他者評価社会に馴染めず、不登校に。海老原妃奈が自分軸を取り戻すために必要だった自信と愛情

今回は、無添加スキンケアブランド「LauleHina(ラウレヒナ)」を提供する海老原妃奈さんをお招きしました。

不登校経験を乗り越え、自社ブランドの開発販売を行うようになったこれまでのキャリアについて伺います。

 

アトピーを患った実体験から生まれたスキンケアブランド

–自己紹介をお願いします。

父と母が経営してきた化粧品の製造販売を行う会社があり、そこで自社ブランド製品「LauleHina(ラウレヒナ)」の企画、デザイン、販促などを担っています。

▼Instagramアカウント
https://www.instagram.com/laulehina_hinaebihara/?hl=ja

▼販売サイト
laulehina.myshopify.com/collections/all

「LauleHina(ラウレヒナ)」は、不要な添加物を使わず、肌に必要な美容成分を加えて作った独自のスキンケアブランドです。

–どのような時にやりがいを感じますか。

新規購入やリピート購入も嬉しいですし、「友達におすすめしたよ」「ギフトとして贈りたい」と言っていただけることも嬉しいです。ユーザーの方から「使い始めてから肌の調子がいい」「心地いい香りを感じながら1日の終わりにスキンケアをしていると幸せな気持ちになる」と言っていただけることもあり、とてもやりがいを感じますね。

また、父と母が経営してきた会社の製品は25年以上もユーザーに愛用していただいていて、長年ユーザーと共に成長してきたことはすごいことだと思っています。私自身が関わり、自社ブランド製品があることでさらに成長でき、新しいユーザーが生まれていけばいいなと思っています。

–自社ブランドを始めた経緯を教えてください。

私が大学を中退した後に落ち込んでいたら、「時間があるなら、ちょっと手伝ってみる?」と両親が声をかけてくれたことがきっかけです。当時の自分でも挑戦できるようなことから機会をくれたおかげで、できることが増えていく過程の中で自信を取り戻していったような感覚でした。

その後、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、(会社として)新しいことに挑戦しようという時期がありました。私は両親を尊敬していて、商品や会社も残っていってほしいと感じていました。そこで、私自身がアトピーを患い、使える市販の商品が少なかったことから「自分達でスキンケア商品を作ろう」ということになりました。

私が実体験からコンセプトやストーリーをまとめ、両親が製造を担当して、販売開始ができるまでになりました。ユーザーの方からの嬉しい声もいただきますが、今では私自身にとっても(このブランドが)新しい大事な居場所のひとつになっています。

 

他者評価軸で作られた環境に馴染めず、不登校を経験

–ご自身の子どもの頃のことで覚えておられることはありますか。

クラスの中で発言した時、賛成と反対を多数決で取ろうという場面がありました。その時、率直に違和感を覚え、集団から反対、否定の意を示されるというのが嫌でした。

また、授業の中でも違和感を覚えることがありました。絵や図工が好きだったのですが、先生の指示通りに描くことが求められ、その上採点やフィードバックまであることが嫌でした。「なんで自由に描いてはいけないの?」と思い、個性を否定されたような気持ちになったことを覚えています。

小学校1年生の頃には学校へ行くことが嫌になり、家を出て登校している最中に家へ引き返してしまうことが何度もありました。

中学校時代はほぼ不登校で、学校内には自分の悩みを理解してくれる人がいませんでした。当時はまだ自分の違和感を言葉にできていないですし、みんなが当たり前にできることを自分ができないことが辛かったです。

–当時心を開くことができた場所、安心して関われた関係性はありましたか。

自分の選択を尊重してくれた両親は唯一の理解者であり、頼りでしたね。

高校に進学し、女子校に通い始めるとそれまで私が抱えていた気持ちを理解してくれる友人と出会うことができました。共感しあえる人との繋がりを得ることができ、とても嬉しかったです。

–高校卒業後の進路について教えてください。

冒頭で少し触れましたが、大学を中退してから両親の仕事を手伝うようになりました。まずは以前から学んでいたことを活かせるデザイン面を手伝うようになり、HPやパンフレットを作っていました。できることや成功体験が増えていくうちに自信がついていって、作ったものを通して喜んでもらえることもやりがいでした。

今思えば、デザインの仕事は、昔から自分の視点やアイデアを表現することが好きだったことを発揮できるものでもあったのかもしれません。

–現在の仕事を始めてから大変だったこと、葛藤したことはありましたか。

今は自社ブランド製品を推進していて、立場上は自分の意見が通りやすく、決定権を持っています。それが自由であり働きがいにもなれば、重い責任として感じることもあります。もし判断を大きく間違えば製品や会社がなくなってしまう可能性もある…と思っています。

それでも決断することからは逃げられないのであれば、自分を信じるほかないと考えるようになりました。責任を持って決断を下したのであれば、もし間違ったとしてもそれを経験に変えていこうという姿勢でいます。

また、家業と言うと「家族に居場所を作ってもらっているんでしょ。家のことを手伝っているだけじゃない」と言われたこともありました。最初は心が揺れたり不安になったりしましたが、喜んでくださるユーザーの声に触れた時や思い描いていたものが商品として形になった時に感じる嬉しさがそれを上回るようになり、やがて気にならなくなりました。

これまでに葛藤した時期、大変だったことはありましたが、今はオリジナルブランド、ユーザーと共に自信を持って生きられるようになりました。

 

自分を好きだと思えれば、見える世界が変わる

–ご自身が以前よりも生きやすくなったと感じられているのは、どんなことが要因になっていると思いますか。

学生時代は他人の評価や視点が気になっていて、起こる出来事を受けて「自分だけなんでこんな目に遭うの」とも思っていました。社会人になってできることや成功体験が増えていったことで自信がついたことは生きやすくなった要因のひとつだったと思います。

また、私ひとりだけではここまではこれなかったと思っています。両親が自分を尊重してくれて、幅広い選択肢を選べる状況を作ってくれたことも大きな要因でした。

過去の私のような経験をした人、それ以外にも他者評価に囲まれて生きづらさを感じている人がいれば、そうした人が自分に優しく、自分を愛してあげれる世界になればいいなと願っています。

–読者の方へメッセージをいただけますか。

「無理に高い目標をつくろうとしたり憧れの人を目指したりするのはやめた方がいいんじゃないかな」と感じています。自分を見失ってしまうじゃないですか。

今のままの自分を認めて、まずは愛してあげることが大事だと伝えたいです。自分への理解や信頼が高まることで、やがて挑戦する意欲やパワーが内側から湧いてくるものだと思うんです。たった10%でも自分を好きだと思えれば見える世界が変わりますよ。

–今後の展望を教えてください。

「LauleHina(ラウレヒナ)」ブランドを使っていただくことで、朝は「これから頑張ろう」、夜は「一日がんばったね」と心の中で自分に声をかけるようにして、自分のためのスキンケアタイムを作ってほしいと思っています。

使うことでユーザーのライフスタイルが豊かになり、悩んでいる人、疲れている人を幸せにできるようなブランドと商品でありたいです。

 

取材・執筆=山崎 貴大