「継続することに意味がある」とGRIT代表・大嶋英美里が続けるボランティア活動とは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第384回は「プロキング」というゴミ拾いをしながらジョギングをする新しいスポーツとボランティアを組み合わせて社会貢献活動を行う団体GRITの代表、大嶋さんです。大嶋さんがGRITを立ち上げるに至るまでのお話をお伺いしました。

本業の傍ら、毎月プロキングイベントを開催

ーまずは簡単な自己紹介をお願いします。

ゴミ拾いとジョギングを掛け合わせたスポーツ、プロキングを行うボランティア団体「GRIT」を運営しています、大嶋英美里です。20~30代が楽しく参加できるボランティアをモットーに月に1回の頻度で皇居を中心にゴミ拾いランを主催しています。

普段は管理栄養士として、スポーツ選手や芸能関係の方々を対象に食事指導や食事提供などをしています。

ープロキングを始められたきっかけを教えていただけますか。

もともとボランティアもスポーツも好きだったのがきっかけです。好きなことを2つを掛け合わせられないかなと思った中、思いついたのがゴミ拾いランでした。あとから調べてゴミ拾いランは「プロキング」として認知されていることを知った形になります。

ーどのような方々が参加されているのでしょうか。

新しい友達を作りたい方、皇居ランをしてみたい方、ボランティアをしてみたい方など様々です。3割くらいは社会問題に興味を持っている方ですが、残りの7割は楽しそうだったからといって参加してくれることが多いです。

楽しかったなと思ってもらえるようにワイワイとした雰囲気作りはもちろん、参加者を2チームに分けて拾ったゴミの量を競うゲーム形式で行うなどの工夫をしています。誰でも参加しやすいボランティアであり続けることが目標です。

 

栄養士を目指したのは高校生の時から

ー少し過去を振り返って現在に至るまでのお話も聞かせてください。幼少期に大嶋さんに影響を与えた出来事などはありましたか。

11歳の時にアル・ゴアの「不都合な真実」という本を読み、衝撃を受けたことは今につながっていると思います。この本をきっかけに環境問題をすごく意識するようになり、日頃からエコバッグを持ち歩くようになりました。また、小さい頃は目立つタイプではなく、どちらかというとおしとやかな性格だったのですが、クラスの友人に節水や節電をしつこく呼びかけるような子になりました。

ー中学ではどのように過ごされていたのでしょうか。

中学ではいじめが頻発しており、正義感が強かった私はいじめが許せず、なんとか止めようとしました。その結果、自分がいじめの標的になってしまい、どちらかというと人目を避けるようにして過ごしてましたね。

変わるきっかけとなったのは14歳の時に行ったオランダでの10日間のホームステイでした。日本と全然違う環境、考え方、表現、人生観に初めて触れて今まで自分が狭い世界で生きてきたことに気づかされました。

また、中学ではほとんど話す友達もおらず、自分の意見が言えない子になっていましたが、ホームステイをきっかけにもっとやりたいことをもっと自由に表現できるようになりたいと思うように。人とコミュニケーションをとること、人前で話すことに苦手意識を持っている自分を変えていきたいと前向きに考えるようになりました。

ー栄養士に興味を持たれたのはいつ頃のことだったのですか。

将来はスポーツに関わる栄養士になりたいと思うようになったのは高校2年生の時のことです。食べるのが好きだったことや、格闘技の試合をよくテレビで見ていて、選手からエネルギーをもらっていたことなどが影響しています。高校の頃、バレー部のマネージャーをしていたので、栄養について個人で調べて勉強するようになりました。

ー卒業後の進路もそれを基準に決められたのでしょうか。

そうですね。スポーツ選手への栄養指導が出来る大学に行きたいと思い、目標としていた教授がいる大学を受験しましたが落ちてしまい…浪人をするか他の大学に行くか迷った結果、行きたかった大学の短期大学に進学することにしました。

 

大学生になって知ったボランティアの魅力

ー大学生活はいかがでしたか。

とにかく充実した生活を送りたくて、いろんなところに足を運び、たくさんの人と出会うようにしていました。また、やっぱり短大ではなく4年制大学に行きたいという思いがあったので、受験失敗の悔しさをバネに、第一志望の大学に編入することになりました。念願だった研究室にもお世話になることができ、とても充実していました。

