「官僚」の枠を超えて圧倒的に挑戦し続ける小田切未来が語る、20代が身につけておくべき3つの思考法

キャリアに大きな影響を与える、20代での働き方や仕事への向き合い方。チャレンジングな仕事をしたいと願う一方で、任せてもらえず思い悩んでしまう人も多いはず。そんなU-29世代こそ身につけておきたい思考法があります。

それを語ってくれるのは、小田切未来さん。東京大学大学院修了後、経済産業省に入省。5年目でクールジャパン政策の担当になったのち、内閣官房副長官補付、経済産業大臣政務官秘書官などを歴任。一般社団法人Public Meets Innovation を設立して理事となり、現在は米国ニューヨークにあるコロンビア大学国際公共政策大学院に在籍されています。

そんな非常に輝かしいキャリアをお持ちの小田切さんですが、はじめから国家公務員を目指していたわけではないんだそう。何が今の小田切さんを作ったのか、20代でどんなことを意識してキャリアを築いてきたのか。人生における3つのターニングポイントと、今のU-29世代に伝えたいメッセージを伺いました。

 

小田切未来の人生における3つのターニングポイント

ー 小田切さんにとって、人生のターニングポイントは何だったんでしょうか?

私の場合、一つ目は就職活動、二つ目が海外留学、そして三つ目が一般社団法人Public Meets Innovationの立ち上げ。これらが、自分の中で大きなターニングポイントとなっていますね。

ー 一つ目のターニングポイントは、経済産業省に入省する前なんですね。

はい。私は、父親が体調不良などで仕事を早めに退職したこともあり、高校や大学には奨学金をもらいながら通ったんです。また当時、アルバイトで家庭教師や予備校講師をやっていたこともあって、人材育成や教育事業に興味があったんですよ。

そんなとき、兄が「人材育成や教育の仕事をやるのであれば、教育の制度を変えられるようになったほうがもっとダイナミックに仕事ができるんじゃないか」と助言してくれて、初めて早稲田セミナーという予備校に行ったんですね。そこにたまたま文部科学省、国土交通省、経済産業省などの方々が来ていて、「経済産業省は社会で活躍するための人材育成もやっている」と聞いたことで、方向転換しました。

大学院で経済、政治、法律など公共政策を勉強したほうが自分のためになるな、と考えて大学院に進むことにしたんです。だけど実は私、大学5年と大学院1年のときに官僚の試験に落ちてるんですよ。大学院2年でやっと合格。だけど、大学院の研究と並行して試験勉強をするのがものすごく大変で、その時はすごく忙しかったし、毎日12時間は勉強していたと思います。

ー 三度目の正直で、官僚になる道が開けた。

奨学金を借りて苦労していたので人材育成に関わることがやりたかったし、いつでも誰でも挑戦・再挑戦ができるような社会づくりができたらいいなと思っていた。だから官僚か、途中で公の仕事ができるような道に進んだほうがいいんじゃないかと考えていたんです。「数億円お金を稼いでそれを元手に政治家になれないかな」と、外資系金融企業にも就活していた時期もありましたが、今考えるとだいぶ尖っていましたよね(笑)

それでも経済産業省に決めたのは、人ですね。魅力的な人が多かったからなのですが、その中でも面接で衝撃的な人に出会ったんです。その人は、今の三重県知事・鈴木英敬さん。面接の二言目には「俺、顔でかいやろ、ガハハハ」と笑ったんですよ。「こんな人が官僚にいるんだ(笑)」と衝撃的で、ここで働いてみたいという気持ちがすごく強まりました。

僕が一番大事にしていたのは「誰と一緒に働いた上で、自分の叶えたいことを実現できるか」ということだったので、最終的には人で決めたんです。これがまずターニングポイントになりました。

ー 二つ目のターニングポイントは?

海外留学ですね。留学するために、2010年頃にTOEFLの勉強をしていたんですけど、その時の点数が120点中27点だったんですよ。これじゃあ、どこの大学院も受からない。そこから2〜3年間勉強して60点台まで上がったんですが、2〜3年かけてこれだけしか上がらないのなら自分には向いていないな、と思って。ちょうど仕事も面白い時期だったので、諦めていたんです。

でも、経済産業大臣政務官の秘書官をしていた2018年3月にカナダ・モントリオールのG7に同行したんです。そこには通訳も付いていたんですが、夜の食事のとき、たまたま私が座るところには通訳がいない状態になってしまって。目の前にはアメリカ人やイギリス人、フランス人、ドイツ人というようなテーブルで、話に全くついていけないわけです。それが猛烈に悔しくて。

