インタープレナー阪口友貴の「実現したい社会」に向けた取り組みと主張とは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第648回目となる今回は、阪口 友貴(さかぐち ともき)さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

1つの組織に所属せず、数多くの取り組みをするインタープレナーとして活動されている阪口さん。「誰もが、求める経験を拒まれない社会」の実現に向けて、不動産、保険、ヘルスケアなど、あらゆる分野に従事しています。今回はインタープレナーとしての働きかたや大切にしている価値観について幅広くお話を伺ってきました。

多種多様な活動を続けるインタープレナー

ーまずはじめに、自己紹介をお願いします。

現在、総合不動産デベロッパーに勤務するかたわら、「誰もが、求める経験を拒まれない社会」の実現に向けて活動をしている阪口 友貴(さかぐち ともき)と申します。

1つの組織にとらわれず、 組織の枠を超えた仲間と新しい社会を発想・共創していくインタープレナーとして日々邁進中です。

ー「誰もが、求める経験を拒まれない社会」の実現について、なぜそのような社会を目指そうと思われたのでしょうか?

わたしが小学生のころ、将来の夢としてプロのラグビー選手を目指していました。しかし地元の茨城県つくば市は、研究者がおよそ2万人近く暮らす研究都市。周りの大人からは「なんで研究者にならないの?」と問われることが多かったのです。

この経験から「『やりたい・なりたい!』と思ったことを否定しないでほしい」「求めることができる社会になってほしい!」と目指すようになりました。

ーそのような経験から、将来実現したい社会が生まれてきたのですね。現在、本業とは別に数々の取り組みをしていますが、詳しく教えてください!

平日は総合不動産デベロッパーで予算/決算業務および価格政策業務を担当し、本業以外では、保険業界のオープンAPI普及を推進する活動 をしています。そのほかにも「内面から美しさを整える」メンタルヘルスの活動(HAKUMA online)に取り組むなど、活動範囲はさまざまです。

ー不動産業界に就職をされたのにもかかわらず、なぜ「不動産業界以外での活動」を継続されているのでしょうか?

わたしにとって、不動産業とは土地の価値を最大化する仕事です。つまり、社会における必要な役割を思考し、体現するということです。また土地は有限であり、その開発には大きな責任がともなうと考えています。

ここでいう責任とは、「将来の世代に対して『なぜその選択をしたか』を説明できる」ということです。そのためには、目指す社会に対して仮説を持つこと、現在の社会を理解することが必要であると考えます。

社会は多様な業界で構成されています。だからこそ、不動産に関わる者の責任として、本業に真摯に向き合ったうえで可能な限り多くの領域で行動を続ける必要があるのです。

ー阪口さん自身のモットーがあるのですね。一方で、メンタルヘルスはどのような活動なのでしょうか?

メンタルヘルスの活動と聞くと、コーチングやカウンセリングのようにメンタルと向き合う手法をイメージされるかもしれません。なかには「自分は元気だから、メンタルヘルスとは関係ない」と感じている人も存在します。

そこで我々は「チューニング」と呼ばれる手法に特化し、だれもが日常的に心を整えられるサービスを確立、“市場”を創造しようと取り組んでいます。それは単なるボランティアではなく事業として成立させることにより、新たな市場価値として需要が高まる。結果的に、心を整える選択肢の多様化につながると考えています。

一生の価値観を築いた恩師との出会い

ーインタープレナーとして幅広く活動している阪口さん。幼少期はどのようなお子さんでしたか?

冒頭で申し上げたとおり、小学校からラグビー選手を夢見ていました。高校生までラグビー部に所属し、練習に打ち込む日々を送っていました。

そのようなラグビーひと筋のわたしを変えたターニングポイントが、2人の恩師との出会いです。

ー2人の恩師。まずは1人目を教えてください。

高校ラグビー部の顧問であった高橋先生です。ラグビーでは、いかにトライを取るかが注目されますが、高橋先生はわたしに「目立たなくていい」という考え方を教えてくれました。

「だれでも自分のできる事やすべき事があり、それらを探すことが大事である」当時のわたしにとって、ハッと気付かされる言葉であり適材適所の大切さを学びましたね。

現在ではいろいろな領域・チームで活動をしていますが、この考えが大いに活かされています。同じビジョンのなかで自分がどう行動するか。自分の本来の役割を考えるうえでも意識しています。

ーチームで活動するうえでは、ラグビーの恩師から得た知識は重要になってきますね!

