畏敬の念を意識しながら、つながりの力を大事に。株式会社ライフノート代表・町塚俊介

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第276回目となる今回は町塚俊介さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。つながりの力で人と組織が活きるを理念に、コーチングや組織開発を中心とした事業を行う株式会社ライフノートの代表である町塚さん。キャリアに関するお話に留まらず、大事にされている「自然」への考えについてお話いただきました。

人と組織の成長支援を、鎌倉で

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

町塚俊介と申します。生まれは静岡県静岡市駿河区で、山を背にして目の前が田んぼといった「THE 日本」な田舎環境にて育ちました。大学入学を機に上京し、5年程前に鎌倉の寺社仏閣エリアに移動し、現在は拡張家族スタイルで家族四人と知り合い三人と住んでいます。

ー拡張家族についても気になるところですが、まずは現在のお仕事について伺わせてください。

人材育成や教育プログラムの開発や人の成長に寄り添うコーチをしています。

具体的には、神奈川県の産業振興施策「HATSU鎌倉」という0→1を担う新しい事業を創出する起業家を支援するプログラムやコミュニティの運営と、みなとみらいにある1→100を担うベンチャー企業の成長促進拠点にて、動いている2つのアクセラレーションプログラムを繋ぐコミュニティの運営が現在の主な仕事です。

また、学校の教育変革にも携わっています。従来の画一的な教科学習としての教育から、より個々人の興味や主体性に寄り添った教育に変わっていく中で、その現状に対応する先生方の生徒への関わり方などのスタンスをアップデートするための活動を全国で展開しています。

 

振り返って気づいた幼少期の影響

ー少し過去に遡って現在に至るまでのお話も聞かせてください。幼少期はどんな子どもでしたか?

小さい頃は長男気質で、ゲームマスターみたいな感じでした(笑)兄弟やいとこが年下だったこともあり、遊ぶ仲間は年下が多かったので、みんなの得意・不得意を意識しながらその都度全員が楽しめるようなルールを作って遊んでいました。

中学時代はいわゆる社会性や慣習を学ぶタイミングでもあったと思うので、周囲の空気に合わせることを経験を通して学んだような気がします。「ちゃんと」していましたね。

あとは、頑張り屋なところもありました。小学4年生の終わり頃から県下一厳しいと言われた硬式野球部に入りました。楽しそうな他の部活もあったのですが、敢えてストイックな方を選び「頑張ってやるぞ!」と思っていました。

ーなるほど。何故あえて厳しい方を選ばれたのでしょう。

当時の僕は「完全無欠マン」を目指していたんです。一流企業の社長になりたいとか、どこか理想的で超人で完全無欠な何かになろうとしていました。今でも「完全無欠」を求める自分もいますが、同時に今は「ありのまま」を受け入れられるようにもなりました。

ーその、完璧でありたいという想いはどう育まれたのか覚えていたりしますか?

これはとても明確で、小さい頃の記憶によるものだと思っています。

重度のアトピー持ちで生まれたのですが、人によっては見るに耐えないような肌・容姿だったんですよね。そのため当時1~2歳の大変だったであろう頃の写真があまり無いんです。

また、親族にとっては待望だった長男がアトピー持ち…といったこともあり、悪気が無くとも心配の声が届き、その声が親や自分自身に影響したなと思っています。母が僕に対して「ごめんね、ごめんね。」と、不完全に産んでしまった罪の意識からか言われたという小さな頃の記憶があるんです。その、どこか欠けている意識の反動から、完璧で完全無欠の存在になりたいという強い衝動を持ったのだと思います。

ーそれは、記憶としてずっと残っていたのですか?

このことに気づいたのは大学入学後のことです。師匠・メンター的な存在の方と話す中でだんだん気づいたというか…出会いを通して記憶を辿った先で言語化できるようになりました。

 

コーチング・成人理論での事業立ち上げ

ー大学では経済学部に入学されたようですが、現在の町塚さん自身の活動に関連あるコーチングや成人理論などの分野に触れていくきっかけは何だったのでしょう?

本当の意味で「誰かの役に立てた」という感覚を体験できたことが大きかったような気がします。当時お話をした方や一緒に活動をした方から「あなたのおかげで人生が変わった」という感謝の手紙を頂いたことがあります。まだ当時は「コーチング」という概念が無かったので、本当にただお話をしていただけという感覚なのですが…

ー確かに「コーチング」という概念はここ数年で急速に広がったように思います。

起業した初期の頃は、コーチングでは無くて「1 on 1」と言っていました。ここ数年でto Cに広がった感じがありますよね。社会がコーチングを必要としているというこの流れは良いなと思っています。

2016~2017年は「ワークル」というコミュニティ・対話を通して人の力を引き出すことを掲げたサブスク型サービスを提供していました。当時は、新しい文化を創ることや、行動変容に伴う社会変容に対して高いモチベーションがあったのですが、その頃の自分を振り返って現在のコーチングのto Cへの流れをみると、嬉しい気持ちになりますね。

