「環境が人を成長させる」WEBメディア売却、D2Cベンチャーを経て学生起業した谷内 拳の挑戦

今回は、株式会社ライトローズを創業し、代表取締役CEOを務める谷内 拳さんをお招きしました。同社では全国的な学生向けアプリの開発と運営/生成AIを導入した業務効率化及びシステム開発支援/新卒採用支援/メディア・PR支援/就活イベントの開催など多岐にわたる事業を展開しています。

これまでのキャリアの歩みと学生起業の経緯についてお話を伺います。

 

早稲田大学在学中に学生起業。学生生活のDX化に挑戦

–自己紹介をお願いします。

大阪出身で、現在早稲田大学に在学しています。2022年の8月に株式会社ライトローズを創業し、代表取締役CEOを勤め、主に新規事業設立、資金調達、組織運営、開発ディレクションなど社内のあらゆる業務に幅広く関わっています。 

コアメンバー6人、インターン生含めて16人のメンバーで、4つの事業部(IT/開発事業部、メディア事業部、マーケティング事業部、イベント事業部)を運営しています。 

–代表取締役CEOを務める上で心がけていることはありますか。

リーダーとして心がけている点としては、社内のメンバーに対しては必ず業務の道筋・ゴールを明確に示し、自ら率先して推進していくことを心がけ、泥臭い姿勢も厭わずに積極的に示すように心がけています。また、会社を運営する上で、絶えずクライアントに対して満足いただけるサービスを提供できているか、という点は常に意識して、少しでも顧客満足度を上げられるように心がけています。あとは、もちろん会社は社員がいてこそなので、事業の成長に伴い、全員の給与の向上を同時に実現したいです。 

–事業を通して実現したいことは何ですか。

全国的な規模で次世代を支える大学生や若者の可能性を広げる環境の土台を構築したいです。その実現に向けて、生成AIなどの最新のIT技術を通して、学生生活における情報面のDX化に取り組み、全体的な大学生のキャリア志向の向上や機会の提供に向けて取り組んでいます。 

 

海外生活、留学で感じた「環境」の重要性

–学生時代に経験したことの中で印象に残っていることはありますか。

高校生の時に経験したアメリカ留学ですね。

当時、中学生時代、高校生時代と明確な目標を持って過ごすことができず、自己成長の場や学生生活に物足りなさを感じていました。そこでちょうど通っていた高校に留学制度があることを知り、新しい環境を求めてアメリカへの留学を決意しました。それより以前に幼少期をバンコクで3年ほど過ごしていた経験もあり、海外生活は2度目でした。

アメリカでは国籍や文化の異なる同世代と濃い時間を共に過ごし、大変多くの刺激を受け、自分の中での新しい価値観を形成するに至りました。

どのような軸で大学を選びましたか。

留学の経験を通して、環境は人に大きな影響を与えるということを強く実感しました。そのため大学の進学先も、今よりもさらに自分を成長させるために、できるだけ、面白い経験や夢、目標を持った人、優秀な人に出会い、切磋琢磨できる環境という観点を最優先に考えていました。

そこで、歴史的にも全国から面白い人や優秀な人が集まる特徴のある早稲田大学が最適であると感じ、進学先として第一志望に挙げ、進学しました。

–在学中に事業を立ち上げた経緯を教えてください。

まず、自分が在学している大学の環境を活かして、何かに取り組もうと考えました。コロナ禍で必要な情報が得られずに困っている学生を見て、学内向け情報プラットフォームを立ち上げました。多くの学生に使っていただけるようになると、企業から問い合わせや相談を受けるようになり、広告・求人の掲載を行うようにもなりました。

–ビジネス、仕事についてはどのように学びましたか。

入学してから興味本位でフィットネス系のアフィリエイトメディアを構築して運用したり、個人的に輸入関係の事業をスモールビジネスとして行っていました。ある程度成熟した後にメディアを売却後、本格的にマーケティングやビジネスを学びたいと考え、たまたまご縁があって当時伸びていたD2C業界のベンチャー企業に入社し、0からの商品開発などを担いました。個人でメディアを立ち上げ〜売却した経験とは異なり、組織で大きなお金を動かして成果を上げる上で必要なことを学ぶことができました。

その後に自社を起業しているので、過程の経験がそれぞれ活きていると思います。

 

大学生が起業しない理由とは

–若い世代から挑戦することが推奨されていますが、起業する学生はまだ少ないと思います。同世代の学生が起業しない理由はどんなところにあると感じますか。

理由を挙げると、3つくらいでしょうか。1つ目が、学生として起業をすることに対して、あらゆる面でリスクが高いと感じていること。特に、高学歴の学生ほど周りが大手企業に向けて就職する中で自分で道を切り開いていくことに対して躊躇している傾向にあるかと思います。合理的に考えて、社会経験も少ない学生の段階で、成功する保証もなく、道筋が想像もつかないような「起業」に人生を賭けるよりも、ほぼ確実に約束されている一般企業への就職を選ぶ判断は非常に理解できます。

