「名古屋から社会起業家を輩出したい」株式会社UNERI代表取締役・河合将樹が見ている世界とは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第372回目となる今回のゲストは、株式会社UNERI代表取締役・河合将樹さんです。

生まれ故郷である名古屋から、社会起業家を輩出するために活動している河合さん。そんな彼の現在に至るまでのお話を伺いました。

名古屋を中心に起業家が育つ仕組みをつくる

ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

株式会社UNERIで代表をしている河合将樹です。現在は名古屋を中心にして、社会起業家が生まれる仕組みづくりをテーマに会社を経営しています。

具体的には、創業期の社会起業家向けインキュベーション事業を実施したり、自治体と連携をして起業家の成功角度が上がる為に市場にメスを入れるコーディネーター事業などをしたりしています。

ーどのような背景から現在の会社を経営されているのでしょうか?

もともとは名古屋の創業メンバーとして参画した会社の事業でして、起業系のイベントやカンファレンスなどを開催するプロジェクトの1つでした。

自分は大学在学中から関わっていたのですが、2020年2月にプロジェクトが一段落したことをうけて、「自分の会社として育てたい」という強い気持ちが芽生えて法人化をしました。「これなら人生を賭けられる」と人生で初めて思えたんです。

ーそうだったんですね。現在は一緒に活動している仲間もいるのですか?

メンバーが4人とアドバイザーが2人がいます。それぞれスタートアップで働いた経験があって、且つNPO法人や一般社団法人などのソーシャルセクターでも働いた経験がある稀有なメンバーです。

みんなで「社会的にインパクトが高くて、且つ財務的にも継続力が高い企業で溢れた社会的市場を作らないとマズイよね」という課題意識を持ちながら日々活動をしています。

人生の転機になった18歳のできごと

ー河合さんの過去についてお伺いしたいと思い、事前に人生チャートを共有いただいたのですが、18歳のときに-100点と書かれていますよね……。具体的に何があったのでしょうか?

高校生のときに評定が「4.9」あったのに、先生が出願を忘れて希望の大学に行けなくなりました(笑)

当初は「全国から色んな価値観の人が集うカオスな環境が面白そう」という理由から、起業家輩出で有名な都内の某大学を志望していたのですが、結果として付属の大学に進学することになりました。

ーそれは大変でしたね……。自分がコントロールできないところに要因があると、受け止めるのはなかなか難しくなかったですか?

最初はやるせなさで一杯でした。ただ、文句を言っても仕方がないので、むしろこの経験を糧に、漠然とですが「人生を変えてやる」と躍起になっていましたね。

実際に大学入学後は、学生団体を作ったり、出張授業に行ったり、留学に行ったり、ときには遊んだり、長期インターンをしたり、大学生がやることはすべてやりました。

国際交流から価値観が広がった大学時代

ー大学時代には、内閣府主催の事業にも参加されたみたいですが、具体的にどのようなものだったのでしょうか?

内閣府の「世界青年の船」という国際交流事業に、日本代表青年として参加しました。全大陸から集まった11カ国・約240人が共同生活をして、ディスカッションや文化交流を行います。世界中の歴代OB/OGが「Life Changing experience」と呼んでおり、約50年の歴史ある事業です。

ー実際に参加されてみてどうでしたか?

世界中から集まった刺激的なメンバーと、見渡す限り海しかない船内、且つインターネットのない環境で1ヶ月も過ごすと、世界中に「家族」が出来るので、これが生涯の財産です。

間違いなくその後の人生が変わったし、今振り返っても魔法のような時間でした。

ー今でも記憶に残っている何か印象的なできごとはありましたか?

印象的だったのは、タンザニアから来ていた起業家のパスカルというルームメイトの話です。彼は現地で会社を経営していたのですが、どうやらタンザニアの人が起業をする理由は、日本とは全然違うみたいなんです。「地元に雇用をつくりたい」とか「働き口がないから会社をやるしかない」とか、そういった理由で起業をしているんですよね。

「生まれ故郷に不満があるからこそ、自らが変化の担い手として生きる」という彼の背中は、とても勇ましく感じました。自分が名古屋を拠点に始めようと思ったきっかけの1つでしたね。

ーそうだったんですね。帰国後は具体的にどのような行動に移されたのですか?

アントレプレナーシップ×教育で起業をする為の経験を積みたかったので、、東京にあるNPO法人ETIC.(エティック)が主催する「MAKERS UNIVERSITY」という学生起業家の私塾で、インターンという名の修行を始めました。実際にやっていたことは、起業家が生まれるための場の設計などです。

スタートアップに限らない、様々な法人格で事業をつくり、新卒起業家として挑む同世代100人以上がどのように生まれていくのかを間近で見れた経験は、今の事業の血となり肉となっています。

ースキルや経験以外にも得られるものが多そうですね!話は変わりますが、その後にヤングダボス会議にも参加されていますよね。どのような経緯で参加されたのですか?

世界青年の船の仲間が「君も参加するべきだよ」と言って、参加することになりました。

世界196カ国から2,000人が集まる国際会合で、すごく刺激的だったのですが、一方で「意外と世界は狭いんだな」と感じましたね。SDGsだったり、気候変動だったり、国が違っても問題意識は共通していて、その前提にある知識も極めて近かったんです。

それまでは、国が違うと考え方もまったく違うだろうと思っていたのですが、2020年代においては、国という枠組みで判断する事は極めてナンセンスだと痛感しました。

ーたしかに、国を超えても共通しているものはありますよね。

例えば今って、先進国と発展途上国で二分しているように多くのメディアは表現する風潮があるじゃないですか。個人的には、この構造は一部では終わるだろうと思っています。

その代わりに、世界にアクセスできるグローバルな層と、そうではない層という二極化の時代が来ると考えています。先進国とか発展途上国とか、そういった国と国の構造ではなく、個人と個人をベースとした世界になるはずです。

社会起業家にお金が流れる時代が来る

ー今後の社会や経済についてどのように考えていますか?

資本主義の再定義が始まると考えています。キーワードとしては、社会的インパクト投資やゼブラ企業などですね。

今までの投資家は、短期間で儲かる(財務的リターンのみの)企業にしか投資をしてきませんでした。ただ、最近はNPOのような社会的意義が高い事業を株式会社がやっている事例も増えており、注目が集まっています。例えば、ヘラルボニーさんやライフイズテックさんなどです。

そういった会社が大きくなると、地球が良くなったり、社会の負の便益が解消されたり、資本主義社会の歪みが是正されるんですよね。事例としては世界中にも増えているので、これからは国内でも、このような起業家に様々な社会的リソースが流れる時代になるだろうと思っています。

ー僕らみたいな若い世代はリアルタイムに生きているからこそ、そういった会社に着目していきたいですね。最後に、今後チャレンジしたいことなどあれば教えてください。

いわゆるSDGsを事業で実装し、社会課題に取り組む起業家・ベンチャー企業と、SDGsとはいうけど具体的に何をすればいいんだろう?と悩む大企業の人を繋げる“ プラットフォーム ”を構想中です。しかし、それを実現するには、お金も人も必要なので、興味がある方がいたらぜひご連絡を頂けると嬉しいです。

ー河合さん、本日はありがとうございました!

取材:山崎貴大(Twitter
執筆・編集:下出翔太
デザイン:五十嵐有沙(Twitter