ファンを愛し、愛されるブランドの原点とは。Laluce代表 豊田翔さん

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第253回目となる今回は、レザーブランド「Laluce(ラルーチェ)」を運営する豊田翔さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

幼い頃から大切にしていた野球のグローブがきっかけで、大学在学中にレザーブランドを立ち上げた豊田さん。今では多くのリピーターを抱え、ファンに愛されるブランドに成長させたブランドへの想いを語っていただきました。

ケガでの挫折。大好きだった野球との新しい関わり方を見出した学生時代

ーまずは簡単に自己紹介をお願いいたします。

福岡でレザーブランドの「Laluce(ラルーチェ)」を販売している、豊田翔(とよたしょう)と申します。ブランドはオンライン販売をメインに、不定期でポップアップストアでの短期出店も全国で行なっています。

ーそんな豊田さんはどんな学生時代を過ごされましたか?

小さい頃から高校まで野球漬けの毎日でした。しかし、中学2年生のときに大きなケガをしてしまって、「自分の選手生命は終わった」と絶望していました。

そんなとき、進学先の高校で野球部の監督が「選手として活躍することが全てじゃない」と言ってくれたんです。所属していた高校では選手のデータを取って練習や試合に活用していたので、僕はそのデータの分析をするようになりました。

実際に分析をしてみたら、思った以上に頭を使う作業で楽しいと感じたんです。そこで「チームメイトが喜んでくれたり、人の役に立つことが嬉しい」と気づいて。選手をしていた頃は自分が目立ちたい、活躍したいと思っていましたが、裏方にまわって初めて人の役に立つという新しい存在意義を見つけました。

ケガをしたのは大きな挫折でしたが、同時に大きな転機でもありましたね。

「買った時よりも愛おしく思えるものを。」ブランドの原点は10年来のグローブ

ーブランドを作りたいと思ったきっかけは何でしょうか?

きっかけは小学生のときから修理をして、今でも使い続けているグローブでした。

基本的に市場では新品の時がモノの価値は高いですが、僕のグローブは愛着や思い出で、僕にとって計りきれない価値になっています。使えば使うほどモノへの愛着が湧く、その体験をお客さんにしてほしいという想いが、Laluceの原点です。

ー就職ではなく起業をしようと思った経緯を教えてください。

元々、モノを売るのに興味があったことに加え、一般企業で働くことに向いてないと思っていたことは理由のひとつです。

学生時代に2ヵ所でアルバイトをしていたのですが、実はどちらもクビになりかけたくらい仕事ができませんでした。特に単純作業や書類作成が苦手で。営業のアルバイトで契約はたくさん取れても、その後の書類作成でミスを多発したり……。

営業から書類作成までの一連の仕事が評価されるのが会社なので、できることとできないことがある僕は、一般企業への就職は自分には向いていないとは感じていました。

それで、一旦卒業までに結果が出なかったら就職しようと決め、19歳のときにブランドを立ち上げました。初めはブランドがうまくいったらラッキー、と軽く考えて、お金を借りないスモールスタートのビジネスでした。

1年ほど運営した後にしっかり数字の目標を決め、「この目標を超えたら、大学を辞めてブランドに本腰を入れよう」と決心しました。昨年の12月頃に目標を達成し、今年の3月に大学を中退してブランドに集中した、というのが経緯になります。

「あの人に使ってほしい」Laluce商品に込められたこだわり

▲「買った時よりも愛おしく思えるものを。」をコンセプトに革製品を展開

ーブランドのこだわりはありますか?

基本的に僕がすべて商品のデザインを作っているのですが、必ずはっきり喜んでくれる人の顔が思い浮かぶ物だけを作るようにしています。このキーケースはあの人にプレゼントしたい、この財布はあの人がこんな場面で使ってくれそう、とか。

商品1つひとつに、その人のライフスタイルに沿うような商品を、プレゼントしたら喜んでくれるだろうな、という想いがあります。だから”誰か”を思い描けない商品は作りません。

その作り方が功を奏しているのか、作った製品で「売れなかったな」と感じるものはあまりなく、新商品よりも今ある商品を改良し続けるスタイルで販売できています。

ー豊田さんが大切にしてることは何でしょうか?

「お客さんを大切にすること」と「三方良しの関係」です。

最高の商品を作って届ける。それでお客さんに喜んでもらうことが1番重要だと思っています。

また、商品を買ってくれたお客さんに手紙を書いたり、セールをしなかったりもこだわりです。せっかく定価で買った商品が、後からセールになってたら悲しい気持ちになってしまうじゃないですか。

お客さんを裏切らず、ちゃんと喜んでもらえたら次に繋がると信じて、Laluceを販売しています。おかげでリピートで買ってくださる方も多いんです。

もうひとつ大切にしていることは、会社・職人さん・お客さん全員と良い関係を築くことです。誰かが搾取されたり、誰かを騙したり我慢させるビジネスは長続きしません。

商品が売れたら利益はしっかり職人さんに還元したいですし、お客さんにはいいものを届けたい。そのためにはマーケティングが重要だと思っていて。

僕たちが商品を売れないと、職人さんに利益を還元できませんし、お客さんに質のいいモノを届けられません。しっかり価値のあるものを提供して、伝えることで関わる人みんなが幸せになると信じて仕事をしています。

ーブランドが売れるようになった転機はどんなことでしたか?

