今回は、富士通株式会社の企画職として働く猪瀬祐司さんをお招きしました。
これまでのキャリアの歩みと社内外で精力的に活動する理由について伺います。
企画職を担いながら、社内外で複数の活動に参画
–自己紹介をお願いします。
現在、富士通株式会社に勤めながら、社内の若手社員コミュニティ運営を中心に社内外で様々な活動に参画しています。
富士通は世界をリードするDXパートナーとして、信頼できるテクノロジー・サービス、ソリューション、製品を幅広く提供して、お客様のDX実現を支援している会社です。
2021年からSX(サステナビリティトランスフォーメーション)のための事業モデル「Fujitsu Uvance」を推進しており、社会課題を起点として、クロスインダストリーでお客様の成長に貢献するデジタルサービスを提供しています。
–業務内容を教えてください。
現在、私はビジネスマネジメント本部 企画統括部 全社横断プロジェクトグループに所属しております。
全社横断プロジェクトグループは、富士通全体の経営スピードと生産性向上につなげるための施策を推進しています。
私の業務として、2024年度は社内のフロント(*)に向けて有益なナレッジを提供することに取り組んでいます。富士通は組織が大きく、部署やチームごとには情報がまとまっているが全社で活用できる状態にはなっていない、ということが起こります。社内各所に散らばっている有益なナレッジを誰でも活用できる形に汎用化し、社内SNSを用いて情報発信することで、フロントの方がスピード感を持ってお客様へ最適な提案が出来る環境作りを目指しています。
(*):ビジネスプロデューサー、システムエンジニア、コンサルタント
–取り組んでいる社内外での活動についても教えてください。
社内で言うと若手社員コミュニティ運営、Z世代社員コミュニティへコアメンバーとして参加・PJ運営、所属する本部のコミュニケーション促進活動、社内異動促進コミュニティ運営に取り組んでいます。
若手社員コミュニティは、コロナ禍に立ち上げました。2020年以降は新人研修や配属後もオンラインで業務していることから「繋がりを欲している人が多いのではないか」という仮説を持って、社内用SNSプラットフォームでコミュニティを立ち上げました。1〜10年目までの社員が900人ほど参加してくれていて、横のつながりを作るためのイベントを定期開催しています。また、抱えている悩みや不安を匿名形式で集め、社内用SNSプラットフォーム上で返答する企画も行っています。2年間で100件以上の声が寄せられ、それに対する回答を実施してきました。
Z世代社員コミュニティでは、社内外Z世代の富士通への共感を醸成することを目的に、大学生などのZ世代向けブランド活動、企業間コミュニティ活動、メンバープロジェクトが推進されています。私が所属したプロジェクトでは、2023年度に社内の1~6年目の社員300人にアンケートを実施して、仕事の価値観が明確かどうか、価値観が明確になったきっかけ、現状の満足度、上司に求めることなどを調査しました。そこから読み取れる内容をもとに課題を発見し、改善のための施策を今後推進していきたいと思っています。
社外でも、母校の中高生に向けた講座を行ったり産業カウンセラー養成講座を受講したりしています。
–やりがいを感じる瞬間を教えてください。
自分以外の人が理想としているアクションを応援/支援できたとき、自分の力が他の人の自己実現に寄与できたときに、自身の存在意義を感じます。
自分以外の人と言っても、自分が経験したことがないトピックに関しては当事者意識を持ち、責任を持って関わることは難しいと考えています。あくまでも過去に自分が悩んだりつまづいたりしたことに近いトピックを抱えている方。
そうした方がいた時には、正しく背中を押してあげたいと思っています。その人の中の感情や理想像など本音の整理に協力することで、本来持っていた意志や望んでいた行動が見えるようになると思っており、そのために必要な声かけや後押しをしたいです。
自己矛盾に気づき、自分の本音に耳を傾けた
–進学先はどのように選びましたか。