それで改めて、留学のチャレンジを再開し、そこからTOEFLやIELTSなど英語の試験を更に20回くらい受けて、ようやく今のコロンビア大学国際公共政策大学院(SIPA)に合格。SIPAには世界中から優秀な人材が集まっており、2019年のU.S. News & World Reportのランキングでも非常に高い評価も得ていて、日々刺激に満ち溢れています。これが二つ目のターニングポイントになりました。

ー 三つ目は、一般社団法人Public Meets Innovationの立ち上げですね。

実は2012年頃に、経営者や官僚、研究者、アーティストなどの友人と集まって、セミナーや勉強会をやるための法人の立ち上げようとしたことがあるんです。でも、事情により立ち上げが止まってしまったんですね。やりたいことだったから、私の中でずっと燻っていました。

そして2018年2月、シェアリングエコノミー協会の石山アンジュさんともう一人の現理事とで、「今の社会に何が足りていないのか」「どうなったら社会はもっと良くなるのか」といったことを議論していたところ、まさに3人の考えていることが一致していた。

パブリック側はイノベーションに関する知識が足りていなくて、イノベーター側はパブリックマインドが不足しがちです。だったら出会いの場を設けることが大事なんじゃないか、と。まずは、みんなで毎週集まってどういったことができるか考えよう、と議論しているうちに、だんだん人が集まってきた。そしてPublic Meets Innovationが立ち上がったのが、三つ目のターニングポイントです。

ー Public Meets Innovationでは、具体的にどんな活動をされているんでしょうか?

今は、パブリック側とイノベーター側が交流し、共通な課題意識を持つようなテーマをベースとしたイベントやセミナーなどを中心に実施しています。また、このコミュニティは1980年代以降生まれ、ミレニアル世代限定になっているという特徴もあって、次世代リーダーと呼ばれる人をここから輩出できればとも思っています。

 

「人、思考法、行動力」で働き方を変える

ー 今は官僚にならなくても社会を変えられる時代ですが、だからこそ行政で働く醍醐味を聞きたい。20代の頃に「これは行政だからできた仕事だな」と思ったことはありますか?

行政は、法令・税・予算の3つの重要なツールを持っているんですが、特に私が重要視しているのが、機運作り。クールビズがわかりやすい例かと。企業の場合は、原則として、利益最大化が目的なので、国や社会の機運全体を上げていくというのは難しい部分があると思います。

私が入省5〜7年目のとき、クールジャパンという仕事に携わっていたんです。日本企業の海外展開がなかなか進まない中で「あの企業がやれたのなら、うちもやれるかもしれない」といった挑戦の連鎖を作ることが、クールジャパンの醍醐味でした。クールジャパン自体をみんなで推進することが、日本企業全体の海外展開に繋がっていく、と。

この仕事をやっていたほうが、国や社会全体の機運を作るのには向いていたなと思います。あと、私が担当していた兼業・複業促進の話も機運作りの典型例でして、パラレルキャリアを応援していくことは、一企業には難しい。それがこの仕事の面白さだなと思うし、まだまだできることはあるなと思っています。

ー 20代でチャレンジングな仕事ができず離職してしまう若者も多い中、小田切さん自身の経験を踏まえて、20代では働き方にどう向き合うべきだとお考えですか?

私の場合、入省して5年目でクールジャパンの仕事をしたわけで、大きな仕事を比較的早く任せてもらえたと思っています。それでもまだ長いと感じるようであれば、兼業・複業で、余った時間に違った活動をしてみるのがいいかもしれませんね。

あとは、異業種とのネットワーク作りも大切。私自身、経営者や起業家、投資家、弁護士など、同世代の仲間たちと交流していろんな意見を聞いていました。将来大きなことを仕掛けるときの準備として、人との繋がりを作っておくというのはいいと思います。

ー とは言え、ただ目の前の仕事をこなしていただけでは小田切さんがそのポジションに配属されることはなかっただろうなと思います。20代の頃、仕事を任せてもらえるためにやっていたことはありますか?