▲Instagramでは「商品のあるライフスタイル」を提案。

ブランドの転機の1つはInstagramに載せる写真を”作品”に変えて、ライフスタイルを提案したことでした。

以前は僕が写真を撮って投稿をしていたのですが、あるとき、プロのモデルさんとカメラマンさんに商品の写真をお願いしました。Instagramの写真を、この商品がいいと伝えるのではなく、商品が溶け込んだ生活を提案するような”作品”に変えてみたんです。その写真をアップした頃からオンラインでの売上が増えるようになったので、伝え方は大切だと実感しましたね。

また、口コミを可視化する仕組みを作ったのも転機でした。

オンラインで、しかも無名のブランドの商品を購入するとき、お客さんはとても不安だと思います。そんなときに口コミを可視化したり、たくさん生まれるような仕組みを作るのはすごく大切だと思って、口コミの工夫をしました。

ーどのような口コミの工夫をしましたか?

お客さんがInstagramやフォームから、職人さんへの感想を気軽に書けるようにしました。

元々、お客さんの声を職人さんに届けたいとは思っていました。通常、職人さんは僕たち、会社からしかお客さんの声を聞けなかったので。

そこでInstagramのストーリー機能を使って「ストーリーや投稿に商品の感想を書くと、職人さんにその感想を届けます」とアナウンスしました。これが好評で、今では購入したい人が購入者の投稿で質問するなどのコミュニケーションも生まれるようになりました。

実際に投稿されたお客さんのストーリーや投稿を職人さんに見せれば、実際の声として職人さんにも届けることができるんです。

また、お客さんへのアンケートの最後に職人さんへの感想を書いてもらう欄を作っています。予想以上にたくさんのお客さんが感想を書いてくださるので、それを職人さんに見せたりですね。

届かないのが当たり前だった、お客さんの声を職人さんに届けることで職人さんとの良い関係が築ける。今後はこの感想を職人さんに届ける仕組みをもっとシステムなどに落とし込んでちゃんとやりたいとは思っています。

ー過去の自分に「これだけはやっておくといい!」とアドバイスしたいことはありますか?

マーケティングとプロダクトを磨く時間を取ることです。

特にマーケティングは早く勉強してほしいです。大前提、商売をする時は商品が売れないと成り立ちませんし、三方良しの関係も作れません。

マーケティングと聞くと難しいイメージがありますが、実は「自分たちはどんな価値があるのか」「どんな人が喜んでくれるのか」「どうしたらもっと喜んでもらえるのか」を考えることだと思うんです。

マーケティングはそんなふうに考える力がつくので、何かを始める人にはマーケティングの勉強をおすすめしたいですね。

また、もっと商品を磨く時間を作りたかったです。

ブランド立ち上げ当時は、ポップアップストアで僕が店頭に立って売り子をしていました。もちろんお客さんと話すことで得たものもありましたが、今思うと商品を改善したり、新しいものを作ったり、サービスを見直したりする時間をもっと取るべきだったと思っています。当時はお金がなかったから、スタッフを雇っうこともできなかったのですが……。

今考えるともっと改善できたと思う、廃盤になってしまった商品もあるので悔しいですね。

ー豊田さんは今後、どんなことに挑戦したいですか?

海外の売上を増やしたり、会社さんと一緒に企画をしたりと挑戦したいことはたくさんあります。これからもコツコツ一人ひとりの方に商品を知ってもらって、たくさんの人に楽しんでもらえる企画を考えていきたいです!

ー最後に、U-29世代へメッセージをお願いします!

チャレンジしたいことがあったら、まずは小さく始めてみたらいいと思います。スモールスタートなら失敗しても痛くありませんし、そこから始まることや出会えることもたくさんあります。

また、人を大切にしてほしいです。お客さんも仲間も大切にして裏切らない。人を大事にする人は、何かにチャレンジするときに応援してもらえると思うんです。どんなときも人を大切に、その人のためにできることを考えて動いていれば、きっと自然と応援される人になっていると思います。

ーありがとうございました!豊田さんのこれからのご活躍も応援しています!

今回のゲスト・豊田さんが運営する、買った時よりも愛おしく思えるレザーブランド「Laluce(ラルーチェ)」の詳細はこちら

執筆・インタビュー:えるも(Twitter/ブログ
デザイン:五十嵐有沙(Twitter