ーボランティアに興味を持ったのも大学生活中のことだったのでしょうか。

大学1年生のときに、何気なく応募した東京マラソンのボランティアがきっかけです。

スポーツが好きだったのと、社会問題の解決に何らかの形で貢献できたらとずっと思っていたので時間ができたタイミングで応募してみました。ゴールした選手にメダルをおかけする仕事を担当させていただいたのですが、選手の姿に感動して、選手と一緒に大号泣しながらメダルをかけていました。

東京マラソンのボランティア以降、ボランティアにハマり、大学在籍中、数十個のボランティアに参加しました。スポーツイベントのスタッフ、障がいを持っている子どもたちへの食育、サッカースタジアムのゴミ拾いなど、ボランティア募集のサイトで探して積極的に参加していましたね。

ーすごいですね!大嶋さんがボランティアにハマった理由は何だったのですか。

ボランティア自体も楽しくやりがいがあったのですが、何よりも他のボランティアの方々の人間性に魅力を感じたのが理由だと思います。みなさん思いやりを持っていて、温かく、それに加えて社会問題に当事者意識を持っていたり、いろんなことにアンテナを張っていたり…そんな人たちに引き寄せられたのだと思います。

ー卒業後の進路についてはどのように決められたのでしょうか。

栄養士の中でもスポーツ栄養はかなり狭き門とされているため、新卒では病院で食事のスキルを磨こうと思い、管理栄養士として病院に勤めることを選びました。正社員として就職し、セミフリーランス栄養士として活動を始めました。

ボランティアのハードルを下げたい

ーGRITの立ち上げの経緯を教えていただけますか。

就職後、毎日定時で帰れていたので、何か仕事終わりにできることを探していました。仕事以外も充実させたいと思い、ボランティア活動にいくつか参加してみたのですが、年配の方が中心なことが多く若い世代の参入が難しいと感じたんです。そこで友人の力も借りて自分でボランティア団体を作ることに決めました。

若者が楽しめそうなボランティアというのを大前提に、社会人になってから運動する機会がなくなっていたのも実感としてあったので、ゴミ拾いランを企画することにしました。もともと皇居ランが好きで、意外にゴミが落ちているのを覚えていたんですよね。

ーそういった経緯があったんですね!団体を運営するにあたって大変なことはありますか。

参加者を集めるのは大変ですね。今でも正直課題ですが、SNSを活用したり、友人紹介をお願いしたりなどして集めています。若い世代のボランティアのハードルを下げたいという想いがあるからこそ、大変なことがあっても運営を続けれているんだと思います。団体名のGRITには「やり抜く力」という意味があります。継続していくことに意味があると思って頑張っています。

ーGRITを通じて今後行いたいこと、実現したいことは何かありますか。

現在は皇居のみですが、今後は東京の色んな場所でできればいいなと思っています。代々木公園で実施したことがあるのですが、公園に出入りする人も増えてきているのでゴミも増えているんですよね。

また、プロキングはもちろんのこと、今後は他の社会問題にもアプローチできたらいいなと思っています。SDGsの発信活動など、他の領域にも積極的に参加していきたいです。その結果、問題意識を持つ同世代が増えたらいいなと思っています。

ー今後個人としてチャレンジしたいこともあったらぜひ教えてください。

個人としては大好きな競技の業界全体に働きかけて業界のシステムを変えたいなと考えています。例えば計量のあるスポーツでは自己流で危ない減量法をしている選手も多いんです。無理な減量は選手生命が短くなる原因にもなるので、計量の仕組みから変えていきたいな、と。

ー素敵ですね。最後にU-29世代に何かメッセージがあればお願いします!

昔は人前で話すことが苦手で、自分に自信がなかった私が、今は団体を立ち上げて代表として頑張っています。それも全て、目標があってゴールに向けて行動したからです。明確な目標やゴールを持てば、人って変われると分かりました。なのでぜひ将来やりたいことやなりたい目標が見つかった時は、全力でその夢を追い求めてみてください!応援しています。

インタビュー:高尾有沙(Facebook/Twitter/note
執筆者:松本佳恋(ブログ/Twitter
デザイナー:五十嵐 有沙 (Twitter