社会人4年目の今だから答えられる。失敗を通してたどり着いた私の働き方

色々なキャリアの人たちが集まって、これまでのキャリアや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ、第一回目のレポート後編です。

第一回目のゲストは月岡愛里(つきおか あいり)さんです。第一部では月岡さんへのキャリアインタビューをご紹介しました。第二部では参加者から月岡さんへの質問を中心に話を進めました。

>>前編の記事はこちら<<

良いプロデューサーは「人を使う天才」

 

Hさん:ネット配信のテレビ局で優秀なメンバーと働いていらっしゃったというお話でしたが、どんな人のことを優秀だと思いますか?

私のいた部署のように、企画やプロデュースなど全体を統括して責任をとる部署においては、言い方は悪いですが「人の使い方が抜群にうまい人」が優秀だと私は思います。番組のプロデューサーは自分で映像を撮ったり編集したりする訳ではないので、そういう技術を持った人たちにいかにやりたいことを伝え、動いてもらうかというのがとても重要でした。

ただ、自分よりできる人に率直に意見を言って、満足いくアウトプットが出るまで何度もやり直してもらうのってとても申し訳ないし、気を遣います。

それを嫌な感じに聞こえないように配慮して、「この人(このプロデューサー)のためだったらもう一回頑張ろう」と思ってもらえる力がある人が優秀なのだと思います。相手に敬意を示すことを忘れず、自分のやるべきことはきちんとやった上で、言うべきことを言う。そういう「バランスの天才」のような上司がいたので、今もお手本にしています。

嫌いにはならなかったんですか?

正直、全力でアウトプットを出すよう向き合わされるので大変でした。でも嫌いになりきれないんですよ。

ヒット作を生むために正しいことを言う人でしたし、その人自身も全力で向き合っていたので。他の人が遠慮したり手を抜いたりするところで絶対にそうせず、結果を出すために何でもやる人だったので、みんなが何とかやらなきゃ!という気持ちになるんだと思います。

転職のモチベーションは「不安」

Sさん:転職してモチベーションが下がった理由はありますか?

前職から全く違う広告業界に転職したので、自分の知見や技術がまだない中で、成果を出した、役に立ったという実感がまだ得られる状況ではないからだと思います。

転職のモチベーションは何でしたか。次で何かやってやろう、もしくは不安、どんな感じですか。

当時やっていた仕事と違う技能も身につけなきゃ、もう少し違うことができるようになった方がいいのではないか、という不安と、新しい業界への好奇心という感じだったと思います。

『働き女子』という言葉への疑問

 

Kさん:世の中で輝いている女性ほど、女性差別などの社会問題に着目するイメージがあります。自分は男性という性で生きてきて、気づいていないところがたくさんあるんだろうなと思います。着目するきっかけが何かあったんでしょうか。

女の人は働いているだけでいわゆる「働き女子」「キャリアウーマン」みたいに言われます。「働き男子」とは言われないのに。ということは基本的にこの社会は「男性が構成している場所にに女性が入ってきたから、“女性のポスト”を用意してあげている」という前提になっているんだなと社会に出てから気づきました。

このような空気感は、仕事を頑張れば頑張るほど、どんどん日常的に感じるようになるもので、仕事を得て働いている女性にとってはよくある話です。「それを乗り越えてこそ」と思う人もいれば、気にしないようにしている人、「私は黙らないぞ、文句を言っていくぞ」となる人もいて、考え方は分かれると思いますが、興味を持たざるを得なくなっていくのは多くの人に共通すると思います。私も、「これ私が男性だったら言われなかったのかな」と思う小言とか、悔しいことも色んな場面でありました。そのような小さな積み重ねがあって、ちゃんと嫌なことや理不尽なことは言っていかないといけないと思うようになったのだと思います。

社会問題に興味があるなら飛び込むのもあり

Sさん:新卒の学生で「自分は社会問題に興味がある。でも新卒でそういう仕事をしている業界に飛び込むのはちょっと怖いから、一旦、広告業界やメディアなどのコンテンツを作る会社に入って、発信する力をつけてから、社会問題に直接対峙するような事業を自分で作るなり、そのような事業をやっている会社に入るなりすることを考えているんです。」という相談がよくあります。月岡さんは、学生時代から社会問題とかソーシャル活動に興味があったんですか?

大学時代は田舎から出てきたばかりだったので、一旦興味があることを何でもやってみていた段階でした。フリーペーパーを作ったり、テレビ局で働いたり、バイトで着ぐるみを着たり、本当に色々なことをして面白かったです。そして社会人になって、世の中には自分の知らない世界があるんだなということをさらに知って…社会のことに関して目を向けられるようになったのはその後くらいでした。

私は、せっかく興味を持てることがあるんだったら、そこで色々やってみたり発信してみたりしてもいいのではと思いますけどね。一旦、広告やメディアに行く、という人が多いんですね。

Sさん:そういう学生が多い気がします。広告業界で仕事をしながら、副業でライターとして記事を書く仕事をするっていう人も結構います。そういうキャリアもありかなとは思いますね。

私は自分が何に向いていて何ができて、どれくらい働くと限界で、どのくらい働くのがちょうどよく楽しいのかが、ようやく最近わかり始めたところなんですよね。最初からバチっとハマる仕事や完璧な状態を目指してしまうと、何を選ぶのが正しいのかよくわからなくなるのではとも感じます。一度、興味のあることをとことんやってみたらいいんじゃないでしょうか。

倒れる前に、ご自愛する戦い方を見つけることは可能?

