現役高校生・髙津悠樹が会社を設立、CTOに就任するまで

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第328回目となる今回は、株式会社UnpackedでCTOを務める現役高校生、髙津悠樹(たかつゆうき)さんをゲストにお迎えし、現在通っているN高での経験やインターン活動について伺いました。

高校生が始めた高校生のためのリーディングカンパニー

ーまず簡単に自己紹介をお願いします。

学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校(以下、N高)2年生の髙津悠樹と申します。N高は普通の高校とは少し異なり、グループワークを行ったり企画をつくるような授業が多く、提供されているN予備校というeラーニングサービスでプログラミングや大学受験などといった様々なコンテンツを受講することが可能です。通信制もありますが、僕は通学コースで全日制の学校と同じようにキャンパスに通っています。

僕は起業部に入部しており、中澤、川添、三橋という友人と共に株式会社Unpackedを経営、CTOを務めています。起業部は学校が特に応援してくれている部活動だと感じていて、実際に入部するには何度かの審査を突破する必要があります。書類審査の段階でビジネスプランを提出、面接では自分の言葉で語れるかを審査されます。起業部には起業をしたいと思っている志の高い仲間が集まっているだけでなく、起業している方が講師として講演会を開いてくださるなど手厚いバックアップを受けることができます。

学業以外だとN高が運営しているN code laboというプログラミングコースでプログラミング講師のインターンを行ったり、チーズケーキの企画、開発、販売を行うMr. CHEESECAKEでマーケティングのインターンも行っています。

ー現在運営されている株式会社Unpackedの事業内容を詳しく教えてください。

株式会社Unpackedでは「U-18キャリアサミット」という高校生向けのキャリアサミットを運営しています。大学生は就職活動が身近にあるため先のキャリアを考える機会がたくさんありますが、高校生にはあまりないんですよ。大学進学に限らず、もっといろいろな自分の新しい価値観を見つめてもらうことを目的に「#なんとなくから卒業だ」を掲げてイベントを運営しています。

他にも「みらい事業部」という企業と高校生のマッチングを行う事業もやっています。「何かしたいけれども何をしたら良いか分からない」という高校生と、高校生と共にプロジェクトを進めたい企業を引き合わせ、プロジェクトやイベントを実施するような事業ですね。

僕はプログラミングができるのでCTOとしてUnpackedに関わっていますが、イベント運営がサービスの主軸なので、実際コードを書いて開発することはあまりありません。なんでも屋さんのような形で1日のtodo botをつくったり、スプレッドシートをつくったり、どちらかというと業務効率化のための基盤をつくっているような役割です。

 

8歳で人生最大の挫折、そしてプログラミングの世界へ

ー髙津さんの幼少期にも遡って色々とお話を伺っていきたいと思います。8歳の頃に人生のどん底を経験したとのことでしたが、何があったのでしょうか。

幼稚園の頃からずっとサッカーをやっていたんですが、小学校2年生のときに交通事故にあい足の骨を折ってしまいました。リハビリを頑張って4年生の頃にはチームにも復活できたんですが、ブランクは想像以上に大きなものでした。小学校低学年から中学年にあがるタイミングで周りも上手くなっていて、試合や練習にもついていくのが難しくなってしまったんです。5年生の頃にはフェードアウトするような形でサッカーをやめてしまいました。ずっと頑張ってきたものができなくなってしまったことによる大きな不安を感じましたし、人生のどん底でしたね。

サッカーをやめてからは代表委員会という、いわゆる生徒会のような委員会に入って、理事長をやっていました。正直理事長になろうと思ったのは、トップが一番楽だと思ったからなんです(笑)でも実際にやってみたら意外と楽ではなかったですね。

ー大きな挫折を経験した小学校を卒業し、13歳でプログラミングに出会うんですね。お母さまの勧めだったと伺いました。

はい、そうです。中学校では楽そうだという理由でIT研究部というパソコン部に入部しました。小学校での経験から運動部は避けたいという思いも少しありましたね。
IT研究部といっても、タイピングを練習したりエクセルの使い方を学ぶくらいしかないんです。そんなタイミングで母が中高生プログラミングスクール「Life is Tech School」のサマーキャンプのチラシを持ってきてくれました。

そこで初めてアプリをつくったのですが、iPhoneで自分のつくったアプリが動いた瞬間の衝撃は凄まじいものでしたね。そこからはどっぷりとプログラミングの世界にハマり、Macを買ってもらって独学やLife is Techに通ってプログラミングの勉強を続けました。

ー中学3年生のときには起立性調節障害を発症されたそうですが、原因はなんだったのでしょうか。

特に分からないんです。ある日を境に起きれない。起こされても起きれないんです。当然登校時間にも間に合わず、その代わり、家でプログラミングを続けていました。長時間座っていたり、お風呂から上がると視界がブラックアウトするような立ちくらみも起きるのですが、そちらの方が実害がありましたね。2週間くらい続いたタイミングで学校から病院に行くよう勧められて、この症状が病気なのだと気付きました。

中学2年生の頃から高校はN高に進学すると決めていたのですが、N高は入試が早くて11月には終わります。起立性調節障害を発症したのは中学3年生の6月くらいで、冬にかけては良くなっていくので、受験後卒業までは学校に通うこともできました。

ーなぜN高に進学したかったのでしょうか。

プログラミングを学びたい、という想いが一番大きかったですね。僕がN高の存在を知ったのは中学1年生のとき。VRのヘッドギアをつけた入学式を実施してネットで炎上していたんです(笑)

また、プログラミングをやっていると同世代でN高に通っている友達ができるんですが、その友達から学校でどんなことをやっているのか実体験を聞くことができたのが大きかったですね。担任の先生には止められましたが、志望校が早い段階から決まっていたことは前向きに捉えています。

N高は服装も自由ですし、携帯持ち込みも可能で、生徒の自主性に任されています。毎日学校生活が楽しくて、同世代のコミュニティとしての魅力を噛み締めながら通っています。

ー入学されてからというものプログラミング講師や起業部への入部など精力的に活動されているんですよね!

