様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第435回目のゲストは株式会社ラブグラフ COO 本間達也さんです。
COOとしてマーケティング戦略を描き、目標達成に邁進する本間さん。「やりきること」をなにより大事に行動し続ける本間さんのキャリアの土台は、新卒で入社した楽天で培われました。”GET THINGS DONE”の精神を抱きながら、多様な環境で自分の強みを発揮。「やりたいこと」より「目の前の人のゴールをアシストすること」で自己実現をしてきた本間さんの歩みは、「やりたいことが分からない」と悩む人に、足を踏み出すエネルギーを与えてくれます。
「自分でなんとかしなきゃ」幼少期の考えが突き動かす
ー本日はよろしくお願いします。本間さんの現在のお仕事について教えてください。
株式会社ラブグラフにて、COOとして、マーケティング、事業戦略の設計、投資家とのコミュニケーションなどを行っています。私の得意領域はアプリ内のコミュニケーション設計ですが、スタートアップなので必要な仕事はなんでもやっています。
株式会社ラブグラフは、「世界中の愛をカタチに」をミッションに、出張撮影サービス「ラブグラフ」や企業向け撮影サービス「ヒストリ」、写真教室「ラブグラフアカデミー」などを提供しています。
ー現職であるラブグラフを選ばれた理由を教えてください。
これまでに働いてきた会社もそうなのですが、ラブグラフが「ホットスポット」だったからです。ホットスポットとは言い換えれば、熱い人が集まり磁場を成しているところ、でしょうか。DeNA共同創業者の川田尚吾さんが提唱している概念です。
「ホットスポットとは、高濃度で優秀な才能が集まり、自分たちがまさにこれから世界を変えるんだと信じ切って、そして狂ったように働いている集団のこと。起業家仲間には、ある時そういう異様な状況になるときがあるんです。自分が変質してしまうのではないかと思うほど、猛烈に働く(笑)。異様なオーラが出ている不思議な状態です」
【引用】【番外編】狂ったように働き、ヘルシーな嫉妬で成長するスタートアップに必須の「ホットスポット」とは/ダイヤモンド・オンライン/執筆:本荘修二
熱量を持って新しいマーケットに飛び込むと、いろいろな人が集まり、そのなかで成功や失敗とを繰り返しながら競争体験ができるんです。そこでは、ヘルシーな嫉妬が醸成されます。「あいつにもできるんだから、私にだって…」と、もっと頑張ろうと思えるんです。まるで部活動に所属しているような感覚で、自然と目線も上がっていきます。
ーホットスポットであること、さらにこれまでのキャリアは一貫してインターネットを活用したサービスと共にあるようですが、もともと本間さんの生活に根付いていたのでしょうか?
私が育った家庭の方針として、とにかく「自律」を促していたんですよね。「自分のことは自分でやる」が当たり前で、なにか欲しいものがあってもお小遣いの範囲でやりくりしないといけない。それ以上を欲するなら、たとえばお手伝いをするなどして、自分から動かないと手に入らなかったんです。子どもながらに「自分でなんとかしないと」と思いながら生活していました。
肩たたき券をつくって対価をもらうなど、小学校時代はそのようにして欲しいものを手に入れていましたが、中学校へ進学すると、段々と欲しいものの値段も上がっていきます。そんなときに出会ったのがインターネットです。サイトをクリックする、座談会のモニターに参加して新商品に意見をするなどをして集めたポイントを現金に還元。さらに、ヤフーオークションで安く仕入れて高く出品するというを経験し、稼ぐ手段が増えていきました。
ー「ネットで稼ぐ」を、今のようにインターネットがそこまで普及していなかった時代に、中学生のときからチャレンジしていたんですね。インターネットにハマっていったのはどうしてですか?
ヤフーオークションでの体験に感動を覚えたからでしょう。自分が売ったものが、東京以外の人に買われると、驚きがありました。離れている土地とつながることができるんだ、という感動です。さらに、自分の行動によって、口座にお金が振り込まれていくことも新鮮でした。
また、生活に変化が生まれたことも大きかったと思います。鉄道好きの友人と、鉄道関連のホームページを開設したんです。そのページに、外部の掲示板サイトをリンクして、同じ学校の人たちが交流できる場所を提供していました。それまで友人との時間は学校内で完結していましたが、それが学校を飛び出しても交流が続くことに、「インターネットがあって初めて暮らしに起こる変化」を体感したんです。そのリアルタイム性にもわくわくしました。ニュースサイトを参考にして「こういう情報が求められているんだ」というのを分析しながら、ブログを活用して音楽ニュースの配信なども行っていたんです。
ー友人との人付き合いはどのようなタイプの子どもだったのでしょうか?