20代は男女問わず、スターマリオのように「寝なくても仕事できるわ!」という状態になって、突然倒れてしまうというようなことをよく聞きます。月岡さんの言葉で言う『ご自愛しない戦い方(無茶)』をしてしまう若者は多いですよね。一度、倒れないとわからないものなんでしょうか。それとも、そうなる前に立ち止まって、ご自愛する戦い方(無茶をしない方法)を見つけることが可能なのか、月岡さんはどちらだと思いますか。

スターマリオ状態になっているときは冷静ではないので、一度倒れるというようなショック療法的な出来事がないとなかなか自分を客観視できないのかもしれません。ただ、私は早めに休んで復帰できたので幸運でしたが、倒れたことをきっかけに心身を壊してしまって、前のような働き方ができなくなってしまう人もたくさんいるので、絶対にオススメはしたくないですね。そういう辛さを味わう人が少しでも減った方がいいなと思います。

ではどうするかというと、「ビジネスマンもある意味アスリートの一種」という考え方がもっと定着するといいなと思っています。アスリートの喜びは、勝負に勝つこと、新記録を出すことです。これが仕事だと、成果を出す、プレゼンを通す、などです。アスリートは練習が終わったらストレッチをしますし、当たり前に適度な休みをとりますよね。もちろん食事や睡眠の管理も。それらができてこそ一流だと言われます。そういった考えが定着しているので、オリンピック選手が試合の前日に、深夜までものすごい量の走り込みをするなんてことは絶対ありません。アスリートと全く同じとまではいかないにしても体が資本であることには変わりないので、ビジネスマンにもそういう価値観が広まると、スターマリオ状態になる人は減るし、そういう人を「頑張っている」とみなすこともなくなるのかなと思います。世の中の常識や空気感が変わるのが一番いいですね。

しかし、すぐに世の中は変わらないので、私のように一回倒れて生還した者が「こうなったら大変だぞ」ということを伝えるのは大事かなとも思っています。とはいえ働きたい人にとっては休むことが逆にストレスに感じてしまうこともあります。世の中の役に立てていない、自分のスキルを向上できていないというストレスが出てくるのです。私もそういうタイプなので、休む、寝るなどの『守りのご自愛』と、時間内に効率的に仕事を終わらせる、自分の知識を増やすためにスクールに行く、などの『攻めのご自愛』が必要で、その両輪で回していけるのがかっこいい大人なのかなと最近思っています。

いいですね、『両輪のご自愛』。

どちらかだけだとダメで、バランス調整をその都度自分と相談しながらきちんとできる人が、「仕事のできるビジネスマン」なのかなと思います。

小さなアクションが自分の感覚も変える

 

Kさん:社会問題にあまり興味がありません。僕一人が頑張ったところで解決するのか、という疑問があり、あんまり興味がわかないのです。周りを巻き込んで色々な活動をするとか、どのような結果になれば、頑張ってよかったなと思えるのでしょうか。

私は一人旅が好きなのですが、先日千葉の房総を一人で旅行しました。房総を選んだのは、台風で大変な被害を受けて旅館のキャンセルが相次いでしまい、経営に困っているという話を聞いていたからです。どうせ好きな一人旅に行くんだったら、そのように助けが必要なところを選ぶことで世の中にもいいことがあるし、自分も楽しい旅行ができるし、双方にとっていいんじゃないかな、と思います。なかなかいいアイデアなのでこれからも一人旅をする際にできる範囲で続けたいと考えています。

旅行先一つ選ぶのも、自分が何を応援したいのか、小さな一歩でもよりよい社会に近づくかどうか、というのを考えて選んだら、なんとなく社会に積極的に関わっている気持ちになります。自分一人が何かをやったところですぐに世の中は変わりませんが、自分が納得いく選択をしたという事実があれば、人生に対してより誠実でいられるのではないでしょうか。災害や世の中の様々な不条理に直面したときに、webの署名をする、少しだけ募金をする、といった小さなことを積み重ねていくと、自分が何を大事にする人間で、どういう世の中になってほしいのかがクリアになっていきますし、世の中と関わりながら生きているんだなという感覚になってきます。それが社会と関わって生きていくことなのかなと感じています。

Kさんも苦しくない範囲でちょっとずつアクションを起こしてみると世の中の見え方も変わってくるのかもしれません。あくまで自分が楽しくやれる範囲からで良いと思います。

長い人生、失敗してもなんとかなる

では、最後に読者の皆さんに伝えたいことなどがあれば、お願いします。

社会人4年目にしては色々経験して、自分のちょうどいい働き方がようやくわかってきました。仕事はやってみないとわからない、会社には入ってみないとわからない、そんなことだらけです。キャリアに関する本を読んでも役に立たないこともあります。何回失敗しても大抵なんとかなりますし、色々悩みながら模索する人を微力ながら応援したいと思っています。

「人生100年時代」とか「老後までに2000万円貯めなきゃいけない」とか言われているので、幸か不幸か社会人人生もどんどん長くなっていますし、最初の数年で色々あってもへこたれずに、休み休み自分にあった方法を探していきたいですよね。私と似たような境遇の人もたくさんいるでしょうから、記事を書いたりこうやってお話をしたりして、働きやすい社会作りの端っこの方を担えたらいいなと思います。