当時大学生だった兄に進学について相談をしていましたが、今思えば真剣には考えていなかったと思います…。まだやりたいことが明確ではなかったので、数学が好きだったこと、汎用的な知識を学べるところを探そう、という点を軸に大学受験に臨みました。
–在学中の経験で印象に残っているものはありますか。
部活動を通して、人は言行一致させることが難しく、矛盾を考慮してコミュニケーションをとるべきだということを学びました。
当時硬式テニス部に入部していたのですが、目標に対して必要な練習を続け、リーグ戦優勝という結果を勝ち取った先輩を見ていて「かっこいいな」と思っていました。勝つために日々没頭して取り組む姿に刺激を受け、自分達も練習に打ち込みました。
自分達の学年が3年生になった時、2年生の「レギュラーになりたい」という発言を文面通り受け取り、「レギュラーになりたいのであれば、(レギュラーの中心だった)3年生よりも考え、練習しなければいけない」と厳しく伝えたところ、少し浮かない表情でした。その表情に気づかずに、この姿勢を頑なに変えなかったこともあり、2年生の男子部員が全員辞めてしまいました。
その年、リーグ戦優勝という結果は得られたものの、「レギュラーになりたい」という後輩の発言を文面通り受け取ってしまったことは、今になって想像力が足らなかったなと思っています。
–入社の経緯を教えてください。
大学3年生の3月頭はまだ何もしておらず、部活合宿に行っていました。その後徐々に就活を始め、「プログラミングを学ぶ学科だったからIT分野に進もう」「自分が当事者意識を持てる教育の分野にも関心がある」と考えていました。
当社に入社が決まり、最初は文教関連部署を希望していましたが農業組合をクライアントとする農水部署に配属されます。地方のJA拠点で使われるシステムの開発、保守対応業務に携わっていました。
その後異動し、現在の部署に至ります。
–入社後、転機と言える時期はありましたか。
2020年、コロナ禍により時間に余裕が生まれ、ビジネス書や啓発本を読み漁っていました。その頃に出会ったのが「ずっとやりたかったことを、やりなさい。」という本です。内容は、4つのワークを通じて、自分の中に秘められた本能/アーティスト性を引き出すというものです。
まず、ただひたすら紙に書き出すワークをやってみたら楽しかったです。書いてみて気づく自分の真意や気持ちがあり、気持ちと行動の間に自己矛盾が生まれていることも発見しました。最終的には自分の本音を自ら尊重することの大切さに気づき、本当に自分のやりたいことを常に意識して後悔のないような日々を送ろうと強く思えるようになりました。
また、より一層他人の立場に立って考えることができるようになりました。「あの時、あの人はどんな気持ちだったんだろう」「上司の立場に立ってみると、(あの発言には)こんな背景があったんじゃないか」と考えることで、自分の見方や感情だけで判断することも減りました。
実は、このワークを通じて、SEの仕事を楽しめていない自分の感情にずっと蓋をしていたことにも気づきました。その頃の生活が理想の生活とはほど遠い生活を送っていることがわかり、ショックを受けたというか…このまま生きていくことに不安を感じたりもいましたが、その後ふとした瞬間に気持ちを切り替えることができ、「どうせ生きるなら楽しいことをしよう」と思うようになりました。
心機一転し、「どうせ生きるなら楽しいことをしよう」と思うようになります。その後社内異動して会社内外で自分のやりたいことに挑戦するようになり、「自分も楽しいから、関わる相手も楽しんでくれるんだ」と考えるようになりました。
–今後の展望、実現したいことを教えてください。
今取り組んでいることは、それぞれ活動の幅を広げていきたいと思っています。例えば「お悩み相談企画」は会社外にも機会を広げていきたいですし、臨床心理士・公認心理師の勉強を通して人間心理についてより深く理解できるようになっていきたいということも考えています。
現在は当社のフィールドの中で活動してますが、今後は別会社、別年代と繋がれる環境を作ることで他者や外と比較できる機会を設け、自身の価値感をより明確化できるチャンスも作り出していきたいですね。
取材・執筆=山崎 貴大