学生ライターからの内定と2度の退職からわかった。自分のやりたいことのヒントは「外」ではなく自分の「内」にある。

一般的な就活は避け、学生ライターでキャリアをスタートした中野さん。26歳までに会社員、フリーランス、メディアの立ち上げなど、様々な意思決定をしてきました。

そんな彼女は、こう言いました。

自分のやりたいことやキャリアのヒントは、「外」ではなく自分の「内」にある。

決して、順風満帆なキャリアではなかった中野さん。でも、諦めずに取り組むことで、WEBメディアの編集長、フリーランスライターとして好きなことを仕事にしています。

中野笑里 / Emiri Nakano:大学3年次、WEBメディアのインターンをきっかけにフリーランスライターとしての活動開始。 卒業後はギフト系メディアの編集長として450万ユーザーのメディアに育てた後、社会人4年目の26歳でスタートアップ企業の事業部長となりメンズ美容メディアdanCe(ダンシー)を立ち上げる。社内での複業も実現し、11月からは社長室で戦略責任者も兼務。現在もフリーランス継続中で、美容ライターとして雑誌や大手サイトで執筆中。

 

バイトが時間の切り売りに感じ、虚無感を抱く。自己分析で書くことが好きなことに気づき、学生ライターへ

ー中野さんが本格的にライターをはじめたのはいつ頃ですか?また、はじめたきっかけも知りたいです。

中野:大学3年生のときに、恋愛系メディアで2週間ほどインターンを経験しました。記事の書き方やGoogle Analyticsの使い方など基礎的なことを学びました。

ただ、単価が安かったので時給換算したら500円ほどで。もう少し条件がいいメディアで書きたいと思っていたときに、編集長からお声がけいただいて。はじめよりも好条件だったので、お世話になっていた恋愛系メディアで本格的にライターを始めました。

ー3年生になって、恋愛系のメディアでライターとして始めたわけじゃないですか。やろうと思ったのはどういうきっかけだったんですか?

中野:1、2年生で初めてレジ打ちのバイトを始めました。ただ、バイトの時間がすごく虚無で、時間の切り売りに感じたんです。

あるとき「私が今後したいことって何だろう?」と自己分析をしてみたんです。すると「書くことが好き」ということに気づいて。思えば、高校時代にブログ運営をしていましたし、小学校6年間は毎日日記を書いていました。

であれば、書くことを仕事にできたら幸せだなと思い、「ライター アルバイト」や「ライター インターン」で検索して、ライターインターンに辿り着きました。

 

自分が納得しないと動けない。一般的な就活への反骨心

ー3年生からライターを開始して、収益も出ていたんですよね。中野さんなら「新卒フリーランス」もありだったと思いますが、就職を選んだ理由はありますか?

中野:たしかに「フリーランスもありだな」とは思っていました。でもちょうど、たまたま登録していた逆求人サービスで企業からオファーが届いたんです。当時私が興味を持っていた保育事業を始めるということで、「それなら私も一緒にやりたいな」と思い入社しました。就活と言えないほど、完全に受け身でしたね。

ーすごい縁ですね。周りが就活モードの中、インターンや企業説明会からはじまる「ザ・就活」はしてなかったんですか?

中野:しませんでした。正直、一般的な就活が異様に思えてしまって。

3年の12月頃に就活が解禁されて、リクルートスーツで身をまとい、一斉に企業説明会に行きはじめますよね。それぞれのタイミングが必ずあるはずなのに、「何でみんな突然一斉に始めるんだろう?」と、疑問に思いました。

周りの友達も、本を読みながら「こう聞かれたらこう答える」と準備していて、内定を取るためのノウハウも、たくさん出回っていますよね。「丸暗記で内定獲得!」みたいな。

でも「それって本質的じゃないな」と感じてしまったんです。自分の将来やキャリアを話すのに、画一的な模範解答はないはずですよね。

今思えば、普通の就活をしなかったのは自分に向いていないのと、「既存の就活スタイルへの反抗心」があったのだと思います。

ー3年生から本質を捉えていてすごい……。周りの目がある中で、自分の意見を貫けた理由は何でしたか?