家庭の方針によって、「この環境でどう動けばいいのか」を自然と考えるようになっていたので、友人関係においても、「このコミュニティではどう振舞えばいいか」と、自分自身を変化させていたように思います。特段仲良しのグループがあったわけではなく、広く付き合い、みんなの盛り上げ役をするような子どもで、集団での立ち回りは上手な方でした。
その一方で、球技が得意ではなかったため、スポーツでは個人競技である水泳をずっとしていました。始めたきっかけは親のすすめでしたが、自分自身と向き合い、目標を達成することは、当時から性に合っていたんだと思います。
「やりたいことはなんだろう」自分探しの先にあった違和感
ー幼少期から現在の仕事に活きている面が垣間見れますが、その頃は将来をどのように思い描いていたのでしょうか?
通っていた学校も「自分の道は、自分で切り拓こう」という校風でした。特徴的だったのが、高校の卒業研究です。大学生のように自分で論文を書かなければならず、そのテーマ選びに苦戦。インターネットは大好きでしたが、知的好奇心を刺激するかと言えば、あまりしっくりこず、テーマが決まりませんでした。それをきっかとして、自分はなにがしたいのか、深く考えるように。自分探しモードにはいっていました。
そんななか、「人の意思決定の過程に興味があるな」ということに気付きます。相手を見て自分の立ち振る舞いを変える生き方をしてきていたからこそ、「人間はどんなふうに意思決定するんだろう?」「それが集団となったらどう動くのだろう?」と、注目するようになったんです。そこから公共性や社会に関心が及び、「それぞれの意思をまとめて最適解を出す、政治家ってかっこいいな!」と思い至りました。
ーいまとは全く異なる道を志していたんですね!それが、再びインターネットへと興味が引き戻されたのには、どのような体験があったのでしょうか?
政治家という夢に対して、強い欲求や、原体験があったわけではありませんでした。自分探しの先にたまたま見つけ、ぽんっ、と夢として自分のなかに置いたような感覚だったんです。
大学に進学してから、政治家のかばん持ちや、政界でのインターンを1年半ほど経験しました。けれど、政界はとても狭い世界に見え、自分がやったことがリアルタイムに返ってこないことに違和感がありました。
私が大学在学中だった頃は、ビジネスコンテストへの出場が賑わっていた時期でした。Twitterで見かけて興味を持ち、参加したことで、「ビジネスって面白いんだ!」と気付いたんです。
Facebookがこれから盛り上るタイミングだったため、Facebookページの作成と運用代行を行って管理費をいただくサービスなどを提供していました。また、同時期に楽天のサマーインターンに参加したんです。ビジネスの面白さに、インターネットの面白さが重なり、自分のなかで吹っ切れました。そこから大学時代の後半は、さまざまなインターンやビジネスコンテストに挑戦することに。それまで水泳やオークション出品など、個人競技が多かったのが、チームで課題に挑む楽しさを知れたことも、選択を後押ししていました。
楽天のカルチャーがキャリアの土台を作った
ーサマーインターンを経験した楽天を新卒での入社先に選んだ決め手はなんだったのでしょうか?
サマーインターンでのスタイルに魅力を強く感じたのが大きな決め手です。ほかのインターンシッププログラムは、連絡を受けて訪問をし、企業理解を深めるのが主流でした。一方、当時の楽天はいい意味で「粗い」と感じました。自分たちで1から楽天市場のショップページを立ち上げてインターン生同士で商品販売数を競うことも。幼少期から育まれた「自分でなんとかしないと」という気持ちが刺激され、とにかく楽しかったことを覚えています。
さらに、正しい目標が与えられる環境だったことも、大きな要因です。楽天は社内公用語が英語のために、TOEICの必要スコアが基準として設けられています。「入社までにここまで英語を伸ばさないといけない」という、自分だけだと設定できないところに目標が置かれていました。正しい目標をクリアーすることで自分が拡大できるという新鮮さに、未知の環境であるという期待を持てました。
ー入社を決定する際には、会社のコンセプトと自分の価値観の合致も重要なポイントかと思います。本間さんは楽天のどのようなコンセプトに惹かれたのでしょうか?