2つ目が、起業家精神や実践的なビジネス経験を育む情報や機会がまだまだ少ない、または手に入りづらいということがあげられます。起業ということに対して解像度が低いまま卒業・就職をする学生が多く、学生時代から積極的に勉強をしておけば良かったという声をよく聞いています。年では起業の支援に積極的な大学も増えては来ていますが、やはり依然として大手企業に何社内定させたかという点が大学を評価する上での一つの指標になってしまっている点は否定できないですね。

そういう意味では大学とは別に、実際に企業の中に入って社員同様に働く体験をできる長期インターンなどの制度は効率よく手頃にビジネス経験を積むことができるうえに、同年代の仲間を見つけることができる点で、非常に相性がいいと言えますね。

3つ目が、資金をはじめとして、会社経営のノウハウや人脈など経営に必要なリソースが少ないことでハードルを感じて断念をしてしまうという場合でしょうかね。

ただ上記のような学生とは別に、意欲があり、起業したいという意志を持っている学生は一定数いると思います。そうしたケースの場合でもほとんどが、「具体的なアイデアに落とし込めず行動できない」というパターンや「そもそも何をしたらいいのかわからない」というところで一人で悩んで躓いてしまっている場合が多いですね。

–学生起業のメリットはどんな点ですか。

先ほど学生起業をしない人の理由の1つに「リスクが高い」という点を挙げましたが、もちろん失敗をする可能性は大いにありますが、学生のうちに起業した会社がうまくいかなくても、その挑戦の過程で得た経験、知識、人脈は必ず将来につながりますし、起業してダメだったら就活をすればいいわけですし、むしろ企業としても十分に評価のできるポイントになります。失敗を通して何を学んだかを明確に言語化できれば、多くの場合において人生にとってはプラスに働くと考えてもいいでしょう。

逆に、一方で学生だからこそ得られる協力、支援、応援は非常に強いものでして、実際に自分自身が起業する時も、創業当初は分からないことだらけで、手探りで学びながら事業を伸ばしてきましたが、道中で絶えず多くの先輩経営者たちに話を聞きにいきましたが、若者が頑張っているということで、ほとんどの方が実践的なアドバイスをくれたり、事業拡大のきっかけを与えてくれたりと大変ありがたい経験をしました。「若者を応援しよう」と思ってもらえるのは、ある意味学生の特権と言えます。いつまでも頼っているわけにはいきませんが(笑)

–起業に向いてる学生とは、どんな学生だと思いますか。

起業に向いている学生像としては、とにかくエネルギーや行動力のある学生でしょうか。なんとなく〇〇がやりたいな漠然に考えている学生ではなく実際に、自分のやりたいことを明確化して行動を起こしてデータを集め始めているような学生。具体的には、サークルを立ち上げたことがある学生や0→1で何かを作ることが好きな学生は概ね事業をしっかりと形にする傾向がありますね。

行動がしやすい環境にあるのが学生の強みですから、その時間を活かして、自分自身と向き合い「社会にどんな変化を与えたいのか」「そのためにどんな行動をしたら良いか」と考え、実際に実践や行動を起こしてトライアンドエラーをしていくと自分を客観視してみれるようになっていきます。

 

学生生活における情報や機会の格差をなくしたい

–今後の目標、展望をお聞かせください。

新しい情報プラットフォームの構築を通して全国的な学生生活を向上させたいという目標を持って日々勤しんでいるものの、プラットフォームとしては、いまだ未熟であり、まだまだ僕らの成し遂げたいことは数%しか達成できていません。しかし土台は着実にできあがりつつあるので、近いうちに大きく出ようと思っております。

いずれは全国的な規模で学生生活のDX化を実現するデジタルプラットフォームを完成させ、情報や機会の格差を解消と可能性の拡大を通して、日本の若者の早期からの活躍や、学生スタートアップ文化の萌芽に貢献したいです。

–今後何かに挑戦していきたいと考えている学生、若者の方々へメッセージはありますか。

自分が想像できる範囲、普段の行動範囲の外側に飛び出すことでヒントを得られることがあります。やりたいことがないという方は、場数が少ないことがほとんどですので、とにかく行動量を増やし、新しい経験をしていくと自分のやりたいことや刺激的な仲間に出会えるのではないかと思います。自分自身を高めていけるのは自分だけであり、自ら成長できる環境に自分から積極的に飛び込む必要があります。こんなことを言っている僕もまだまだですので、恐れずに共に挑戦して行きましょう!

 

取材・執筆=山崎 貴大