中野:昔から家族や学校に、何かを強いられるのがすごく苦手でした。自分で納得しないと、動けないんです。また、常に堂々としていて目立つこともあり、周りから浮くことがあっても、別に気にしないんです。

ー鋼のメンタルですね(笑)

中野:そうですね(笑)今、就職先を決める必要はない。私のタイミングで決めよう、と思っていましたね。

 

携わりたかった事業が白紙になり、新卒2ヶ月目で退社。フリーランスへの挑戦

大学4年12月から契約社員で入社したはいいものの、実はすぐに退社してしましました。

保育事業をすると聞いて入ったのですが結局白紙になってしまい、またスタートアップのベンチャーということもあって激務で。

ーそれは災難でしたね……。受け身で就活していたとのことでしたが、後悔はしていますか?

中野:大変なこともありましたが、あれはあれで必要な経験だったと思います。流されながら決めるのではなく、きちんと就職先を見定めるのが大事なんだな、と思いました。

ー急にフリーランスとなってしまいましたが、独立初月から稼げましたか?

中野:初月は打ち合わせが多かったのですが、Facebookで「これからフリーランス一本です!」と報告してから、いろんな縁や繋がりに恵まれました。

ちょうどメディアが流行り始めた時期ということもあり、だんだんライターの依頼も増えるようになりました。鉄板焼きでアルバイトも同時にしていたんですが、独立2、3ヶ月目からはライターの仕事も忙しくなり、ライター一本で仕事しました。

 

リスペクトフルなメンバーとの出会い。メディアの波が来ると確信

ーフリーライターの期間が半年でしたよね。何かきっかけがあったのですか?

中野:学生時代の繋がりから、ギフト専門のメディアが立ち上がったことを知ったんです。もともとお祝い事やプレゼントが大好きで、そこでたまたまライターの募集があったので、すぐに面談し、ライターアルバイトとして入社しました。

実は、はじめは社員として入社するまでの覚悟はありませんでした。単純に素敵なサービスに携われたらいいな、という気持ちでした。

ーなるほど。でも、そこから入社されたんですよね?

中野:そうなんです。ライターとして出社して記事を書いていたのですが、仕事が楽しくて、週2日出社だったのが気づいたら週5日も出社していました。

その間ずっと記事を書いていたのですが「このメディアで他の仕事もしてみたい、深く関わりたい」と思うようになり、ちょうどそのとき「社員になってみない?」とお声がけいただいたので、社員になることを決めました。

ーここも素敵なご縁でしたね。入社の決め手は何でしたか?

中野:一緒に働いている方へのリスペクトですね。「この人たちとこの先も働けたら楽しいし、絶対成長出来る」と確信できたのが、一番大きかったです。

また、当時私は雑誌をメインに仕事をしていたのですが、多くの出版社が少しずつWEBにシフトしていて。

そのとき、メディア運営やWEBにおける編集・ライティング力をつけるのは必須だなと確信しました。正社員としてメディア運営にコミットして力を付けることで、今後のキャリアにも役に立てようと思いました。

 

尊敬していた上司の退社による退社。メンズ美容メディア 『danCe』を立ち上げる

ー中野さんが働かれていたギフトメディア、去年すごい伸びましたよね。累計利用3000万UU・月間利用480万UU。ライターのスキルと、編集や企画、WEBメディアのプロデューサースキルは、似て非なるものじゃないですか。成果出すためにどんなことを意識していましたか?

