学べる環境を見つけて、飛び込む。20代で2社創業した今井翔太のシンプルな成長方法

今回は、(株)ANYAKUを創業し、日本一周旅をしながら会社経営をしている今井翔太さんをお招きしました。

これまでのキャリアの歩み、自己成長に繋がったオンラインサロンや若手起業家シェアハウスとの出会いについて伺います。

 

スタートアップ・新規事業に欠かせない「デザイン」

–自己紹介をお願いします。

(株)ANYAKUを創業し、経営者 兼 デザイナーを務めています。スタートアップ企業、新規事業におけるブランドイメージ、コアアイデンティティ、周辺デザインを作る仕事をしています。

信用や企業イメージを伝えるロゴデザイン。認知を広げて事業生産性を上げる広告デザイン。採用や資金調達におけるステークホルダーへ企業イメージを伝えるHPデザイン。それらに統一感や世界観をもたらすことで、事業に資するデザインを作っています。

–過去の制作事例を教えてください。

詳細非公開、完全会員制のお花のBAR「EBISU FLOWER PARK(https://ebisuflowerpark.com/ )」のアートディレクションを手がけています。1店舗目の内装を検討していた頃から関わっていて、当初はロゴデザインを担当しました。新規事業ならではの過程の苦労も共にしながら、LP制作、広告クリエーティブの制作やプロモーション企画などのアートディレクションに担当の幅を広げてきました。

それ以外にも、九州大発AIベンチャー企業、都内飲食店、サウナアパレルブランド、日本酒ブランドなどのクリエイティブ制作も請け負っています。

–事業において、デザインとはどのような役割を持っているのでしょうか。

端的にいうと、現状から理想の状態への橋渡し。ふわふわとした理想像から輪郭を見出し、かたちあるものへ落とし込むことがデザインの役目だと思っています。具体的に言えば、下記のデザイン担当に書かれているような内容を推進する役割を指します。

▽スタートアップ企業に必要とされるコアな役職の6つ

  1. Visionally – ビジョン担当
  2. Hustler – ビジネス担当
  3. Hacker – 開発担当
  4. Hipster – デザイン担当

 →プロダクトのUIや全体のUX, ブランド素材などのデザイン全般

  1. Magician – マーケティング担当
  2. Enabler – 実務担当

–やりがいを感じる瞬間はありますか。

社長やプロジェクトオーナーの頭の中のイマジネーションを受け取り、それを形にした時に「なかなか周りには伝わらなかったんだけど、まさにこれなんだよ!」と言ってもらえる時は嬉しいですね。

現状の課題や背景を理解するためにじっくり話を聞いて、寄り添うことを大事にしています。また、パッと見て外側が綺麗なものを「デザイン」と呼ぶこともありますが、デザインとはより広義なものだと捉えています。事業を全体的に捉え、長期的に見て最適な表現を選択し、トレンドや流れに合わせて常にメンテナンスを行う必要があることもお伝えしています。

 

学外コミュニティ環境を活かして自己成長を実現

–子どもの頃のご自身のことで覚えていることはありますか。

幼少期からものづくりが大好きで、一番のおもちゃは学研の「ニューブロック」でした。近所の空き地で竪穴式住居のような秘密基地を作ったり手のひらサイズの絵本を執筆して教室の黒板に掲示したりもしていて、作ったものを友達、母親に見せては自慢していました。

「こんなものがあったらいいなあ」と感じたものを構想する。周りの人を巻き込んで実際に作る。誰かに見せる。使ってもらう。驚かれる。褒められる。

これら一連の流れが好きで、没頭していました。

–デザイナーという仕事を意識したきっかけを教えてください。

地元の県立高校に通っていた頃、「大学のオープンキャンパスへ行ってレポートを提出する」という夏休みの課題が出ました。ずっと部活動に専念していたので将来のことは深く考えておらず、特にいきたい大学や学部も思い浮かばずにいました。

千葉工業大学に行き、デザイン科学科の「ワークショップ」に参加したところ、ものづくりが大好きで没頭していたことを思い出しました。「お菓子のパッケージをリデザインするなら?」というお題のもと、他の参加者とディスカッションをしながらパッケージ変更案をまとめているうちに夢中になって、「これが仕事になったら嬉しいな」と思うようになりました。

–在学中に得た経験の中でフリーランス、起業に繋がったものはありましたか。

千葉工業大学に入学後、大学3年生の時に参加した「オンラインサロン」が次の転機になりました。

当時は第一次オンラインサロンブームが起こっていて、著名なビジネスパーソンがオンラインサロンを開設し始めた時期でした。自分が参加したのは著名なプログラマーが主催するオンラインサロンで、所属するエンジニアやデザイナーの皆でサービスを開発して収益化を目指すようなものでした。