ー様々なことに取り組まれてきていますが、何か新しいことを始めるときは今までの活動はどのように収束させてたのでしょうか。

先に例にあげた「ワークル」は、思えば、突然やめた感覚が大きいですね(笑)実績が出ていた側面もあれば、事業として至らない部分もあって。「社会に大きな変革を起こすぞ」と一念発起したものの、活動を続けていく中で「これじゃだめだ。この活動では社会を変えられない」ということに途中で気付きました。

その結果、これから社会へインパクトを残すであろう企業の組織開発に携わって豊かにしていこうという方向へ変わりました。役目を終えた葉が土に還るような時もあれば、ぶちっと枝から切れることもありますね。

ーひとつの組織として社会を変える難しさを経験し、現在は組織やコミュニティにアプローチするというやり方をされているのですね。

当時はまた今とは違った景色を見ていたんだと思います。今は「個にして全体である」というか、繋がり合って影響し合う意識を大切にしています。

 

自然の理を学びながら、つながりの力を大切に

ー「自然」に対して目を向けられている印象もあります。町塚さんは人間の内面の表現方法として、よく「自然」をリンクさせていますよね。

これは実家の環境による影響が大きいかなと思います。ジブリの隠れた名作に「柳川掘割物語」という作品があるのですが、その作品では、人が水とどう共生していくのかなど、自然との関わり方について語られています。アニメーションを活用したドキュメンタリー映画で、またの名を「もうひとつのナウシカ」とも言われているようで。この作品を見て以来、地元に帰るたびに自然とどう関わりたいかについて考えさせられるようになりました。

今は、自然からは実践を通じて、自然の「理」を学ばせてもらいながら関わっていきたいなと思っています。対話やコーチングは、人間の内側にある心理を学んでいく行為ですが、自然の理にかなっているのかというのを実践を通じて学んでいける点に尊さを感じています。

今住んでいる北鎌倉には、誇るべき里山や緑地があるので料理をするなど、自然の理を体を通して学んで、楽しんでいきたいです。

ー自然を体感して考え、そして感じるを大事にされているんですね。

そうですね。「人間とは考える葦である」という言葉は、考える力があることによって、弱かった人間は自然をコントロールし、活用することができると捉えることができます。これも必要な価値観だと思っています。

一方で、「自然に還り、自然に従う」ということも大事だと思っています。むしろ自然を活用するという考えを習得した後は自然に還るという流れに最終的に至るのではないかと。自然に還り、自然に従うのは決して簡単に体現できるものではないかと思いますが、そこを自然に触れながら呈していきたいです。

ー直近、自然に触れ、考える中で感じた気づきはありますか。

昨日はグリンピースの鞘を、スジをとって食べる実験をしてみたのですが、スジを断ち切ることが出来なくて。その時に人間は食物にすら敵わないんだと痛感しましたね。科学化した、脳が発達した人間は、全てをコントロールできると思っているところがありますが、実際は違うということに気付くことが多いです。

気候変動に関する国際機関のレポートを読んでも、地球や宇宙の動きに比較すると人間の力なんて大したことないなと気づかされます。自然も、自分より大いなるもので、私たちはその中の一部であるにしか過ぎないんですよね。

そういう意味では今後、自然は簡単に太刀打ちできるものではなく、それくらい自然は偉大なものであるという考え方、「OWE(畏敬の念)」が注目されていくのではないかと思っています。

ーOWEは初めて耳にしましたが、確かに必ずしも人間が自然を全てコントロールすることは難しいのではないかと思います。

自然へのアプローチや自然との向き合い方は様々だと思います。個人としては自然に関わる活動を芸術(藝術)的なものとして捉えています。藝術の藝という漢字は草木を植える人間の姿の象形が語源となっていると言われているんですよね。自然との関わり方の中で人間が内側で感じる心理的なもの、学び、インスピーレションが「藝」なのかなと。自然を味わいながら、自然と向き合い、自然と関わっていけたらいいなと思っています。

ーなるほど…最後になりますが、今後の目標などがあればぜひ教えてください。

毎年、年始に今年の目標を書き初めにするが我が家の恒例行事なのですが、今年は1枚目に「無理しない」、2枚目には「内理(だいり)にかなう(=内側の理に従う)」と書きました。今年は、この二点について探求していきたいと思っています。

「世界には三つの象限がある」という概念があります。そのうち第二象限にドリーム・ランドという、僕が「水面下の意識」と認識している象限があるんです。この象限では人々が分かち合える、一体になれるイメージを持っているのですが、そんな動きを大切にしたいです。みんなが持っている力やエネルギーが上手く循環するように、流れを司れるようになれたらなと思っています。

ーありがとうございます。これからの町塚さんのご活躍も応援しています!

取材:吉永里美(Twitter/note
執筆者:松本佳恋(ブログ/Twitter
デザイン:五十嵐有沙(Twitter