楽天では、楽天グループのあり方を明確にし、全ての従業員が理解・実行するための価値観・行動指針として「楽天主義」というのもの掲げています。そのなかのブランドコンセプトのひとつが、「信念不抜 -GET THINGS DONE-」です。
ほかの会社の選考フローのなかでは、自分の過去を掘り下げて自己理解を深めるプログラムもありました。しかし、楽天は、残してきた結果や、自分が将来どうしたいかをより問われる環境だったんです。
のめり込むときって、「そもそも私はなにがしたいんだろう」と考えてはいませんよね。あえて自分がやりたいことは脇に置き、やるべきことに集中して結果を出す。「何者になるかを目標にするよりも、成果を出すことがあなたの生きる意義だ」と伝えられているようでした。目標を達成していけば、おのずと自己実現もできていたんです。
「別にやりたいことを探さなくても、ここで働くことで社会と会社に貢献できている」そう感じることができるカルチャーが楽天にはありました。ベクトルが、自分自身ではなく外の世界や成果に向いていたんですね。
ー「やりたいことはなんだろう」と悩む人は、アンダー29世代にも多くいらっしゃると思います。
楽天出身の経営者の方に、「本間君は、自分のやりたいことや承認欲求を満たすのではなく、お客さまが求めることを叶えていきなさい」という言葉をいただいたことがあります。やりたいことを考えても出てこないのであれば、相手のやりたいことを叶えられる人になればいい。その言葉が腑に落ちました。
「やりたいことってなんだろう」と考えることはとても大切です。ただ、それによって行動する足が止まってしまうのはもったいない。成果に対してでも、お客さまに対してでも、自分の外にベクトルを向けて動き続ければ、きっと心震える瞬間に出会えるはずです。
現代は、さまざまな選択肢に触れることが可能になりました。それは素晴らしいことですが、選択肢が多いからこそ、なにかひとつのことをやりきる、ということが達成しにくい環境であるとも捉えています。選択できることがたったひとつだったら、目の前のそれを頑張るしかないですよね。私の場合は、楽天で「ひとまずやりきる」が染み付いたかなと思うんです。まずはひとつのことに集中し、やりきったら次へチャレンジしてみるといいのではないでしょうか。
大企業から、スタートアップへ。選択のふり幅を大きく持つ
ー本間さんの実行力の土台となった楽天時代を経て、2016年に株式会社Labitに参画し、執行役員COO就任されていますね。この変遷はどうして起こったのでしょうか?
ここまでのお話で伝わるように、楽天で働くことはとても楽しい時間でした。ただ、目標達成を繰り返していくうちに、それで満たされなくなる感覚に陥ったんです。まだ若手ではありましたが、大企業でチャレンジングな動きができて、「やり切った」という手ごたえも感じ、満足いく結果も残せていました。そこで、次のチャレンジをしてみたくなったんです。
株式会社Labitは、スマホだけで10秒で出品が完了する本のフリマアプリ「ブクマ!」を開発していました。学生時代にヤフーオークションを経験していて、「出品をする」という行為がどれほど手間か、体験として知っていんだんです。WantedlyでLabitの存在を知り、サービスの構想を聞いて、「面白いサービスだな!」と感心しました。
自分が生活のなかで感じていた課題を解決することが、社会のためになる。自分と社会のベクトルが一致した感覚を覚え、参画を決めました。当時の代表が年齢が近く、同年代の活動に刺激を受けたというのも理由のひとつですね。
ー大企業からスタートアップに活躍の場を移行することへの不安はなかったのでしょうか?
