜでしょうか。
選考が早かったので、面接の練習として受けたのがきっかけでした。内定をいただいてから社長の講演会に参加し、魅力的な会社だと感じ入社を決めました。
意識は低かったと思います。将来やりたいこともソフトバンクでやりたいこともなくて。「大学を卒業したら自由がなくなる」と思い込んでいたので、就職活動やインターンよりも、残り少ない自由を謳歌することに全力を注いでいました(笑)。
才能の見つけ方を知り、フリーランスへ
ー自由を重視されている点には樋口さんらしさを感じますね。ソフトバンクに入社していかがでしたか?
ソフトバンクでなくても同じだったと思うのですが、1週間のうち5日を奪われたと感じました。
新卒で札幌に配属され、最初の1週間を終えた金曜日の夜が転機でしたね。冒頭の自己紹介でもお伝えした通り「その日一番やりたいことをしたい欲」が強いので、帰り道でふと「これから先、会社を最優先にしなければならない日が7日中5日もあるのか……」と我に帰って。
会社に入ったのは致命的な選択だったと思い、「もし会社を辞めたらどうなるか」をすぐにシミュレーションしました。「お金が足りなくなる」と思いましたが、具体的にいくら足りなくなるか分からなかったんです。
僕なりに考えて必要額を算出すると、今度は稼ぐ手段が次々と浮かんできて。「その中から1つだけ選ばなければならない」という決まりは存在しないにも関わらず、僕は正社員として1社に所属する道を選んでしまったわけです。焦りを感じましたね。
帰り道を引き返して本屋に寄り、その日からお金の稼ぎ方について猛勉強を始めました。大学時代までは勉強よりもやりたいことが常にある状態でしたが、会社員以外の稼ぎ方を身に付ければ将来の自由時間が100倍程度増えると思うと、勉強が楽しくて仕方なかったです。
ー問題解決のスピードが凄まじいですね!その後、勉強されたことを活かし、どのように行動されたのでしょうか。
会社員を続けながら、能力がない自分にもできることを探してとにかく試しました。当時の僕は、「社会人歴や事業に携わった経験によって作られるもの」が能力であると思い込んでいました。そのため、新卒1年目かつ大学時代に遊んでばかりいた僕は、自分には何もないと思い込んでいて。
ブログを書き続けようと思うところから始まり、最終的にはネットショップを立ち上げました。経験も自信もないので僕の中身を見られたら負けだと感じており、物ならば誰か欲しがってくれるだろうと。そんな僕にも、社会人1年目の終わりに転機が訪れたんです。
ーどのような転機だったのでしょうか。
あるベストセラー作家にお会いする機会があり、才能の見つけ方について「才能は、周囲からすごいと言ってもらえるものの中で無自覚なもの」と伺ったことが転機になりました。
さっそく周りの人に訊いてみると「要点把握力」と「分かりやすく伝える力」の評価が高く、これら2つが僕の才能だと気づきました。当時ソフトバンクで、新しいサービスを理解し大企業に提案するポジションを任されていたのも、これらの才能が評価されていたからだったのだと感じましたね。
今振り返ると、「稼ぎたいけれど能力がない」と悩み始めたとき、すでに僕は能力を手に入れていました。それどころか、難しいゲームや笑いを通じて幼少期に手に入れた能力を、無自覚の状態でずっと磨き続けていたことが分かったんです。
ー能力を新たに身に付けるのではなく、もともと持っている能力を活かす方向に変わったのですね。
そうですね。能力探しを辞め、「要点把握力」と「分かりやすく伝える力」を活用して誰かの役に立てる仕事を探すようになりました。これらの力を役に立てることがないか、いろいろな人に話を聞きに行きましたね。
すると、当時経営を学ぶために通っていた前田塾から「その能力が欲しい」と声をかけていただいて。週に4日は会社に縛られない日欲しかったので、週3勤務を条件に転職し、東京の実家に戻りました。会社員以外の収益の柱を立てることに時間を注げるのが嬉しかったので、不安はありませんでしたね。
僕に出会って人生が面白くなる、そんな人を増やしたい
ーその後、冒頭でお伺いしたように樋口さんの2つの強みを活かした「要点把握プロデューサー」として独立されていますね。独立後、どのように活躍の幅を広げられたのでしょうか。
前田塾に転職したときのように、僕の持っている「要点把握力」と「分かりやすく伝える力」を求めている人や、発揮できる場所がないかを周りの人に訊くのを繰り返しました。100人以上と話したと思います。
6〜7種類の仕事をさせていただけるようになった今、才能を見つけてそれを活かせる場所にたどり着けると本当に楽だと感じますね。僕は伝えることに長けており、今回のような取材の場では何をやってもうまくいく人に見えるかもしれませんが、そうではないので……。人の気持ちに寄り添うことなどが求められると、話が変わってきます(笑)。
ー漠然とした不安感を抱えたまま才能に気づかず、行動できずにいるUー29読者もいると思います。そのような読者に何か一言をお願いします。
何が不安で、どのようになれば嬉しいのかを自分に問いかけていない人が多い気がします。漠然とした不安に向き合えば漠然としなくなるので、考え抜いて欲しいです。
また、才能を活かせる場所を見つけられない人はいろいろな大人に会ってみると良いと思います。自分で探すよりも、「君の才能はここで活きるよ」と教えてもらう方が早いですよ。ロールモデルを見つけることもできますしね。
最後に僕の野望ですが、今の1000倍笑顔になる人を増やしたくて。僕と出会い、考え方と行動が変わり、人生が面白くなったと思ってくれる人が溢れることを楽しみにしています!
ー本日はありがとうございました。樋口さんの今後のご活躍を応援しております!
今回インタビューを受けてくださった樋口さんの「要点把握力」は、樋口さん曰く「勉強すれば今からでも身に付けることの出来る技術」とのことで、これから要点把握力を身に付けたい人に向けた講座も開設されています。ご興味がある方はぜひ覗いてみてくださいね。
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