そうですね。チーム活動以外に、わたしの価値観を築き上げてくれた中村先生も、恩師の一人です。中高で物理の先生をされており、わたしが小惑星探査機の研究に取り組んださい、いち高校生だったわたしにかけた言葉が今でも忘れられません。

ーいったいどのような言葉だったのでしょうか?

「行動するなら、結果にこだわれ」という言葉です。何の変哲もない言葉に聞こえますが、”こだわる”という言葉を再認識出来ました。

たとえば、課題に取り組んだときに残念な結果で終わったとします。単に「ダメだった」で終わるのではなく「なにが良くて、なにがダメだったか」を追求する。結果にこだわることで、自分の現状が分かることが大きな成果だと思うのです。

自分の立ち位置を把握したあとに「継続するべきなのか」それとも「1回足を引くか」。後者はネガティブに捉えられていますが、分からないことを探し求めるために実は意味があることだと考えます。

社会的マイノリティへの理解

ー2人の恩師との出会いを経て、そのあとはどのような進路を歩まれたのですか?

実はラグビー選手に憧れるのと同じくらい、鳥人間に憧れを抱いていました。「いつかはあのように大きな飛行機を作りたい!」この想いから、鳥人間コンテストに出場している大学だけを受験し、特に魅力的だった東京理科大学に進学しました。90名の仲間と30m近い機体を設計/製作した経験は、今でも私にとって最高の思い出です。

ー鳥人間。新しいキーワードですね!大学に進学してからも新たな挑戦を繰り広げていったのですね。

そうですね。在学中、立ち上げた活動の中に『From Mx.』があります。社会的なマイノリティという存在について議論する国際会議を主催させて頂いたことがきっかけです。

学びが多く、素敵な仲間と出会えたかけがえのない思い出である一方、「どこか評論をしてしまっている自分に違和感があった」というのが、正直な感想です。

ーそこから阪口さんは、どのような行動をしたのでしょうか?

まずは分からないなら分からないなりに自分自身が活動を行ない、実際に多くの人とコミュニケーションをとる。そして考え、その内容を包み隠さずオープンにする。

分からないことは恥ずかしいことではなく、分からないなりに知る努力をする事が大切であると感じています。今振り返ると、中村先生の「結果にこだわる」を意識した結果だと思います。

ーまさに『誰もが、求める経験を拒まれない社会』の実現を目指す、阪口さんの想いが反映されていますね!

ここまで実現できたのも、周囲の仲間のおかげです。今回のインタビューに際して、自らの過去を振り返ったのですが、1つ1つの出会いに対して心から感謝しています。

インタープレナーとして目指す世界とは

ー多種多様な活動家に聞こえますが、実は現在の活動につながっていたのですね。

はい。すべての取り組みは、一見異なっているように聞こえますが、実はつながっています。物事を切って考えるのではなく「つながり」を持って考える。不動産業界で働こうと決めたのも、様々なバックグラウンドを有する人と一緒に街づくりをしたいと感じたからです。

ーおっしゃる通り、街とはいろいろな人やもののつながりが存在していますね。実際に働いてみて、阪口さんが掲げるキャリアの目標はありますか?

そうですね。100年後振り返っても、なぜそのように取り組んだかを後悔無く説明できる空間を創る為に、責任ある*エコシステムエンジニアとして成長することです。現在は目の前の業務でいっぱいですが、未来を見据えた社員として成長していきたいです。

私が目指す「街」とは、倫理観と科学技術が研ぎ澄まされ、それらが有機的に結びつき、人々が豊かに暮らせる社会のことを指します。そうするためには「自らのアップデート」をおこたらないこと。

全体を俯瞰し、分からないなりに多分野で自ら行動を行い続け、その内容をオープンにし続ける事こそ、インタープレナーとして、わたしが社会に貢献できることだと思います。

*エコシステムエンジニア:立場の異なるあらゆる個人・企業などが、経済・環境・社会のすべての面で、持続的に共生関係を構築できる場と仕組み(エコシステム)を提供する存在

ーすばらしい意気込みですね。最後に、阪口さんの今後の展望について、教えてください。

「誰もが、求める経験を拒まれない社会」の実現に向けて、今後もインタープレナーとして活動を続けていきます。

現時点で、この生き方はまだ世の中に浸透しきっているとは思いません。わたしはインタープレナーの存在が、いつか社会にとって不可欠なハブになると信じています。少しずつでも、より多くの人に向けて魅力と重要性を感じてもらう、そのような活動を皆さんとご一緒出来たら嬉しいです!

ー心強いメッセージありがとうございました。阪口さんの今後の活動を応援しております!

取材・執筆:田中のどか(Twitter/note
デザイン:高橋りえ(Twitter

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