15歳で高校中退、“打席”に立ち続けた6か月 高木俊輔 #私のライフラインチャート

2018年10月、政府は大手企業による採用活動の解禁日を定めた指針「就活ルール」の撤廃を決定した。企業は通年で採用活動を実施できるようになり、学生は「就職活動だけ頑張る」ことが通用しなくなったといえる。意思を持ち、打席に立ち続けた学生にチャンスが巡ってくる時代が訪れるのだ。 人は、人生を一度しか生きることができない。ゆえに、心の底から願う人生であっても、勇気を持ってその一歩を踏み出すことは難しい。もし、誰かの人生を追体験することができたら——。 U-29.comが送る、「あの人の人生を振り返り、ユニークで私らしい人生を送るため」のヒントを届ける企画 #私のライフラインチャート 。今回お話を伺ったのは、株式会社ハッシャダイでマーケティングを学ぶ15歳・高木俊輔さんです。 高木さんは半年前に通っていた私立高校をドロップアウトし、単身で上京。現在では株式会社ハッシャダイでマーケティングを学んでいる。この半年間、社会の“打席”に立ちづけた彼の言葉からは、奥深い経験からなる落ち着きと静かな闘志を感じた。「ドロップアウト」という派手な文言の影に隠れた、15歳の“泥臭い青春”に迫る。

Text by 半蔵 門太郎

遠足の行き先も、自分たちで決める。“目的ドリブン”の思考が基盤を創り上げた

ーー14歳から現在にかけて、指数関数的に幸福度が上がっています。 高木俊輔(以下、高木):そうですね。上京してからは決して順調ではなく、多くの人に迷惑をかけました。メンタルが不安定になった時期もありましたね。 しかし、振り返ってみるとすべて良い経験だったと言い切ることができます。毎日成長を感じていますし、東京に来たことに後悔を感じたことはありません。 ーーでは、まず1つ目のターニングポイントから教えてください。 高木:最初のターニングポイントは小学校4年生のころ。私の通っていた小学校が文部科学省から「ゆめみらい学園」に選定され、カリキュラムがガラッと変わったのがきっかけでした。 従来のような「参加型」の学校教育ではなく、「参画型」のスタイルが実装されたんです。 ーー参画型というと? 高木:与えられた課題の解決方法を考えるのが従来の「参加型」。ですが、僕らの学校では課題を探すことがスタートです。 高木:具体的な例としては、遠足。僕らの学校では、生徒自身が行きたいところをディスカッションし、日程を決めるところまでを担当します。遠足でどこへ行きたいのか、自分の意見を自由に言うことができるのです。 しかし、クラス全員のプレゼン合戦となるため、プレゼン能力が低ければ話を聞いてもらえません。 自分のエゴを通すための課題は何なのか、どのように解決するのか、どのようにプレゼンをする必要があるのか…常に考える環境がありました。 ーー自分の“目的”のために足りないものを考える…。いまの高木さんのアクションの「基礎」となっているのでしょうか。 高木:やりたいことのためにできることを探し、ひたすらPDCAを回す。逆に、目的なく“How”だけのことには手を出さない。「目的ドリブン」の行動指針は、間違いなく自分の基盤となっていますね。「ゆめみらい学園」のカリキュラムがなければ、高校中退なんて考えもしなかったのではないかと(笑)。

「高木、イキらせてやるよ」を引き出すために。中学校時代に学んだ“マーケティング”のイロハ

ーー高木さんを語るうえで欠かせないターニングポイントだと思っていることに、noteのエントリ『中学生の僕が文化祭にスポンサーを付けた話』があります。 ーーこの投稿は僕もリアルタイムで見ていて学生時代からSNSやpolcaを使いこなす「新世代」が出現したと、センセーショナルな印象を感じました。高木さんのなかで、この文化祭は大きなきっかけとなっているのでしょうか。 高木:noteのバズは上京の大きなきっかけとなりましたね。たくさんの縁が生まれましたし、選択肢が一気に広がった契機になりました。それに、この文化祭は自分にとり「ゆめみらい学園」で学んだことの集大成となったイベントでした。 ーーどのような意味で「集大成」だったのでしょうか? 高木:はじめ、僕の学校では文化祭が無かったんです。そのため、ただ単に「文化祭をはじめたい」とクラスメイトとともに動き出したのがきっかけでした。教師に文化祭を開催できない理由を聞き、懸念点を「プレゼン」によってつぶしていく…。その一環として、予算を集める必要があったんです。 ーー文化祭という「目的」に対する手段に過ぎなかったんですね。 高木:そのころちょうどCampfire社からフレンドファンディングアプリ「polca」がリリースされて。この機は逃せないと思い、“若さ”を武器に「polcaおじさん」にDMで企画をプレゼンしてったんです。ウザがれるくらいDMを送った結果、目標金額の5000円を達成。小規模な資金調達でしたが、自力でお金を集め文化祭を開催したことは大きな成功体験でした。

