大手IT企業から独立し、サウナを仕事にした鈴木翔。起業を後押しした強い想い「好きなものを突き詰める」

今回は、株式会社HIDANEを創業し、代表取締役を務める鈴木翔さんをお招きしました。

これまでのキャリアの歩み、好きなサウナを仕事にした経緯について伺います。

 

個性・スキルとサウナの掛け合わせでキャリアが開花

–自己紹介をお願いします。

日本をもっとアツくするマーケティングカンパニーとして株式会社HIDANEを創業し、代表取締役を務めています。

株式会社HIDANEでは、日本最大級のサウナインスタメディア「サウナコレクション【サウコレ!】」を運営しています。全国のサウナスポット情報を紹介しています。

▽サウナコレクション【サウコレ!】Instagram

https://www.instagram.com/saunacollection/ 

そのほかに、伴走型のマーケティング支援を行っています。メディア、SNS、クラファン等を通して集客課題を解決します。サウナ施設のクラファンが増えている中、クラファン支援も行っています。私たち自身もクラファンを行っていて、今年公開したアウトドアサウナ付一棟貸し古民家宿作りのクラファンは目標金額の15倍以上の1,500万円を超える支援をいただき、成功しました。現在、サウナの建設に取り組んでいます。

▽サウナ付一棟貸し古民家宿「JIKON SAUNA -TOKYO-」

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000134192.html

–やりがい、働きがいを感じる瞬間を教えてください。

当社のメディアを通じて顧客が増えた、人材を採用できたと言ってもらった時は嬉しいですね。「人材が見つからなかったらお店が潰れていたかもしれない。ありがとう」という言葉を頂くこともありました。

サウナは多くの人が関わって成り立っていることのほかに、サウナと何かを掛け合わせやすいということがあります。さまざまなことに興味関心のある自分にとっては、サウナに広い関わりしろを感じたと同時に、自分が貢献できる機会も多く見出すことができました。(自分は)一つの専門性を極めているタイプではありませんが、むしろ多様な関心、スキルを持っていることがこれまで活かされてきました。

–事業や活動を通じて実現していきたいことはどのようなことですか。

留学などを通して海外に行った時に日本の良さを再度実感したものの、コロナ禍では海外に行けずにいました。それでもサウナをたどって国内旅行をしていると、各地にはたくさんの観光資源があるんだ、と気づきました。40ほどの都道府県に行きましたが、行って後悔した場所はありませんでした。

「日本をもっとアツくする」という言葉には、日本の魅力的な観光地と大好きなサウナを掛け合わせて、日本を盛り上げていきたいという思いが込められています。

 

会社員生活と並行してメディア・イベント活動に挑戦

–学生時代のご自身のことで覚えておられることはありますか。

中学校、高校では常にクラス1位の成績を取っていました。当時はそこに一つの存在価値を感じていたのですが、勉強自体が好きだったわけでもないですし、努力をせずにたまたまできたという天才なわけでもありませんでした。

最初は、「1位を取ったら漫画を買ってあげるよ」と言われて勉強を頑張るようになりました。塾には通わず、テキストが真っ赤になるまで書き込んで、試験準備もしっかりするようにしていました。良い成績を取ると先生や親が信用してくれて、自由に過ごせるようになりました。この「自由」が自分にとって嬉しくて、それを守るために勉強を頑張り続けました。

–学生生活の中で印象に残っている出来事、場面はありますか。

通っていた高校は生徒の主体性を重んじた校風で、自分に合っていました。「校内では上履きを履くこと」以外に細かいルールがないほど自由で、多くのことを自分で考え、決められる環境でした。通っていた生徒も前向きで、やりたいことがある人が多い印象でした。

3年間で印象に残っているのは、文化祭です。日本一と言われるほどの規模で、毎年1万人以上が来場する文化祭でした。高校3年生の夏は受験勉強をしつつ、クラスメイトと劇の練習に取り組んでいました。また、広報チームのメンバーとしてSNS発信や紹介動画制作も行っていました。この時に感じた発信する楽しさ、面白さは今でも覚えていて、当時のチームメンバーは今でも仲良くしています。

–大学、学部はどのように選択しましたか。

正直にいうと、進学先は消極的な理由で選びました。担任の先生との面談で「この成績だったら東大にいけるかもしれない」と言われ、「いけるチャンスがあるならトライしてみよう。大は小を兼ねるということもあるし…」と考えて東京大学を受験しました。

大学入学後は自転車部に入り、テントや鍋などを積んで自転車旅をしていました。大学1〜2年生までの間、部のメンバーと一緒に日本中を周りました。

在学中にマルタ留学も経験しました。語学学校に通いながら現地を周ってみると、日本人が少なく、綺麗な海もあり、日々非日常を感じられました。

その後、バックパッカーとして旅をしたりゲストハウスで働いたりして、自分が知らないものに触れること、新しい出会いを楽しんでいました。

–ファーストキャリアはどのように選択しましたか。

大学3年生の時にインターンシップに参加し、ベンチャー企業に魅力を感じました。また、大手企業で働いてきた両親を見ながらも、時代としては「大企業に入れば安心」という神話はもう存在しないことに気づき、どこに行っても必要とされる人材になろうと考えて就活に臨みました。

さまざまな業界の人の話を聞けることが面白く、就活は前向きに取り組みました。就活を経て、就職先に選んだのは楽天でした。若手に任せる社風があり、今後の時流を握るであろう「IT」を事業領域としていて、社内でも幅広い経験を得られそうだと感じたことが決め手です。

–独立の経緯を教えてください。

楽天に入社前はアルバイトとして働き、入社後は10名程度が所属する新規事業部に配属されました。スタートアップの雰囲気がある部署で楽しく働いていましたが、3年ほど経つと新しい変化を求める気持ちになってきました。

一方で、当時テントサウナに入っている様子をSNSで発信している友人がいて、一緒にサウナに入るようになりました。その後、YouTube動画を投稿したりメディアを作ったりし始め、次第にサウナのメディアやイベントを通して価値を届けられるようになってきていました。

自分だからこそできることであるか、起こせる変化の大きさはどの程度か…などの観点から考えた結果、サウナに関わることの方が生み出される影響力が大きくなってきていると気づき、退職を決意しました。

 

突き詰めたいと思えるほど好きなものがあるか

–キャリアや進路選択について迷っている方に向けて、メッセージをいただけますか。

先ほど触れた友人は、好きなことを突き詰め、形にすることがうまい人でした。今、自分もサウナに没頭し、没頭できるものがある幸せを感じています。以前は没頭できるものがない自分を否定したり他人と比べて不安になったりしていましたが、そうした気持ちは徐々になくなっていきました。

これから先、人口が減り続ける中、デジタル技術やAIは進化し続けていきます。やがて、人は時間を持て余すようになると思います。好きなことがある人はその時間を活用できますが、好きなことがない人はどうしたらいいのかわからなくなってしまいます。

特に私たち若い世代は、突き詰めたいと思える好きなものがあるかどうかで人生の充実度が大きく変わってくると思います。

私たちのようにサウナが好きな方がいれば是非これから完成するサウナ付一棟貸し古民家宿「JIKON SAUNA -TOKYO-」に来ていただきたいですし、これから好きなことを探そうとしている方はさまざまなことをご自身で体験してみて、好きなことを見つけ、突き詰めてみてください!

 

取材・執筆=山崎 貴大