中野:メディアが伝えたいことを把握し、文章で表現するのがライターだと思っています。一方で編集は、メディアの企画や数値改善、ライター育成のコミュニケーション、マニュアル整備など、多種多様なスキルとそれらを俯瞰して見る視点が必要となります。

この編集のマルチタスクさはフリーランスの働き方とも似ていて、すんなり受け入れることができたんです。

最初は大変だと思うこともありましたが、日々の積み重ねで、結果的に編集やメディア運営のスキルを身につけていけたのだと思います。

ーなるほど。ギフトメディアでは編集長もされていましたよね。順調にキャリアを歩まれている中で、キャリアを変更したきっかけは何でしたか?

中野:色々あったのですが、一番大きいのは尊敬していた上司が退職したことですね。残った上層部と私の意向には決定的な違いもあったので、すぐに別の道を考えました。

ギフトメディアを退いてから、尊敬してた上司と私を含め3人で、新しいサービスを作りました。その後、もともとフリーランスで関わっていたスタートアップ企業位に入社し、メンズ美容のメディア 「danCe」を立ち上げました。

ー今回は今までとは違って、男性向けの美容メディア。どんなコンセプトなんですか?

中野:danCeの運営会社が、元々LIVE配信やタレントをしているかっこいい男性を囲っている企業と繋がりがありました。「その男性たちを活かして何か出来ないか」というお話があり、一つのアイデアとしてメディアが立ち上がりました。私は今まで美容全般について執筆や編集で携わってきたのですが、想像以上に「メンズ美容」の市場は大きく、スピード感があったんです。

danCeは編集長の私もライターもほとんどが女性で、「女性発信でカッコいいを語る」をコンセプトとしています。

ー面白いですね!あえて全員女性にしているんですか?

中野:そうですね。多くのメディアではかっこいい男性が出てきて「かっこよさ」を語ることが多いと思うのですが、時に上から感じたり、「自分にはできなさそう……」と思われることもあると思うんです。

女性目線でかっこいい男性を語ることで、その隔たりをなくしたいなと。上からではなく横からを意識し、男性美容に寄り添うメディアを展開したいですね。

 

自分がやっていきたい答えは、「”外”ではなく自分の”内”」にある

ーここまでありがとうございました。今後の方向性や、やりたい仕事の軸ってありますか?

中野:今、二つ考えています。一つは「女性の働き方」に関わりたいです。卒論で食育をテーマに書いたのですが、子供の食の認識には家庭内の食事が大きく関わっていて。また、そこには母親の働き方もかなり密接に関わっていたんですよね。

もちろん十人十色の答えがありますが、「現代における最適な女性の働き方ってどうなんだろう?」と、フラットに考えつづけたいです。

もう一つは「子供」です。新卒の会社を辞めてフリーランスになったときに自己分析した結果、子供に関わる社会福祉に興味があることがわかったんです。子供の貧困に問題意識を持っているので「どうにかしたい」という気持ちがあって。

子供をきちんと自分事にしてから関わりたいので、タイミングとしては私が出産を経てからだなと思っています。

この二つは、今後のキャリアで必ず携わりたいです。もしかすると、美容よりも興味が強いかもしれないです。

ー意外な軸でした。いろいろとキャリアで模索した中野さんですが、U-29世代に伝えたいことってありますか?

中野:「答えは”外”ではなく、自分の”内”にある」と伝えたいですね。

たとえば、将来どんな仕事をしようかなと就活を考えたら、エージェントや就活本などがたくさんありますよね。でも、就活は自分の進路を決めることなので、答えは絶対外ではなく内(自分の中)にあると思っています。徹底的に自己分析をして、自分がやりたいことを探してほしいです。

また自分のやっていることに納得していないと、その仕事で成果を出すことは難しくなります。成果が出せないとやりがいも感じず、負のループになってしまう。自分が納得する道を歩むために自分の考えを深掘りして「何が好きか」や「何をやりたいか」を明確にしてほしいです。

もちろん、その場で見つからないこともあると思っています。それでも立ち止まらず、諦めずにやってほしいですね。数ヶ月や半年後では、見える世界が全然変わってくると思うので。

 

取材・編集:西村創一朗
執筆:ヌイ
撮影:山崎貴大