ーー自分たちの武器を理解し、プレゼンをする…。現在高木さんがマーケティングを学んでいる原体験になっているのでしょうか? 高木:プレゼンの要諦は相手を楽しませること。自分の武器を理解し「おもしろそう」と思ってもらえれば、相手は興味を持ってくれます。つまり、いかに「高木、イキらせてやるよ」とお金を投げさせるかが勝負なんです。 文化祭での資金調達は“若さ”を武器に調子にのったテンションでお金を集めることができた。良くも悪くも「お金ってチョロいな」と思いましたね(笑)。

めちゃめちゃ反省、だけど2日後には忘れる…。“目的”のために、指針がブレることはない。

ーー3つ目のターニングポイントは「上京」ですね。上京してから約半年。学生の身分に隠れることなく打席に立ち続けてきたなかで、多くの失敗・挫折をしてきたのではないでしょうか。 高木:失敗…ありすぎて答えられないですね(笑)。SNSで調子に乗りまくったり、同世代を煽ってみたり…。多くの人に迷惑をかけましたし、たくさんの恥をかいてきました。 高木:いちばん凹んだのは、上京のきっかけを与えてくれた男性から“利用”されたこと。僕のつながりを利用して、同級生の女の子を強姦していたことが発覚したんです。同級生を守れなかった僕の過失であることは言うまでもない。 しかし、尊敬していた人物が自分を「コネ」として利用しているに過ぎなかったことは、本当にショックでした。足元から世界が崩れていく感覚を味わいましたね。 ーー自身の失敗や「イタさ」と、どのように向き合っているのでしょうか。 高木:やらかしてしまったらその場でめちゃめちゃ反省して、あまり引きずらないですね。それに、イタさってみんな持ってるものだと思うんです。なんなら、いまこうしてインタビューされている自分もイタいし、東京に住んでることすら、イタい(笑)。かっこいいとイタいって表裏一体。どこまでいっても自分はイタいんだと思っています。 ーー飄々としてますね(笑)。周囲の意見に左右されることはないのでしょうか? 高木:上京したのも、ハッシャダイでバイトを始めたのも、明確な目的を持っています。目的ドリブンで行動しているので、的外れな外野の意見に左右されることはありません。「高木はこうしたほうがいい」と批判を受けても、すぐに忘れちゃう。どうでもいいアドバイスは、2日後には忘れちゃいますね(笑)。

「楽しみ」を提供し、人びとの行動をデザインしたい

ーー現在マーケティングの勉強をされているとお聞きしました。さまざまな“How”があるなかで、マーケテイングを選んだのはなぜでしょうか? 高木:小さいときから場の雰囲気や空気をコントロールするのが好きで。自分の行動によって人の心を動かすのが好きなんですよね。意図的にツイートをバズらせたり、プレゼンを通してお金を調達したり…。相手を楽しませつつ、行動をデザインできることに喜びを感じます。要は「しめしめ…」と思いたいんですよね(笑)。 ーー高木さんは9月より株式会社ハッシャダイの運営する「ハッシャダイカフェ」でバイトとして働き始めました。15歳で高校を中退した高木さんにとって、「地方と東京の選択格差を解消する」ハッシャダイの思想に共鳴するポイントがあったのでしょうか? 高木:いえ、はじめは共鳴していたわけではありませんでした。新たにオープンした「ハッシャダイカフェ」でオープニングスタッフとして働くことで、マーケティングに携われると思ったんです。真っ白なキャンパスに絵を描くように、常識にとらわれない施策を打てるの、オイシイなって。 ーーなるほど。実際に働いてみて、どのように感じていますか? 高木:現在は現場に立ちながら、課題を洗い出している状況。ひとまず3か月を目安に、多くのひとが訪れるよう、ハッシャダイカフェで実現できる「ストーリー」を伝えていきたいですね。