転職したときの年齢は25歳で、家族を養っているわけでも、生活水準がそれほど高かったわけでもありませんでした。会社の規模が違っても、暮らしが大きく変化することもなく、新しい環境に飛び込みやすかったかなと思います。30歳を目前にした今、私より若い世代の人が悩んでいたとしたら「自分のために意思決定ができるのは今だけだよ」と言いたいですね。
実際にスタートアップで働き始めて、「いい意味でカオスだな」と感じていました。大企業では、システムが出来上がった状態の上に自分の仕事を積み上げていきます。言わば、用意された舞台で精一杯踊るようなもの。スタートアップは、舞台から自分たちで組み上げなければなりません。ここでも、「自分でなんとかしないといけない」という気持ちが沸き上がって、楽しさに変換されていきました。
目標未達で感じた失速感は、新たな目標が救ってくれた
ー事業売却をした後、株式会社Labitでチームとして株式会社メルカリに所属することになりますが、再び大企業に戻って変化はありましたか?
最初は、Labitのメンバーと共に学びのフリマアプリ「teacha」の開発を行っていました。新たなチャレンジが始まり、チームでやる楽しさも継続して感じていたんです。しかし、メルカリが新規事業をクローズする意思決定をしたことによって、メンバーは別々のチームに再配属されることになりました。
私にとって、Labitという場所がホットスポットであり、それが解散することで気持ちに一区切りついたような感覚がありました。それまで愚直に目指していた目標がなり、失速したな、と。
しかし、メルカリのGrowthチームが新たなホットスポットになりました。Growthチームは、メルカリ内での流通総額を上げることを目標として動いています。楽天で学んだ原点に戻ったんです。自分のやりたいことは置いといて、「目の前のお客さまに魅力を知ってもらうには?」「メルカリでの体験をどう楽しんでもらおう?」ということに向き合いました。teachaが目標未達だったのでわだかまりを残し、下降してしまいそうだったところを救ってくれたのは、新しい目標だったんです。
ーくすぶるような感覚を覚えたとき、大きく環境を変えることも選択肢のひとつだと思いますが、本間さんはそれを選ばなかったんですね。
当時は考えませんでしたね。私が働き始めたとき、メルカリはユニコーン企業で、優秀な人たちがどんどん入社を決めている時期でした。まさにホットスポットだったんです。スタートアップだと、採用の際に出せる条件も限られます。大企業だからこそ、優秀な人が集まり、ホットスポット化していた。なので、ここで踏ん張ろうと思えました。
また、やっぱり、やりきらずに環境を変えることが、どうしても納得できないんですよね。自分なりに誇れる成果を出してから次のチャレンジをしようと決意し、メルカリに残るという選択をしました。
行きたいところは言葉にし、目標の引力を活用する
ーラブグラフもホットスポットである、と教えていただきました。それに加え、目標達成をなにより誠実に果たしてきた本間さんが、メルカリから、いまのラブグラフを新しいチャレンジの場にしたのも理由があるのでしょうか?
現在のラブグラフは、サービスコンセプトが固まり、それを伸ばしていくフェーズにあります。「なにがなんでも目標を達成する」ことが、私のバックグラウンドから一番力が発揮できるタイミングであると分かっていたので、ちょうどフェーズが合致したというのも参画を決めた理由です。
ー多様な環境を経験しながら、本間さんは自分の強みをしっかりと発揮されてきました。自分の成長と会社の成長がマッチすると、どのように判断すればいいのでしょうか?
これまで私は4社を経験してきました。複数社に身を置いたことで、選択肢がまず持てたと思います。1社だけでは、「どういう働き方が求められるのか、入ってみないと分からない」と感じてしまうでしょう。思い切って、最初は選択のふり幅を大きく持つといいかもしれません。「いまは大企業を経験しているから、スタートアップの環境にも飛び込んでみよう」というふうに。
最近だと、副業もやりやすくなってきました。その際に、単純にスキルを切り売りするのではなく、自分なりに目標を設定して働いてほしいなと思います。真逆のふり幅のチャレンジをしてみて、目標をやりきったら次に行く。そうやってマッチする環境を探せばいいのではないでしょうか。
目標を設定することには、やりきること以外にもメリットがあります。「この人は、ここに向かって進んでいるんだ」と周りが知ることで、サポートしてもらえる体制ができます。目標が引力になるんです。目標、そしてそれを有言実行する力には、多くの人を巻き込むがあります。
ーそうすることで、また新たなホットスポットが誕生しそうですね。本日はありがとうございました。
株式会社ラブグラフ COO 本間達也さん (Twitter/ラブグラフ 採用情報)