いまのベストを尽くし、やりたいことを続けていく。水の技術者 後藤正太郎が尽くしたベストとは

様々なキャリアの人たちが集まって、これまでのステップや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ。第442回目となる今回は、 水の技術者 後藤正太郎さんをゲストにお迎えし、現在のキャリアに至るまでの経緯を伺いました。

大学3年生の時に、旅行先のマレーシアでお腹を壊したことがきっかけで世界の水問題に興味を持った後藤さん。現在も水問題を対象とした研究プロジェクトに参加しながら環境関連の業務に従事しています。今回は、限られた環境の中でベストを尽くし、自分のやりたいこと続ける方法について教えていただきます。

ある出来事が自分のやりたいことを作った。その出来事とは

-まずは簡単に自己紹介をお願いいたします!

後藤正太郎と申します。現在はアフリカの水に関する研究プロジェクトと、環境関連の仕事を2つしています。環境関連の仕事では、新規ビジネスに関するコンサルと、ESG投資に関するリサーチ業務などをやっています。

-水に関しては大学3年生の時に興味を持ったとのことですが、興味を持ったきっかけを教えてください。

水に興味を持ったきっかけは、友人と旅行で行ったマレーシアでお腹を壊したことがきっかけですね。当時は水についてよく分かっていなかったので、汚い水を少し飲んだり触れていたせいか、移動中にトイレが我慢できないぐらいお腹が痛くなってしまいました。結果的にどうなったかはご想像にお任せします(笑)

この出来事をきっかけに途上国の下痢について調べると、子供が亡くなっている事例も多数あり、水で子供たちが苦しんでいるという事実を知って水について興味を持つようになりました。その後、途上国の水問題をもっと深く知りたいと思い大学院へ進学しました。

-大学院では水の研究をするため再び途上国へ行かれていますが、一番印象的だったことはありますか?

留学ではバングラディシュやアフリカに行きました。そこで一番印象的だったことは、本当にトイレが使えていないという話を直接聞けたことですかね。また、留学は途中で断念せざるを得ない状況となってしまいますが、そのことが「自分はもっと水の研究をやりたいんだ!」という気持ちを明確にしてくれました。

今できるベストを尽くして、悩んだ日々から脱却!

-留学後は就職されますが、当時はどのようなキャリアを描いて就職先を決められましたか?

就職してからも水分野に携わっていきたいという思いがあり、ゆくゆくは海外で水の調査をやりたいなと考えていました。そんな中で新卒で入社した会社に就職を決めた理由としては、日本についても知れる機会があったからですね。ゆくゆくは海外に行きたいと思いつつも、まずは日本のことについても知らないといけないと考えていたので、日本についても知れる機会がある会社に入社しました。

また、海外で水分野にずっと関わることは難しいなと率直に感じている中、他の業界から内定も貰っていた状態であり、内定に関して最後まで熟考する時間をくださったのもかなり大きなポイントでした。

-その後27歳で転職された際にモチベーションが下がったとのことですが、何があったのでしょうか。

モチベーションが下がったのは、転職先で一緒に働きたいと思っていた方が、転職したその月に退職されることを知ったからですね…そこから「今後どうしていこうかな?」と悩むようになりました。

-モチベーションが下がってから、気持ちを立て直すためにしたことを教えてください!

自分が関心を持っている業務をされている方が、退職される方含めごく僅かしかいらっしゃらなかったので、気持ちを立て直すためには正直辞めるしかないなと思っていましたね(笑)しかし、単純に辞めるのではなく「辞めるためにはどうしたらいいか?」「辞めるまでは仕事も仕事以外も水分野に精一杯向き合いたい」と思い、2つのことをやりました。

1つ目は技術士の資格を取得し、2つ目は水分野の若手の学会委員をしたり社外のことに関わるようにしました。気持ちを立て直すために社外の人や物事に関わりましたが、自分と同じモチベーションを持った方があまりおらず困ったと思いつつも、やはり海外の水問題を解決したいと感じましたね。

-海外の水問題についてやっていきたいという人は少ないんですね。その年は水の国際会議に若手代表として登壇していますが、どのような経緯で登壇されましたか?

そもそも国際会議に興味を持った背景としては、途上国の水問題に関して国内では同じ目線で話ができる人があまりおらず、同じ目線で話せる人を海外でも探したいと思ったことですね。その他にも、海外のトレンドを掴んでおきたいというのも理由です。

また、昔から国内外の学会に参加していましたが、出るのであれば単純に参加するだけではなく登壇したり運営側で関わりたいと思い、履歴書と課題のエッセイを送ったところ、採用され登壇することになりました。

-各国から参加された方と議論する中で印象的だったことを教えてください。

印象的だったのは、やはり「自分は途上国の水関連のことが好きなんだ」と再認識し、純粋に楽しいと思えたことですね!国内では、同じ分野に関心を持つ人を見つけることがなかなかできない中で、海外では同じ分野に興味を持った同世代の人と毎日議論できました。そのことが何よりも楽しかったです。

水の技術者とのしての理想を求めて、再び海外へ

-その後、海外駐在のオファーを受けるもコロナで断念し、イギリス留学を決意されると思います。留学先では何をされますか?

イギリス留学では、イギリスにある大学の修士課程に行くことにしています。修士課程では、途上国でどうすれば衛生設備を普及させることができるのかについて、環境などの視点から勉強する予定です。また、「こういう技術者になりたい」という理想像が今は無いため、自分なりに土木技術者のあるべき姿をしっかり考えたいですね。

最終的には、衛生の問題に対して自分がアプローチすることで、1人でも多くの人が病気をしなくなったり、綺麗な水にありつければいいなと思っています。

-ユニークキャリア世代が今後キャリアを考えるにあたり、伝えたいことはありますか?

2つお伝えしたいことがあります!1つ目は、これまで会社員で働いてきて制約が多い身ではありましたが、制約がある中でも「今できるベストはなんだろう?」と考えてみて欲しいです。私の場合は、今できるベストを考えた時に海外の学会に参加し、そこから輪を広げることができ結果がもついてきました。

2つ目は、海外にも目を向けて欲しいということです。国内だけではなく、海外にも沢山の社会問題があります。海外の社会問題を担う人がまだまだ少ないので、一緒に考えていきたいなと思っています!

-貴重なお話ありがとうございました。後藤さんの留学応援しています!

取材:増田稜 (Twitter
執筆:藤川結貴(Facebook/note
デザイン:高橋りえ(Twitter