オンラインサロンの中で出会った先輩経営者からフリーランスや経営者としての心を教わりながら、初めてのデザインのお仕事を頂くことができました。

–就職活動はどのようなことを考えて取り組みましたか。

なんとなくデザイナーになれるだろうと思いながら過ごしてきた大学の数年間でしたが、就活の募集などを見て、初めてそれが簡単ではないことを知りました。デザイナーとして働ける実感や通用する自信はまだなくて、大学で与えられた課題を楽しくこなしているだけでは将来が厳しいな…と思い始めました。今のうちに自分の力を試したいと考え、教授や親からは心配や疑問の声もあった中で休学を決意します。

休学後、流れる時間の感覚が一気に変わりました。自分で全ての予定や時間の使い方を決められるようになり、その裁量を扱えるだけの器や経験がまだ自分にはありませんでした。1週間の予定が何もない状態になった時は絶望しましたね。「頑張りたいけど、何をしたらいいかわからない」という葛藤を抱えながら一歩ずつ挑戦を続けました。

–フリーランスとしてはどのような働き方をしていましたか。

ブログ運営をしながらフリーランスとしてデザインの仕事を増やしていきました。この期間にロードバイク乗りのためのメディアを開設して1年で30万PVを実現し、大学教授からの紹介で電材メーカーのデザイナーとして働く機会も得ることができました。休学期間が終わる頃には、フリーランスで得ている収入で生活ができるようになりました。

–卒業後はどのような働き方を選択しましたか。

卒業後は就職せず、C.E.Designを設立しました。会社設立のための知識がゼロの状態から1人で調べて作業をしたため、登記完了まで3、4ヶ月かかってしまいました。今となっては笑い話ですが、当時は大変でした。

知り合いの経営者に相談して紹介を受けた若手経営者コミュニティ兼シェアハウスの環境と出会ったことが、次の転機になりました。周りの経営者の方々と切磋琢磨し、経営のことを学びました。

 

世界旅行をしながら経営。実家のような場所をいくつも作る

–(株)ANYAKUの設立経緯を教えてください。

シェアハウスの環境下で多くの若手起業家と知り合い、社会にインパクトを与えたい熱い想いに共感し、デザインを通して起業家の想いを形にするお手伝いを続けました。

経営の基礎を学ぶうちに、経営者は生み出す価値を広げ続ける方法を考えなければいけなくて、生み出す価値を大きくしていこうとすれば組織が必要で、継続していくためには売上・利益が必要だということが改めて腹落ちしました。それまでのように1人でやっていては実現できないことがわかり、チームや組織を作っていくことを考え始めます。

次第に仕事の規模が大きくなり、自分自身やチームの成長もあり、新しい会社の設立を決意しました。

現在は日本国内を旅しているのですが、その旅先でも想いを持った起業家/社会活動家と出会い続けています。

–社名の由来を教えてください。

いきなり単純なことを言いますが、「暗躍する」ってかっこよくないですか?誰かが何かを面白がっていたり何かに喜んでいたりした時、「実は、あの裏では■■さんが実質プロデュースをしていたんだ」と言われるようなポジションに惹かれていたんです。歴史上の人物、アニメのキャラでもそういったポジションの人に惹かれることが多いです。

〇〇な事業を立ち上げたい!〇〇な世界を作りたい!というような熱い想いを持った起業家を、デザインという「強力な武器」で後押ししたい。社会変革を起こす彼らをデザインで支援することで、私たちは「間接的なイノベーター」でありたい。縁の下の力持ちとして、世界を変える彼らの裏で暗躍していたい。そんな「最強のサポーター集団」でありたいと思っています。

–学生時代〜起業後の現在にかけて、大変だったことや葛藤した時期はありましたか。

起業する前の休学中は、葛藤がありました。パッと時間が生まれた時、具体的な行動や必要なアクションを全て自分で決めなければいけないという状況になり、かなり模索をしました。「頑張りたい気持ちと目指したい姿はあるのに、どこから手をつけていいのか分からない」という時期がきつかったですね。

また、その数年後ようやく仕事を頂けるようになり、依頼されたもの全てを引き受けてパンクしてしまった時期がありました。忙しすぎて寝る間も惜しい日々が続き、私生活の予定もほとんど入れられない状況でした。結果的には自身のキャパが広がった時期にあったと言えますが、当時は大変でした。

–今後の展望・目標を教えてください。

会社面では、「売上1億円を達成(2027年)」を目標に掲げています。少人数精鋭の組織でこの目標を実現し、もっと自由な生き方ができるクリエーターを増やしていきたいと思っています。やがて、(ANYAKU組織があれば)起業家の想ったことはなんでもできる状態、「あの会社の裏で、ANYAKUが暗躍していたらしいよ」と噂になる状態を目指していきます。

個人的なキャリア面では、時間/空間/金銭的な拘束から解放された「やりたい時にやりたいことがなんでも挑戦できる」状態を理想としていて、「誰よりも自由なクリエーターになる」ことを目指しています。現在は日本一周旅をしながら会社経営中ですが、来年からは舞台を世界に広げて世界旅行しながらの会社経営に挑戦したいと思っています。最終的には世界の中で自分にとっての最高の居場所を見つけて、いつでも帰れる実家のような場所をいくつも作ることが旅のゴールです。

 

取材・執筆=山崎 貴大