高校生になるまではアルバイトなどもやったことがなかったのですが、プログラミングを仕事にできるなら、とプログラミング教室の講師募集に応募しました。N高にはプログラミングが得意な人も多いので、当時はN高生採用というのがあったんです。無事、採用され1年半ほど講師を続けています。授業は1対1形式なので、自分に生徒がつかなければ仕事がないのですが、初めて体験にきてくれた子がその場で入会してくれて、そのまま生徒が途切れることなく今に至ります。

自分でもプログラミングを学んでいましたが、教えるとなると別問題。難しいですね。自転車の乗り方と一緒だと思います。学ぶ場合は概念として理解していれば良いのですが、教える場合は自分が当たり前に理解していたものをちゃんと言語化する必要がある。

ただ、自分が今まで触ったことのない技術を使って教える機会もあるので、自分で勉強するよりも教える方が勉強になるなとも感じます。自分でサイトを見て調べるだけよりも、実際に人に教えながら学んでいく方が頭に入りやすく、学びの効率が良いです。

 

N高起業部に入部したのは2020年の12月、プログラミングスクールで働きはじめた少しあとですね。起業部に入部することになったのは、高校生向けのキャリアサミットがきっかけです。

2020年1月頃に友人の中澤から「U18キャリアサミット」というイベントをやりたいと声をかけられました。最初は断ろうと思っていたんですが、「日本で一番でかいキャリアイベントをつくるから一緒にやってくれ」とあまりの熱意に圧倒され、一緒にやることを決断しました。

5人のメンバーでキャリアサミットを企画運営し、とにかく出来る人が出来ることをやる形で動いていました。僕はサイトを作ったり、集客人数の達成進捗等を見ていましたね。

当初イベントは4月頃にやろうと計画していたのですが、新型コロナウイルスが日本でも猛威をふるいだし、緊急事態宣言まで発令。危機感を抱いたものの、6月にオンラインで実施する方向に舵をきり、結果400名ほどの参加者を集め大成功を納めました。オンラインだったので最初は実感が湧かなかったのですが、「キャリアサミットよかったよ」と声をかけてもらうことが多く、達成感を味わいましたね。

この経験から学生団体で終わらせず、会社にした方が良いと話し合い、中澤と三橋が起業部に入部、法人化のために動き出しました。12月頃に法人登記が終わり、僕はそのタイミングで起業部に入部しました。

ーMr.CHEESECAKEではマーケティングをされているとのことでしたが、具体的にどのような業務をされているのでしょうか。

Mr.CHEESECAKEでは毎週販売開始のメールマガジンを配信しており、その中で使用する写真の選定や文面作成業務を担っています。顧客全員に同じメールマガジンを配信するのではなく、登録しているけれどもケーキを買ったことがない人、リピーターの人、など顧客データを分析し、出し分けも行っています。最近ではメールマガジンの開封率など実数値の部分のデータ分析もさせていただいています。

Unpackedはまだまだデータが少なく、変動が激しいため、あまりデータ分析には向いていません。一方でMr.CHEESECAKEでは大きなデータを見ることが出来るので、傾向を掴むという部分で非常に勉強になっています。

また、すでにプロダクトが存在し、自分も顧客として知っていたものをどうグロースさせていくのか、という視点はUnpackedと異なり、難しさを感じながらも面白い部分でもありますね。

自分の興味を信じて突き進んで欲しい

ー今後の進路について目標はありますか?

日本ではまだまだ大学進学していないと厳しいことも多いように感じているので、まずは大学に進学しようと思っています。その後は自分のやりたいことを仕事にし続けたい、そしてスタートアップでスタートアップを支えられる人になりたいと思っていますね。

会社が飛行機だとしたら社長がパイロットでエンジニアが整備士ですよね。でも飛行機は滑走路がないと飛べないんです。僕は会社を高く、遠くに飛ばせる滑走路のような、会社を支えていく人間になりたいと思っています。

ー本日は「学校では習わない学生のうちに身につけた方が良いこと」というテーマでお話を伺いましたが、最後にU29世代に伝えたいことはありますか?

名刺の交換の仕方、メールの書き方など、学校では習わないけれど社会で必要なことは山ほどあると思います。でも今の学校のカリキュラムではそうした実践的な勉強ができない。

僕は反対の意見を押し切ってN高に入ったけれども、そこで様々な経験をし、大きく成長したと感じています。同世代にも自分の興味のあることは誰に止められても絶対にやった方が良いと伝えたいですね。

取材者:吉永里美 (Twitter/note
執筆者:うえのるいーず(Twitter
デザイナー:五十嵐有沙(Twitter