大事なのは、人と思考法と行動力だと思います。人というのは、仕事関係以外の人とも積極的に会ってネットワークを作ること。そして思考法は、他人から与えられた情報をそのまま鵜呑みにしないということ。

大学院時代に、元総理秘書官と会う機会があり、「新聞を見るときは、経済欄は80%、社会欄は50%、政治欄は20%くらいしか正確に書かれていないと思いながら批判的に読みなさい」と言われたんです。常に世の中の情報に対して、あえて批判的に考えることを努力しなさい、と。その結果、官庁の中にいる他の人より「前例を疑ってみる」ということができたんだと思います。

行動力としては、20代のうちに自己実現のためのコミュニティ立ち上げ経験をするのが良いのではないでしょうか。私も学生時代にバスケットボールのサークルを立ち上げた経験がありますが、サークルでもいいですし、NPOや社団法人、もし可能であれば、株式会社でもいい。自分でやりたいことに対してプロアクティブにコミュニティを立ち上げた経験が行動力に繋がり、最終的に仕事にも活きてきます。

あとは失敗をすることも大事です。私も国家試験に2回落ちたり、英語の試験を約40回も受けたりたくさん失敗してきました。だけど、成功と失敗って、決して二項対立の概念じゃないんですよ。失敗を繰り返した先に成功がある。周りになんと言われようが、繰り返し繰り返し、命を燃やすレベルでやり続けることが大事だと思っています。

ー 挑戦するから失敗するのであって、失敗を避けて挑戦しないことが本当の意味での失敗ですもんね。失敗を怖がらずにチャレンジし続けられる理由やエネルギーの源泉はどこにあるんでしょう?

私は「こういう人間になって、こういうことを実現したい」という使命感をものすごく持っているほうだと思います。そのために必要な要件だと思って、何度も挑戦しているんです。自分が目指す人材像に近づくために、諦めることができないんです。

ー 使命感があるからこそ、失敗してもチャレンジし続けられるんですね。

 

20代で身につけておきたい3つの思考法

ー オフィスにこもって仕事をするだけでなく、社外に出てネットワークを作ったり勉強の時間を確保するなど、自分の時間を生み出してその時間を自己投資に使うということは、官僚に限らず会社員にとっても大事なことだと思います。小田切さんは大変お忙しい中で、どのように時間を生み出していたんでしょうか?

やらないことを決めましたね。具体的には、金曜日にみんなで飲みに行くとか、夏休みや冬休みになると旅行に行くといった、みんながデフォルトでやっていることを敢えてやらない。そして、その時間を自己実現のために使っていました。普通の人と真逆なことをするのは、時間の作り方のひとつだと思います。

ー 他にも、U-29世代に必要な考え方は何でしょうか?

3つの思考法が必要だと思います。一つ目は「オキシモロン・シンキング」、二つ目は「クリティカル・シンキング」、先ほどお話しした批判思考ですね。そして三つ目は、「クリエイティブ・シンキング」です。情報が満ち溢れた中で、AIでは代替されにくい「想像力」「統率力」「構想力」などがますます重要な時代になってきているので、そういうことを常に意識し、コミュニティ立ち上げなど0から1を作る経験をすることなどが大事だと思います。

私は特に「オキシモロン」という言葉をすごく大事にしていて。日本語で言うと「撞着語法」で、「急がば回れ」「賢明な愚者」など、矛盾していると考えられている複数の表現を含む表現のことです。

現在の世の中は、どうしてもAかBかの二元論で語られがちなんですけど、リアルの世界では二元論を超えて物事を解決しなければならないことがけっこう多いんですね。だから「AかBか」ではなく「AもBも」という考え方をどれだけ追求できるかというのが、U-29世代がこれから活躍するためのキーワードじゃないでしょうか。

ー 普通だったらORと考えてしまうことを、どうやったらANDで実現できるかを考えて日々仕事をしてこられたわけですね。

海外に留学しているのもオキシモロンの発想でして。海外のことをよく知らないのに、日本のことだけを良くしたいって、バランス感覚が欠けていると思ったんですよね。日本の文化や伝統、そして海外の文化も理解しながら、両方の意見を取り入れて政策を生み出して行くことが大事だな、と。

イギリスのノーベル文学賞を獲ったラドヤード・キプリングの有名な言葉に、「イギリスのことしか知らない人が、イギリスの何を知っているのか」というものがあって、要はイギリスを良くしたかったら、イギリスだけにいちゃだめだよということ。これは今の日本人にも同じことが言えます。だから20代のうちに、半年でもいいから海外の雰囲気を味わってほしいですね。

ー 小田切さんは、KPIが立てづらい官僚という仕事で確実にパフォーマンスを上げて評価され、信頼を積み重ねてこられたわけですよね。そのためには、どんなことが大切だったと思いますか?

私は誰よりも若いうちに失敗してきたから言えるのですが、与えられた仕事をまず精一杯やるということが、若いうちはすごく大事だと思います。何者でもない自分が何者かになれる瞬間は、愚直に努力をしないと与えられません。投資されない理由は信頼されていないからで、信頼というのは一歩一歩確実に努力して貢献して得られるもの。若いうちは、踏ん張って努力をするのが大事だと思いますね。

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(取材:西村創一朗、写真:ご本人提供、文:ユキガオ、デザイン:矢野拓実)